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12 魔術師団長の息子にお願いされる。
その後、コルネリウスから「パワハラ主君から死ぬ程仕事吹っかけられたのと、ちょっと事情があってもう2人で会えなくなった」と申し訳なさそうに言われた。
僕はまた一人でお菓子を食べることが増えた。
僕はどうしても気になることがあって、高等科2年の教室へ向かった。
彼とは初対面がアレだったので、正直気まずいが、今はそんなこと言ってられない。僕は意を決して教室の扉を開けると、目的の人物を探した。
昼休みで騒がしかった教室が、一瞬だけしんと静まり返った。やはり上級生が下級生のクラスに来るのは珍しいようだ。
目的の人物は直ぐに見つかった。彼は窓際の席で一人で魔術書を読んでいるようだった。フワフワの栗毛が陽光に照らされて透けている。
僕は彼の元に歩み寄ると、恐る恐る声をかけた。
「あ、あの」
「はい?」
彼は本から目を上げると、僕の姿を確認して灰色の大きな瞳をさらに見開いた。近くで見ると、彼はとても整った顔立ちをしているのがよく分かる。
「突然、ごめん。ちょっと話したいことがあって…放課後にでも時間もらえないかな?」
「あ、はい。大丈夫ですよ。僕、寮なんですけど、僕の部屋でもいいですか?人に聞かれたくない話ですよね?多分」
「うん、それでいいよ」
「分かりました。では、放課後お待ちしています」
彼はニコリと微笑むと、頬杖をついて僕に意味深な視線を寄越した。
「……何?」
「いえ、カミル先輩。今日はちゃんと制服着てるんすね」
「なっ……!」
確かに前回は王子に制服を乱された状態というか、ほぼ全裸で遭遇した。僕は真っ赤になって言葉を失う。
「すみません。可愛かったなあと思い出してしまって」
「……先輩をからかって楽しいのか?君は……」
「いえ、本音なんですけど……、気を悪くしたらごめんなさい。美味しいお茶とお菓子準備しておきますね」
「もういいよ」
僕は居た堪れなくなって、その場を後にした。
「楽しみにしてますからっ」
後ろの方で慌てた様子で彼が声をかけてきたが、僕は無視してしまった。
※※※
彼の名前はアロイス・ヴェッツェル。学年は1つ下だが、公爵家の子息で、父親は王宮魔術士団に所属している。
王子とは幼い頃からの友人らしい。彼もまた魔力が強く、将来有望な魔術師として期待されているそうだ。
僕は放課後になると、すぐにアロイスの部屋に向かった。
「こんにちは。いらっしゃい!」
アロイスは僕の顔をみると、満面の笑顔で僕の腕を引き、部屋に招き入れた。
「適当に座ってください。今、紅茶を淹れますね」
「おかまいなく……」
僕は所在無く部屋の中を見渡した。
室内は、綺麗に整頓されていて清潔感があり、本棚には難しそうな魔術書が沢山並んでいた。机の上には、実験器具や薬草などが所狭しと並べられている。なぜか、季節外れの薔薇が花瓶に飾られていた。
「あ、これ……」
「その辺の触らないでくださいね。毒草とかヤバいやつもあるんで」
「う、うん」
僕はそっと手を離したが、気が付いてしまった。
机の上に、特定の日の早朝から並ばないと手に入らない城下町の超有名店「シュペヒト」の限定品「白雪姫」の箱があるのを……。
「……」
僕は涎を垂らしそうになるのを必死で堪えた。
「カミル先輩、甘いもの好きですよね?」
「めちゃくちゃ好き!大好物!!」
思わず食い気味に答えてしまった。
アロイスは一瞬キョトンとした表情になったが、次の瞬間にはクスクスと笑っていた。
「そうですか。じゃあ、そのお菓子用意しますね。ただし、条件があります」
「え、何?」
「僕のお願いを聞いてもらえますか?」
アロイスが微笑みながら首を傾げると、サラリと髪が流れた。
※※※
『カミル。お菓子くれるからって何でも許したら駄目だよ。カミルは流されやすいから心配だな』
王子にそう言われた時は何を言ってるんだとショックを受けて、涙が溢れ出したのだが、結局王子は正しかった。
「ねえ。これって楽しいの……?」
僕は振り返って、アロイスの顔を見た。
「え、めちゃくちゃ楽しいですよ?それに癒やされる。はあ~、カミル先輩柔らかい。癒し効果すごいや。最高です」
アロイスは蕩けきった顔で、僕の身体を抱き締めると項に顔を埋めてきた。僕は恥ずかしくて固まっていた。僕は今、アロイスに後ろから抱き締められながらベッドに座っている状態なのだ。
「あの、そろそろ、白雪姫を…」
「ああ、そうでした。食べさせてあげますね」
アロイスはニコニコしながら、サイドテーブルの上に置いてあった菓子箱を開けると、限定品のケーキを取り出した。真っ白い生クリームたっぷりで、スポンジは雪のように口のなかで溶けてしまう柔らかさとかで、『白雪姫』と命名されている。
「はい、噛り付いていいですよ」
「え、このまま?!」
「はい、そのままどうぞ」
僕は躊躇いながら、恐る恐る口に含んだ。
「どうですか?」
「うん、美味しい……」
口の中で上質なバターの香りが広がっていく。クリームも甘すぎず、ちょうど良い塩梅で、絶妙な味わいだった。
ただ一口が大きかったためか、口周りに生クリームがついてしまっていた。
「いっぱいついちゃいましたね。舐め取っていいですか?」
「へっ?ちょっと待って!」
僕は慌てて手で拭おうとしたが、それより先にアロイスが顔を近づけてきた。
「あ、こらっ」
「生クリームは甘くないですね」
アロイスはペロリと僕の唇についた生クリームを舌で舐めた。
「あ、味見するなら自分の指ですれば良かったのに……」
「でも、こっちの方が興奮しましたよ?」
アロイスから耳元で囁かれ、僕は身震いした。
僕はまた一人でお菓子を食べることが増えた。
僕はどうしても気になることがあって、高等科2年の教室へ向かった。
彼とは初対面がアレだったので、正直気まずいが、今はそんなこと言ってられない。僕は意を決して教室の扉を開けると、目的の人物を探した。
昼休みで騒がしかった教室が、一瞬だけしんと静まり返った。やはり上級生が下級生のクラスに来るのは珍しいようだ。
目的の人物は直ぐに見つかった。彼は窓際の席で一人で魔術書を読んでいるようだった。フワフワの栗毛が陽光に照らされて透けている。
僕は彼の元に歩み寄ると、恐る恐る声をかけた。
「あ、あの」
「はい?」
彼は本から目を上げると、僕の姿を確認して灰色の大きな瞳をさらに見開いた。近くで見ると、彼はとても整った顔立ちをしているのがよく分かる。
「突然、ごめん。ちょっと話したいことがあって…放課後にでも時間もらえないかな?」
「あ、はい。大丈夫ですよ。僕、寮なんですけど、僕の部屋でもいいですか?人に聞かれたくない話ですよね?多分」
「うん、それでいいよ」
「分かりました。では、放課後お待ちしています」
彼はニコリと微笑むと、頬杖をついて僕に意味深な視線を寄越した。
「……何?」
「いえ、カミル先輩。今日はちゃんと制服着てるんすね」
「なっ……!」
確かに前回は王子に制服を乱された状態というか、ほぼ全裸で遭遇した。僕は真っ赤になって言葉を失う。
「すみません。可愛かったなあと思い出してしまって」
「……先輩をからかって楽しいのか?君は……」
「いえ、本音なんですけど……、気を悪くしたらごめんなさい。美味しいお茶とお菓子準備しておきますね」
「もういいよ」
僕は居た堪れなくなって、その場を後にした。
「楽しみにしてますからっ」
後ろの方で慌てた様子で彼が声をかけてきたが、僕は無視してしまった。
※※※
彼の名前はアロイス・ヴェッツェル。学年は1つ下だが、公爵家の子息で、父親は王宮魔術士団に所属している。
王子とは幼い頃からの友人らしい。彼もまた魔力が強く、将来有望な魔術師として期待されているそうだ。
僕は放課後になると、すぐにアロイスの部屋に向かった。
「こんにちは。いらっしゃい!」
アロイスは僕の顔をみると、満面の笑顔で僕の腕を引き、部屋に招き入れた。
「適当に座ってください。今、紅茶を淹れますね」
「おかまいなく……」
僕は所在無く部屋の中を見渡した。
室内は、綺麗に整頓されていて清潔感があり、本棚には難しそうな魔術書が沢山並んでいた。机の上には、実験器具や薬草などが所狭しと並べられている。なぜか、季節外れの薔薇が花瓶に飾られていた。
「あ、これ……」
「その辺の触らないでくださいね。毒草とかヤバいやつもあるんで」
「う、うん」
僕はそっと手を離したが、気が付いてしまった。
机の上に、特定の日の早朝から並ばないと手に入らない城下町の超有名店「シュペヒト」の限定品「白雪姫」の箱があるのを……。
「……」
僕は涎を垂らしそうになるのを必死で堪えた。
「カミル先輩、甘いもの好きですよね?」
「めちゃくちゃ好き!大好物!!」
思わず食い気味に答えてしまった。
アロイスは一瞬キョトンとした表情になったが、次の瞬間にはクスクスと笑っていた。
「そうですか。じゃあ、そのお菓子用意しますね。ただし、条件があります」
「え、何?」
「僕のお願いを聞いてもらえますか?」
アロイスが微笑みながら首を傾げると、サラリと髪が流れた。
※※※
『カミル。お菓子くれるからって何でも許したら駄目だよ。カミルは流されやすいから心配だな』
王子にそう言われた時は何を言ってるんだとショックを受けて、涙が溢れ出したのだが、結局王子は正しかった。
「ねえ。これって楽しいの……?」
僕は振り返って、アロイスの顔を見た。
「え、めちゃくちゃ楽しいですよ?それに癒やされる。はあ~、カミル先輩柔らかい。癒し効果すごいや。最高です」
アロイスは蕩けきった顔で、僕の身体を抱き締めると項に顔を埋めてきた。僕は恥ずかしくて固まっていた。僕は今、アロイスに後ろから抱き締められながらベッドに座っている状態なのだ。
「あの、そろそろ、白雪姫を…」
「ああ、そうでした。食べさせてあげますね」
アロイスはニコニコしながら、サイドテーブルの上に置いてあった菓子箱を開けると、限定品のケーキを取り出した。真っ白い生クリームたっぷりで、スポンジは雪のように口のなかで溶けてしまう柔らかさとかで、『白雪姫』と命名されている。
「はい、噛り付いていいですよ」
「え、このまま?!」
「はい、そのままどうぞ」
僕は躊躇いながら、恐る恐る口に含んだ。
「どうですか?」
「うん、美味しい……」
口の中で上質なバターの香りが広がっていく。クリームも甘すぎず、ちょうど良い塩梅で、絶妙な味わいだった。
ただ一口が大きかったためか、口周りに生クリームがついてしまっていた。
「いっぱいついちゃいましたね。舐め取っていいですか?」
「へっ?ちょっと待って!」
僕は慌てて手で拭おうとしたが、それより先にアロイスが顔を近づけてきた。
「あ、こらっ」
「生クリームは甘くないですね」
アロイスはペロリと僕の唇についた生クリームを舌で舐めた。
「あ、味見するなら自分の指ですれば良かったのに……」
「でも、こっちの方が興奮しましたよ?」
アロイスから耳元で囁かれ、僕は身震いした。
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