三年分の記憶を失ったけど、この子誰?

富士とまと

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 私が、大切なネックレスを売るわけはない……盗まれたり無くしたりするようなへまもしない。
 クローゼットの床板の下に、きんちゃく袋に入れた青い宝石のついたネックレスが出てきた。
 ネックレスを取り出しても巾着のふくらみがまだ残っている。
 手を入れて取り出すと、青く染めた石のついた指輪が出てきた。
「これって……!騎士が探していた指輪……!なぜ私が持っているの?」
 どうしたらいいのだろうと思ったけれど、それよりも気になるものがもう一つ。
「そうだよね。私……」
 分厚い本を1冊取り出す。
 本ではない。日記帳だろう。
 だって、私が書かないわけがない。
 ぺらりとめくると、やはり見慣れた私の字で文章が書かれている。
 それも、何か国もの単語をごっちゃ混ぜにして書いてある。
「人に見られたら困る内容であることは明らか……だよね」
 それでも書かずにはいられなかったのか。そして、厳重に隠しもっていた。
 きっと、取り出したりしまったりしているのをルゥイは見ていたのだろう。それを覚えていて、教えてくれたのだ。
 読むのが怖い。
 失った3年間の間に何があったのか、知りたいけれど、知るのが怖い。
 震える指で、文字をなぞる。
「マー、マ」
 ルゥイが私の膝の上に載って、本を覗き込んだ。
 これは絵本じゃないのよ?と頭を撫でて、日記に視線を戻す。
 1ページ目、2ページ目は、その日何を食べたとか、何が美味しかったとか、たわいもないことが書いてある。
「私のことだ、これは何でもないことが書き綴られた日記だと思わせるためのダミーよね……」
 私なら、ダミーを10ページは続ける。読んだ人が飽きるような内容に……。
 ペラペラと内容も確認せずに10ページほどめくる。
 あ……。
 そこにも初めの3行ほどは天気や食べたものについて書いてあった。けれど……。その先からは「本当の日記」になっていた。
 いえ、これは本当の日記なのだろうか?
 創作……?
 プルプルと小さく体が震える。
『一人で産んで育てる決心をしたけれど、本当に私にできるだろうか。不安だ』
 日記にはそう書いてある。
 一人で、産む?
「マー?」
 膝の上のルゥイが私の動揺を感じ取ったのかこてんと首を後ろに倒して私の顔を見た。
「ああ、ルゥイ……ルゥイ……あなたは私の子……本当に、私が産んだ、私の……子なのね?」
 この無限にこみあげてくる愛しさ。
「ルゥイ……」
 ぎゅっと抱きしめると、ルゥイが身をよじる。
「たいのっ!」
「あ、ごめん、痛かった?ごめんね?」
「ちあうの、たいの、たいの!」
 ん?ルゥイが日記帳をポンポンと叩く。
「もっと読みたいの?」
 まだ2歳になるかならないかのルゥイが文字を読めるわけはない。
 でも、日記帳のページをめくれと要求する。
 何だろう?
 読み進めるのを中断してパラパラと先のページをめくる。
「あ……」
 へたくそな絵が描かれている。
 ふっと笑ってしまう。

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