姉から始まる魔法少女

大崎 狂花

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第十九話 瑠璃と潜入捜査⑥

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さて、夜。

瑠璃はこの任務のためにわざわざ借りた高校近くのアパートの部屋の中で、寝っ転がりながらスマホをいじっていた。

とりあえずこの任務のためだけに借りたので部屋の中は簡素で、家具は無く、身の回りの細々した物の他は布団が敷いてある程度である。電球のやや明るすぎる白々とした光が、殺風景な部屋の中を照らしていた。

瑠璃はその部屋のど真ん中に敷いた布団に寝っ転がりながらスマホで動画などを見ていたのである。ただ、そんなことをしていながらも魔力感知は働かせていて、何かあればすぐに動けるようにある程度の緊張感は持っていた。

「あー、この配信者、俺のこと話してくれてるな・・・・・・ちょっと褒めすぎじゃないか?・・・・・・まあいいや。あとでお礼も添えて引用リポストをしおいて─────」

と、瑠璃がそんなふうに割とぼーっとしていた時である。

「!」

それは突然だった。突然、高校の方から巨大な魔力の気配が膨れ上がったのである。

「これは・・・・・・!間違いない!魔物の気配だ!」

瑠璃は超速で変身してすぐ高校へと駆けつけようとした。しかし────

「消えた・・・・・・?」

変身しようと変身ポーズをとった状態のまま、瑠璃は固まってしまった。

瑠璃が変身する前に、その気配がすぐに消えてしまったのである。

瑠璃は慌てて高校とその周辺を探ってみた。しかし、全く気配が感じ取れなくなってしまった。

魔物は魔力を抑え、気配を分かりにくくすることは出来る。しかし、それでも全く気配を感じなくなるということはない。どこかへ素早く移動したか?いやしかし、それにしたってどんなに素早い魔物でも数秒はかかるはず。瞬間移動的な魔法を使うにしたって、魔法の準備をしてから発動するまでにも同じく数秒はかかるだろう。一瞬のうちに全く気配を感じられなくなるなんて────。

瑠璃はとりあえず変身するのはやめてそのままの状態で、超速で高校へ行った。そして、その場でも魔力の気配を探ってみたが全く感じ取れない。

今度は変身して、例の氷の円盤で空へ飛び上がって空から目視で確認してみたが、魔物らしきものの姿は少しも見えなかった。瑠璃は魔法少女だから、夜でもほとんど昼間みたいに見ることが出来るので、見落とすなどということはほぼない。魔力感知しつつぐるぐる飛び回ってみたが見当たらない。

「ままー、みてみて!UFOとんでるよ!UFO!」

高校の周辺にも居ず、高校の中にも遅くまで練習をしている生徒がちらほら居るほか、怪しげな影は見えなかった。

「ん?あれは・・・・・・猫飼さんじゃないか。こんな遅くまで猫を可愛がってるのか?」

ちょっと怪しげなものとして、猫飼さんがこんな遅くまで猫を可愛がってるのが見えたが、それ以外は何も怪しげなものは無かった。

さて、しばらくの間そうしていたがやがて空飛ぶ円盤を見に来た野次馬たちが写真を撮ろうとし始めたので、瑠璃は超速でアパートへと帰った。

そしてその夜は、ずっと徹夜で魔力感知を働かせて高校の方を探っていたが、あの時感じた気配は二度と現れることはなかった。

そして、魔力感知を働かせている間、瑠璃はずっと考えていた。

(現れてからすぐに消えた、魔物の気配。そして、猫っぽい目・・・・・・)

瑠璃は今までに得た情報を並べていく。

(それに、あの猫飼さん・・・・・・)

そして、瑠璃はパッと顔を上げて呟いた。

「うん。大体わかった・・・・・・かな?」

瑠璃はとりあえずある仮説を立てた。しかし、これが正しいという確証はまだない。これからも慎重に行動するべきだろう。

「まあ明日、試してみるか・・・・・・違ったら謝ればいいわけだし」

やがて夜も明けて、学校に行く時間になったので、瑠璃は徹夜明けの重い頭を無理やり叩き起こすためにコーヒーを流し込んで学校へと行くのであった。



放課後。

瑠璃はセイと2人で高校近くの商店街を歩いていた。瑠璃は授業中、少しうとうとしたので朝よりはいくらか頭もはっきりとしている。

「へー、昨日そんなことがあったんだ」

瑠璃は昨日あったことをセイに話した。

「んー、話を聞いても、やっぱり私にはどういうことだかさっぱりわかんないなー・・・・・・ごめんね?役に立てそうになくて・・・・・・」

「いや、大丈夫だ。情報収集とかも手伝ってくれたわけだし、セイは十分役に立ってるよ。・・・・・・で、まあとりあえずそういうことで、ちょっとやりたいことがあるから、日が暮れるまで待とうと思ってね」

「なるほど。それでこの商店街で時間を潰そうってことか」

そう、瑠璃は日が暮れて暗くなるまで、少し時間を潰そうと思ってこの商店街に来たのである。

「じゃあさじゃあさ!アオちゃん、この商店街に有名なカフェがあるらしいからさ!そこのケーキ食べに行こうよ!」

「喫茶店か・・・・・・そこって紅茶あるかな?」

「あると思うよ?」

「ふむ。それなら行こうかな・・・・・・いや待て。あそこにお魚屋さんがあるぞ?」

「アオちゃん、やっぱりまだ治ってないんだ・・・・・・」

と、瑠璃とセイがどこか時間を潰せるような場所を探していると、ふと子供が歩いているのが見えた。幼稚園生くらいの女の子だ。

その女の子はキョロキョロと不安そうな表情をして辺りを見回しながら歩いている。瑠璃がその子の周りを見てみたが親らしき人はいない。しばらく見ていたが、親のような人物が話しかけてきたりはしなかった。ひょっとすると・・・・・・

「なあセイ。ひょっとすると、あの子、迷子なんじゃないかな?」

瑠璃はセイに言った。

「んー・・・・・・確かに、なんか迷子っぽい感じだね」

「よし話しかけてみよう」

瑠璃はその子供に話しかけようとした。

「ねえ、ちょっといいかな?」

しかし、その子供は引っ込み思案な性格のようで、さっと素早く瑠璃の前から逃げると、近くの薬局にある、例のオレンジ色の象みたいなキャラクターの陰に隠れてしまった。

「あの・・・・・・」

女の子はそのキャラの陰から、警戒心たっぷりの目で瑠璃を見ている。下手に話しかけると大声を出されるか逃げられそうだ。

「ああー、アオちゃん、警戒されちゃったね」

「どうやらそうみたいだ。んー、困ったな・・・・・・」

どうしようか、と瑠璃は少し考えて、その女の子の髪型がツインテールであることに気がついた。

「よし、じゃあこうしよう」

瑠璃はちょっとセイの後ろに隠れて、何事かをしていたが、やがてまた女の子の前に出てきて

「じゃーん」

と言った。さっきまでとは瑠璃の姿が少し変わっている。

「あっ!」

それを見た女の子は、その象のキャラクターの陰からとてとてと歩み出てくると、瑠璃の頭を指差して言った。

「おそろい!」

そう、瑠璃はその女の子の髪型がツインテールであることに気づいて、髪型を同じツインテールにしてみたのである。

「うん、君のが可愛かったから、お姉ちゃんもおんなじ髪型にしてみたんだー」

「おねえちゃんのもにあってるよ!かわいい!」

「ふふ、ありがと」

瑠璃のこの機転でなんとなく和んで、女の子の警戒心も解けてきた。そしてセイは

「うう・・・・・お揃い、尊い・・・・・・」

となんかもう息も絶え絶えな感じになっていた。

瑠璃はその女の子から話を聞いた。

「きづいたら、おかあさんがいなくなってたの」

そうその女の子は言った。どうやら迷子で間違いはないみたいだった。

「よし、なら探してあげよう」

瑠璃はそう言った。

「セイも、それで構わないか?」

「うん、私は大丈夫だけど・・・・・・えと、アオちゃんは大丈夫なの?探してるうちに時間がきちゃったりするんじゃ・・・・・・」

「いや大丈夫だ。まだ時間はあるよ」

瑠璃はスマホで時間をチェックしてからそう言った。

そして、こう付け加えた。

「それに、こうやって人の手助けをするのも、セカンドの仕事だと思うからね」

それから瑠璃とセイはこの女の子のお母さんを探すのを手伝った。その子の母親は意外とすぐに見つかった。どうやらそんなに離れてはいなかったようである。

「本当に、ありがとうございました」

瑠璃とセイはその子の母親からお礼を言われた。瑠璃とセイの2人は、そんなに大したことはしていない、当たり前のことをしたまでだと言ったが、その子の母親はいえいえ、非常に助かりましたと言って、2人にこの商店街にある喫茶店の割引券をくれた。

「じゃあねー、おねえちゃんたち!またあおうね!」

瑠璃とセイは、笑顔で手を振る女の子に、笑顔で手を振り返すのだった。

・・・・・・

さて、無事迷子の女の子を母親のもとへと送り届けられた。しかし、日が暮れて暗くなるまでにはまだ時間がありそうだったので、瑠璃とセイは割引券をもらった喫茶店に入って談笑していた。セイはカフェオレ、瑠璃はもちろん紅茶を頼んだ。

瑠璃は、熱い紅茶を冷ますために、ちょっとの間ソーサーの上に置いたままにして話した。

「私はセカンドにとって一番大事なことは、魔物を倒すことじゃないと思ってるんだ」

「え?そうなの?」

「うん。まあ確かに、魔物を倒すことも大事だ。それもかなり大事なことなんだけど・・・・・・一番大事なことは、それじゃないと思うんだ。セカンドにとって一番大切なことは、人々の笑顔を守ることだと思うんだよ。それが一番大切なことだと思うんだ」

瑠璃はそう言った。そして笑った。

「って、なんか語っちゃったね。いけないいけない。これじゃもろ後輩にクサいことを語る先輩だよ」

そう言って瑠璃は笑ったが、セイは真っ直ぐな表情で言った。

「ううん、そんなことないよ。とっても素敵で大切なことだと、私も思うよ!」

そう言うセイに、

「あはは、ありがとね」

瑠璃は笑ってそう答えると、熱い紅茶をふーふーと冷ましてから飲むのだった。
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