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特別編3:異世界

泉の精、ほのかの両親

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──〔human side〕──

待機中していると様々な情報が流れ込んでくる。どうやら虚空宮ヴォイドパレスの人達から情報が送られてきているみたい。

アルディオス様がアレクスを通じてゲート開いた世界にイントルーダーが大量発生しているそうだけど、そのイントルーダーが突如発生したファクティスと結合して違う存在になり始めているらしい。

イントルーダーの殲滅は虚空の覇者ヴォイドマスターさんの部下の人たちがやってくれていてアッサリと片付いていたのだけど、ファクティスと結合した個体にはヴォイドエネルギーが効かないらしく、かなり苦戦しているらしい。

取り敢えずアスティアのみんなに現状を報告する。

「それって遠回しに『手伝って』って言ってるんじゃないの?」
「多分違うと思いますよ~。あの人達はプライドと虚空の覇者ヴォイドマスターさんへの忠誠心だけは高いですからね~。応援要請を出すくらいなら世界ごと壊すと思いますよ~」

リオさんに答えたのはレフィさん。

「いやいやそれはマズいですよ。ちょっと手伝いに行ってこようかな」
「行くならミナだけじゃダメだからね?」

ソラちゃんに釘を刺される。
うんうん。分かってるよ。

「確かファクティスに対抗するのにはハルさんの水でもミナがオーバーブーストを掛けて精製した水じゃないといけなかったのよね?」

リオさんに言われて思い出す。

「はい。それを持っていけば簡単に倒せる様になると思います」
「ならすぐに貰いに行きましょう」

そう、アスティアにファクティスが現れた時の為にも切り札は持っておいた方がいい。

私とリオさんはお婆ちゃんの所に転移する。

「あら美奈、今日はどうしたの?」

お婆ちゃんは泉の畔に立っていた。

「ええと、実は──」

私は今まで起こった事をお婆ちゃんに説明する。

「それは大変ね。この前作ったものと同じ水が大量に必要なのね?」
「うん。いいかな?」
「勿論よ」

お婆ちゃんは快く引き受けてくれた。

「武器に付与するのなら良い方法があるのだけど、試してみる?」
「うん。やってみたい」
「それなら美奈の世界の方に行くわ。連れて行って」
「うん」

お婆ちゃんを連れて家に帰る。

「ハルさん、こんにちは」
「お婆ちゃんこんにちは」
「ユキちゃんとソラちゃんだったわね。こんにちは」

お婆ちゃんの指示で対ファクティス用の武器に改造する予定の人達全員を集める。

人数も多いし食事をする訳でもないので庭でやる事に。《建設ビルディング》を使ってプールの様なサイズの器を用意する。

「まずは水の生成ね。美奈、いいかしら?」
「いつでもいいよ!」

オーバーブーストをお婆ちゃんに掛けるとお婆ちゃんはファクティスに対する切り札になる水を大量に生成してくれた。

「次は順番に武器を水の中に浸けて頂戴」
「はーい」

私が初めにやってみよう。
ディエスエグゼクリシオンと重オリハルコンショートソードを取り出して水に漬ける。

お婆ちゃんが水に触れると剣が輝きだす。

「はい、出来たわよ」

剣を水から揚げて《鑑定》で見てみると効果の所に【永続付与:泉の精の水】と書いてあった。

おお、スゴい!しかも自動修復まで追加されてる!

「沢山いるからドンドンやりましょう。次の人」

あとはお婆ちゃんの指示で代わる代わるに武器を水に漬けて付与をしてもらうだけだった。

「これで全員かしら?」
「うん。ありがとうお婆ちゃん」
「いいのよ。これくらいいつでも言って」

水は大量に余ったのでお婆ちゃんに返そうと思ったけど、「持って帰る方法が無いし美奈が使って」と言ってくれたのでインベントリにしまっておく事にした。

お婆ちゃんにお礼を言ってイルメイアに送って来る。

戻ってきたらみんなはまだ庭に居て、自分の武器を確かめていた。

「切れ味も変わってないか?」
「何か取り回しがしやすくなった気がするよー」

ダキアさんとアリソンさんが剣を軽く素振りしながら言っている。

お婆ちゃんが水の効果を付与してくれた事で武器の性能自体がかなり上がっていた。

「恐るべし泉の精」
「味方だからね?」

ハルバードを見つめながら呟くソラちゃん。

みんなには何かあった時には連絡すると同時に応援要請をかけるという事で解散してもらった。

これで出来る事は全部かな?

ユートさんから私に連絡が来た。

『ミナ様、すぐに此方に来られますか?』
『どうしたんですか?』
『地球人のイントルーダーへの変異が始まりました』

他の世界で起こっていた事が地球でも始まった…?
ここにいる人達には聴こえる様にユートさんの通信を共有する。

『規模はどの程度ですか?』
『今の所アレクスの研究所員と警備関係者だけです』

それならまだ被害は少なくて済みそう。

「安心している場合ではないわよ…」

リオさんが険しい表情で言ってくる。

「研究所員がイントルーダー化するとしたら…ほのかさんのご両親が…」

そうだった。

ユキさんなら言われてようやくリオさんの言っている意味が分かった。

「…お父さんとお母さんはもうイントルーダーになっちゃったのかな?」

ほなかさんが恐る恐る聞く。

『いえ、御夫妻はまだ無事です』

良かった…。でもイントルーダー化を防ぐ方法は分からない。

『お2人は最後に娘さんに会いたいと言っています』

最後…2人はもう覚悟を決めているんだ…。

「すぐに行きましょう!」

この期に及んでこれが私達を誘導する為の罠という事はまず無いだろうけど、念の為少人数で行く事にする。
私とほのかさんとテュケ君とリオさんだけだ。

地球の宿泊施設に移動する。建物のエントランスを通った先、ホールの中央には康介さんと真由美さんが立っていて、2人を囲む様にメイファさんとスイさんが《アルカナセイバー》を構えて立っていた。ユートさんは少し離れた所で警戒している。

「ほのか。こんな事になってしまってすまないと思っている」
「あなたを探す為にどんな犠牲も厭わないと決めてやってきたツケが回ってきてしまったみたい」

2人とも笑顔を作っているが目が赤い。
ほのかさんが悲しまない様に無理矢理笑っているんだ。

「お父さん…お母さん…」

ほのかさんがゆっくりと2人の所へ歩いていく。

「来ては駄目だ。私達はもうすぐ人ではなくなってしまうのだから」
「お友達と一緒に強く生きなさい」

身を寄せ合ってほのかさんに優しい眼差しを向ける2人。

ほのかさんはその場で立ち竦んでいた。
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