【完結】異世界行ったら龍認定されました

北川晶

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26 なんでもする

     ◆なんでもする

 大和のアドバイスを受け。紫輝は、天誠と連絡を取ることにした。
 湖の前では、人目につくので。
 屋敷の裏手にある山の中に、移動する。

「ここら辺で、大丈夫でしょう。俺は少し離れて、人が来ないよう見張っていますので」
 大和が離れていくのを見てから、紫輝はライラを座らせて。まず、ナデナデした。
 ライラに、頼りにしていますという気持ちで。
 ほっぺの辺りの長い毛を、梳いて。顎をこちょこちょして。御奉仕する。

「ではライラ。お願いします」
「あい。てんちゃんとおはなしします」
 二度まばたきをしたライラは。
 あの、キリリとした目つきになる。天誠憑依バージョンだ。

「紫輝」
 声帯は変わらないので、高い声だが。
 普段はおんちゃんと言うライラに、紫輝と言われたら。
 もう駄目。

「て、天誠ぃ…千夜が、千夜がぁ…」
 自分でもわかるぐらい、大粒の涙が、ボロボロ出た。

「あぁ、そんなに泣くな。今から紫輝の元へ向かうからな? すぐだ。待ってろ」
 まばたきをしたライラは、もう。猫のくせに垂れ目の、可愛いライラに戻っていた。
 一言だけだったけれど。天誠と話ができて、紫輝の胸は軽くなる。

「すぐに来てくれるって」
 紫輝はライラに笑みを向け。涙顔を隠すように、モフ毛の中に顔を埋める。
 彼のその言葉だけで、安心して。
 ざわざわしていた心が落ち着いてくる。

 話が終わったのを見計らって、大和がこちらにやってきた。
「ねぇ、大和。天誠がすぐに、来てくれるって言ってたんだけど。どのくらいかな? 三日? は早すぎるか?」

 立ち上がって、大和と向き合った紫輝は。
 自分で言って、恥ずかしくなって。ハハッと笑う。
 今、天誠は京都にいるのだ。三日は無理に決まってる。

 早く会いたいから、気が急いてしまうけど。
 でも、遠いところから来てくれるのだから。いつまでも待つつもりだった。

「いえ、三分後かと」
「え? 三分? 三分って、言った?」
 真面目顔で、大和があんまり思いがけないことを言うから。冗談なのだと思って。笑ってしまった。
 そんな馬鹿な。
 と思っていると…木々をガサガサかき分ける音が。

 ま、まさか。

「紫輝、会いたかった」
 暗がりから現れたのは、まさしく天誠っ。
 え、なんで?

「て、天誠」
 場所までも、わかっていたのか。天誠は、紫輝に真っ直ぐに向かってきた。
 闇に紛れるような、黒い手裏の軍服に。たっぷりとした、けれど、しっとり艶やかな長い黒髪。切れ長な目元に光る黒水晶の瞳。
 大好きな弟。そして愛する恋人。
 彼を目にして、紫輝は胸がぎゅーんと絞られたみたいな感覚になった。

 なんでここにいるの? とか。京都は? とか。とにかく疑問符だらけだったのだが。
 駆け寄ってきた天誠が、力強く抱き締めてくれたから。
 紫輝も強く、抱き締め返す。

 会いたかった。会いたかった。会いたかった。
 疑問はすっ飛ばして。会いたかった。

 溺れた者が、藁にすがるように。一生懸命、紫輝は天誠に抱きついた。
 彼の匂いや、受け止めてくれる厚い胸板、頼もしい腕の力を感じて。涙が出た。

「て、天誠。千夜が。千夜がぁ…」
 ボロ泣きで。また、同じせりふしか出ない。
 でも今度は、天誠が頬の涙を拭ってくれる。

「あぁ、紫輝。俺の前で、俺以外の男を想って、泣くんじゃない」
 両の手で頬を包まれ、紫輝の唇を、天誠は唇でついばむ。
 チュッと音をさせるキスで、紫輝をなだめて。それから深くくちづけた。

 天誠はキスをしたまま、その場に膝をつき。紫輝の背中を抱き寄せて、腿の上に抱え込む。
 身長差があるから、体をくっつけ合うのには、この体勢が一番いい。
 紫輝も正面から天誠と胸を合わせ。彼の体温や香りを、己と溶け合わせるように、身をすり寄せた。

 ほぼ二ヶ月ぶりだ。
 恋しかったし、欲しかった、その人が。思いがけなく、目の前に現れたのだ。
 そりゃ、燃え上がっちゃうよ。
 けれど。ふと我に返った。

 大和が見てんじゃね?

 紫輝は、いったん離れようとして、顔を引くが。
 天誠が、絡めた舌を離してくれない。
 舌先が痺れるほどに、口の中で複雑に絡む舌と舌。
 え、エロイんですけど。

「て…んっ」
「ん、まだ…もっとだ、紫輝」
 大きな彼の両手が、頭を包んでいて、唇を離せない。
 親指で、耳をくすぐられたり。丹念に上唇や、口腔の上顎なんかを舌で撫でられて。ぞくぞくしちゃって。
 それでなくても天誠に飢えていたんだから。
 た、勃ち、そう。

「や、大和に…見ら、れ、ちゃうよ」
「俺がいるのに、護衛なんか必要ない」
 ってことは、いつもみたいに離れて控えているのか?

「本当に?」
 紫輝は後ろを見やって、大和が見ていないことを確認して。ホッとする。
 ヤバめのマジチューしちゃってたからな。さすがに恥ずかしいだろ。
 気づくの遅いけど。

 後ろを向いたときに、天誠が紫輝の首筋にキスしたが。
「ちっ、今日は防具つけてんのか。邪魔だな、これ」
 革にさえぎられて、天誠の唇は紫輝の首筋を可愛がることはできなかった。

「紫輝。俺は、完全に欲求不満だ」
 眞仲の優しいお兄さん顔で、ド直球を投げ込まないでほしい。
 でも…。
「それは、俺だって…」
 紫輝が。初めて、自分から天誠と抱き合いたいと思ったのは、二ヶ月前。
 でも、そのときは。彼が戦場から離れる日で。
 睦み合うことはできなかった。
 その日からずっと、天誠とそうなることを、願い続けていたのだ。

 だから、紫輝こそ欲求不満で。
 場所とか状況とか関係なく、体を彼に全部預けたい気持ちになっていた。

「てんちゃん、またあたしを、わすれているでしょ?」
 しかし、横やりが入った。
 まさかのライラである。そして大和も出てきちゃった。

「これ以上は、ご容赦を。屋敷には、瀬来様をはじめ、敏感な方が多くおられるので…」
 それって、エロイことしたらバレちゃうってこと? ひえぇぇ。
 でも月光さんにみつかったら、確かに、なんか、怖いことになりそうだ。

「そこは、おまえがうまく誤魔化せ」
「安曇様か瀬来様、どちらかに殺されるのなら、俺は安曇様に殺されたい…」

 すごく従順そうに言っているが。
 大和も天誠も、頬を引きつらせている。
 回りくどいけど、つまり、大和は『嫌です』と言っているのだった。

「こ、殺されたりしないよ、大和。俺が守ってやるからな?」
「ありがとうございます、紫輝様」
 キラキラした目で、大和は紫輝をみつめた。
 紫輝の目には、大きな尻尾がぶんぶん振られるサマが見えていたが。
 天誠は、紫輝の脇腹に手を差し入れ、持ち上げて。紫輝を立たせた。

「ちっ、仕方ない。そろそろ本題に入るか」
 己も立ち上がると、紫輝の肩を抱いて、かたわらに置き。
 左側では、ライラが頭突きをかまして、天誠の脇腹にゴリゴリしている。
 天誠は慣れた仕草で、ライラの頭をナデナデし。
 彼も飼い主なので。千夜のようにライラのゴリゴリ攻撃に慌てることはない。

 それを大和は。はた目から見て。両手に花だな、と思うのだった。

「おおよそ、ライラの目で見ていたので、説明は不要だ。紫輝たちの間で、まだ、これからどうするのかという話は出ていないようだが。おそらく、ここにはもう、居られなくなるだろう。幹部級は、軍を長く不在にはできないだろうからな?」
 天誠は、そう切り出しつつも。紫輝の髪や肩や背中を、手で撫で繰り回している。
 彼に触れられているのは、嬉しいので。
 紫輝も、真面目な話だから、顔はキリリとしつつも。内心はウキウキしていた。

 やはり好きな人というのは、そばにいるだけで癒されるものなのだなと、紫輝はしみじみ感じ入っていた。

「でも、今の千夜に、身の振り方の話はできないよ。みんな、だから、その話はしていないんじゃないかな?」
「ん。それで、提案だ。奥多摩に俺の屋敷があるんだが…」
「奥多摩? 奥多摩って東京じゃね?」
「そうだ。だが、今は東京という地名はない。ざっくり、関東と言っている。あとは地域名だ。奥多摩、とか。府中、とか。しかし23区辺りの地名は残ってないぞ」
「そうなの? どうしてかな」

「これは憶測だが。ビルなど、金属でできた建物は、あの兵器で錆びて散った。23区や大都市は、一時荒廃したのだと思う。なにも残らず、人が生きるのも厳しくなったのだろう。だが更地に家は建てやすい。ほとぼりが冷めた頃に、関東では将堂が、関西では手裏が、土地をおさめ、発展したようだ」

 憶測とはいえ、天誠の話は『見てきました』とでも言うように、納得できるものだった。
「なるほど。じゃなくて。将堂の本拠地に近くて、危ないんじゃないか?」
「それが、意外と平気なんだな。紫輝、少しお勉強タイムだ」

 賢い人の、教えたがりモード、来たぁ。
 ま、でも。この世界で暮らしていくには、重要な話だろうから。紫輝は背筋を正して、天誠の話を拝聴する。

 先生、よろしくお願いします。

「将堂と手裏の領地境は、富士川だ。上流までずっとな。だが手裏は。富士川を越えて、田貫湖の辺りまで進軍している。将堂は、それ以上の進行を阻止するため、今の戦場で防衛しているわけだ。富士の東側には、愛鷹あたか連峰が伸びていて、そこは将堂が、がっちり固めている。ゆえに、進軍は難しい。では、西側はどうかというと、こちらも、樹海を基地化している将堂に阻まれ、攻略が難しい。というのが、現状な?」

 ここで戦え、と言われていたから。言われるままに、紫輝は戦ってきたわけで。
 地理的、とか。どこまでが領地、とか。なにも知らないなと思う。
 そろそろ真剣に勉強しなきゃ。とは思うけど。
 将堂と手裏、どちらの主張が正しい? という問題すら、まだわからないし。うーん。

 悩む間にも、天誠の講義は続いていく。
「富士川の上流から先は、長野の高い山脈に阻まれ、それが日本海まで続く。おおまかだが、富士川とその山脈の、北が将堂、南が手裏の領地となっている。今も昔も、山越えは過酷だから、人は登りたがらないものなんだよ。だが、それゆえ穴場になる。それで、奥多摩だが。案外穴場なんだよ」

 東京に話が戻ってきて、おおっとなる。
 紫輝は都民だったので、身近な話題、という気になるのだが。
 そんなふうに思っても、紫輝は、奥多摩には行ったことがないのだった。

「奥多摩は山深く。将堂の役人は常駐しない。税をおさめていれば、役人はなにも言わないものだ。役人と相対するのは部下だから。俺が将堂と会わなければ大丈夫。危なくはないよ」

 そうは言っても、将堂の領地に安曇眞仲の屋敷が…と思うと。心配してしまうではないか。
「話を戻すが。その奥多摩の屋敷を、高槻に譲る」
 紫輝はギョッとして、天誠を丸い目でみつめた。

「屋敷? い、家? いいの?」
 紫輝の感覚としては。家というのは、一生の中で、一度か二度の大きな買い物、というイメージだ。
 以前の世界で、紫輝が一生懸命コツコツ働いて、ようやく小さな家が買えるかな? というくらいのもの。
 それを、ポンと、会ったこともない人にあげちゃうなんて。

 天誠は、見上げてくる紫輝を、愛おしげに見やり。うなずいた。
「あぁ。兄さんの大切な人たちだ。それに、これからの件で有益でもある。俺のデメリットにはならない。そこに、高槻と青髪が住むよう、誘導しろ」
「ゆうどう…」

 つい最近まで、異世界から来た、とか言っていた紫輝が。この家に住んでください、なんて言うのは。あまりにも不自然。
 誘導なんてできるのか、という心細さで。情けなく声が震える。

「大丈夫、大和がなんとかする」
 そのための目付け役だ、という目で天誠が大和を睨む。
 それに彼は、了承の会釈をした。

「青髪のことも、なんとかしてやる。少し、俺に考えがある」
 家だけでもありがたいことだけど。
 千夜をなんとか、というのは。どういうことなのか? と紫輝は首を傾げる。

「なんとかって? 義手とか?」
「まだ、わからないが。見当はつけている。兄さんの力も必要ではあるのだが…」

「なんでもする」

 間髪入れずに、紫輝は天誠に、目一杯うなずいた。
 千夜のために、自分にできることがあるのなら、なんでもする。
 材料の調達でも、料理でも、洗濯でも…。

 自分ができることって、あまりないんじゃね?

「駄目だ。兄さんのなんでもは、俺のみ有効にしてくれないと」
 チューッと、こめかみにキスされて。
 すかさず大和は、横を向いてくれたが。
 紫輝が恥ずかしいことに、変わりはなく。
 つか、人前でしないでっ。
 顔が真っ赤になってしまうよぉ。

 もちろん、天誠は。真っ赤な茹でダコになる紫輝を、堪能したいわけなのだから。わざとだ。

「とりあえず、奥多摩でひと息つけ。兄さんの憂いは、俺がすっきり晴らしてやるからな」
「うー、弟がスパダリ過ぎて怖いぃ。でも好きぃ」
「俺も、兄さんが綺麗になってきて、怖いぃ。でも好きぃ…」

 ほぼ同じことを言っているのに。
 天誠は紫輝の耳元で、少し低いトーンの眞仲仕様で、甘く囁くから。
 色っぽさ全開で、困る。
 久々に、耳がこそばゆくなる現象を、紫輝は感じていた。

「綺麗とか、そんなこと言うのは、天誠くらいだっつーの」
 耳をかいて、紫輝はエロい空気を、カラカラ笑って吹き飛ばす。
『どうだかな』と言って、天誠は大和を睨み。
 大和は、ふたりから完全に視線を外すのだった。

「でも、やっぱり。天誠に相談して、良かった。まだ、どうなるのかわからないけど。千夜は、たぶん、将堂には戻れないんだろ? だったら、住む家が確保できるだけでも、安心するだろうし。俺の手柄じゃないけど、千夜になにかしてあげたかったから」
「馬鹿な。紫輝の手柄に決まってる。紫輝のお友達でもなきゃ、屋敷などやるわけない」

 いつでも兄を立ててくれる、優しい弟だ。

「ありがと、天誠」
「三日後に、俺もそこに行く。紫輝とともに、青髪と会う。そのつもりで」
 天誠が千夜に会う?
 なんとかする、ということと関係があるのかな?
 どうするのか。なにが起きるのか。紫輝にはわからない。
 今、聞いても。天誠は、たぶん教えてくれないのだ。

 ただ、彼を信じるしかない。天誠は自分に不利なことはしない。
 千夜にもそうだと、信じたい。

     ★★★★★

 名残惜しいが。紫輝は天誠と、いったん別れた。
 安曇眞仲を、屋敷に泊めるわけにもいかないし。だいぶ長い時間、外にいるので。月光にも心配されそうだし。
 天誠は、これから紫輝たちが行く屋敷の、諸々の手配をするというので。
 とりあえず離れなくてはならなかった。

 つか、紫輝の方が。離れたくない気持ちで、心がパンパンだった。
 もっと、イチャイチャしたかった。
 うー、自分が欲求不満になるなんて、考えもしなかったよ。
 でも、三日後に会える予定。それまで我慢、我慢。

「あ、そうだ。天誠はなんで、連絡する前に、ここにいたんだ?」
 屋敷への帰り道、天誠に聞きそびれたことを、大和に聞くと。
 彼はへらっと笑って、言った。

「元々、姫の目で見ていて、貴方の窮地は知っていたのです。いつでも動けるよう、やるべき仕事は片づけて、準備を整えていた。それで、本日、貴方に会いに行くと連絡を受けました」
「あぁ、それで、連絡を取れって助言してくれたんだ?」
「夜の散歩中に、お話ししようかと思っていたんですが。望月が来たのは、予想外でした。でもまぁ、良いタイミングというやつです」

 以前の世界の言葉を、上手に使う大和に。紫輝は笑みを向けた。
 天誠が、いつでも自分のことを想い、考え、動いてくれているのだと知って。

 胸に『愛してる』がどんどん降り積もっていく。それが、紫輝は嬉しいのだ。



     ◆幕間 紫輝と仲良くしたい幸直の話。

 幸直は、家柄もよく、人当たりもよく、顔もいいので。人に嫌われたことが、今まであまりなかった。
 嫌い…紫輝に、嫌われているとは思わないのだが。
 彼には、初対面時から、壁を感じていた。

 紫輝のことを知る、幹部連中は。総じて『いい子』だと言う。
 その裏を感じ取るならば。
 赤穂様は悪友的な。側近は弟的な。堺は憧れ的な。

 いろいろな顔を、持ち合わせているのだろうか?

 そうした情報を仕入れつつ、幸直は、彼に会いに行ったのだが。
 ものの見事に、一線を引かれてしまった。
 なんで? 幸直は首を傾げた。

 初対面なのだ。彼を怒らせる要素も、警戒させる要素も、ないはずだった。
 まぁ、紫輝は龍鬼だから。警戒心があってしかるべし、なんだけど。
 話とちがーう。
 赤穂様は、最初から突っかかってきた、生意気なガキだって。なんだか嬉しそうに、語っていたのに。

 俺にも、挑んできてもいいんだぜ。来い来い。

 とはいえ、その後の赤穂様と紫輝の手合わせを見て、ドン引きしたけど。
 雷龍は、人を殺さないのに、強い能力を持っている。
 お近づきになりたかったのだが。縁がなかったのかなぁ。

 そう思って、がっかりしていたが。
 思いがけず、赤穂様に、側近の護衛につけと言われ。その一団に、雷龍も含まれているのだと知って。
 内心、ウキウキしていた。

 任務自体は厳しい内容だったけれど。

 腕を斬られた兵士の、養生をさせるというものなのだが。それは、かなり難しいぞ。
 井上は名医だが。さすがに、命を取りとめられないだろうと思った。
 しかし、その怪我した兵が。
 自分が欲しいと思っていた、青い子で。
 廣伊も紫輝も、彼が特別な存在のようで。
 なら、自分もできる限り力になってやろうと。努力しました。

 そうしたら、一命を取り留めたって。すごい。
 この例は、今までないんじゃないかな?
 大概、その場で絶命してしまうからね。
 廣伊が生み出した、あの巨大アロエが良かったのだと、あとで井上から聞いた。
 へー、あれ、どんな化け物かと思ったけど。止血と殺菌消毒できるなんて、すっごいじゃん。

 それで、まぁ。なんとか、望月も回復して。
 紫輝とも、少し会話なんかして。お近づきになれたかな、と思っていたんだけど。
 やっぱり、望月は。自分が見込んだ兵士だけあって、強者の誇りを持っていたよね。

 幸直の経験上だが。強者であればあるほど、大きな傷を負って、戦えなくなったあとの絶望は深い。
 己の存在意義を、完全に見失うのだ。
 己はなぜ、ここで生きているのか、その迷路にはまり込んだ者は、いつまでもさ迷い続け。
 ひとり、打ちひしがれる。
 もしも妻子がいれば。家族を養うため、奮起することができるかもしれないのだが。
 望月は独身で家族もいなかった。
 致命的だ。文字通りな。

 ただ、望月には。廣伊がいた。
 彼らがどういう関係を構築しているのかは、わからなかったが。特別であるのは、わかっていたので。
 どう転がるかは、賭けだったが。究極の場面で、荒療治した。

 そうしたら、紫輝が。怒っちゃったんだよぉ。
 ふたりの友達を危険にさらしたと言って。

 いやいや、放っておいたら、危なかったんだよ? 自分らが見ていないときに、自死されるよりは、マシだと思うよ? 
 でも、紫輝は純粋な子だった。
 おそらく、こういう死線に、遭遇したことがない。
 側近も、話の中で、紫輝が平和なところから来たと言っていた。
 もしかしたら、戦の話など入ってこないくらい、遠い地方で。大事に大事に、育てられていたのかもしれない。
 この年まで、龍鬼の存在を隠していられるのは、珍しいことだからな。

 一応、側近の取りなしで、紫輝は納得してくれた。
 反対意見を受け止めることができる、柔軟な心を持っている、優しい子だ。
 頭も、いいのかも。そして能力値も高い。
 なにそれ。やっぱ、欲しいな。
 俺が指揮を執る奇襲隊に入れたら、いろんな場面展開ができそうだ。参謀としても、使えるかもしれない。

 なんて、考えていたら。側近が激怒してた。紫輝を泣かしたって。ええぇぇっ。

     ★★★★★

 ひと騒動のあと、望月は順調に回復している。
 ただ、痛みは、かなりひどそうだ。

 廣伊は、望月に生きることを強いた。
 それは、己の考えとしては、いただけない、としか言えない。
 痛み、というのは。あなどれないのだ。
 痛みは、本人だけが知るもので、他人にはわからない。
 わかると言えば、ふざけんな、と。痛い者は思うもの。
 痛みに関しては、誰も共感できない代物なのである。

 軽い頭痛も、本人が頭が割れるほど痛いと感じていれば、そうなのだ。

 望月が、どれほどの痛みを耐えているのかは、誰にもわからない。
 だが廣伊は、そこに目をつぶって。望月に生きろと言った。
 廣伊なら。
 戦い敗れた猛者たちを、何人も見てきた廣伊なら。
 そんなことは、口が裂けても言えないはずなのに。

 あそこまで感情的になる廣伊を見た幸直は、目を疑った。

 廣伊は、冷静沈着な鬼教官だ。感情ではなく、思考で動く性質。
 幸直が、あの場を廣伊に託したのも。廣伊なら論理立てて、望月を説得してくれると思ったからだ。

 ふたを開けたら、まさかの、あの事態だが。

 感情が先走るほど、望月が特別だということか。
 そうなのだろうな。

 まぁ、終わったことを、グダグダ言っても仕方ないし。ふたりはそれなりに、折り合いをつけているようだから、それ以上言う筋合いはないが。
 本当に、今回の任務は。己の思い通りにいかないことばかりで。幸直はため息が出てしまう。

 紫輝との仲も、思うように縮まらないし。
 だが、くじけてばかりはいられない。
 幸直は前向き精神で、もう一度、仲良し大作戦を紫輝にぶちかましたかった。

 紫輝は。廣伊と千夜が散歩をしている、そこからだいぶ距離を開けて、彼らについていっている。
 己の感情を押しつけるな、みたいなことを言ったから。
 気にして、望月に話しかけられないのかもしれない。
 可哀想。
 話しかけたいな、とは思うのだが。紫輝はひとりではないのだ。
 大概、大和という子が、紫輝の後ろにくっついている。

 あの子。紫輝の班員で、雑用要員でついてきたけど。
 友達という距離感ではない。
 だけど側近や廣伊が近づくと、さりげなく離れる。
 けれど、一定距離から離れない。

 人懐こい印象、影が薄い、出張らない。
 その性質って、側近子飼いの、隠密みたいだな。
 あ、もしかして、側近が紫輝につけてる隠密なのか?
 なんか、あの側近の、紫輝に対する執着を見ると。あり得るかも。
 でも、紫輝に隠れて隠密つけたら、あとで怒られると思うよ、側近。

 まぁ、いいや。あれが隠密なら、紫輝に話しかけても邪魔はされないだろう。
 そう思い、紫輝に近づいた。
 案の定、大和は少し距離を置く。

「幸直は龍鬼のこと、どう思ってる?」
 話しかける前、なんの脈絡もなく、唐突に、紫輝が幸直に聞いた。
 まだ、目も合っていないのだ。
 でも、幸直は、と言うのだから。己に聞いているのだ。

「いきなり、なんだよ? 今、話しかけようと思ってたのに。そっちから来るから、ビビったよ」
「うん。だから。なんで幸直は、俺に話しかけるんだろうな? って。気まずいのか? もう怒ってないし」
 ああぁぁ、いやいや。
 また線がビシッと引かれてますから。
 わかるんです、そういう心の距離。

「名家出身なんだから、龍鬼に近づくの、良く思われないんじゃない? なのに、ぐいぐい来るじゃん」
「言ったろ、ここで君に嫌われるのは得策じゃない」
「俺は、一兵士だよ。ここで別れたら、幸直とはもう会わない」
「そんなこと、言うなよ。俺は紫輝に会いに行くぜ。俺が上官になるかもよ? 紫輝を取りたてるかも」

「俺は…廣伊の下がいい」
 若干、唇が突き出ている。
 怒っていないというけど。怒ってるよね?

「幸直の言ったこと、頭ではわかるんだ。千夜の苦しみを、俺は理解できないんだろう。分けてもらいたいけど、きっと無理だよね。千夜が俺を避けているのも。幸直が言ったのが正解だからかも」
 あぁ、望月と話せていないから、拗ねているんだな。
 頭ではわかっていても、心で納得しないから、八つ当たっているわけだ。

 可愛いな、おい。

「望月には、時間が必要だ。待つしかない」
 紫輝は、小さくうなずいた。
 十八歳と聞いたけど…心細そうにしていると、十代前半に見える。
 幼い。でも憂い顔は、どこか色気があるな。危うい。

「龍鬼の話だが。廣伊も堺も、長年付き合っている、大事な友達だ。名家だからって、俺の交友関係について、誰にもグダグダ言わせねぇよ」
「やっぱり。言われたこと、あるんだ?」
 おそるおそるという感じで、聞いてくる。

 ふむ。重鎮に、なにか言われたのかもな?
 年寄りは頭が固いし、龍鬼を戦の駒としか見ない傾向がある。
 人間扱いじゃないんだよな。胸糞悪い。
 だが、そういう風潮が、根強く残っているのも事実だ。そこは有耶無耶にはできない。
 龍鬼なら、いずれ直面する問題だろうし。

 にがいリンゴなのに、甘いよと言うのは。紫輝のためにならない。

「それは、仕方ねぇ。跡取りが、龍鬼と接して、子供に影響出たらどうするのっ、とか興奮してたね。奥さんとか母とかは。女性はそういうのに、過敏だ。でも言われても、俺は聞かねぇ」
 言い切ると、紫輝は。ほんのり微笑む。
 己の言葉が嬉しかったみたいだ。よしよし。

「廣伊は、前にも言ったが、初陣のときの教育係だ。俺の父は当時、右軍総司令官で。ま、親の七光りで、俺は入軍当初から幹部候補だった。いきなり第八大隊長をさせられたんだよ。廣伊は、俺が一人前になるまで、補佐としてついてくれた。剣術には自信があったけど。軍を統率するのは、また別の能力がいる。剣術同様、戦術も力押し一辺倒だった俺に。廣伊は、人員配置の重要性や、戦場での状況の読み方や、効果的な押し引きなど、いろいろ教えてくれた。今でも、戦況が不利になると、俺が出れば勝てるだろ、なんて安易に思っちゃうんだが。人を使って隊を組み直すのも、上官の仕事だって。廣伊の言葉を思い返して自戒している。俺にとっては、大事な先生だ」

「そうなんだ。廣伊はやっぱり、すごいんだな?」
 ピカッとした笑顔を、紫輝が見せてくれて。
 幸直は、廣伊さまさまだと思った。

「堺は、幼馴染みだった。堺の父親は、将堂の幹部だったから。右軍総司令官だった父に連れられて、よく時雨家に行ったんだ」
 幸直は、当時のことを思い返す。
 まぶしい子供時代。

 そして取り返しのつかない、にがい思い出だ。

「堺は、俺の一歳上なんだけど。当時は、まだ背も体も小さかった。俺が五歳で、堺は六歳のときかな。親には、おとなしく部屋で遊んでいろと言われたが。つまらなくってさ。外に出て、木登りしたわけ。堺は、危ないとか、怒られるよ、とか。忠告してたんだけど。子供のうちはそんなの、聞く耳持たないじゃん? 木の下で、うろうろオロオロしていた堺も、そのうち俺と一緒に遊び始めて。親に言われたことなんか、すっかり忘れた。そうしたら、落ちたんだよ。案の定?」
「…木から?」
「あぁ。結構な高さからな。堺は龍鬼の力で、氷の滑り台を作ってくれて。俺は無傷で、地上に降りたんだ」

「そっか。良かったな、堺がいて」
「うーん。でも、その現場を見た堺の父親が、烈火のごとく怒り狂ってさ。今まで、全開の笑顔で遊んでいた友達が、父親の前で土下座して謝った。その姿が、すごく悲しくて。…俺は泣いたよ」

 堺の父親の態度は、尋常ではなかった。
 美濃は、将堂の傍流で。その子息を、危険な目にあわせたと、そういうことかもしれなかったが。
 おそらく、それだけではなかった。
 躾という名で、喜々として、堺を痛めつけていた。
 幸直を、龍鬼の力で救った、という。良い面には、一切目を向けず。
 もうその辺で、という父の取りなしにも目を向けず。
 己の感情を、そのまま堺に向けていた。

 その醜悪さが恐ろしくて、幸直は泣いたのだ。
 戦慄したのだ。

 龍鬼が鬼なのではない。
 幼気いたいけな子供に怒りを向け、顔をゆがめる父親の方こそ、鬼に見えた。

「次に堺と会ったのは、将堂軍に入ったあとだ。堺は七歳で初陣だったから、俺が十五で入軍するまで会えなかった。でも、再会したときには、もう。あの能面顔が出来上がっていた。どんなに笑わそうとしても。昔のように接しても。そっと微笑むだけ。彼が龍鬼だったから、子供同士のことでは済まなかったのだと、そのとき知った」

 普通なら。身分は多少影響するが。子供同士の喧嘩でも、それほどあとは引かないものだ。
 しかも、喧嘩でもなかったし。無傷だったし。むしろ、堺のお手柄だったのだ。

 でも、堺の父親は、堺が龍鬼の能力を美濃の子息に使ったことが、許せなかったようなのだ。
 龍鬼の立場をわきまえろ、とか、なんとか。
 本当に、余計なお世話。
 当の本人がありがとうございますって言ってんのに、聞きゃぁしない。

 そういうところが、尋常でないのだ。

「七歳で初陣って、早すぎ…だよね?」
 紫輝は、たまに、自分の常識がこことは違うのを、自覚しているようで。確認してくる。

「あぁ、早いとも。しかも堺は。動植物を愛でる、心優しい子だったし。剣より、本が好きだったしね。堺の初陣を知ったときは、あの子が死んじゃうって。父に猛抗議したもんだよ。大きな口を開けて笑う堺を、想像できるか? 幼くて、おかっぱだったから、無邪気な女の子みたいで。本当に、すっごく可愛かったんだよ」

「えぇ、いいな、幸直。そんなの、見たいに決まってんじゃん。しゃしん…はないのか」
 子供の頃の堺を見たいと、無茶を言い。紫輝は、とほほと肩を落とす。
 しゃしんって、なんですか?

「その笑顔が、龍鬼であるせいで、凍りついてしまったのだと思うと。なんつぅか。胸が痛いよな。だから俺は、いつだって、堺の友達でありたいと思っているんだ。この頃は、ウザがられるが…」
 あぁ、という半目で紫輝が見る。
 えぇ? そんなに、俺、ウザい?

「廣伊も堺も、善良な人間だ。ただ翼がないだけで。龍鬼だからって理由で、敬遠したりするもんか。もちろん、紫輝のこともな?」
 幸直は感じていた。廣伊と堺の話のときは、紫輝はかなり友好的になる。
 龍鬼の話が、不快なのではないのだな。

「ごめん。龍鬼ってことが理由で、いろいろあったから。幸直が、どう思っているのか、知っておきたかったんだ」
「なるほど。風邪当たりが強いからな、龍鬼は」
 笑いかける紫輝の顔が、なんの含みもなさそうだから。
 なんとなく、彼が引いた一線が、ゆるんだように感じる。

 今まで話した中で、紫輝が一番気に掛けていた言葉は、なにか。
 名家、か。
 名家の重鎮に、なにか言われたかのように感じ。己にも、そうではないかという、疑いや恐れを持っていた?
 でも。赤穂様や側近には、心を開いている。
 名家が引き金では、ないのか。
 なら、己と赤穂様のなにが違う?

 彼らは、紫輝の線の内側にいるのだ。
 廣伊も、堺も。
 どうしたら、そちら側に行ける?

 幸直はそう思い。一歩踏み出す。

 そこに。紫輝の内側に踏み込む、軍靴の足先が目に入る。

「紫輝、瀬来様が呼んでるぞ。夕飯は何食べたい? って」
 大和が、紫輝の背後に立っていた。
 いつの間に?
 深く考え過ぎていたか? たかが隠密の気配を、取りこぼすなんて。

 それよりも。彼は紫輝の内側だと、主張しているのだ。
 外側にいる幸直を、挑発している。

 幸直は奥歯を噛んだ。
 これは被害妄想ではない。そういうの、わかるので。

「えぇ? ここに来て、良いものばかり食べているから。塩むすびの生活に、戻れなくなりそうだよ」
 ははは、と笑いながら大和と去っていく紫輝の背中。
 仲良くは、なれたかもしれないが。
 彼の内側には、入れなかった。
 なんでかな?
 なんで、一兵士の紫輝が、これほど気になるのかな。
 赤穂様のお気に入りだから? でも、別に。同じ赤穂のお気に入りである、側近とは、仲良くなりたいなんて思わない。

 だけど。紫輝は、手元に欲しくなる。
 そう思わせるなにかが、紫輝にはあるのかもしれないな?

 とりあえず。夕食の時間。食器を片付けに廣伊が席を立って、望月とふたりきりになったとき。言っておいた。
「そろそろ、紫輝と話してやったら? 彼、しおしおしてるよ」

 望月は、なにも言わなかったが。ま、心には届いているだろう。

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