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2 銀髪の少年に餌付けされる。
「どうしてこうなった……」
僕はドレスとウィッグを身につけ化粧を施され、王宮に連れて来られていた。
アリシアの迫真の演技?により、僕らの父親である公爵はアリシアの仮病を信じた。体調悪い娘を王宮には連れて行けない、しかしパーティーの趣旨を考えると、娘の欠席はまずいと考えた結果、クソ親父は『息子』を欠席させることにしたらしい。
クソ親父は僕に、『アリシア』としてパーティーに出席するよう命じた。
「父上、絶対にバレますよ!こんな格好で行きたくない!」
ピンクのフリフリしたドレスを無理矢理着せられた僕は、泣きながら訴えた。
「大丈夫だ、カミル。お前とアリシアは外見だけはそっくりだ。裸にならない限り絶対にバレない。むしろ可愛すぎて見せびらかしたい……。あ、いや。それに多分今日は美味しいお菓子がたくさん食べられるぞ」
「えっ!?」
お菓子という言葉に反応してしまった僕は、目を輝かせて思わず聞き返してしまった。そんな僕を見てニヤリと笑った父上は、「よし行くか」と言って僕を連れ出した。
僕の頭の中はお菓子でいっぱいになった。
王宮に着くなり、僕は父上の目を窃んで庭へ逃げ出した。アリシアから、とりあえず人目につかないようにしておけと命じられたからだ。女の子として着飾った自分を人目に晒したくなかったので、ちょうど良かった。
当初の目的であるスィーツをお皿にたっぷり乗せて一緒に持ち出すことに成功した。さすがに王家主催というだけあって、どれもこれも一級品ばかりだ。
「紅茶も一緒に持ってくれば良かったかなあ」
庭の奥の方にあるガゼボにベンチがあるのを発見し、腰かける。僕は綺麗なオレンジ色をした一口サイズのタルトを口に入れた。柑橘系の爽やかな香りがする。サクッとした歯ごたえのあとに、クリームチーズとカスタードの甘さが口いっぱいに広がる。絶妙なバランスで合わさっていてとても美味しかった。
「ん~、おいしい!止まらない~」
僕は超ご機嫌だった。
庭には美しい薔薇が咲き誇っているが、花には目もくれず、僕は次々とお菓子を食べていく。この国のお菓子はとても繊細で美しいものが多く、見ているだけでも楽しいのだ。
「すごく美味しそうに食べるね」
突然声をかけられて、僕は慌てて振り向いた。
そこには、月光のように輝く銀の髪と、澄んだ碧色の眼をした美少年が立っていた。年の頃は自分と同じくらいだろうか。まだ幼くはあるが、将来確実にイケメンになること間違いなしという顔立ちをしている。
「あ、ごめん!独り言だったので気にしないで!!」
僕は恥ずかしくなり顔を赤らめた。まさか聞かれているとは思わなかった。
「いいよ別に。それより君、すごい食べっぷりだね」
「あ、ありがとう……」
褒められたのか微妙な感じだが、とりあえず礼を言う。
「隣、座ってもいい?ちょっと疲れちゃって」
「ど、どうぞ」
断る理由もないので、僕は隣のスペースを少しあけた。
「……良かったら、食べる?フォークは一つしか持ち出してないんだけど」
僕はお皿に乗った色とりどりのケーキを指差し、手に持っていたフォークを差し出した。この状況で一人でモグモグするわけにはいかない。
「じゃあ、一つもらおうかな」
銀髪の少年は、渡したフォークでガトーショコラを突き刺した。
「ふぁっ?!」
思わず僕は声をあげてしまった。ガトーショコラは僕の大好物で、後で食べようと取っておいたものだったからだ。
「……食べていいんだよね?」
僕の様子に気が付いた少年が顔をあげて確認してきたので、僕は泣きそうになりながら、頷いた。
「……うん、い、いいよ」
僕の返答を聞いた少年は吹き出し、フォークでケーキを丁寧に切り分けた後、僕の口の方へ差し出してくる。
「はい、口あけて。食べたいんでしょ?これ。涙目になってる」
「う……うん……ありがとう」
僕は少年の優しさに感動しながら、恐る恐る口を開けた。すると、少年がケーキを一欠片口の中に入れてくれた。チョコレートの濃厚な風味が口いっぱいに広がる。
「……おいしい!」
心地よい甘さと苦みが織り成す贅沢な味わいに僕は酔いしれた。あまりの美味しさに感動してしまう。至福のひとときだ。
僕の反応を見た少年は満足げに微笑むと、「次はどれ食べたい?」と尋ねてきた。
僕は苺のショートケーキ、チーズスフレなどを次々と指差す。少年はそれを全て丁寧に切り分けて僕の口に運んでくれた。
途中から「こっちの方が食べさせやすいから、おいで」と少年の膝の上に横向きに乗せられた。
少年の手が腰に回り込み、密着して抱きかかえられるような体勢になっていたのだが、僕はスィーツの美味しさにそれどころではなかった。好きなだけ甘いものを食べさせてもらえる幸せに浸っていた。
最後のミルフィーユをうっとりと頬張ったところで、微笑んでいる少年と目が合い、僕は我に返った。
「……ごごごごめんなさい!結局1人でぜんぶ食べちゃった」
「あはは、全然大丈夫だよ。すごく幸せそうに笑うから、見てるだけで甘い気分になっちゃった。でも、そうだね。ちょっとだけ味見させてもらおうかな」
彼は僕を抱え直すと、そのまま自分の唇を僕のそれに重ねた。
「……んっ!?」
僕は驚きに固まってしまった。その隙に、彼の舌が口内に侵入してくる。
(ぎゃああああ!!何だコレ!?)
初めての経験にパニックになってされるがままになっていると、彼がようやく僕を解放してくれた。
「ごちそうさま。やっぱり美味しいね」
自分の唇を舐めながら、子どもとは思えない艶のある笑みを浮かべた彼を、僕は呆然として見つめた。自分の身に起こったことがすぐに理解できず、視界がぼやける。
「え、泣くの!?嫌だった?」
慌てた様子で僕を抱き寄せた彼に、耳元で囁かれる。
「……は、はじめてで、ちょっとびっくりして……」
僕は羞恥心と混乱で頭がグルグルしていた。顔が熱い。多分真っ赤になってる気がする。
「そっか、驚かせてごめんね」
彼は僕を抱きしめたまま頭を撫でてくれる。そのまま目尻に溜まった涙を舐めとられ、僕は身体を震わせてしまった。
「めちゃくちゃ可愛いし、癒やされるなあ。それに美味しそう。ちゃんと責任取るから安心して、早く慣れてね」
彼は僕を見下ろして妖しく笑うと、再び唇を重ねてきた。僕は抵抗しようとしたけど、腰に回されていた腕のせいで逃げられなかった。しかも口の中のあちこちを舐められて、力が抜けていく。
僕は必死に彼にしがみついた。
「んっ……はあ……」
やっと解放された時には息も絶えだえで、僕はぐったりと彼にもたれかかっていた。
「もっと一緒にいたいけど、そろそろ戻らなきゃ親に殺されるかも。またね」
少年は名残惜しそうな表情を見せたあと、手を振りながら笑顔で去っていった。
僕はベンチに座り込んだまま、しばらく動けなかった。
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