婚約者に売られ子供ができたけど、訳あり元騎士様が代理パパになってくれたので幸せです

富士とまと

文字の大きさ
15 / 94

15

 勝利を導いた公爵家の次男フェランディオル・ブライサス様は英雄と賞され、国中がフェランディオル様フィーバーに沸いた。
 私はと言えば、もしかしたら戦争から生きて戻ってきた一夜の花嫁のあの人が私を探すかもしれないと、師匠の宿を訪ねてくる人がいないか何度も確認したんだよね。
 結果、兵たちが引き挙げてきた後3か月たっても、誰もあの宿を人を探して訪れる人はいなかった。
 単にあのことは忘れてしまったのか。本当に一夜の思い出として興味がないのか。
 それとも、2年も前のことだから、新しい人生を歩んでいるはずの女性に迷惑をかけたくなかったか。
 ――戻ってこなかったか。
 チクリと胸が痛む。生きていてほしい、そう思った一夜。ただ、それだけを願った一夜だった。
「モテるというよりは、餌扱いだね、あれは。猫に追いかけられるネズミの気持ちだったよ」
 想像して思わず笑ってしまった。
「安心してください。ギルドだと、ネズミは相手にされません。猫はライオンを手に入れようとしますから」
「ふっ。うまいことを言うね。ここでは顔がいいよりも腕っぷしがいい方がモテるってことかな?」
 自分で顔がいい自覚はあるんだ。いや、まぁ、それで苦労してれば自覚せざるを得ないということかな。
「強い男がモテますね。見た目で言えば、頑丈そうなタイプですかね。だから、貴族社会ではつまみ出されるようなギルド長のような人間もモテモテですよ。口が悪くて足が臭い男でも」
 がしっと頭をわしづかみにされる。
「ほほー、残業はしないくせに、俺の悪口言うためには残るのか?」
 ぎりぎりと閉められる頭。
「いたた、ギルド長っ!違いますよ、冒険者登録に来たから、残業して受付してるんですっ」
 私の言葉に、エディが申し訳なさそうな顔をした。
「すまない、僕のせいで残業させてしまったんだ」
「いえ、問題ないですよ。ちゃんと残業代貰うんで。では、登録手続きしますね。説明は必要ですか?」
 と、この説明……私はアイシャさんにつられれて登録したから聞いてなかったんだよね。
 アイシャさんから聞いてるだろうと思われていたようで。
 ギルドで働くようになって、初めて知った。
「はい、何も知らないのでお願いします」
「登録した人間は鈍色級となります。依頼をこなし、実力をつけていくことで、ランクが上がっていきます」
 鈍色、銅色、銀色、金色、プラチナ、ミスリルと。
 銀色まで行ければ冒険者として食うに困らず、家族を養い、貯金をして引退後も生活できると言われている。
 金色で一流。プラチナは国内でも数えるほどしかいない、超一流。そして、ミスリル級は、今は国内に2名のみ。別の国ではS級と呼ばれることもある、トップオブ冒険者だ。
「そうなんだ。えーっと、腕にはちょっと自信があるんだけど、飛び級とかできないのかな?」
 ヒュンッと風きり音がしたかと思うと、ギルド長の短剣の先がエディさんの目の前に突き出された。
 エディさんが剣の鍔でそれ以上前に出るのを制止している。
 ……ということがたぶん私のすぐ目の前で行われた。
 まったく見えなかった。
 ほら、私、身体強化はできるけど、もともとの身体能力なんて人並……いや、冒険者以下の令嬢だからさ。
 目を強化すれば見えるけど、受付やってるときに強化なんかしているわけもなく。
 見えなかった。
 いや、見えるはずないんだよねぇ。
 ギルド長のガルドさんって、若いのにギルド長なのは、何も冒険者に一目置かれるアイシャさんの孫だからと言うわけでなく、国内に2名のみしかいないミスリル級の一人なんだよ。
 そのギルド長の動きがE級冒険者の私ごときに見えるわけがない。
 ギルド長がカウンターから乗り出すようにエディさんの顏に顔を近づけた。
 短剣はそのままエディののど元に向けたままだ。
「ちょっとはできるようだな。兵、いや騎士でもやってたのか?それが冒険者になろうってのは、訳ありだろう」
 ああ、なるほど。貴族に見える上に腕に自信があるなら確かに騎士の可能性は高い。あとは兵でも上の方の立場。隊長だとか団長、もしくは将軍に近い補佐官とか?
 エディさんはギルド長ににらまれているというのに一歩も引かない。
 冒険者の大半は、あの圧に負けて目をそらしたり震え上がったりするというのに。すごい胆力。



============
すいません、執筆失敗してキャラの名前……だめだめです。
ときどきシャリアとアイシャを間違えておりますが、ご容赦ください……( ノД`)シクシク…
見つけたものはかきなおしてありますが、まだ間違いが落ちてる気がする……
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】帳簿係の地味令嬢、商会の不正を見抜いて王宮に見出されました。

夏灯みかん
恋愛
王都の商工会議所で働く、地味な帳簿係エミリー。 真面目に記録をつけることだけが取り柄の彼女は、同僚から軽く扱われ、雑用を押しつけられる日々を送っていた。 そんなある日――エミリーは、孤児院への配給物資の記録に、わずかな“ズレ”があることに気づく。 数量は合っている。 だが、なぜか中身の重量だけが減っている。 違和感を覚えたエミリーは、自ら倉庫へ足を運び、現物を確認する。 そこで見つけたのは、帳簿では見えない“静かな不正”だった。 しかしその矢先――不正の責任を押しつけられ、職場から追い出されそうになってしまう。 それでもエミリーは諦めない。ただ一つ、自分が積み上げてきた“記録”を信じて。 「では、正式な監査をお願いいたします」 やがてその記録は、王宮の政務監査官リオンの目に留まり―― 隠されていた不正はすべて暴かれる。 そして、彼女を軽んじていた者たちは、その代償を支払うことになる。 これは、地味で目立たなかった一人の帳簿係が、 “正しく記録した”ことで不正を暴き、王宮に見出されるまでの物語。

生贄として捧げられた「忌み子」の私、あやかし皇帝の薬膳料理番になります ~呪いで拒食症の白虎陛下は、私のおかゆに胃袋を掴まれたようです~

腐ったバナナ
恋愛
実家の「一条家」で霊力なしの忌み子として虐げられてきた凛。生贄としてあやかしの国・天厳国へ捧げられた彼女を待っていたのは、呪いによって食事がすべて「泥の味」に変わる孤独な白虎皇帝・白曜だった。 死を覚悟した凛だったが、前世で培った「管理栄養士」の知識は、あやかしの国では伝説の「浄化の力」として目醒める! 最高級の出汁、完璧な栄養バランス、そして食べる者を想う真心。凛が作る一杯の「黄金の粥」が、数年間不食だった王の味覚を劇的に呼び起こした。 「美味い。……泥ではない味がする」 胃袋を掴まれた皇帝の態度は一変。冷酷な暴君から、凛を誰にも触れさせたくない「超絶過保護な独占欲の塊」へと豹変してしまい……!? 嫌がらせをする後宮の妃や、手の平を返して擦り寄る実家を「料理」と「陛下からの愛」で一掃する、美味しくて爽快な異世界中華風ファンタジー。

「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした

ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?  ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

【完結】「まずい」と騒ぐだけの毒見役は不要だと追い出されましたが、隣国王子の食卓を守ったら手放してもらえなくなりました

にたまご
恋愛
「穢れた血の孤児が王族の食に触れるな」 七年間、王宮の毒見役として「まずい」と言い続けた少女は、ある日追い出された。 誰も知らなかった。彼女が「まずい」と言うたびに足していた調味料が、食事に混ぜられた毒を中和していたことを。 辿り着いた国境の村の宿屋で、フィーアは初めて自分の料理を作った。 毎日通い詰める無口な旅の商人は、体調が悪そうなのに、フィーアの料理だけは「美味い」と言ってくれて—— 彼の銀杯のワインを一口もらった時、フィーアの舌が反応した。 「……にがい」 ※短編完結/追放/ざまぁ/溺愛

平凡な令嬢と平凡じゃない友人たち

ぺきぺき
恋愛
身分問わず優秀な学生が通う、王立学園。その中で目立たない茶髪にハシバミ色の瞳を持ち、真ん中よりちょっと下くらいの成績の、平凡な伯爵令嬢であるはずのセイディ・ヘインズはなぜか学園の人気者たちに囲まれて平凡ではない学園生活を送っていた。 ーーーー (当社比)平凡なヒロインと平凡じゃない友人たちが織り成す恋愛群像劇を目指しました。 カップル大量投入でじれもだラブラブしてます。お気に召すカップルがいれば幸いです。 完結まで執筆済み。 一日三話更新。4/16完結予定。

必要とされなくても、私はここにいます

あう
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスのもとへ嫁ぐことになったフィレ・バーナード。 けれど彼女は、理想の妻になろうとも、誰かの上に立とうともしなかった。 口出ししない。 判断を奪わない。 必要以上に関わらない。 ただ静かに、そこにいるだけ。 そんな彼女の在り方は、少しずつ屋敷の空気を変えていく。 張りつめていた人々の距離はやわらぎ、日々の営みは穏やかに整いはじめる。 何かを勝ち取る物語ではない。 誰かを打ち負かす物語でもない。 それでも確かに、彼女がいることで守られていくものがある。 これは、 声高に愛を叫ばなくても伝わる想いと、 何も奪わないからこそ育っていく信頼を描く、 静かでやさしい結婚生活の物語。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される

木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。 婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。 やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。 「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。