魔王と勇者

T@u

文字の大きさ
上 下
2 / 2

魔王と勇者(2)

しおりを挟む
     よく来たな 勇者よ
 
前よりいっそう強く逞しくなって

しかし 勇者に比べて その仲間は脆い

魔王は勇者と命をかけて戦うこの瞬間を

好んだ   勇者が勇者だから恋をしたと

しかし時折思うらしい

そんな脆弱な人間より私の方がお前の側に

そんな叶わぬ願いをこめて 彼女は言うのだ

   勇者よ 私はお前が気に入った

   私と共に歩めば 覇道を約束しよう

   世界の半分をやろう

  勇者からの答えは 無い

それでいい それがいい 惚れ直した


私に向けられた その 声が好き 眼差しが
その強さが好き  その殺意が好き

好き 好き 好き

世界を守る 勇者が好きで

勇者が守る 世界が嫌いで

でも 

お前といれるなら 

その全てを愛そう

勇者の手にかかって死ぬこと 
勇者を手にかけること
世界の命運
魔界の行方

そんな事情は彼女には見えていない

世界は魔王によって闇に包まれたように

魔王は勇者によって恋に包まれている

  この恋の終わりは 
1つの世界の終わりで 
 1つの命の終わり

    
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...