【完結】異世界行ったら龍認定されました

北川晶

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12 月光という人①

     ◆月光という人①

 夜明け間近、眠い目を擦って、紫輝とライラは自分たちの家を出た。
 前線基地を抜け出せそうなときは、連絡するよ。と言うと。天誠は微笑んで、別れの手を振る。
 見送る天誠に背中を向けるのは、いつも自分だけど。
 弟と別れるときは、つらくて。たまらない。

 朝なんか、来なければいいのに。

 今度は、いつ会えるのか。元気な姿で会えるのか。
 なにひとつ、確かな約束ができないから。不安なのだ。
 その想いを解消できないまま、ただ、笑顔で別れる。そうするしかないのだ。

 ライラの背中に乗って、緑の中を走り抜ける。
 涙で景色がゆがむから、ただただ、視界が緑色に埋めつくされて。いつまで経っても、今、どこにいるのか、わからないんだ。
 方向音痴なわけじゃない。たぶん。

 見回りの兵にみつからぬよう、紫輝は将堂の前線基地内に戻った。
 よじよじと、紫輝がライラの背中から降りると。彼女は大きな口を開けて、あくびした。

「はあぁぁ、よく寝たわぁ。あそこは、あたしの巣にするの。きめたわよぉ」
 背筋を伸ばすストレッチから、後ろ足をピーンと伸ばす。
 びるびるっ、と震える足先が、可愛い。

「いいけど。俺たちが座る場所も残しておいてくれよ。二部屋またいで、寝てたじゃん」
「おんちゃんたちは、すみっこでいいの」
 くすくすっと、ライラが笑う。ツンデレの可愛い子ちゃんめ。

「言われなくても、すみっこで寝ましたよ」
 お風呂から上がると、ライラが二部屋分、しかも、ど真ん中を陣取って、寝ていた。
 夏の猫は、丸くなって寝ない。
 どーんと、足を伸ばして寝る。
 ライオンサイズのライラが、どーんと、ね。

 仕方なく、紫輝と天誠は、脱衣室用の小さな部屋に布団を敷いて寝たのだ。
「兄さんのそばが、一番安眠できるよ」
 天誠は紫輝を抱きしめたまま横になり。紫輝の頭に、顔を埋めた。
「…俺も」
 紫輝は、天誠の胸元に顔を寄せる。
 作務衣の合わせ目から、鍛えられた天誠の胸筋が見え、ちょっとドキドキした。
 エッチなことして…そのときは、頭がのぼせちゃってるからかもしれないけれど。裸で抱き合っても、そんなには意識しないのに。
 でも、腕の中で天誠の香りに包まれているときとか。手を繋いだときとか。ふとした瞬間に、馬鹿みたいに意識しちゃうのは、なんでなんだろう。

 だけど。そのドキドキに加えて、安堵感にも満たされる。
 慣れ親しんだ、家族と過ごすこの時間が、紫輝にとって貴重な癒しのひとときだ。

 彼の胸に頬をつけ、紫輝は安寧の心地で、目を閉じた。

 なんて。ライラの寝相とともに、天誠のことも思い出して。ちょっと頬を染める紫輝だった。
 弟のそばで仮眠したとはいえ、育ち盛りの紫輝は、まだ寝足りない。
 今はまだ、日が昇り始めたところ。
 部屋に戻って、もう一度寝ようと思い、宿舎に足を向けた。

 そのとき。木の陰から、誰かが現れた。
 鮮やかな桃色の羽、桃色の髪。月光だった。

「紫輝? それ、なに?」
「ライラ、ですっ」
 いきなり、月光にライラを見られてしまい。パニクって、頭は真っ白になったが。
 とりあえず、紫輝はライラの名を叫んだのだった。

 えっと…どうしよう。苦笑いと、愛想笑いと、とにかく笑っておいた。
「あい。ライラですっ」
 どう誤魔化そうかと、紫輝は悩んだが。
 空気を読まないライラは、自己紹介した。

 こんなときまで可愛いなんて。天使か? 天使なのかっ?

「がおー?」
 桃色の髪を揺らして、月光は小首を傾げた。
 あぁ、他の人に、ライラの言葉はわからないんだった。

「あの、ライラは、俺の飼い猫で。ちょっとでっかいけど、無害ですから。大丈夫ですから」
「ちょっと? 猫? 今、それに乗って塀を越えてきたよね?」
 あぁ、そこまで見られていましたか…。
 紫輝は、眉間に寄ったシワを、人差し指でモミモミしながら。考えて。

「ライラ、剣に」
 紫輝の言葉に、ライラはくるりと前転し。剣に戻った。
 背中に背負った鞘に、紫輝はライラ剣をおさめる。
 その一連の流れを見ていた月光は、驚きに目を真ん丸にしている。

「ライラは、俺の猫です。でっかいのも、剣に変化するのも。俺が龍鬼の力でしていることです」
 しっかりと、紫輝は月光に断言した。
 これは、もう。廣伊たちに話したことを、月光にもしなければならないだろうと、覚悟を決めた。

 案の定、月光はにっこり笑顔で、言う。
「ちょっと、話をしようか? 紫輝」

     ★★★★★

 たなびく雲間に、オレンジと紫のグラデーション。辺りの景色も、薄日に浮かび上がってくる。
 早朝、紫輝は。月光の宿舎に案内された。
 昨日、作戦指令室に行ったが。幹部の住居は、そのさらに奥だと堺が言っていて。
 月光が使用している宿舎も、そこにあった。
 奇襲を警戒して、建物は点在しているのだと、月光が説明する。だから周囲に、他の宿舎は見当たらない。

 仕様は、作戦指令室のような屋敷ではなく。廣伊が使っている、バンガローみたいなやつの、大きい版。
 中に招かれ、部屋を見ると。
 ほぼ、廣伊が使っているのと同じもの。
 でも、月光の部屋は。書類の束や、ひもでくくられている冊子が、あちこちに積んであった。

 ピンクのクッションとかフリルのカーテンとか、イメージしてすみません。

「ほら、紫輝。食べな? お腹空いているでしょう?」
 椅子に座って、しばらくすると。月光が机の上に、いっぱいのおにぎりが載った大皿と、お茶を出してくれた。
 基本、兵士の食事は、おにぎりだ。
 具なし、ノリなしの、塩おにぎり。
 でも、目の前のおにぎりには、海苔が巻いてある。ひとつ、いただきます。

「具がっ、シャケっ、うまっ」
 紫輝は、あまり食に、こだわりがない方で。この世界に来てからは、龍鬼が、食べさせてもらえるだけでありがたいと思えやっ…という雰囲気なので。文句も言わずに、出されたものを食べてきたわけなのだが。
 飽食の世界で育ったわけなので。
 さすがに、塩おにぎりと漬物だけという食生活に、悲しさを感じてはいた。

 鮭おにぎりが、こんなにも美味しいものだったとは。自然の恵みに感謝した。

「こっちは、おかか? なんか、懐かしいな」
 天誠が、両親のいない夜に『お腹空いたから、なんか作って』とか無茶ぶりしてきたとき。ご飯の釜にかつお節とマヨネーズと醤油をぶっこんで、混ぜて、握って、出してやったっけ。
 料理とは言えないけれど。
 兄さんの作った物は、なんでも美味しいって言いながら。弟はいつも完食してくれた。良い思い出だ。

「美味しい? 紫輝は食べ盛りなんだから、いっぱい食べなきゃね」
 具のあるおにぎりが、あんまり美味しくて。大きいサイズなのに、四つも食べてしまった。

「紫輝を見てるとさ、うちの息子を思い出すんだよね? 小さいから、どんどん食べさせたくなっちゃうんだ。龍鬼だからって理由で、可哀想な想いをさせたくないし。不自由な想いもさせたくない」
「へぇ、月光さんの息子なら、ふわふわで、桃色で…すっごく可愛いんだろうなぁ?」

 紫輝は、ミニサイズにした月光の姿を想像して、言った。
 羽がなくたって、充分に愛らしいだろう。

「そりゃあ、もう、可愛いよ。笑顔がぴかっとして。目もくりくりしてるよぉ?」
 世が世なら、息子のスマホ画像を見せて、自慢してくるテンションだ。

「親の愛情は、子が龍鬼でも、変わらないんですね? それは、嬉しいな。親に疎まれたら、厳しいもん」
 紫輝の両親は、仕事が忙しかったので。あまり構ってもらえず、心の距離は少し遠い…。
 というか、早く親離れしちゃったような感じだった。
 その代わり、弟からの愛情が、ヤバいレベルで重いので。良いのだが。
 そのように、縁の薄かった親の情が。月光から、こそばゆいくらいに伝わり。心地よいと感じたのだった。

「龍鬼の親が、みんなそうなら、良いんだけどねぇ」
 だが、紫輝の言葉に、月光は瞳を寂しい色に染める。

「堺も高槻も、親には恵まれなかった。堺は、触れることさえ許さない父親に、長い間、能力だけを利用され。高槻は、生まれてから十三年間、納屋に監禁されて育った。両親が死去するまで、一歩も外へ出られなかったんだ。本来は味方のはずの、親に疎まれたら。すべての人が、自分を嫌っていると思い込んでしまうよね? さらに、堺の能力は、人の心を操るものだから。余計、人から恐れられてしまう。だから堺は、いつもひとりだった。孤独な人なんだよ」

 龍鬼として生きるのって、本当にしんどい。
 無視や敵意を、ずっと、ずーっと受け続けたら。眞仲や千夜、廣伊にも会えず。誰にも理解されなかったら…。
 それを想像しただけで、紫輝の胃はキリキリと痛くなった。

「だから、紫輝が堺に抱きついて、それを堺も受け止めていたのを見たとき。実は、ものすごく驚いたんだ。彼は、自分が汚い者だと、思い込んでいるところがあるから。藤王以外の人と接触する場面を、今まで見たことなかった」

 月光の言葉で、紫輝は。堺が、自分を励ましてくれたときのことを思い出す。
 藤王を探すのを、あきらめない。と言って、堺は紫輝の肩に、手を添えた。
 そのとき、彼の指先は震えていて。
 紫輝は、八年も兄を探し続け、まだあきらめないと言うのは、無謀だと。その自覚があって、震えているのかと思ったのだけど。
 でも、あのとき堺の手が震えていたのは、その手を払われるかもしれない、そんな恐れがあったからなのだろう。

 堺も廣伊も、龍鬼として、悲しい想いをいっぱいしてきた人たちなのだな、と。紫輝は改めて思う。
 ふたりとも、尊敬を集めるに相応しい、名武将なのに。
 それでも、龍鬼であるという壁は、越えられないのだ。
 差し伸べた手を何度も拒まれ。傷つき。絶望して…手を差し伸べられなくなる。

 でも、堺は。その怖じ気をおさえ、紫輝を慰めてくれたのだ。
 あのとき、堺は。自分に、親愛を感じてくれたのかな? そう思って。紫輝の胸は熱くなった。

「堺は、初めて会ったときから、とても優しかった。だから俺、大好きなんです」
「ふーん。堺とは、どうして出会ったの? 彼は紫輝の上官なのに。彼が会いに来た?」
「いえ…泉で、偶然会ったんです。ほら、龍鬼って、お風呂場使えないから。体を洗うのが大変で。近くに泉があるので、そこで。今も…寝汗かいちゃって。ちょっと綺麗にしてきたんですよ?」

 これは本当のことだから。紫輝は、なめらかに説明できた。
 ついでに今朝のフォローもできて、完璧だ。
 と、思ったのだが。

「うんうん、あの猫に乗って、陣営の外に出て、日も出ていないうちに、泉で体を洗ってきたんだね? で、紫輝は記憶喪失ということらしいけど。どこから、どうして、将堂軍に来ることになったのかな?」

 なんか、あんまり誤魔化せていないみたい。
 そのまま、本題に入ってきて。
 月光さんったら、可愛い顔をして追及がえげつない…。
 そして、紫輝は。覚悟を決めたのだった。

「あの、俺は。異世界から来たんです」
「異世界? 異世界ってなに?」

 この話をすると、みんな、まずは絶句するのだが。
 きょとんとした顔をしつつも、月光は追及の手をゆるめない。

「この世界とは、別の世界があるんです。俺が住んでいた世界では、翼の生えた人がいなくて、だから羽なしだっていじめられることもなくて、戦争もなかった。なのに、大きな手が地面から出てきて、俺とライラと…弟が、手に掴まれて穴に引きずり込まれたんです」
「…うん。続けて?」
 半信半疑な様子も見せず、月光は、にっこり笑顔で話をうながす。
 えぇっ? とか、はぁっ? とか、そんなリアクションじゃないから。
 なんか、調子が狂うな。

「で、気づいたら、ここにいた。この世界に来たことで、でっかくなったライラは、人の生気を食らうと知って。ライラに協力してもらって…弟を探すために、将堂軍に入ったんです。羽のない龍鬼の情報は、軍に集まると教えてもらったので…」
「誰に?」
 誰に?!
 と、紫輝は驚愕の眼差しで月光を見た。
 そんな切り替えし、今までなかった。

 誰って…眞仲だけど。言っていいの?
 言って、大丈夫だよな?
 廣伊と堺と千夜は、大丈夫だったんだから。

「…手裏の、安曇眞仲」
 言った途端、月光のピンクの羽がバサッと広がった。
 顔は、変わらず笑顔のままだから。逆に怖い。

「あの、最終的なことを言いますと。俺は、異世界から一緒に来た弟を探すために、将堂に入ったんですけど。その記憶は、金髪の龍鬼の安曇眞仲に、上書きされたもので。俺自身、この世界で生まれた龍鬼だったんですよ。つい最近…安曇に、嘘の記憶を直してもらったんです。でも、元から記憶喪失だから、自分の親とか、そういうのはわからないんですけど」
「なるほど。なんで安曇は、わざわざ紫輝に、嘘の記憶なんか上書きしたの?」
「それは、龍鬼の研究のためだって…」
「じゃあ紫輝は、龍鬼を研究しているという手裏の龍鬼に、外でかち会ったのに、また外に出たんだ?」
「こ、今度、安曇に会ったら、ライラ剣で生気を吸うから、大丈夫なんですっ」

 なんか、一気に畳みかけられて。紫輝は、ちゃんと言い訳できているのか、心配になってきた。
 すると、いつものにっこり笑顔が。
 神妙な表情に変わった。
 丸い目が、鋭くとがり。唇も引き結ばれている。

「…安曇は、君に」
 こんこんと、そこに、扉を叩く音がした。

「瀬来、紫輝が、こちらに来たようですが、いるんですか?」
 堺の声だ。
 紫輝は一瞬ホッとしたが。
 堺も、自分に隠し事があることを知っている。

 ふたりに責められたら、切り抜けられる自信が、ないぃ。
 でも、天誠を守らなくちゃ。それだけは、絶対に。なにがあっても。

 紫輝は椅子から立ち上がり、入り口のドアを開けた。
 月光の家のドアを、紫輝が開けたから。堺はびっくりしたようだ。

「紫輝、どうしてここに?」
「朝、散歩の帰りに、月光さんと会って。なんか、俺、うまく説明できなくて…」
 うまく立ち回れない自分の情けなさに、涙が出そうになる。
 紫輝は堺に、ギュッと抱きついた。

「瀬来、紫輝は記憶喪失なのですよ。彼を追い詰めないでほしい」
 抱き止めた手で、堺は紫輝の背中を撫でる。
 大丈夫。落ち着いて、と言われているようで。紫輝は少しだけ、気持ちをなだめられたのだが。
 月光は堺に、正論を投げた。

「紫輝は嘘をついている。おまえにそれが、わからないわけがない。紫輝が安曇と通じていたら…こちらの情報が敵に渡っていたら、どうするつもりだ?」
 今、堺に心を見られたら、全部終わる。
 紫輝は、すがる目で堺を見た。

 堺は、いつものとおり、優しく微笑んでくれる。
「大丈夫。なにも暴かないと、約束をしたでしょう?」
 紫輝は堺にうなずきを返し、またギュッと抱きついた。

「堺…おまえ…」
「私は紫輝を追い詰めない。紫輝は、情報を漏らすような愚かな真似はしない。私は紫輝を信じています」
 繊細で傷つきやすい、でも綺麗に輝く宝石のような心根の堺が。紫輝のことを月光にしっかりと断言してくれて。堺は自分の味方なのだと思い、嬉しくなった。

「わかった。これ以上の追及は、無理なようだ」
 はぁっ、と重い溜め息をつき。月光はあきらめてくれたようだ。

「ごめんね、紫輝。君のことが放っておけなくて、つい責めるように言っちゃったけど。心配だからなんだよ」
 月光は再び、あの柔らかい印象の笑顔を、向けてくれたけど。
 さすがに、紫輝はそれを、真に受けなかった。

 月光さんは、怖い人。

 そんな認識を、抱いてしまった。
 でもそれは、自分が理路整然と説明できていなかったから。疑いの目で見られても仕方がないのだ。

「いえ、俺の方こそ、上手に言えなくて、すみません」
 紫輝は堺と一緒に、そそくさと、月光の宿舎を出ようとしたのだが。そこを呼び止められる。

「堺。紫輝は、シャケとオカカのおにぎりが、懐かしの味らしいよ?」

 うん、久しぶりで美味しかったけれど。と紫輝は思うのだが。
 堺はギョッとした顔をして、紫輝を見下ろしている。
 なんで?
 小首を傾げる紫輝を連れて、今度は本当に、ふたりは宿舎を出た。

「堺、月光さんは、最後に、なんであんなこと言ったの? あぁ、俺の好物が知りたかったとか?」
「…懐かしの味、というのは。昔、これを食べたと覚えているということです」
 紫輝はひぇっと、肩をすくめる。
 記憶喪失設定が、台無しである。

「さらに。鮭もかつお節も、かなりの高級品で。瀬来家は名家なので、用意できるのですが。つまり、名家の食卓にしか並ばない、貴重な食材ということです」
 嘘でしょ?
 三百年前は鮭もオカカも、ワンコインで買えたのにぃ。

 ジッと堺にみつめられ、紫輝は居心地悪くなってしまう。
「…そうなのですか?」
「え、名家? ってこと? 違う違う、俺は庶民だよ。あ、きっと海辺の出身なのかも」
「鮭は北部、カツオは南部の名産です。海の民でも、同時に手に入れられないでしょう」
 紫輝は…脳みそが爆発しそうだった。

「あぁぁ、もー、無理っ。頭、割れるぅ…」
「わ、割れ?」
 ハネハネの黒髪頭を両手でぐしゃぐしゃ掻き回し、のたうち回る紫輝を。堺は、本当に頭が割れそうなのかと思って、心配していた。

「いやいや、大丈夫。頭、本当に割れないから。って、心配するとこ、そこじゃなくてぇ。なんで、なんで、そんな重箱の隅を突っつくようなことを言うんだよぉ。細かいよ。細かすぎだよ。っていうか、底辺の龍鬼が、どこ出身だろうが、どうでもいいでしょ? ダメ? ダメなの?」

 堺は、重箱も、普通の家庭にはないのだが、と思いつつ。
 それを言ったら、紫輝がさらに爆発してしまいそうだったので、言わず。
 持論を述べた。

「どうでもいい、ということはないのですが。出自を隠したがる龍鬼はいますし。普段は、そこを無理に追及したりはしないものなのです。でも、紫輝は赤穂様のお気に入りですから。それで瀬来は、必要以上に警戒しているのかもしれませんね?」
「赤穂のせいかよっ。つか、勝手に『お気に』とか。困るんですけどぉ」

 やっぱり面倒くさいことになったと、紫輝はむくれる。
 それにしても、月光の追及は、たぶん、これで終わりにはならないだろう。
 どうしたらいいのか、と考えていたら。堺が言ってくれた。

「瀬来のことは、心配しないで。私がうまく、説明しておきますから」
「…ありがとう、堺」
 全部、彼任せにはできないけれど。
 今は堺が、自分のために動いてくれることが、ありがたいと思った。

     ★★★★★

 紫輝を二十四組の宿舎前まで送ったあと、堺は月光の宿舎に戻ってきた。
 扉を叩いて、入室の合図を出すと。入り口を開けた月光が、いつものにっこり笑顔で、堺を出迎えた。
 堺には…胡散臭い笑顔に見えるが。

「紫輝のこと、部屋まで送ってあげたの? ずいぶん過保護だねぇ」
 手で部屋の中へ招き、月光は堺に椅子をすすめる。
 月光の世話役が、堺の前に熱いお茶を出し、さっと姿を消した。
 月光の生家である瀬来家は、戦の作戦をたてる参謀の役割に長けているのだが。それを支えているのが、情報収集能力の高さだ。
 瀬来家は、多数の、優秀な隠密を抱えている。

「瀬来、紫輝をあまり追い詰めないでくれ。あの子は記憶をいじられたことで、まだ混乱している最中なんだ」
「堺から見て、紫輝は記憶をいじられたように見える?」

 月光の質問に、堺は即答できない。
 実は、見えないのだ。
 たとえば、堺が記憶を操作するとき、無くしたい記憶を糸で縛るような感じを思い浮かべる。記憶を無くした者の頭には、その縛った糸の気配が光って見える。
 それが紫輝にはない。

「…だが。ライラさんには、怪しい気配があるので。安曇が、私よりも能力が高い可能性もあるので。一概には…」
「いきなり、だが、はないでしょう。見えない、だが、って意味? いつも堺は、はしょり過ぎぃ」
 月光はくすっと笑って、お茶を飲む。
 堺の言葉が足りないのは、いつものことだ。

「紫輝には昨日から隠密をつけておいたんだけど。あの、ライラさん? に巻かれちゃってねぇ。防御塀を越えるのも驚きだけど。隠密が外に出たときには、すでに影も形もなかったって言うんだから。あの子、すっごい足が速いみたいだよ」
「…猫ですから」
「それ、信じてるの?」
 月光に半目で睨まれ。堺は黙る。
 だって、紫輝が猫だと言うのだから。そうなのだ。

「紫輝は、記憶喪失じゃない。おそらく、良いところの子。天真爛漫な性格は、愛されて育った証。そして、学もある」
「しかし、将堂側には、そのような話は…」
「そう。将堂の名家には、紫輝のような子は生み出せない。まず、名家の血脈に。黒髪は生まれないしね?」

 瀬来家はフラミンゴ、桃色。時雨家はタンチョウ、白髪。麟義はヤマドリでだいだい色の髪。クマタカの美濃は茶髪。
 唯一、赤穂は黒髪だが。
 両親は赤穂が生まれて、すぐに亡くなっている。オオワシ血脈は。かろうじて存続しているが。後継は、まだ年若い。
 というのは。幹部なら、口に出さなくても知っている情報だった。

「まさか、手裏の子息なのか? 手裏基成には弟がいたはずだ」
「いや、長子の乱心で、一族が惨殺されたとき。弟も死んだはずだ。仮に生きていたとしても、手裏の子息が将堂に入るのは、危険すぎるだろ。正体がバレたら、政治の駒に使われるのが目に見えている。手裏には、不利益しかない。それに…僕が手裏総帥だったら。紫輝ほどの器量があったら、跡目にするな。基成の右腕としても、充分に有益だ。そして将堂は、苦戦に追い込まれる」

「紫輝が、手裏基晶でないことを、祈るしかない。昨今は、商家も栄えた家がある。食に通じていても、名門の出とは限らないだろう?」
 堺の言葉に、月光は『必死だねぇ』と返した。
 必死だ。紫輝は出自を探られたくないのだろうから。なんとか月光の目をそらしたいのだが。

 彼は、将堂の宝玉と言われるほどの、智略の将。
 誤魔化しなど利かない相手だ。

 頭を悩ます堺の目の前で、月光も、悩ましいため息をついた。
「紫輝が言った、異世界という話。あれは、あながち嘘ではないかも。だって、我らのこの世界に、龍鬼をあれほど健やかに育てられる場所などない。残念なことに、ね」
 おそらく、月光も推測できかねているのだ。
 謎の多い、紫輝という存在を把握できなくて。だから執拗に追及するのだろう。

「あのさ、堺が、あの子の頭の中見てくれるのが、一番簡単なんだけど?」
「私は彼の心を暴かないと、約束しているのです。私と紫輝の仲を裂きたいんですか?」

「紫輝のこと、好きなの? さっき抱きつかれて、嬉しそうな顔したよね?」

 急に投げられた剛速球に、堺は目をみはる。
 だがすぐに、表情を消し、薄く微笑む。
「好きですよ」
「恋愛的な意味で?」
「それは…わからない」

 興味ありげに目を丸くして、月光がみつめてくる。
 若い女性が、このような上目遣いで、瞳ウルウルでみつめてきたら、世の男性は、みんな恋に落ちる…。そのような可愛らしさが、月光にはあるのだが。

 本性を知っている堺に、それは効かない。

「私のことを、簡単だと思っているのでしょう? 好意を向けられれば、好きになると。でも、私のことを無邪気に好いてくれる者など、兄の他には。彼しかいなかった。そんな相手を、特別に想っても仕方のないことだ」
「ええぇ、僕だって、堺のこと好きだけどなぁ?」
 二十一にもなって、頬を膨らまし、椅子の下で足をぶらぶらしても、可愛くありません。と堺は思う。

「邪気の塊のような貴方に言われても、嬉しくないです」
「藤王に、邪気がなかったなんて言わせないよ」
 可愛らしい顔を、一瞬で、悪魔顔に切り替えた彼に言われ。堺はグッと息をのむ。
 兄の話は、堺のアキレス腱だ。
 そこを攻撃されると、強くいられなくなる。

「堺だって、気づいていたはずだよ。笑顔の仮面の向こうにある、藤王の邪な愛情を。彼なら、実の弟でも…」
「人の兄を、けなさないでください」
 月光の攻撃に、堺は瞳をおどおどと揺らす。
 わかっているのだ、己を精神的に追い詰めることで、月光は事を優位に運ぼうとしているだけ。
 けれど。針がちくりと刺さったみたいに、額が痛む。
 自分に向けられた兄の愛情は、純粋な兄弟愛だったのだろうか?

 眉間を指で押さえ。堺はどこか苦しげに、告げた。
「今は、私の兄の話ではなく、紫輝の話のはずだが」
「だって、堺の恋のお話は、藤王抜きで語れないでしょ?」
 可愛らしく小首を傾げるこの桃色が、堺には邪悪の権化にしか思えない。

「あぁ、そうだ。堺が結婚するとか噂を広めたら、藤王はすぐ出てくるんじゃない? おまえのような男に、弟は嫁にやらん! とか、言いそう」
「なぜ、私が嫁なんですか? 大体、龍鬼の私が結婚など、あり得ないでしょう」
「じゃあ、堺が紫輝を、お嫁にもらえばいいんじゃない?」
「か、考えたこともない。紫輝は大切な友人だ」
 そうは言いながら、堺は考えてしまう。
 紫輝が、いつも隣にいて、笑ってくれたら…と。

「あ、やっぱり紫輝は駄目だった。赤穂が気に入っているもん。堺。赤穂と、紫輝を取り合える?」
 瞬間、赤穂が紫輝を押し倒している図を想像してしまった。
 腹の底が燃えるような、不快な怒りを覚える。

「赤穂様に、紫輝は渡せません。純粋無垢な紫輝を、あの方に汚されるわけにいかない」
「それって、やっぱり恋、なんじゃない?」
 うっとり、夢見る表情でつぶやく月光に、堺はもはや何も言えなくなった。
 それは無言の肯定だ。

「…瀬来はいいのか? 赤穂様が紫輝に懸想しても」
 恋愛などの話を、堺は同僚としたことがない。
 でも。よくは知らないが。
 堺の耳に入るほどには、月光と赤穂が恋仲なのは、有名な話だ。

「それは、今更だなぁ。僕が、赤穂の女性遍歴に、いちいち目くじら立てたことがあるかい?」
 確かに、赤穂と月光が仲違いした場面は、一度も見ていない。
 どころか、いつも一緒に行動しているという以外は、恋愛を匂わせたこともない。
 噂がなければ、彼らが付き合っているなど、堺が知りようもないのだ。

 ふたりは、堺より二歳年下だが。恋人がいる点と、私生活を職場に持ち込まないという点では、自分より大人だと思ってしまう。
 
「まぁ、なにも思わないということはないけど。ただ。僕は赤穂から、この世で一番、ピッカピカに輝く宝物をいただいたんだ。だから、彼の行動を縛ることは、できないんだなぁ…」
 家柄の良い月光が、なにかしらの物品で言うことを聞くとは、堺には思えなかったが。
 本当に優しい笑顔で、彼が笑ったから。
 月光は、それで満足しているのだ、ということはわかった。
 ならば、第三者である己が言うことは、なにもない。

「うーん、でもぉ、紫輝は本当に純粋無垢なのかなぁ? いつも元気印だけど。たまに色気を感じるよね」
「紫輝に、誰か恋人がいると? 考えられるのは…望月か、高槻?」
「気になるぅ?」
 目だけ笑っているように、月光に言われ。堺はからかわれているのだと悟った。
 自身が。紫輝のことを、すっごく気にしているということを。厄介な相手に知られてしまった。

「やはり、貴方は嫌いです!」
 白皙の顔を、堺は怒りに赤く染め。足音荒く、月光の部屋から出て行った。

 ひとりになった部屋の中で、月光はとても楽しげにクスクスと笑った。
「あぁあ、あの能面顔が、ずいぶん表情豊かになったものだよ」

 悲しみも怒りも喜びも、堺の心を揺らせなかったからこその、あの能面顔である。
 紫輝が、堺の人間らしい部分を目覚めさせてくれたのだとしたら、月光としては、感謝するほかない。

 子供のときから堺を知る、月光としては。堺が、心の発露を表情に出してくれることが、奇跡のように感じられた。
 からかったりもするけれど、幼馴染みだから。彼のことを、ずっと心配している。

 堺の父親は、兄弟差別がはなはだしかった。
 長子の藤王は、龍鬼ではあったが。将堂を勝利に導くために有益な存在として、大事に育てられた。
 しかし堺は、二人目の龍鬼。
 強い力が、時雨家に集中することを良く思わない家が多く。他家には、常に謀反を疑われていたのだ。

 父親にとって、堺は。存在するだけで、痛くない腹を探られる、うとましい子供で。
 堺から話しかけることも、触れることも、あの父親は許さなかった。

 月光は…龍鬼の父親になった月光は。堺の父親の所業が、どうにも腹立たしくてならなかった。
 なぜ、己の子供に、それほど冷たい仕打ちができるのか。全く理解できない。
 思い出すたび、怒りが湧く。
 自分が堺の父だったら、守って、抱き締めて、あの繊細な心が壊れないように、大事に育ててあげられたのに…。

 龍鬼を生んだ家としては、それでも時雨家は、まだマシな方。
 高槻は、小さな部屋に監禁されていた。
 だけど堺は、堂々と空の下を歩けた。その分だけ、マシ。

 時雨家の子息として、将堂に忠誠を誓う、生まれたときから決まっていた運命の代償として、隠されずに生きられたというだけ。
 ただ、それだけのことだ。

 堺は七歳という幼さで、戦場に出された。
 龍鬼として、将堂のために戦うことを、人を殺すことを、父親に強要されたのだ。
 龍鬼であり、家格も高い、幼い堺が、軍の内部で働く。それは、龍鬼を忌避する者たちと、上官に虐げられている者たちの、格好の憂さ晴らしの標的になりえた。
 迫害は、むしろ高槻以上と言える。

 もちろん、あの父親が、かばってくれるはずもない。
「兄さんも、七歳で初陣でした。私も立派に務めを果たします。いずれ、赤穂様、瀬来様も、戦場に出られるでしょう。それまで、私が先に戦場へ向かい、勉強しておきますね?」
 キラキラ輝く白髪を、肩口でそろえたおかっぱ頭が、笑顔でそう言った。

 当時五歳だった月光は、幼心に、こう思ったものだ。
 蝶を追いかけても殺しはしない堺と、純粋に狩りを楽しめる藤王は違う、と。

 実際、堺に初陣は早すぎた。
 出会った頃は、まだ麗らかな笑顔を見せてくれたのに。彼はどんどん笑わなくなったから。
 恐れも、涙も、笑みも、能面の顔の向こうで凍らせてしまった。

 両親が死に、兄が失踪すると。堺はもう、あらゆる表情を殺した。
 貼りつけたような、薄い笑み。冷たく、凍りついた笑みだけだ。
 それを、月光は。どうにもできないまま、十年以上見せ続けられてきた。

 だから、ほんのり頬を染めて照れたり、目を見開いて驚いたり、顔を赤くして怒ったり、彼のそんな表情を引き出してくれた紫輝には、感謝している。
 でも…。
 それとは別に。月光には譲れないものがあった。一番大切で。キラキラの宝物のために。

     ★★★★★

 月光に目をつけられてしまった紫輝は、天誠に相談しようと思った。
 もう、自分だけで対処するのは、危険な域だと感じたからだ。
 昨日…というか、ついさっきまで一緒にいたけれど。ライラに連絡をつけてもらい、今日の夜も会うことになったのだ。

 九班の仲間たちが、寝入ったあと。
 いつものように、防御塀の前まで来て。でも今日は念入りに、誰もいないか確認して。
 ライラも、大丈夫だと首を縦に振ったから。ライラの背に乗って、防御塀を越えた。
 今日は直接、紫輝たちの、あの家へ向かうつもりだった。
 天誠もそこで待っている。でも。

 ライラがニャッと鳴いた。そして速度をゆるめ、足を止めてしまう。
 そこは、いつも天誠と落ち合っていた、あの泉で。
 紫輝は、岸辺に座り込むライラの正面に膝をつき、言った。

「どうしたの? ライラ。今日は、俺たちの家に行くんだよ。もしかして道順、忘れちゃった?」
 すると、ライラは。猫のくせにちょっと垂れ気味な目元を、キリリとさせて。ひそめた声で言った。

「紫輝、つけられている」
 ライラは、自分のことを『おんちゃん』と呼ぶのだ。
 なのに、口元の柔らかいムニムニした部分まで引き締めて、鋭い眼差しで紫輝と呼ぶなんて。

 それって、まるで。まるで…。

「…天誠?」
 こっくりと、ライラはうなずく。
 え? いやいや。なんで天誠が憑依しちゃってんの?

「なに? なんなの? 天誠なの? つけられてるの?」
「ライラが…なんか、ついてくるぅって言うから。泉に行けと言った。家がバレるのはまずい」
「天誠、俺、月光さんに目ぇつけられて。なんか、怪しまれているみたいで。だから天誠に相談しようと思って。あぁ、どうしよう。バレてるのかな?」
「落ち着いて、兄さん。事情はわかった。とりあえず、そこにいて」
 天誠と話しているけど、声がライラだから、いまいち、しっくりこないが。
 紫輝は神妙にうなずいた。
 すると、ライラがひとつまばたきして。目を開けると。

 もう、キリリライラはいなかった。

 いつもの垂れ目の、口元ゆるゆるムニムニの、のんびりライラだ。
「ライラ、ライラ…ったら。なんて。なーんて、チートなんだっ!」
 紫輝は大興奮して、ライラの首元にがっしり抱きついた。
 白い毛が、頬にわさわさ当たって、チョー気持ち良い。

 人の生気を吸って、紫輝のことを守ってくれたり。紫輝を乗せて遠い距離を移動してくれたり。抜けた爪を通して天誠と意思疎通ができたり。そこまではわかっていたけど。
 まさか、ライラを介して、天誠と話ができるなんてっ!
 チート過ぎる。やばくね? ライラがいれば、マジ無敵なんですけどぉ。

「ちーと? それって、四角くて、きいろくて、おいしいやつ? あたし、好きよ」
「それは、チーズ」
 紫輝は、ライラ相手でも容赦なくツッコむ。
 チーズは発酵食品で、腸にいい。
 しょっぱいから、少ししかあげられないけど。ライラは結構好んで食べていた。なんて、思い出す。
 つか、チートとチーズは違います。

「ライラ、チーズ食べたいの? でもたぶん、この世界にチーズはないんじゃないかな?」
「この世界にもチーズはあるよ、紫輝」
 突然答えを返され、紫輝はひえっと首をすくめる。
 おそるおそる振り返ると。ピンクの羽を広げた月光がいた。

「チーズは保存食として重宝する。でも、鮭に負けない高級品だ。それを猫に食べさせるとはね」
 月光はいつものように、にっこり笑っているけれど。
 もう、有無を言わせない迫力を感じる。
 怖ぇ…誤魔化しきれないよぉ、天誠。

「ほ、ほんの、ひとかけらです」
 なんか、言い訳にもなっていない。
 月光も、そんな話を聞きたいわけではないのだろう。無言で笑みを深めた。

「ふーん、ここが堺と出会った泉? 紫輝はここで、体洗ったりしてるんだぁ」
 はぁ、と月光がひとつため息をついた。
 そして、笑みを引っ込めると。鋭利な視線を紫輝に向ける。

「もう、単刀直入に言うよ。紫輝、安曇眞仲と会わせてくれないか?」
 ドキリと、心臓が驚愕に震えた。

「どうしても、安曇に聞きたいことがある。誰にも聞かせられない、秘密の話だ。紫輝がもし、手裏の間者で、安曇と通じているとしても。今日は見逃す。今、ここにいるのは、将堂軍右側近の瀬来月光ではなく、ただの月光だ。だから、お願い。安曇眞仲に会わせてくれ」

 切羽詰った様子の月光を見て、紫輝は、弟の危機を感じてそわそわした。
 でも、これほどの真剣さをにじませる月光相手に、嘘や誤魔化しは通用しないだろう。
 月光が眞仲に害をなすなら、ライラに生気を吸ってもらうしかない。
 味方にそれをするのは躊躇われるが。
 眞仲を守るためなら…。愛する弟を守るためなら、仕方がない。

「兄さん、そんなに毛を逆立てて威嚇しなくても、大丈夫だよ」
 背中から、腕を回して抱き締められる。
 紫輝は、驚きすぎて、涙が出た。
 だって、ここにいてはいけない人物が、今、自分を抱き締めているから。

「っ眞仲…なんで? 来ちゃ、ダメだ」
 月光の前だから、紫輝は天誠を眞仲と呼んだ。

 紫輝は月光から守るため、眞仲の前で両手を広げる。
 小さい紫輝の後ろでは、大きな眞仲を隠すことはできないけれど。
 眞仲は、今は金髪ではない。なにをどう隠せばいいのか、紫輝にはもうわからなかったけれど。

 眞仲と月光を会わせてはいけないと、本能的に思ったのだ。

 かばうように、黒装束の男の前で手を広げる紫輝の行動に、月光は驚きを隠せなかった。
「おまえが、安曇眞仲? 馬鹿な…おまえは…」
「俺が、安曇眞仲だ。俺の話を聞きたいのだろう? 瀬来月光」

 威厳ある、冷たい声の響きで言われ。
 月光は、今、思ったことをのみ込んだ。
 月光にとって、本題を聞き出すことこそが重要だったからだ。

「そう、聞きたいことがある。一年前、僕の子が行方不明になった。直後、黒いマントに身を包んだ二人組が逃げていくのを見た。後ろ姿だったが。黒マントは手裏軍龍鬼の代名詞、だろ? 安曇と不破だと、思っていた。ふたりが、真相を知っていると思い…接触出来たら問いただそうと、この一年、ずっと機会をうかがっていたんだ」

 悔しそうに、唇を噛む彼を。紫輝は目にし。
 月光が、ただ怖いだけの男ではないのだと知った。
 目の前にいるのは、いつもの優しい笑顔の月光ではなく。

 息子を失い、苦悩する父親だった。

「最近、安曇眞仲と接触したと、紫輝から聞き。紫輝を見張っていれば、おまえに会えると思ったんだ」
「真相は、知っている。ただ、覚悟をしてほしい。真実は、おまえの運命を変えるぞ」
「どうなろうと構わない。僕の子が戻ってくるなら。教えろ、安曇っ」

 父親が、一生懸命、自分の子供を探している。その悲壮さが、紫輝の心を揺さぶる。
 眞仲が、ここに出てきたということは、勝算があるということ。
 眞仲に害がないのであれば。月光に力を貸してあげてほしいと、紫輝は思った。

 紫輝は広げた手を下ろし。自分の腹を抱く眞仲の手に重ねた。
「一年前。手裏派の者が所有する山に、将堂の名軍師が隠れ住んでいると、情報が入った。瀬来のことだ」
 眞仲は紫輝に向かって話しているようで。動揺しつつも、紫輝はぎくしゃくとうなずいた。

「瀬来を手裏に引き入れようと思い、俺と不破は、その場所に向かった。だがその日、彼の家で大きな揉め事が起きたんだ。瀬来の子供が、何者かに殺されそうになっていた」
 そこで、紫輝は、ん? となる。
 どこかで聞いたような話。
 月光の子供は、龍鬼だと言っていた子だろうか? ピンクのふわふわした髪の子…というのは、己の想像だったかな。あれ?

「瀬来の子供は、龍鬼だった。殺戮の刃から逃れるため、自ら姿をかき消した」
「え、ちょ、ちょい、待て。ま、眞仲? その話は、そのぉ…」
「龍鬼の子供は時空を歪め、過去に飛んでいた。そして当時四歳の俺の目の前に現れる。その男の子が瀬来の子供である、五歳の紫月。そして、今は。俺の兄さんである、紫輝だ」

 再び、紫輝は息をするのも忘れるほどに驚愕した。
 自分が月光の子供だなんて、信じられない。

「待て、紫輝が紫月だとしても。なんでおまえが紫輝の兄? 弟? になるんだ? おまえは紫輝よりだいぶ大人だろうが?」
 月光の質問を受け、眞仲は紫輝の顔をのぞき込んで聞いた。

「紫輝、異世界の話は瀬来にしたか?」
「うん。大きな手に掴まれて、ここに来たって」
「紫輝の、この話は事実だ。正確には、異世界ではなく、三百年過去の話だが」
 今度は月光に向かって眞仲は話し始めた。

「三百年前? それは、有翼人種が誕生する前の…おとぎ話じゃないか」
「さすが、将堂の宝玉。博識だな。だが、それはおとぎ話ではない。俺と紫輝は、有翼人種のいない世界で暮らしていたのだから。紫輝は今年、ここに出たが。俺は二二九三年に、ひとりでここに出た。だから、俺は紫輝の弟だが。今は、七歳、年が上になってしまった。元は金髪碧眼だったが、ある事情でこのような姿に…」
 説明するのが面倒になったのだろう。眞仲は、だいぶはしょった。
 まぁ、確かに。
 三百年前に化学兵器が…とか。それのせいで誰かの羽をつけた…とか。他人には言いにくい話だしな。

「一年前、紫月が過去へ飛んだとき。ともにいた不破が、手を伸ばした。彼の手は過去へ届いたが。彼が掴んだのは成長した俺たち。つまり、紫輝を掴んだ大きな手というのは、不破の手だった。だが、紫月を追ってきた手なので。紫月は紫輝だということなのだ」
 丸い瞳を見開き、月光が紫輝をみつめた。

「本当に…本当に君が紫月なのか? 僕の、紫月?」
「え、今の説明で納得できるの?」
 つか、一番、自分が納得できないっ。
 だって、月光要素が、己の中に見当たらないんですぅ。
 眞仲がその目で見てきたことだから、そうなんだろうけど。でも、えぇ?

 戸惑う紫輝の代わりに、眞仲が突き放す物言いで、月光に告げた。
「俺の話を聞いても、信じられないのならば、それでいい。紫輝は、俺だけの兄さんだ」
 紫輝の腹に置いていた手を、まさぐるようにして、眞仲はギュッと紫輝を抱き込んだ。
 だが月光は。紫輝の腕を引っ張って、自分の方へ引き寄せた。

「僕の息子だ!」

 月光は焼き尽くすかのような、苛烈な視線で眞仲を睨む。
 眞仲も、冷ややかに突き刺す視線を、月光に向けていた。
 弟であり、最愛の人と。
 父親であるらしい月光との間で。
 紫輝はひとり、おろおろした。
 つか、この事態に全くついて行けないよぉ。

「俺の、命に等しい兄を預けるのですから。今度こそ、そうして、しっかりと守ってもらわなくては困りますよ、瀬来月光」
 一触即発かと思われた、ピリピリムードだったのに。
 眞仲は穏やかに、月光に言った。

「よく聞け、瀬来月光。俺たちの利害は一致している。紫輝の命を危険にさらしたくないということだ。もしも、この件が公になり、紫輝が瀬来の息子だと知れたら。紫輝は再び命を狙われる。そうだろう?」
 渋々、月光はうなずきを返す。

 え、そうなの?
 なぜ、誰に命を狙われているのか、わからない。
 そういえば、紫月は誰かに殺されそうになったんだっけか?
 己のことながら、覚えていないので。半分他人事な、紫輝だった。

「紫輝の弟が、安曇眞仲であること。俺のことについては、すべて他言無用にしてもらいたい。なんの能力も持たない、過去から来た者。今は翼を持っていることなど、全部だ。その条件をのむなら、紫輝を瀬来に預ける」
「それは…将堂軍にとっては重要情報だ。僕には報告の義務がある」
「先ほど、ここにいるのは、ただの月光だと言っていたようだったが? それに、紫輝について語ったことは、それに匹敵するほどの、重要情報だったはずなのだが?」

 月光は、全身に入れていた力を抜き。眞仲の前で立ち尽くす。

 将堂一の軍師が、二の句が継げなくなる。その現場を見て、紫輝は弟の才覚を改めて思い知る。
 そして将堂軍の幹部を相手に、恐れを見せず、どころか威厳すら感じさせる眞仲を。感嘆の想いでみつめた。

「…承諾できないのなら、紫輝を手元へ置く。安曇と通じていると思われては、紫輝の安全が保てない」
 冷徹に、厳かに、有利を保ちつつ告げる眞仲に。月光は奥歯を軋らせる。
 だが一転、薄い笑みを浮かべた。

「語るに落ちたな、安曇眞仲。手元へ置けるなら、なぜ僕に紫輝を託すんだ? おまえは紫輝よりも『手裏軍幹部の安曇眞仲』という称号が大事なのだな?」
「不破や手裏軍から、兄さんを守るためだ。俺はなにより、兄さんの安全を優先しているっ」
 珍しく、眞仲が声を荒げた。
 弟が一番不快に思うこと、それは紫輝への気持ちを疑われることだ。
 弟の気質を理解している紫輝は、月光が思うような疑問は持たない。
 眞仲が、自分を窮地に陥れることなど、あり得ないからだ。

 絶対はない、と以前、眞仲は言ったが。この件に関しては、絶対だ。

「不破は、将堂の龍鬼…おまえの息子を手駒にし、将堂の崩壊を目論んでいる。瀬来、おまえには、俺の言葉の意味がわかるはずだ」
 月光が、殺気立つ、恐ろしげな表情をしているのを。紫輝は見て。
 なにやら不穏なものを感じるのだが。
 たかが将堂の底辺龍鬼が、将堂の崩壊につながるなんて、ないない。
 なんでこんな大きな話になるのか、全く、よくわからん。

「兄さんの無事と引き換えになるのなら、己の地位などくれてやる。だが今は、兄さんを守るために『安曇眞仲』の立場が、俺には必要なんだ。貴方が紫輝と暮らした五年より、はるかに長い十三年という歳月を、紫輝とともにしてきた俺が、兄さんを不利な状況に追い込むなど、あり得ない。ここは、俺を信用してほしい。いや、俺を信用しなくてもいい。紫輝の命を優先して動いてほしい。紫月ではなく、間宮紫輝として、今までどおり兄さんを、将堂軍に置いてほしいだけだ」
 眞仲の言葉に、月光はひとつ息を吐く。
 場の雰囲気が、少しゆるんだ。

「貴様の条件を受け入れる。元より…紫輝をおまえに渡す気などない」
 月光は紫輝の腕に腕を巻きつけ、しっかりホールドする。
 そして眞仲に牙をむいて、言い放った。
 桃色のうさぎさんが、一生懸命、虎に威嚇しているみたいだと。紫輝は思う。
 いや、フラミンゴだけど。

「それでいい。褒美に、良いことを教えてやろう。紫輝はホオジロが好きなんだ。な? 紫輝」
 眞仲にたずねられ、紫輝はうなずく。
 ホオジロは、小さい鳥なのに、托卵されたカッコウの子供を育てるのだ。
 養子である己の境遇と重ね、紫輝はホオジロが天誠や両親のように見えて、好きだった。

「俺が危険を冒してまで、おまえの前に出たのは。将堂の中に、紫輝の味方を作りたかったからだ。青髪なども味方ではあるだろうが。なにもかも理解していて、窮地のときには助けてくれる、強力な味方を。孤立無援の紫輝のそばに、置きたかった。それは、損得なしで守ってくれる、親のような無償の愛情を、紫輝に持つ者が望ましい。たとえ実の子でなくとも、愛情を注ぐホオジロのように。紫輝を守り、ときには温めて、寄り添ってほしい」
 眞仲の話を聞いて、月光が震えた。

「おまえにっ、言われなくても。紫輝に疑いが向かぬよう、僕がどのようにでも誤魔化してやる。今度こそ…紫輝が僕の息子であることを、隠し通してみせる」
 月光の言葉に、眞仲は重々しくうなずき。紫輝をチョイと手招いた。
 月光の腕をそっとほどき。
 紫輝は、弟の顔つきなっている天誠のそばへ行く。

「紫輝、問題が解決したようだな」
 そう。最初、紫輝は。月光に目をつけられたことを、天誠に相談するつもりだったのだ。
 ワタワタして、よくわからないうちに終わっているみたいだけど。

「天誠…でも、本当に大丈夫? 天誠に迷惑かけてない?」
 紫輝には、やっぱりわからないことが多く。不安だった。
 そんな紫輝の頭を、天誠が慰めるようにそっと撫でる。
 大きな手に包まれれば、途端に安心感が湧いて。ヘヘッと、笑みがこぼれた。
「大丈夫だ。兄さんはよくやっている。なにも不備はない。今日、俺はこのまま去るが。出生の詳しい話などは、これから彼に聞くといい」
 去ると言われ。紫輝は、心細くなり、眉尻を下げる。
 そんな顔をされると、天誠も名残惜しくなって。
 紫輝の跳ねた髪を指先でいじり。そして…ちらりと月光に目を向ける。

「兄さんのこと…よろしくお願いしますよ。お父さん」
「貴様、年上だろうが。お父さんとか言われたくないんですけどぉ」

 月光は、桃色の翼をハタハタと動かした。
 すごく嫌そう。
 留飲を下げた天誠は、ニヤリと笑うと。黒マントをひらめかせて、紫輝に背を向けた。
「またね、兄さん」

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