姉から始まる魔法少女

大崎 狂花

文字の大きさ
13 / 27

第十二話 瑠璃とアンチ(?)の子供①

しおりを挟む
「ふはははは!!やはり人間如きでは我に敵わないのだ!!素晴らしき叡智と力を持つ、この魔獣たる我にはな!!」

瑠璃の目の前で、魔物は高笑いしてそう叫んだ。

今、瑠璃はスーパーの中にいる。そして、言葉を喋るイノシシのような魔物と対峙していた。スーパーは魔物のせいでけっこう被害を受けてしまっていて、商品棚が倒れたり、商品が踏み荒らされたりしている。瑠璃は2本のペットボトルを持ち、その中の水を氷の剣にして戦っている。

突然にスーパーを襲撃したこのしゃべるイノシシの討伐のために、瑠璃は緊急招集されたのである。一番近くにいてすぐに動ける者が瑠璃しかいなかったため、現在瑠璃1人でこの討伐の任務を行なっていたのである。

幸いにも被害者は出ず、もうすでに客も店員も全員避難したため、店内はもぬけの殻となっていた。

瑠璃はこのイノシシの鼻にバツ印に2本の傷を負わせたが、瑠璃もイノシシの突進を受けけっこうなダメージを負ってしまい、さらに壁際に追い詰められて、窮地に陥っていた。

イノシシは高笑いして言う。

「力はもとより、知恵すら我には到底勝てぬ。やはりこの世界を統べるにふさわしいのは我しかおらぬのだ!!お前の氷と水の魔法も、所詮は我ら魔物の真似事に過ぎぬしな。我らの魔法には遠く及ばぬものでしかなかったぞ。残念だったな!!ふはははははは!!」

だが、高笑いするイノシシに向かって瑠璃はニヤリと笑うとこう言った。

「おい、イノシシ野郎。お前、まだ自分が『追い詰めた側』だと思ってるのか?」

「なんだと?」

「俺は戦いながらお前を誘導していたんだよ。そう、スプリンクラーの下へなあ!」

瑠璃はここに来て2本のペットボトル剣を捨て、魔法少女ステッキに武器を切り替えながらそう叫んだ。

「スプリンクラー・・・・・・だと?それは一体なんだ?」

「そうだなあ、お前にもわかりやすくいえば・・・・・・自由に雨を降らすことの出来る機械、といった感じだな」

「な!?」

イノシシ野郎は慌てて天井を見た。

(くっ、雨を自由に降らす機械だと!?それはマズい!いくらあいつの魔法が稚拙だからとはいえ、油断したところに直撃を喰らえばひとたまりもないぞ!?)

イノシシは少し焦りつつも、同時に侮りを抱いていた。

(・・・・・・だが、やはり所詮は愚かな人間よ。それをわざわざ我に話し、不意打ちの機会を自ら手放すとは!所詮我が叡智には敵うべくもないか─────)

イノシシは鼻の先に魔力を収縮させていく。魔力弾を撃つことで、瑠璃が使ってくるであろう雨を利用した魔法攻撃を吹き飛ばそうとしたのだ。

「残念だったな人間よ!!お前は我に迎え撃つ隙を与えてしまったのだ!この我には人間如きの弄する策など─────」

魔力弾を撃つ準備はもうすでに完了していた。イノシシは瑠璃に向かって叫び、上を向きながら瑠璃の攻撃を吹き飛ばす気満々でいた─────。

そのイノシシの首を、グサリと。

下から伸びてきた氷の牙が刺し貫いた。

「グアッ・・・・・・!?」

その氷の牙はイノシシの首、喉笛の辺りを完全に刺し貫いた。イノシシは白目を剥き絶命する。

瑠璃は、その倒れ伏し血の池を作るイノシシに向かって淡々と言った。

「・・・・・・嘘だよ」

イノシシが見上げていた天井、そこには元からスプリンクラーなどなかった。

「漫画とかラノベじゃねえんだ。戦いながら狙った位置に誘導、なんて器用なこと出来るわけねえだろ。このスーパに来たのは初めてで、スプリンクラーの配置なんて頭に入ってるわけねえんだしさ。・・・・・・俺はただ、お前に上を向かせたかっただけだ。上を向かせることで、その首元を晒させたかっただけなのさ。突き刺しやすいようにな」

瑠璃は倒れたイノシシに近寄り、確かに死んでいることを確認してから、こう呟いた。

「なまじ知恵をつけたのが敗因だったな。こっちの言ってることがわからなきゃ、この作戦は使えなかったわけだし」

瑠璃はイノシシの死体から離れ、壁にもたれかかって座り込むと、スマホを取り出して退治完了の電話をかけるのだった。



瑠璃はセカンドの担当職員たちが来て、スーパーの壊れた棚や壁などを補修したり、ダメになった商品を補填したりするのを眺めていた。

「それでは、私はここで失礼します。あとのことはよろしくお願いします」

瑠璃は頭を下げ、担当職員のリーダーへ言う。リーダーは帽子を取り、少し慌てたように答えた。

「こ、これはご丁寧にどうも・・・・・・頭を上げてください」

リーダーは内心で、まだ小さいのに出来た子だな・・・・・・しかし、小学生くらいの女の子にこんなふうに深々と頭を下げられるとなんか罪悪感が湧くぞ・・・・・・と思っていた。

「あとのことは私たちにお任せください。私たちがちゃんと元に戻しておきますので」

「ありがとうございます。すいません、ここまで荒らしてしまって・・・・・・」

「いえいえ、これでも綺麗な方ですよ。他の上級セカンドの方たちであれば、スーパーごとなくなっててもおかしくありませんから・・・・・・」

「そ、そうですか・・・・・・」

瑠璃はちょっと引いた。

とりあえず、瑠璃はその場を担当職員たちに任せて、スーパーを後にすることにした。

・・・・・・・

「怪我も大丈夫そうだし、今日はこのままこの辺りを見回っておこうかな」

イノシシ野郎の突進で受けた怪我の応急処置はもう済んでいた。魔法少女である瑠璃は体内に魔力を循環させることで回復力を強化する基本技能があるので、あの魔物の突進で受けた損傷、ダメージもかなり回復しつつあった。

と、いうことで瑠璃はここら辺りを見回っておくことにした。まだ多少ダメージは残っているので、そこまで激しい動きとかは出来ないかもしれないが、見回りぐらいなら出来るだろうと思ったのである。一度魔物が出たからといってこのあとはもう出てこないとは限らない。むしろ、このあと、魔物を倒せて危機は去ったと思っている油断した状態の時が危なかったりするのだ。だから、一流のセカンドは魔物を倒せた後も、こうして居残って見回りをしたりするのである。

だから、瑠璃も回復ついでにこうして見回りをしていた。

瑠璃はもう魔法少女の基本技能である超速着替えによる着替えを済ませていて、女児っぽい服装になっている。今日の格好はノースリーブのトップスにスカートという服装だった。

瑠璃としては、魔法少女の服装ではないので、ちゃんと周囲に溶け込めていると思っていたのだが、天使のように可愛い女の子が保護者も連れずに1人で歩いているのはなかなかに目立つ光景であった。

周囲の人が、声をかけようか、どうしようかと迷っているとはつゆ知らず、来たことのない街を物珍しげに見回しながら歩いていると、不意に後ろから声をかけられた。

「そこのあなた!ちょっと待ちなさい!」

瑠璃が振り返ると、そこには今の瑠璃と同じぐらいの背丈の、女の子が立っていた。

瑠璃に向かっておもちゃの剣を向けながら。

「・・・・・・なんだあ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

悪役令嬢と入れ替えられた村娘の崖っぷち領地再生記

逢神天景
ファンタジー
とある村の平凡な娘に転生した主人公。 「あれ、これって『ダンシング・プリンス』の世界じゃない」 ある意味好きだった乙女ゲームの世界に転生していたと悟るが、特に重要人物でも無かったため平凡にのんびりと過ごしていた。 しかしそんなある日、とある小娘チート魔法使いのせいで日常が一変する。なんと全てのルートで破滅し、死亡する運命にある中ボス悪役令嬢と魂を入れ替えられてしまった! そして小娘チート魔法使いから手渡されたのはでかでかと真っ赤な字で、八桁の数字が並んでいるこの領地収支報告書……! 「さあ、一緒にこの崖っぷちの領地をどうにかしましょう!」 「ふざっけんなぁあああああああ!!!!」 これは豊富とはいえない金融知識と、とんでもチートな能力を活かし、ゲーム本編を成立させれる程度には領地を再生させる、ドSで百合な少女の物語である!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...