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駅のホーム

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僕は何本電車を逃しただろう
電車は時間になれば行ってしまう
僕なんかを待っててはくれない
乗りたい電車に行かれてしまったら
僕は途中下車したまま
ぼーっと線路を眺めるだけ
また乗りたい電車が来たらの繰り返しで
どれだけ電車を見過ごしてきたか
僕には検討もつかないけれど
僕には電車を選ぶ権利はあるのかな
乗りたい電車乗りたい電車と
何度も何度も言ってるけれど
僕が探している電車には終点がない
そしてスタート地点もない
その電車は
僕が乗りたい電車じゃなくて
僕が乗るべき電車じゃなくて
僕を待っててくれる電車
僕を置き去りにしない電車
こんな僕でも乗せてくれる電車
扉が開いたら
お気をつけくださいと
言われるけれど
ホームに落ちてしまうからでも
誰かにぶつかってしまうからでも
扉に挟まれてしまうからでもなくて
その電車はすぐ脱線してしまうから
その電車はすぐ運転を見合わせるから
だから乗車の際は
ある種の覚悟を決めなくてはならない
僕が探している電車は
僕には扉を開けてくれるのかな
僕を乗せてくれるのかな
行き先を決めるのも
出発点を決めるのも
僕がやることだけれど
僕はいまもまだ
ただただ線路を眺めるだけ
電車は何本も来るけれど
すぐに発車してしまう
電車が新幹線のように見えて
僕は今日もひとりで
ホームに立ち尽くす


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