婚約者に売られ子供ができたけど、訳あり元騎士様が代理パパになってくれたので幸せです

富士とまと

文字の大きさ
26 / 94

26

 エディさんは無言だ。
「依頼中に冒険者が亡くなることはゼロではないの。……だから、3か月ごとの連絡がない場合は、依頼中に何かあったと判断するんです。生きているのか死んでいるのか分からないままずっと依頼主を待たせることはギルドではできない」
 エディさんは何を考えているのか分からないけれど、たぶん戦地でも似たようなことはあったんじゃないかな。
「もちろん、生きて帰ってくることを諦めるということではないけれど、期限を設けることで新しく物事を始めることができるようにと……」
 ぎゅっと拳を握り締める。
「だから、エディさんも……期間を決めて、その期間の間に会えなかったら振られたってことにしたらどうでしょうか?」
「は?」
 いや、私もだんだん何を言っているのかって話なんだけど。
 だけど、私はそうした。
 戦争が終わって次々と兵が引き挙げてきて。
 もしかしたらアイシャさんの宿に一夜の花嫁を探してヒガナカさん……彼が来るかもしれないとアイシャさんに確認していた。
 ジャンのことも伝えなければいけないかと。
 ジャンだって、父親に会いたがる日が来るかもしれないし……と。
 だけど、戦争が終わって、兵が引き挙げてきたと聞いて1か月たっても、2か月たっても、3か月たっても、一夜の花嫁を探す人は現れなかった。
 もしかしたら、怪我の治療ですぐには来られないかのかもしれないと思ったりもした。
 もしかしたら、今日こそ現れるかもしれない。もしかしたら、もしかしたら……と。
 一生、死ぬまでもしかしたらを繰り返すの?とある時思った。ジャンに、父親がもしかしたら現れるかもしれないって期待して、期待が外れてを繰り返させるの?
 そう考えたら、なんて残酷なんだろうって。
「……私は、息子の父親のことは……待つのを辞めました」
 エディさんがひゅっと息をのむとともに、ビュンっと跳躍して現れたレッドウルフを2体倒した。
 速っ。
 エディさんがなれた手つきで魔石と尻尾を回収する。
「すまない……。辛いことを思い出させてしまった」
 いや、辛くはない。正直生きてるといいなぁと思ってはいるけど、会いたいというわけではないから。
「期限を設ける……か。確かに、そうなのかもな……」
 尻尾を握り締めたまましゃがみ込むエディさん。
 ちょっと出すぎたことを言ってしまっただろうか。
「ごめんなさい、私こそ。大切な人を失った悲しみは人それぞれなのに……」
 エディさんが振り返った。
「危ないっ」
 声に振り返ると、またレッドウルフが私に向かっていた。
 箒で叩くのとエディさんが私を抱えて後ろに飛ぶのと同時。
「あれ……」
 今度はさっきよりも余裕があったため、エディさんが転がることもなくそのままレッドウルフに視線を向けたまま私を後ろから抱えて呆然としていた。
 いや、ちょっと、大丈夫だから、手を、手を放して……。
「もしかして、シャリアさん……が、さっきのレッドウルフも、今のレッドウルフも倒したの?」
 エディさんの腕から力が抜けたところで、するりと抜け出す。
「はい。もちろんです。指導役ですよ?新人冒険者がいざという時に助けられるようについてきているんですから」
 何を今さら?と首を傾げる。
「えーっと、シャリアさんは鈍色冒険者でしたよね?」
 なぜかエディさんも首を傾げる。
 ん?あれ?この首の傾げ方、誰かに似てる。
 いや、首なんて誰でも同じようにかしげるはずなのに、何言ってるんだろう?
「はい。この依頼が終われば、銅色に昇級予定です!登録してから3年絶ってますし、エディさんよりだいぶ先輩ですよ?」
 エディさんがあーっと天を仰いだ。
感想 1

あなたにおすすめの小説

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした

ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?  ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。 そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。 真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。 けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。 「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」 彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。 アンリは実は、亡き国王の婚外子。 皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。