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プロローグ

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街中で道行く人々の注目を集めてる二人組がいた。

一方は看板を持ったウェイトレス風の格好をした女の子。きっと呼び込みでもしてるんだろう。

もう一方はくすんだ金髪、毛先の方が茶色になってる金髪を、襟足が伸びたままのショートカット、ウルフカットというヤツにして、耳元にはピアスを開け、ボタンを開け胸元をはだけた白いシャツにスキニージーンズといった格好の一目で遊んでそうだなとわかるお姉さんだ。

どうやらそのお姉さんがウェイトレス風の女の子に迫っているらしい。

「一回だけ一回だけでいいから!」

「い、いや困ります・・・・・・」

「この女の子にナニかを生やすポーションを飲むだけでいいから!飲むだけで!」

「それ絶対飲むだけですまないと思うんですけど・・・・・・・」

俺はそんな迷惑行為を繰り広げるお姉さん、女勇者のフルカ・スカイブルーに向かって─────────────────飛び蹴りした。

「どっこの世界にプロローグからナンパしてふ◯なりポーション飲ませようとする主人公がいるんだああああああああああああああああああああああ!!!!」

静かな街中に俺のツッコミが炸裂した。



俺の名前はルーリ・サンジョウ!今年の春冒険者になったばかりのピッカピカのFラン冒険者だ!年齢は16歳!みんなからは『ルリ』って呼ばれてるよ!

俺の名前を聞いてあれ?って思った人もいるかもしれないね!

・・・・・・いやいないだろうな。俺の知名度とか所詮はそんなものだ。おそらく99.9%はあれ?なんて思わないだろう、どうせ。

まあ知らない人の方が多いと思うけど、俺の名前はこれを書いている作者の別作品の主人公、三条瑠璃と同じ名前なんだ。

それはなぜなのか。

これは俺、ルーリ・サンジョウがパラレルワールドの三条瑠璃だからだ!

そう、この物語は三条瑠璃がもし異世界ファンタジー的な世界にいたら、という作者によるIFストーリーなのだ!

三条瑠璃が違った設定のもと、活躍する姿が見れるぞ!

さてと、読者のみんなもいきなりこんなこと話をされてポカンとしてることだろう。『いや、いきなりそんなこと言われても・・・・・』みたいになってるだろう。

あの作品を読んでる人なんて、それこそ数えるほどしかいないだろうからね。だからこのネタで盛り上がる人なんて、カクヨムやなろうユーザーの中でもおそらく0.1%にも満たないに違いない。0.01%ぐらいかな。

とんでもない内輪ネタで読者に離れられる前に、メタ発言はほどほどにしておいてさっさと本編に入ろう。

正直言って、こんな話なんて関係ないんだ。

ぶっちゃけ新しい主人公のキャラ考えるのが面倒だったからそういうことにして使い回しただけだし、だからこの話に三条瑠璃のパラレル的存在とか、そんな設定関係ないし・・・・・・・。

だから『君のためなら女子になる』も別に読まなくていいですよ。関係ないんで。

さてと・・・・・・。

こんな話から始めるなんて、一体なんなんだこの物語は・・・・・・。



「ダメですよあんな初登場シーンじゃ!フルカさんは一応勇者なんだからさあ!」

「あーはいはい。わかってるわかってるってー」

フルカさんはストローを差してビン入りジュースをちゅーっと飲みながら、聞いてるのか聞いてないのかわからないような気のない返事をする。

フルカさんは大体いつもこういうふうにしてジュースを飲んでいる。というか、見かけるたびいっつもジュース飲んでるけど、そんなにジュース飲んでトイレ近くならないのかね。

俺たちは石畳の道を歩いていく。店、家が後ろに流れていく。

「こないだも似たようなことして衛兵に注意受けてただろ!どこの世界にそんな勇者がいるんだよ!」

「いや違うぞ、前回は違う。前やって厳重注意受けたのはかわいいおっさんを襲おうとしたからだよ」

「いや一緒だわ!・・・・・・ていうかそんな勇者がいるかーーーーーーー!!!」

「いるんじゃねーの?どっかに」

「いやいねえよ!エロ同人の世界だけだよそんなん!ファンタジーもののエロゲーとか!」

「うわー思春期男子だけが出せるツッコミだなーそれ」

俺たちはいつもこんな感じで魔王を倒すための旅を続けている。

元々フルカさんが一人で旅をしてて、途中から俺が仲間になったって感じだ。そんで魔王を倒すための旅の途中でこの街に寄ったわけだ。

「とにかく気をつけてくださいよ。この街の新しい領主ってけっこうヤバいことで有名らしいですから」

「そうなのか?」

「そうなんですよ!だからあんまり目立つようなことをしないでくださいね!目をつけられたら何されるかわかったもんじゃないですから!」

「目立たないねえ・・・・・」

俺の言葉の何に引っかかったのか、俺のことをじっと見てくるフルカさん。何、何?

「お前、男なのにそんな格好してるヤツに言われたくないけどね?」

何か変なこと言ったかな・・・・・・・と俺が戸惑っていると、フルカさんが俺の今の服装を指さしてこう言った。

俺の今の格好は、よくある村の女の子みたいな感じの服装で、背中には大剣を背負ってる。俺、武術の心得とかなくて基本的に腕っぷしでゴリ押しするタイプだからさ、武器も『斬る』じゃなくて『押しつぶす』大剣なんだ。

「・・・・・・これのどこがおかしいんですか?」

「いやおかしいからね!?どう考えても!何当たり前みたいに女装してんの!?」

「え?いやいや何度も説明してるじゃないですか」

なんだそんなことか。仕方ない。改めて説明しよう。読者の皆さんには初めてお聞かせすることだしね。

どうかな?これって博識な読者の皆さんでも知らない方多いんじゃないかな!?ふふふ・・・・・・そんな読者の皆さんに俺がドヤ顔で説明してあげよう!

「女装っていうのは男にしか出来ない!だから女装するというのは最も男らしいということの証明になるんだ!俺は最も男らしい男だからその証明をするためにこうして女装してるんだ!」

「・・・・・・うん」

「なんだその表情!?こっちは女装のために髪まで伸ばしてるんだぞ!まだ肩までだけどね!どうだ見ろ!この俺の溢れ出る漢気を!」

「やー、何度聞いてもなんか違くないそれ?って感想しか浮かばないけどね?何そのガバガバ理論。使い込まれた穴くらいガバガバだけど?」

「いや何の穴だよ!・・・・・・いや全然違くなんかないですよ!ガバガバでもないです!お姉ちゃんが言ってたんだから!俺のお姉ちゃんがいうことに間違いなんかないんですよ!」

俺がムキになってそういうと、フルカさんも

「いやそれ絶対姉ちゃんに騙されてるって!何度聞いても騙されてるとしか思えねえって!絶対騙されてるって!」

と、声を荒げて反論してくる。失礼だな!そんなわけないだろ!

「お姉ちゃんが俺を騙すわけないんだよ!お姉ちゃんはすごいんだから!すごい人なんだから!騙すわけあるか!」

「いいやあるね!そんなこと言うヤツなんて、絶対悪意持って騙して来てるって!」

そんなことを言い合いながら石畳の道を歩いていく。そのまま言い合いをしながら宿の中へ入って行ったので、宿の女将さんに怒られたのだった。

この物語は遊び人の女勇者と、日常的に女装してる大剣使いの魔王を倒すための冒険を描いたものだ。

面白いかどうかわからないけど、少しでも楽しんでくれたら嬉しいな。

というか、俺たち今日冒険者ギルドで依頼受ける予定だったんじゃん・・・・・・・忘れてたわ。

今日お金を稼げなかった上にふた◯りポーションを買ったせいで、路銀がゼロになりました。

トホホってレベルじゃねーぞ!
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