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必要な力

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「リョウナっ」
 すぐにディールが飛び出して、私が飛んで行った先に立って、両手で受け止めてくれた。
 ぎゅうっと、そのまま、強い力で抱きしめられる。
「俺は、怪物だと言われるほどの力が、怖い。怒りに我を忘れて誰かを傷つけるんじゃないかと……それでも、もっと強くなりたいと、もっともっと強くなりたい、力を手に入れたいと心が燃えるように熱くなって、苦しくて……」
 苦しいんだね……。そう、きっとずっと苦しんでたんだ。
 誰が、ディールに怪物なんて言ったんだろう。
「ヒーローにも、力が必要なんだよ」
 すっと両腕を伸ばして、ディールの背中に回した。背負われていた時も思ったけれど、ディールの体はとても鍛えられている。手で触れると、背中にもしっかりと分厚い筋肉がついている。
 なんか鎧だとかは、私が背負われて不快そうだとわざわざはずしてくれたんだよね。本当、親切だし、気遣いもしてくれるいい人だよ。
 それに、パズ君はディールさんのこと大好きみたいだし。子供の顔を見ればわかるよ。子供はひどい扱いをされれば表情が曇るもの。パズ君の表情は明るかった。しゃべれなくても、それでも、ディールさんと楽しそうに「会話」できてたもの。
 ぽんぽんと、小さくディールの背中を叩く。子供をあやすみたいな動きになってるなぁとは思ったけれど。
 私よりずっと大きくて強いディールが、子供みたいに感じて。
「悪い人が、もしすごい力を持っていて、世界征服しようとか、人を皆殺しにしようとか、ひどいこと始めた時に、それを助ける人にも力が必要なんだよ。誰かを助けるために……ディールはもっともっと強くなっていいんだよ」
 ディールさんの背中の力がふっと抜けたのが分かる。
「誰かを、助けるための力……?」
「そう、うーんと、私を、助けてくれたでしょう?ウルビアから守ってくれたでしょう?」
 ディールの腕の力も緩み、ずっと抱き上げられていたけれど、やっと地面に両足が付いた。
 体を離したディールが、私の腕をつかんで顔を覗き込む。
 じーっと、ディールが私の顔を覗き込んだまま、固まっている。
 ああ、こうしてみると、ディールってイケメンよねぇ。
 月の精のような、キラキラ系白馬の王子様系イケメンとは違って、戦士系イケメン。
 彫が深くて、こってりした顔なのに、目鼻立ちがとっても整っているから、くどさは感じない。顎は割れてないけれど、細すぎないし。
 って、何をじっくり観察してるんだろう。
「あのね、えーっと」
 急に見つめ合ってる状態だということに気が付いて、恥ずかしくなって慌てて口を開く。


=================

??「力がほしいか……」
ディール「うううっ」

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