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18 転校生に餌付けされる。
木枯らしが吹き始めたある日、授業が終わると、シャルロッテが昼食に誘ってきた。その日、シャルロッテはレオンハルト王子と一緒ではなかった。
「今日は結界張られてないから入れたな!」
浮足立っているシャルロッテに連れて来られたのは、王子に呼び出されたときに一緒にお茶をしている中庭だった。最近はこの場所で王子から身体を弄られているので、僕は少し居心地が悪かった。
こんな明るい場所で裸にされて喘いでいる自分を他人から目撃されたら、軽く死ねる。いや、アロイスには見られたな。僕は死ぬべきなのかもしれない。
「本当は暗黙の了解で王族とか、身分が上の人しか入れないから俺はダメなんだけど。まあ、カミルがいるからいいよな」
シャルロッテは悪びれもせずそう言うと、さっさとベンチに座る。僕はぼんやりとその様子を眺めた。
いつも王子に連れて来られていたから、この場所がそういう場所だとは知らなかった。そういえば、ここでは王子とコルネリウスと、あとアロイスしか会ったことがなかった。
人目を避ける場所として、ちょうどいいのかもしれない。
シャルロッテは普通に元気そうで、傷付いたり落ち込んだ様子もない。アロイスから、「心を病んでしまった」とか物騒な言葉を聞いたので心配していたが、そんなことはなかったようだ。
「カミルも座れよ」
笑顔のシャルロッテにいきなり手を掴まれ、僕はバランスを崩して倒れそうになり、シャルロッテに抱きとめられた。慌てて体勢を立て直そうとするが、そのまま引き寄せられ、膝の上に跨ぐように座らされる。
「うわっ、ちょっと……」
いつも王子と一緒にいるときはこの体勢にさせられるので慣れてしまったが、友人同志にしてはやはり距離感が近すぎる。
僕は戸惑ったが、シャルロッテは気にしている様子はない。
「カミルって甘いものばっかり食ってるくせに、やっぱり細いよな」
シャルロッテは、膝の上にいる僕の腰に手を回しながら呟いた。
「ちゃんと食べてるのか?甘味以外だぞ」
「うん……」
「嘘つけ」
「えっ……」
至近距離でシャルロッテに睨みつけられ、僕はぎくりとした。確かに最近食欲がなく、普通の食事量が減っている。
「お前、最近元気ないし。……ていうか、昼飯はそれ?」
シャルロッテは僕が持参したフレンチトーストを見て軽くため息をついた。
「本当は甘いものじゃなくて、ちゃんと食ったほうがいいんだけどな」
「う……」
僕は言葉に詰まってしまう。気分が落ち込んだときは甘いものしか食べられなくなる。というか、甘味を食べるなと命令されたら、多分辛くて死んでしまう。
「そ、それより、今日はレオンハルト殿下は一緒じゃないんだね」
僕は話題を変えようと口を開いた。
「ああ、レオならさっき婚約者殿が静かに怒りながら、連行してたよ。あいつ、とうとう浮気がバレたんじゃないか?おかげでレオから束の間の開放だ」
シャルロッテは僕の腰や太腿をゆっくり撫でながら、興味なさげに答えた。膝の上からおろしてくれる気配はない。僕はシャルロッテの腕の中で身じろいだ。
「……アリシアが、殿下に怒ってたの?……っていうか、浮気って……」
「レオはさ、ストレスたまると、突然『限界だから癒やされてくる』って消えること多かったから。婚約者以外に相手がいるね。どっちかと言うと、そっちが本命じゃねえのかな?
あ、言っとくけど、相手は俺じゃないよ?一部学園の連中が面白おかしく俺とレオのこと噂してるけど、俺とレオなんてあり得ないから」
シャルロッテは心底嫌そうな顔をして言った。
僕はそれを聞いて混乱した。あれ、どういうことだ……?
「まあ、レオが誰と浮気しようが関係ないよ。それよりさ、これ。なんだと思う?」
シャルロッテは片手を僕の腰に回したまま、反対側の手で鞄の中から、何かの包みを出した。中には見たことのない、黒くて丸い物体が入っていた。少しブツブツしている。
「……え、何これ」
「これ、外側があんこっていうやつで、中身が餅米のお菓子なんだ。俺の前世……じゃなくて、故郷の食べ物なんだけど……」
「ここここここ、これって、もしかして、東国の神や祖先に捧げるっていう、幻の和菓子『おはぎ』じゃないの!?原材料の一部『小豆』が高価すぎて、貴族ですら滅多に食べられないって……!」
僕は興奮で少し声が上ずってしまった。噂に聞く『おはぎ』は最果ての国、東国の菓子の中でも至高の一品だ。何とかして食べてみたいと、何度か商人に注文を試みたが、賞味期限とやらに阻まれて入手できなかった。
「……そんな御大層なもんじゃなく、普通にスーパーとかにも売ってたけどな……」
シャルロッテが何かボソッと呟いた。
「シャルロッテは東国出身なんだね」
「え、あ、う~ん、まあな」
シャルロッテが何故か口籠る。
「材料の…小豆と餅米なんかを東の国々と交易しててさ、手に入れられたから、作れるかなあって」
「えっ!?シャルロッテが作ったの!?」
僕は尊敬と羨望の眼差しでシャルロッテを見た。すごいすごいすごすぎるっ。
シャルロッテは僕を見て吹き出し、「めちゃくちゃキラキラした目してるなあ」と呟きながら、『おはぎ』をひとつ手に取ると、僕の口の前に差し出した。
「ほら、あーん」
僕は反射的に口を開けようとして、王子の言葉をふと思い出した。
―――お菓子を食べさせられるのも、俺以外の奴としないでね。誰かに触らせるのもダメだ。
こ、このまま口の中に入れてしまいたいっ……!
けど、この状況で食べたらダメだよな。しかも今腰とか脚とか撫でられまくってるし。
僕は慌ててシャルロッテの手を押し返し、欲望と闘いながら、言った。
「いや、自分で食べるから大丈夫。ありがとう。……それより、恥ずかしいから降りるね」
僕はシャルロッテの肩に手を置いて、彼の膝の上から降りようとした。だが、シャルロッテは僕の腰を掴んで離さない。
「いいから、いいから。はい、あーん」
シャルロッテはニコニコしながら、強引に僕に『おはぎ』を押し付けてきた。唇にふれる。ううっ。
いや、この状況で甘味を拒絶するのは僕には無理だ。ちょ、ちょっとだけ…
僕は心の中で言い訳をしながら、シャルロッテの指につままれた『おはぎ』を一口齧る。
お……美味しい……!!
もちっとした食感の餅と、あんこのほんのりとした甘さが絶妙に調和している。はじめて食べたが、やみつきになりそうだ。
「どうだ?」
「うん。美味しい……」
僕は感動に打ち震えていた。
「そうか。良かった」
シャルロッテは安心したように微笑むと、「カミル、最近元気なかったもんな。ちょっとは元気出た?」と聞いてきた。
「うん。……ありがとう」
僕はシャルロッテに心からお礼を言った。甘いお菓子も嬉しいけど、僕のことを気にかけてくれるその気持ちが嬉しくなる。
「もう一個食べるか?」
シャルロッテは僕の口に『おはぎ』を近づけてきた。僕はもう抵抗せず、素直に口を開けた。シャルロッテの指先が口の中に入ってくる。
「んー…」
僕が一口齧ると、シャルロッテが指を引き抜こうとするので、僕はそれを追って舌を這わした。シャルロッテがびくっとして、指を引っ込めようとする。
「な、何してんの?」
「ん……甘いから……」
僕はそのまま彼の指に舌を絡め、丁寧に舐め続けた。甘くて美味しいので、口の中に入れたまま吸い付いてしまう。シャルロッテが変な顔をするので、僕は指を咥えたまま、上目遣いで彼を見た。どうしたんだろう。
「カミル、お前……どこでそんなこと覚えたんだ?」
シャルロッテは何故か赤面して狼狽していた。
「今日は結界張られてないから入れたな!」
浮足立っているシャルロッテに連れて来られたのは、王子に呼び出されたときに一緒にお茶をしている中庭だった。最近はこの場所で王子から身体を弄られているので、僕は少し居心地が悪かった。
こんな明るい場所で裸にされて喘いでいる自分を他人から目撃されたら、軽く死ねる。いや、アロイスには見られたな。僕は死ぬべきなのかもしれない。
「本当は暗黙の了解で王族とか、身分が上の人しか入れないから俺はダメなんだけど。まあ、カミルがいるからいいよな」
シャルロッテは悪びれもせずそう言うと、さっさとベンチに座る。僕はぼんやりとその様子を眺めた。
いつも王子に連れて来られていたから、この場所がそういう場所だとは知らなかった。そういえば、ここでは王子とコルネリウスと、あとアロイスしか会ったことがなかった。
人目を避ける場所として、ちょうどいいのかもしれない。
シャルロッテは普通に元気そうで、傷付いたり落ち込んだ様子もない。アロイスから、「心を病んでしまった」とか物騒な言葉を聞いたので心配していたが、そんなことはなかったようだ。
「カミルも座れよ」
笑顔のシャルロッテにいきなり手を掴まれ、僕はバランスを崩して倒れそうになり、シャルロッテに抱きとめられた。慌てて体勢を立て直そうとするが、そのまま引き寄せられ、膝の上に跨ぐように座らされる。
「うわっ、ちょっと……」
いつも王子と一緒にいるときはこの体勢にさせられるので慣れてしまったが、友人同志にしてはやはり距離感が近すぎる。
僕は戸惑ったが、シャルロッテは気にしている様子はない。
「カミルって甘いものばっかり食ってるくせに、やっぱり細いよな」
シャルロッテは、膝の上にいる僕の腰に手を回しながら呟いた。
「ちゃんと食べてるのか?甘味以外だぞ」
「うん……」
「嘘つけ」
「えっ……」
至近距離でシャルロッテに睨みつけられ、僕はぎくりとした。確かに最近食欲がなく、普通の食事量が減っている。
「お前、最近元気ないし。……ていうか、昼飯はそれ?」
シャルロッテは僕が持参したフレンチトーストを見て軽くため息をついた。
「本当は甘いものじゃなくて、ちゃんと食ったほうがいいんだけどな」
「う……」
僕は言葉に詰まってしまう。気分が落ち込んだときは甘いものしか食べられなくなる。というか、甘味を食べるなと命令されたら、多分辛くて死んでしまう。
「そ、それより、今日はレオンハルト殿下は一緒じゃないんだね」
僕は話題を変えようと口を開いた。
「ああ、レオならさっき婚約者殿が静かに怒りながら、連行してたよ。あいつ、とうとう浮気がバレたんじゃないか?おかげでレオから束の間の開放だ」
シャルロッテは僕の腰や太腿をゆっくり撫でながら、興味なさげに答えた。膝の上からおろしてくれる気配はない。僕はシャルロッテの腕の中で身じろいだ。
「……アリシアが、殿下に怒ってたの?……っていうか、浮気って……」
「レオはさ、ストレスたまると、突然『限界だから癒やされてくる』って消えること多かったから。婚約者以外に相手がいるね。どっちかと言うと、そっちが本命じゃねえのかな?
あ、言っとくけど、相手は俺じゃないよ?一部学園の連中が面白おかしく俺とレオのこと噂してるけど、俺とレオなんてあり得ないから」
シャルロッテは心底嫌そうな顔をして言った。
僕はそれを聞いて混乱した。あれ、どういうことだ……?
「まあ、レオが誰と浮気しようが関係ないよ。それよりさ、これ。なんだと思う?」
シャルロッテは片手を僕の腰に回したまま、反対側の手で鞄の中から、何かの包みを出した。中には見たことのない、黒くて丸い物体が入っていた。少しブツブツしている。
「……え、何これ」
「これ、外側があんこっていうやつで、中身が餅米のお菓子なんだ。俺の前世……じゃなくて、故郷の食べ物なんだけど……」
「ここここここ、これって、もしかして、東国の神や祖先に捧げるっていう、幻の和菓子『おはぎ』じゃないの!?原材料の一部『小豆』が高価すぎて、貴族ですら滅多に食べられないって……!」
僕は興奮で少し声が上ずってしまった。噂に聞く『おはぎ』は最果ての国、東国の菓子の中でも至高の一品だ。何とかして食べてみたいと、何度か商人に注文を試みたが、賞味期限とやらに阻まれて入手できなかった。
「……そんな御大層なもんじゃなく、普通にスーパーとかにも売ってたけどな……」
シャルロッテが何かボソッと呟いた。
「シャルロッテは東国出身なんだね」
「え、あ、う~ん、まあな」
シャルロッテが何故か口籠る。
「材料の…小豆と餅米なんかを東の国々と交易しててさ、手に入れられたから、作れるかなあって」
「えっ!?シャルロッテが作ったの!?」
僕は尊敬と羨望の眼差しでシャルロッテを見た。すごいすごいすごすぎるっ。
シャルロッテは僕を見て吹き出し、「めちゃくちゃキラキラした目してるなあ」と呟きながら、『おはぎ』をひとつ手に取ると、僕の口の前に差し出した。
「ほら、あーん」
僕は反射的に口を開けようとして、王子の言葉をふと思い出した。
―――お菓子を食べさせられるのも、俺以外の奴としないでね。誰かに触らせるのもダメだ。
こ、このまま口の中に入れてしまいたいっ……!
けど、この状況で食べたらダメだよな。しかも今腰とか脚とか撫でられまくってるし。
僕は慌ててシャルロッテの手を押し返し、欲望と闘いながら、言った。
「いや、自分で食べるから大丈夫。ありがとう。……それより、恥ずかしいから降りるね」
僕はシャルロッテの肩に手を置いて、彼の膝の上から降りようとした。だが、シャルロッテは僕の腰を掴んで離さない。
「いいから、いいから。はい、あーん」
シャルロッテはニコニコしながら、強引に僕に『おはぎ』を押し付けてきた。唇にふれる。ううっ。
いや、この状況で甘味を拒絶するのは僕には無理だ。ちょ、ちょっとだけ…
僕は心の中で言い訳をしながら、シャルロッテの指につままれた『おはぎ』を一口齧る。
お……美味しい……!!
もちっとした食感の餅と、あんこのほんのりとした甘さが絶妙に調和している。はじめて食べたが、やみつきになりそうだ。
「どうだ?」
「うん。美味しい……」
僕は感動に打ち震えていた。
「そうか。良かった」
シャルロッテは安心したように微笑むと、「カミル、最近元気なかったもんな。ちょっとは元気出た?」と聞いてきた。
「うん。……ありがとう」
僕はシャルロッテに心からお礼を言った。甘いお菓子も嬉しいけど、僕のことを気にかけてくれるその気持ちが嬉しくなる。
「もう一個食べるか?」
シャルロッテは僕の口に『おはぎ』を近づけてきた。僕はもう抵抗せず、素直に口を開けた。シャルロッテの指先が口の中に入ってくる。
「んー…」
僕が一口齧ると、シャルロッテが指を引き抜こうとするので、僕はそれを追って舌を這わした。シャルロッテがびくっとして、指を引っ込めようとする。
「な、何してんの?」
「ん……甘いから……」
僕はそのまま彼の指に舌を絡め、丁寧に舐め続けた。甘くて美味しいので、口の中に入れたまま吸い付いてしまう。シャルロッテが変な顔をするので、僕は指を咥えたまま、上目遣いで彼を見た。どうしたんだろう。
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