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第二話
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「ちょっとー、怒られちゃいましたよー」
「あはは、そうだなー」
衛兵さんは俺たちを注意したあとまた見回りに戻っていった。
俺たちの方はまた引き続き、街中を闊歩していく。
石畳で舗装された歩道には数多くの人が行き交い、歩道と区別された車道にはどこへ行くともしれない馬車が行き交う。
歩道には昨日と同じように呼び込みをしているウエイトレスもいれば、見回りの衛兵、学者風の男性、買い物に行くらしい上品な雰囲気の主婦など多種多様な人々がいる。
おっ、俺たちと同じ冒険者パーティーなんかもいるぞ!
そういえば言ってなかったと思うけど、俺の冒険者としてのランクはEだ。まだまだ未熟ってわけだ。
それに比べてフルカさんの冒険者ランクはB。
ちょっと同じパーティー内で差が開き過ぎなのが俺は気になるんだけど、フルカさんは別にいいと言ってくれている。後輩を導くのは先輩の役目だとか。
フルカさんは勇者の血を引いてるだけあって、ああ見えてすごい優秀なんで、足を引っ張る形になるのが心苦しいけど、そういうことだから甘えさせてもらってる。
俺はどうしても一流の冒険者になりたいから。俺の夢なんだ。
さて、俺が同じ冒険者である四人組のパーティーを、通り過ぎざまに何気なく見てると、ふと気づいた。
「あれ?冒険者ギルドってこっちの方向じゃないですよね?」
そうだ、今気づいたけど宿から冒険者ギルドは確かこっちの方向じゃなかったはずだ。
俺がフルカさんにそう声をかけると、急にピタッと立ち止まって不敵に笑い始めた。
「フッフッフッ・・・・・・・」
「なんすか急に・・・・・・・なんなんすか・・・・・・・」
「実はな、今回は二人で手分けして依頼を受けようと思ってるんだ」
「手分け・・・・・・ですか?」
「そう、単純な話二人で一つの依頼を受けるより、二人で二つの依頼を受けた方が金の入りがいいと思ってね」
確かにそうだ。さっきも言った通り俺とフルカさんとじゃランクの差がありすぎる。
普段の時ならまだしも、こういう緊急の時、どうしても金が必要な時は二人で手分けして俺は簡単な依頼を、フルカさんが難易度の高い依頼を受けた方がこの場合は確かにいい。
「なるほど・・・・・・確かにそうですね。それで、どうしてこっちの方に?」
「うん、実はさ、そういうことを考えてあらかじめルリ用の依頼をもらっておいたんだ」
「ええ?いつの間にそんな・・・・・・・電光石火の早業じゃないですか」
やけに用意がいいな・・・・・・・なんか嫌な予感がするぞ。
「ほらこれだ」
「ポケットに直接入れないでくださいよ、くしゃくしゃになってるじゃないですか。えーと、どれどれ・・・・・・・・『男の娘カフェ、臨時従業員募集』・・・・・・・?」
にわかには受け入れ難い文言が記されてあったので、ぱっと顔を上げてフルカさんの顔を見ると、ムカつくぐらいめちゃくちゃにニヤついていた。
「・・・・・・・なんすかこれ」
「ぴったりだろ?ルリに」
「いやこれぴったりとかじゃなくて悪意で選んだだろ!これおい!」
「いやいや、そんなことないよ~・・・・・・・じゃ、私は別の依頼受けに行ってくっから!」
「おい!待て!逃げるなァァ!!!」
スタコラサッサーと冒険者ギルドの方へ去っていくフルカさん。一人取り残され、俺は途方に暮れるのだった。
◇
完全に面白がって受けた依頼を押し付けられた俺は、仕方なく、本当に仕方なーく依頼書に書いてある男の娘喫茶に行くことにした。
本当に仕方ないんだ、これは。もう依頼受けちゃったんだから断ったらどーせ違約金払わせられるに決まってる。
冒険者ギルドあるある、『依頼断ったら違約金』だ。
っていうか、なんでこんな依頼が冒険者ギルドにあるんだよ・・・・・・。
「ふーん、ルーリ・サンジョウくんか。なるほどね」
「はい、みんなからはルリと呼ばれています」
ということでその喫茶店のスタッフルームで簡易的な面接を受けていた。一応形式的には面接をするみたいだ。
俺を面接するのはなんか執事みたいな格好をした、スタイリッシュな雰囲気がある、細身だが胸がけっこうあるお姉さんだ。足を組んで煙草を咥え、頬杖をついて気怠そうにしている。
お姉さん・・・・・・だよな?まさかこの人も、なんてことはないよな?
「なかなかの逸材じゃんか。正直言って、どんなゴリラマッチョが来るかと戦々恐々だったんだ。こっちとしては、猫の手も借りたいくらいだから、そんなんでも採用せざるをえないからね」
「はあ、そうなんですか」
「一応聞いとくけどちゃんとついてるんだよね?本当は女子とかじゃないよね?最近そういうの厳しいからさー」
「男ですよ、わからないですか?この溢れ出る漢気が」
「わかんないねー」
にこやかにバッサリいかれた。ドヤ顔で言ったのにハッキリバッサリいかれて、ちょっとシュンとなる。
「そうですか・・・・・・・ええと、冒険者証があるんですけど」
「おっ、どれどれ・・・・・・あっ、ほんとだ。性別:男になってるねー。冒険者証を詐称できるわけないし、確かみたいだね。よし、採用!」
「あっ、ありがとうございます!」
「はい、じゃこれ制服だからこれ着て早速ホール出てもらうからねー」
即戦力だな・・・・・・いくらなんでも即戦力すぎないか?ちょっと緊張してきたな・・・・・・。
「ちなみに、店長さんはお姉さん・・・・・・でいいんですよね?」
「そうねー、だから男の格好してるでしょ?」
「あー、なるほど」
何がなるほどなのかわかんないけど。
とにかく、こうして俺はちょっと変わった依頼を受ける事になったのだった・・・・・・・。
「あはは、そうだなー」
衛兵さんは俺たちを注意したあとまた見回りに戻っていった。
俺たちの方はまた引き続き、街中を闊歩していく。
石畳で舗装された歩道には数多くの人が行き交い、歩道と区別された車道にはどこへ行くともしれない馬車が行き交う。
歩道には昨日と同じように呼び込みをしているウエイトレスもいれば、見回りの衛兵、学者風の男性、買い物に行くらしい上品な雰囲気の主婦など多種多様な人々がいる。
おっ、俺たちと同じ冒険者パーティーなんかもいるぞ!
そういえば言ってなかったと思うけど、俺の冒険者としてのランクはEだ。まだまだ未熟ってわけだ。
それに比べてフルカさんの冒険者ランクはB。
ちょっと同じパーティー内で差が開き過ぎなのが俺は気になるんだけど、フルカさんは別にいいと言ってくれている。後輩を導くのは先輩の役目だとか。
フルカさんは勇者の血を引いてるだけあって、ああ見えてすごい優秀なんで、足を引っ張る形になるのが心苦しいけど、そういうことだから甘えさせてもらってる。
俺はどうしても一流の冒険者になりたいから。俺の夢なんだ。
さて、俺が同じ冒険者である四人組のパーティーを、通り過ぎざまに何気なく見てると、ふと気づいた。
「あれ?冒険者ギルドってこっちの方向じゃないですよね?」
そうだ、今気づいたけど宿から冒険者ギルドは確かこっちの方向じゃなかったはずだ。
俺がフルカさんにそう声をかけると、急にピタッと立ち止まって不敵に笑い始めた。
「フッフッフッ・・・・・・・」
「なんすか急に・・・・・・・なんなんすか・・・・・・・」
「実はな、今回は二人で手分けして依頼を受けようと思ってるんだ」
「手分け・・・・・・ですか?」
「そう、単純な話二人で一つの依頼を受けるより、二人で二つの依頼を受けた方が金の入りがいいと思ってね」
確かにそうだ。さっきも言った通り俺とフルカさんとじゃランクの差がありすぎる。
普段の時ならまだしも、こういう緊急の時、どうしても金が必要な時は二人で手分けして俺は簡単な依頼を、フルカさんが難易度の高い依頼を受けた方がこの場合は確かにいい。
「なるほど・・・・・・確かにそうですね。それで、どうしてこっちの方に?」
「うん、実はさ、そういうことを考えてあらかじめルリ用の依頼をもらっておいたんだ」
「ええ?いつの間にそんな・・・・・・・電光石火の早業じゃないですか」
やけに用意がいいな・・・・・・・なんか嫌な予感がするぞ。
「ほらこれだ」
「ポケットに直接入れないでくださいよ、くしゃくしゃになってるじゃないですか。えーと、どれどれ・・・・・・・・『男の娘カフェ、臨時従業員募集』・・・・・・・?」
にわかには受け入れ難い文言が記されてあったので、ぱっと顔を上げてフルカさんの顔を見ると、ムカつくぐらいめちゃくちゃにニヤついていた。
「・・・・・・・なんすかこれ」
「ぴったりだろ?ルリに」
「いやこれぴったりとかじゃなくて悪意で選んだだろ!これおい!」
「いやいや、そんなことないよ~・・・・・・・じゃ、私は別の依頼受けに行ってくっから!」
「おい!待て!逃げるなァァ!!!」
スタコラサッサーと冒険者ギルドの方へ去っていくフルカさん。一人取り残され、俺は途方に暮れるのだった。
◇
完全に面白がって受けた依頼を押し付けられた俺は、仕方なく、本当に仕方なーく依頼書に書いてある男の娘喫茶に行くことにした。
本当に仕方ないんだ、これは。もう依頼受けちゃったんだから断ったらどーせ違約金払わせられるに決まってる。
冒険者ギルドあるある、『依頼断ったら違約金』だ。
っていうか、なんでこんな依頼が冒険者ギルドにあるんだよ・・・・・・。
「ふーん、ルーリ・サンジョウくんか。なるほどね」
「はい、みんなからはルリと呼ばれています」
ということでその喫茶店のスタッフルームで簡易的な面接を受けていた。一応形式的には面接をするみたいだ。
俺を面接するのはなんか執事みたいな格好をした、スタイリッシュな雰囲気がある、細身だが胸がけっこうあるお姉さんだ。足を組んで煙草を咥え、頬杖をついて気怠そうにしている。
お姉さん・・・・・・だよな?まさかこの人も、なんてことはないよな?
「なかなかの逸材じゃんか。正直言って、どんなゴリラマッチョが来るかと戦々恐々だったんだ。こっちとしては、猫の手も借りたいくらいだから、そんなんでも採用せざるをえないからね」
「はあ、そうなんですか」
「一応聞いとくけどちゃんとついてるんだよね?本当は女子とかじゃないよね?最近そういうの厳しいからさー」
「男ですよ、わからないですか?この溢れ出る漢気が」
「わかんないねー」
にこやかにバッサリいかれた。ドヤ顔で言ったのにハッキリバッサリいかれて、ちょっとシュンとなる。
「そうですか・・・・・・・ええと、冒険者証があるんですけど」
「おっ、どれどれ・・・・・・あっ、ほんとだ。性別:男になってるねー。冒険者証を詐称できるわけないし、確かみたいだね。よし、採用!」
「あっ、ありがとうございます!」
「はい、じゃこれ制服だからこれ着て早速ホール出てもらうからねー」
即戦力だな・・・・・・いくらなんでも即戦力すぎないか?ちょっと緊張してきたな・・・・・・。
「ちなみに、店長さんはお姉さん・・・・・・でいいんですよね?」
「そうねー、だから男の格好してるでしょ?」
「あー、なるほど」
何がなるほどなのかわかんないけど。
とにかく、こうして俺はちょっと変わった依頼を受ける事になったのだった・・・・・・・。
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