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7 悪役令嬢に呼び出される。
「おっかしいわね。これ、BLゲームじゃなかったはずなんだけど。なんで主人公が男なのかしら?バグ?やっぱりレオンハルト殿下の性的指向がそっちなの?そもそもあの主人公も胡散臭すぎんのよね」
僕はその日、作戦会議をするから食堂に来いとアリシアに命じられ、食堂へ行った。そこで待っていたアリシアは、僕の食事内容を見るなり「うげ」と言って眉間に皺を寄せた後、意味の分からないことを呟きはじめた。
「びーえる?何それ?」
聞き慣れぬ言葉に首を傾げると、「こっちの話だから気にしないで」と言われてしまった。
「ところであんた、宰相の息子に乗り換えたの?最近あの堅物眼鏡イケメンとよく一緒にいるそうじゃない」
アリシアは可愛らしい外見に似合わず、カツ丼の大盛を豪快に食べていた。
「えっと、何のことかよく分からないけど、コルネリウスとなら前よりよく話すようになったよ」
僕は生クリームたっぷりのパンケーキをちまちま食べはじめた。
本当はティータイムのメニューらしいのだが、食堂のおばちゃんが僕のために特別にお昼も作ってくれた。なぜかプリンもオマケしてくれた。
コルネリウスとはあれ以来、たまにお茶をしながら一緒に過ごしている。今のところまだ膝の上に乗せられることはないが、お菓子はいつも食べさせてもらっていた。
最初は何となく恥ずかしい気持ちが強かったが、甘いものを口に入れてもらうと顔が綻び幸せな気持ちが溢れ出すのを抑えきれず、僕はコルネリウスに笑顔を振り撒いた。
「なるほど、これが癒し効果……確かにハマるな」
コルネリウスはたまに納得したように独り言を呟いていた。
彼はお菓子はいらないと言っていたが、この間のように僕の口元にクリームなどが残っていると、僕の唇を指で拭い自分で舐めて味見をしている。
最近は、お菓子で自分の指が汚れてしまうと、コルネリウスは僕の口の中に指を突っ込んでくるようになった。甘い味がするので、僕は反射的に彼の指に吸い付き舐めてしまうのだが、咎められることはなかった。
彼は僕のそんな様子をいつも無表情で見つめていた。それでも、以前より僕を見る視線が柔らかくなったと感じるのは気の所為ではないと思う。
僕はコルネリウスに気を許し、彼との接触に慣れ始めていた。
「攻略対象から攻略されてどうすんのよ、ややこしいわね」
アリシアから白い目をされる。
「で、肝心の主人公のシャルロッテとは仲良くなれたの?ちゃんと接触してる?できれば主人公にはあんたのルートに入ってほしいのよね」
「シャルロッテとは、それなりに仲良くなれてるとは思うけど…。基本的にいつもレオンハルト殿下と一緒にいるから…、あんまり話せないんだ。シャルロッテとレオンハルト殿下って仲が良いみたいだし、僕が入る隙がないんだよ」
王子とシャルロッテはいつも一緒にいるため、本当に聖魔法を教えているだけなのか、実は隠れた恋人同士なのでは、といった噂までチラホラ出始めている。
「それなのよねえ。レオンハルト殿下も何か企んでるんだろうけど。噂もあるし、男同士だからって油断できないわ。状況的にみたら、完全に今王太子ルートだし、破滅エンドまっしぐらって感じかしら。ああもう、悪役令嬢なんてやるものじゃないわね。せっかく転生できたと思ったのに」
アリシアはいつのまにかカツ丼を綺麗に食べ終えていた。あの量を完食するとはすごいなと感心していると、頭を抱えてブツブツ言っている。なんだか大変そうだ。
「さすがに殿下とあの主人公は……ないと思うけど、なんか怪しいから、一応どういう関係なのか探ってみるわ。あんたもこれ以上あの2人が仲良くなりすぎないよう、シャルロッテをなんとか落とすのよ!男だけど、あんた顔だけはいいから、色仕掛けすればなんとかなるでしょ?」
「……え?…う、う~ん」
正直、全く自信がない。というか、アリシアの命令はかなり雑だ。僕はパンケーキの最後のひとくちを口に入れた。
「あと、……一応確認するけど、あんたレオンハルト殿下によく呼び出されてるでしょ。何もされてないでしょうね?」
「っんぐっ」
あやうく喉に詰まらせるところだった。
「ななななななんでそんなこと聞くのさ。とととととっ特に、何もされてないよ」
僕は早口で答えながら、首と両手をブンブン左右に振った。
アリシアから胡散臭げな視線を投げかけられる。
「……まあ、いいけど。一応殿下はまだ私と婚約中だからね。いい?殿下との過度な接触は私たちの未来にも影響するから、何かおかしなことをされたら、ちゃんと私に報告するのよ?」
「…………分かった」
僕は俯きながら返事をした。せっかくのデザートなのに、プリンの味が全くしない。
王子との接触は、どこからがダメなラインか分からなくて、結局アリシアには詳しく伝えていない。
僕はなんとなく居心地が悪くなって、アリシアから視線を逸らした。
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