転生少女、運の良さだけで生き抜きます!

足助右禄

文字の大きさ
811 / 826
特別編3:異世界

侵攻

しおりを挟む
自国のものだった砦はゼレイアに占領されている。
攻め落とす時に与えた損傷は簡単に補修されていて機能を取り戻していた。

侵略者から奪われた地を解放すると皆息巻いている。

今私達は砦を前に軍議を行っていた。

「この砦を落とせばその先の山道で他地域と接続できる。救援に向かうこともできるし足並みが揃えば友軍の数が増えるぞ」

オーク族の隊長が鼻息を荒くして語っている。

「閉門された砦を攻略するのは時間がかかる。小鬼族が内部に侵入して門をあけよう」

小鬼族の隊長が提案する。

「この砦、壊してしまっても大丈夫ですか?」
「ある程度の損壊は仕方がないだろうな。あの力で突破できるのか?」

これまでの戦いで私の能力はここにいる全員が見てきている。

「はい。敵の攻撃が私に集まれば多分」
「ならば今回もルミが最前列で良いか?」
「はい。被害を抑えてここを突破しましょう」

私が門を破壊したら各部隊で砦に侵入、敵を殲滅する事になった。

「ルミ、勇者の能力で頑丈になっているとはいえ何があるか分からない。油断しない様にな」
「ありがとうございます」

肩に手を置いて話すレイアさん。

これまでの戦闘で、私が一人前に戦えると判断してくれたのだろう。信じてくれて嬉しい。

夜明けと共に進軍。砦の手前で部隊は停止し、私だけが門の近くに歩いていく。

「ここは我らの土地だ!不当な侵略行為はやめてここから立ち去れ!」

返ってきたのは返事ではなく矢の雨だった。私は直立したまま矢を受ける。どこに当たっても傷にはならない。

「無駄な抵抗はやめろ。お前達の貧弱な攻撃など無意味だ!」

挑発すればこの低脳共は反応する。

砦の上に杖を持った兵や大型の弓、バリスタを持ち出してきてこちらに向けてきた。

よし。

魔法とバリスタの連続攻撃が始まると《遮断》を使って防御。解除されると同時にケンドチョウライ改め《カウンターブラスト》を発動。凄まじい衝撃波が巻き起こり門どころか砦の前面の大部分を吹き飛ばした。

威力は十分。少しやり過ぎたかもしれない。

「今だ!突撃ー!」

後ろに控えていた部隊が一斉に動き出す。私は一足先に内部へ。敵兵がワラワラと集まって来て防御隊形を作る。

「邪魔だ!」

シールドチャージで敵を吹き飛ばす。後続が現れて槍や剣で攻撃してくるがその程度では私に傷は付かない。

短槍で反撃していると後ろから味方の部隊が追いついてきた。

「よくやった!あとは任せろ!」

オーク族の隊長が私を追い越して敵兵を薙ぎ倒していく。
他の部隊も次々と雪崩れ込んできて敵を圧倒していく。

「て、撤退、撤退ー!!」

砦を放棄して逃げ出していく。
追撃しようとしたらレイアさんに止められた。

「ここで少しでも数を減らしておけば…」
「いや、その必要はないよ。それに生存者が君の情報を広めてくれる。そうすれば敵軍の警戒心が上がってあちらの機動力を削ぐ事が出来るだろう」
「わかりました」

レイアさんは先々の事まで考えているんだ。言う事を聞いておくべきだ。

私達は最低限の補給をして、砦の修復は輜重隊に任せて更に先へと進む。山道の合流点、ここを取ってしまえば別方面の敵部隊は退路を失う事になる。

ここに陣取って暫くしたら敵兵が撤退してくるのを見つけた。
数は凡そ50。
奴らはこちらが敵だと分かると動きを止めて様子を見ていたが、数人がやって来て降伏を願い出た。

散々やってきておいて虫のいい話だが、降伏を拒否して皆殺しにする訳にはいかない。武装を解除して一人ずつ拘束していく。

「コイツらは同胞を大勢殺した!生かしておく訳にはいかない!」
「そうだ!今すぐ処刑しろ!」

一部の味方が騒ぎ出す。それを見て身を小さくして震える捕虜達。

「彼らにも使い道がある。ここは抑えてくれ」

怒り狂う味方の兵達はレイアさんが宥めてくれた。

捕虜達は砦に連れて行って管理する事に。

そうこうしていたら別方面の味方部隊がやって来た。

彼方はジャイアントやノール、トロールなどの混成部隊。
隊長同士が話し合い、足並みを揃えて進軍する事になった。
砦の奪還を繰り返し、とうとう国境線まで敵軍を押し戻す事に成功した。

各方面から合流して来た部隊も多くなり、軍議の席も賑やかになった。

今話し合っているのはこのまま敵国に侵攻するかどうかだ。
意見は半々、今度はこちらがニンゲンの街を脅かすのだと息巻く者。全ての村と砦を取り戻したのだから防御を固めるべきだと主張する者。どちらも譲る事はなく平行線だ。

結局この日だけでは話がまとまらず、一度魔皇王陛下に指示を仰ぐ事になった。

その日の夜、私はレイアさんと侵攻について話し合った。

「私は攻めるべきだと思います。敵軍は消極的だし、私の噂も広がっているみたいですし、一気に国境線を向こう側へ押し込んで安全を確保するべきかと」
「そうするとゼレイアの民を襲う事になる。これ以上血を流す必要は無いのではないか」
「レイアさんは何故ニンゲンに肩入れするんですか?私は奴らのした事を許す事は出来ません」

そうだ。苦しんだ人の分まで同じ思いをさせてやりたい。今の私ならどんな敵でも打ち倒す事が出来るだろう。

「君は同胞を守る為に戦うのだろう?これ以上は守るの範疇を外れてしまうではないか」
「私、勇者に覚醒したのは意味があると思うんです。敵を討ち倒して味方を守るんだって神様が言ってるんじゃないかと」

私がそう言うとレイアさんは悲しそうな顔をする。

「ルミ、近々勇者は消滅するだろう」
「それってどういう…」
「君が消えてなくなる訳じゃないよ。勇者の能力はいずれ失われると言う事だ」

確信に満ちた口調で語るレイアさん。

「だから勇者になった事を戦う理由にしてはいけない」

レイアさんにそう言われて頷くことしかできなかった。
しおりを挟む
感想 1,520

あなたにおすすめの小説

転生令嬢は庶民の味に飢えている

柚木原みやこ(みやこ)
ファンタジー
ある日、自分が異世界に転生した元日本人だと気付いた公爵令嬢のクリステア・エリスフィード。転生…?公爵令嬢…?魔法のある世界…?ラノベか!?!?混乱しつつも現実を受け入れた私。けれど…これには不満です!どこか物足りないゴッテゴテのフルコース!甘いだけのスイーツ!! もう飽き飽きですわ!!庶民の味、プリーズ! ファンタジーな異世界に転生した、前世は元OLの公爵令嬢が、周りを巻き込んで庶民の味を楽しむお話。 まったりのんびり、行き当たりばったり更新の予定です。ゆるりとお付き合いいただければ幸いです。

素材採取家の異世界旅行記

木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。 可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。 個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。 このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。 この度アルファポリスより書籍化致しました。 書籍化部分はレンタルしております。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。