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5、第一章最終怪異 平安京呪詛編
5-12「盗まれた呪物」①
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乱雑に荒らされたキャンピングカーの内部を見て、言葉を失う皇と吉樹。
扉という扉は全て開きっぱなしで、食器やキャンピング用品、個々の荷物が持ち去られている。
真理が横になっていたベットマットも無い。
吉樹は丸い銀縁メガネのフレームを中指で押上ながら「まぁ、見事なモノだね」と頷く。
「関心している場合ですか……」と皇は辺りに視線を巡らせながら、呆れた様子で溜息をついた。
遅れて駆けつけた桃眞達が車内に入る。
その荒れた様に櫻子と蓮水は口に手を当てて驚く。
「気持ち良いくらいにやってくれたのぅ」
春平は半開きの扉を力いっぱい閉めると、舌打ちをしながら他の棚の中を確認する。
「ワシの荷物もあらへんわ」
「私のも無いよ……」
「うん。からっぽ」
「そんな事よりも真里だよッ!!」と叫んだ桃眞に一同の視線が集まる。
「きっと何かに拐われたんだ。もしも鬼だったらどうするよ……」
「それはないですね」
皇がキッパリと言った。
続けて吉樹は指を鳴らす。
突如、車が揺れた……。
すると桃眞達を取り囲む内装が動き出す。
扉が全て自動で閉じ、壁が反転、天井が開くと白い光を放つ別の天井が現れる。
ソファが分散し、テーブルに筋が走ると開いた表面からパソコンが顔を出す。
「わお……何だよコレ」
「キャンピングカーが変形しとるでぇ」
壁にはモニターが現れ、天井から発射されたレーザーが空中にホログラフスクリーンを出現させる。
「これって……」と何かを思い出したのか? 櫻子がスクリーンを見上げながら呟く。
パズルの様に床が蠢き、木目調からチタンプレートへと変化してゆくのを眺める蓮水が「怪伐隊の本部みたい」と言った。
狼狽する桃眞達に向かって、自慢げな様子の吉樹が口を開く。
「じゃじゃーん」と車内に向かって大仰な態度で両手を広げる。
どう反応して良いのだろうか?
困った桃眞達の沈黙を掻き消すかの様に「じゃじゃじゃじゃーん」と吉樹はもう一度空気を盛り上げる。
「仕方ないなぁ、そこまで言うなら説明しようじゃないかぁ」
「いや、別に何も言って無いんすけど……」
「先生ぇ、ワシらの反応が薄いからって、無理やり押し切らんでもええやろ」
「じゃあ、ちゃんと聞いてくれる?」
「良いから言うなら早く言って下さいよ」と、もったいぶる吉樹の態度に苛立ちを見せる櫻子。
「なーんかその言い方やだなぁ。素直じゃないとやぁーだなぁー」
こんな緊急事態の時に、吉樹のくだらない遊びに付き合っている場合ではない。
本当に陰陽寮の各学科の博士の上に立つ者なのだろうか? と思ってしまう。
苛立ちがピークに達した桃眞は思わず鏡の首飾りに手を伸ばした。
「簡易型の怪伐隊本部です」と空気を察した皇が説明した。
「何で先に言っちゃうのさぁ」と吉樹がクネクネしながら地団駄を踏む。
「この私でさえ少しイラッとしてしまいました。私も真理さんが心配です。さっさと始めましょう」
「はーい」
吉樹がパンパンと柏手を打つと、壁のモニターにヨッキーが現れた。
『やっほー。ヨッキーだよ』
「やぁヨッキー、相変わらず男前だね。さっそくだけどさ十分前の車内の映像を出してくれないかい」
『お安い御用だよん』
中央のホログラフスクリーンに、怪伐隊本部へ変形する前の車内が映る。
バックドア前のベッドでは、真理が記憶に残っているままの姿で横たわっていた。
少し早送りをする……。
何かに気付きヨッキーが再生をする。
映し出された映像を目の当たりにした桃眞は「これは……」と声が漏れた。
現れたのは数人の人間だ。
ボロボロの直衣を纏った大人と子供が、恐る恐る車内へと入り込む。
勿論見た事の無い内装にキョロキョロとしながら、彷徨う手が棚の扉や引き出しを物色し始める。
手に取るモノ全てがこの時代には無い珍しいモノばかりだ。
人間達は興奮気味に来ていた直衣を脱ぎ、袴だけとなる。
櫻子達のリュックを手に持ち、雑貨類を直衣に包む。
そして、ベッドで横たわる真理を見つけた。
恐る恐る近づく男。
ピンク色の短パンから伸びる白くしなやかな脚に見とれている。
真理の肩を押すが反応が無い。
頬を叩いたが目を覚まさない。
すると男は真理を担ぎ車を出た。
二人の子供が折りたたみのベットマットを持ち上げる。
そこで映像は止まった。
「マジかよ……ただのコソ泥じゃねぇか」と桃眞は絶句した。
『ココから北に一キロ程進むと、草原の中の地下洞窟があるよん。そこに彼らは住んでいるみたいだね』
「そんなに遠くは無いわね」と櫻子が言った。
「ワシの大事な荷物まで持って行きよってからに。あの中には外界で買うたグラビア写真集が…………あ、なんもない」
「とにかく真理を救い出してアイツ等をフルボッコにしてやる!!」
そう言うと桃眞達は皇と吉樹を残し、車を飛び出した。
扉という扉は全て開きっぱなしで、食器やキャンピング用品、個々の荷物が持ち去られている。
真理が横になっていたベットマットも無い。
吉樹は丸い銀縁メガネのフレームを中指で押上ながら「まぁ、見事なモノだね」と頷く。
「関心している場合ですか……」と皇は辺りに視線を巡らせながら、呆れた様子で溜息をついた。
遅れて駆けつけた桃眞達が車内に入る。
その荒れた様に櫻子と蓮水は口に手を当てて驚く。
「気持ち良いくらいにやってくれたのぅ」
春平は半開きの扉を力いっぱい閉めると、舌打ちをしながら他の棚の中を確認する。
「ワシの荷物もあらへんわ」
「私のも無いよ……」
「うん。からっぽ」
「そんな事よりも真里だよッ!!」と叫んだ桃眞に一同の視線が集まる。
「きっと何かに拐われたんだ。もしも鬼だったらどうするよ……」
「それはないですね」
皇がキッパリと言った。
続けて吉樹は指を鳴らす。
突如、車が揺れた……。
すると桃眞達を取り囲む内装が動き出す。
扉が全て自動で閉じ、壁が反転、天井が開くと白い光を放つ別の天井が現れる。
ソファが分散し、テーブルに筋が走ると開いた表面からパソコンが顔を出す。
「わお……何だよコレ」
「キャンピングカーが変形しとるでぇ」
壁にはモニターが現れ、天井から発射されたレーザーが空中にホログラフスクリーンを出現させる。
「これって……」と何かを思い出したのか? 櫻子がスクリーンを見上げながら呟く。
パズルの様に床が蠢き、木目調からチタンプレートへと変化してゆくのを眺める蓮水が「怪伐隊の本部みたい」と言った。
狼狽する桃眞達に向かって、自慢げな様子の吉樹が口を開く。
「じゃじゃーん」と車内に向かって大仰な態度で両手を広げる。
どう反応して良いのだろうか?
困った桃眞達の沈黙を掻き消すかの様に「じゃじゃじゃじゃーん」と吉樹はもう一度空気を盛り上げる。
「仕方ないなぁ、そこまで言うなら説明しようじゃないかぁ」
「いや、別に何も言って無いんすけど……」
「先生ぇ、ワシらの反応が薄いからって、無理やり押し切らんでもええやろ」
「じゃあ、ちゃんと聞いてくれる?」
「良いから言うなら早く言って下さいよ」と、もったいぶる吉樹の態度に苛立ちを見せる櫻子。
「なーんかその言い方やだなぁ。素直じゃないとやぁーだなぁー」
こんな緊急事態の時に、吉樹のくだらない遊びに付き合っている場合ではない。
本当に陰陽寮の各学科の博士の上に立つ者なのだろうか? と思ってしまう。
苛立ちがピークに達した桃眞は思わず鏡の首飾りに手を伸ばした。
「簡易型の怪伐隊本部です」と空気を察した皇が説明した。
「何で先に言っちゃうのさぁ」と吉樹がクネクネしながら地団駄を踏む。
「この私でさえ少しイラッとしてしまいました。私も真理さんが心配です。さっさと始めましょう」
「はーい」
吉樹がパンパンと柏手を打つと、壁のモニターにヨッキーが現れた。
『やっほー。ヨッキーだよ』
「やぁヨッキー、相変わらず男前だね。さっそくだけどさ十分前の車内の映像を出してくれないかい」
『お安い御用だよん』
中央のホログラフスクリーンに、怪伐隊本部へ変形する前の車内が映る。
バックドア前のベッドでは、真理が記憶に残っているままの姿で横たわっていた。
少し早送りをする……。
何かに気付きヨッキーが再生をする。
映し出された映像を目の当たりにした桃眞は「これは……」と声が漏れた。
現れたのは数人の人間だ。
ボロボロの直衣を纏った大人と子供が、恐る恐る車内へと入り込む。
勿論見た事の無い内装にキョロキョロとしながら、彷徨う手が棚の扉や引き出しを物色し始める。
手に取るモノ全てがこの時代には無い珍しいモノばかりだ。
人間達は興奮気味に来ていた直衣を脱ぎ、袴だけとなる。
櫻子達のリュックを手に持ち、雑貨類を直衣に包む。
そして、ベッドで横たわる真理を見つけた。
恐る恐る近づく男。
ピンク色の短パンから伸びる白くしなやかな脚に見とれている。
真理の肩を押すが反応が無い。
頬を叩いたが目を覚まさない。
すると男は真理を担ぎ車を出た。
二人の子供が折りたたみのベットマットを持ち上げる。
そこで映像は止まった。
「マジかよ……ただのコソ泥じゃねぇか」と桃眞は絶句した。
『ココから北に一キロ程進むと、草原の中の地下洞窟があるよん。そこに彼らは住んでいるみたいだね』
「そんなに遠くは無いわね」と櫻子が言った。
「ワシの大事な荷物まで持って行きよってからに。あの中には外界で買うたグラビア写真集が…………あ、なんもない」
「とにかく真理を救い出してアイツ等をフルボッコにしてやる!!」
そう言うと桃眞達は皇と吉樹を残し、車を飛び出した。
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