転生してませんが、悪役令嬢の弟です。

フジミサヤ

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22 悪役令嬢に問い詰められる。

     
 アリシアが眉を吊り上げて詰め寄ってきた。
 ここで王子にされていることはアリシアには秘密にするよう王子に口止めされている。それはつまり、婚約者には言えない行為を僕はイロイロされているということだ。
 僕は冷や汗をかいた。

「何って、お菓子食べたり、お話したり……してました」
 僕は慎重に言葉を選んだ。嘘はついていない。

 僕の返答を聞いてフランツが「コレ何…?正妻と愛人の戦い?双子で1人の男取り合うってもしかして昼ドラ?古くない!?しかしレオの奴、マジか。下道だな。こっそり何やってやがんだ。やっぱりカミル餌付けしてんのか。うらやま……」と小声でブツブツ呟いていたが、アリシアが睨むと黙った。

「殿下はあんたからの好感度上げるために意図的にここに呼び出してたと思うのよね。殿下を締め上げたけど、抵抗されて全部吐かなかったわ。
 この間も聞いたけど、カミル、あんたほんとにそれ以上殿下に何もされてない?されてるでしょ?」

 アリシアが王子を締め上げたとか怖いことをサラッと言ったが空耳だろうか。何かされている前提でアリシアの質問が続く。

「な、何もされてない」

 僕は口笛を吹きながら、明後日の方角を見た。言えるわけがない。会うたびに後ろを弄られてるなんて。

「カミル、その誤魔化し方古すぎてダメなやつだから」
 フランツがボソボソ僕に忠告してきたが、眉間に皺を寄せたアリシアの視線に気が付き、再び黙り込む。


「お菓子くれるからってノコノコついて行って、変な要求に従ってたりしないでしょうね?」

 アリシアが腕組みをしたまま、ギロリと僕を睨みつける。
 僕は思わず後ずさり、視線を逸らした。

「そ、そんなことしてない」

 王子からは毎回甘いお菓子を与えられるが、そのために会っている訳じゃない。お菓子を貰えるから、彼に従っている訳じゃない。 


 でも、王子はそう思ってないかもしれない。
 僕を従わせるために、甘いものをくれるのかもしれない。
 胸が苦しくなり、涙が出そうになる。


 アリシアは僕の態度を見て、額に手を当て、ため息をつく。
   
「分かったわ。とりあえず、先にこの男を問い詰めるわ」

 そう言うとアリシアは、脛を撫でながら地面に座りこんでいたフランツの襟首を掴み上げ、彼を無理矢理立たせた。
「ぐえっ」
 フランツが苦しげな声を上げる。

「なんで、あんたは『シャルロッテ』としてこの学園に編入してきたのよ」
「……それこそ、レオに聞いてくれよ。俺はレオに命じられただけだ。『シャルロッテ』に成り代わって、この学園に編入しろって」

「……どういうこと?意味分かんないんだけど」
「よく分かんねーけど、『シャルロッテ』は学園に編入させる必要がある、ただ本物の『シャルロッテ』は編入させたくない、だから偽物を用意する必要があった、としか」
 フランツはぶすっとして答えた。

「あ、あの」
 二人の会話に割り込むように、僕が恐る恐る手を挙げた。

「……本物の、シャルロッテはどこにいるの?その、僕2年生のアロイスに『シャルロッテ』はレオンハルト殿下の管理下にいるって聞いて…、もしかして、それって本物の…?だとしたら……」
 僕は不安になって声が震えてしまう。

「あー、まあ、そうだな。本物の『シャルロッテ』ちゃんは、レオが保護している」
 フランツが気まずそうな顔をした。
 アリシアは険しい表情をしている。

「殿下が転生者だとすると、『シャルロッテ』が学園に編入するのを嫌がった理由は、さしずめ彼女を他の攻略者たちに会わせたくなかったからってことかしら。ホントに独占欲強いわね、あの男」
 アリシアが忌々しげに舌打ちした。
 
 僕はショックで固まってしまった。
 やはり、レオンハルト殿下の大事な人は本物の『シャルロッテ』だったのだ。

「まあ、エルスハイマー男爵家周囲の動きが怪しいって理由もあるし、『シャルロッテ』自身の言動もおかしくて、何か問題起こしそうだから保護したってのもあるみたいだけどな。さっきカミルが言ってたアロイスから聞いた話だけど」
 フランツが付け加える。
 
「あの、アロイスは無事なの?連絡とれなくて…彼は何か罪を犯したの?……」
 僕は心配になって、フランツに訊いた。

「さあ?俺も何やらかしたか詳しくは知らないけど、レオの逆鱗に触れたらしくて、今は馬車馬のように働かされてるらしい。とりあえず生きてるよ。まぁ、調子に乗ってたからなあ」
 フランツが苦笑しながら答えた。

「そっか、生きてるなら良かった」
 僕はホッと胸を撫で下ろした。

「アロイスは、レオンハルト殿下の大事なものに手を出そうとしたとかで、殿下が怒っているみたい……」
 僕は説明しながら、項垂れる。王子にとって『シャルロッテ』は、やはり特別な存在なのだろう。


「……ねえ、カミル。ちょっと確認したいことがあるんだけど」
 アリシアが真面目な顔で、僕の方を見る。

「あんた、あの頭フワフワお目々パッチリ魔術師団長の息子から何かされた?されてるでしょ?」
 先ほどと同じ質問をされ、僕はギクリとした。

「な、何もされてない」

 僕は同じように口笛を吹きながら、明後日の方向を向いた。
 アロイスからは、限定品ケーキ『白雪姫』をダシにして、アチコチ舐められたり、触られたりしたが。
 なんか、それを伝えると、アリシアからものすごく怒られそうな気がする。


「……」
 アリシアが無言になった。

「カミル、正直に言いなさい」
「本当に何もされてないからっ!」

 僕は必死に首をブンブン左右に振って否定した。


「……そう。まあ、いいけど。今のところ、客観的にみて『シャルロッテ』は本人たちの意思はどうであれ、王太子ルートに入ってるわ。この場合、私に婚約破棄告げるのも、処刑するよう命じるのもレオンハルト殿下よ。ついでにうちの実家の取り潰しとあんたの娼館行きを命じるのもね」
 アリシアが苦々しげに言った。

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