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44 初夜…何回目? ★
◆初夜…何回目?
祝言とクリパを無事に終えた、紫輝と天誠とライラは。公会堂を出て、本棟に戻った。
屋敷で、すみれに衣装を脱がせてもらって。浴衣に半纏という軽装になると。ようやく肩の荷が下りる。
そして、まずライラをねぎらった。
「ライラ、お疲れ様。今日はおとなしくしてて、えらかったなぁ?」
「おんちゃん、あたし、ポンポンぱんぱんよぉ」
人の生気が食事であるライラは、宴席でみんなが発していた陽の気を、つまみ食いしていたのだ。
美味しい食事にありつけて、ライラは超ご機嫌さんである。
「そうか。じゃあ、もうねんねしていいぞ」
ライラの赤いリボンを外してやると。彼女はライラ専用ベッドに入り、ひと回りぐるりとしてから、ドシンと横たわった。
豪快だな。
寝室にある小さなテーブルには、ふたりの二次会用に、軽食が並べられていて。衣装を受け取ったすみれと、軽食を並べた橘が、一礼して部屋を出て行った。
「じゃあ、ささやかながら、二次会を始めますか」
天誠は、自分のコップにはワインを注ぐが。紫輝には、お茶の入った湯飲みを手渡す。
「えぇ? 俺もワイン飲みたいぃ。祝言あげて、大人の仲間入りしたのにぃ」
「駄目だ。お酒は二十歳になってから」
唇をとがらせつつも。紫輝は天誠と乾杯した。
善き日に、喧嘩してたら、つまらない。
「まぁ、でも。さっきの日本酒は、ヤバかったからいいや。酒って…あんま美味しくないかも?」
「美味しいというより、喉を熱くする刺激を楽しむ感じかな。酔いが回ってくると、それが癖になるんだ。あと、つまみと酒を交互に飲むと、美味いと思う瞬間もある。まぁ、初心者の意見だが」
「天誠でも初心者?」
「俺だって二十代だぞ。五十代の酒のエキスパートからすれば、若造の飲み方だって鼻で笑われるさ」
「ふーん、それより、それより。早く食べたいものが、ありますよぉ??」
紫輝と天誠は、今日のメインディッシュを手に取り、乾杯のときのように合わせた。
「唐揚げにカンパーイ」
唐揚げを持って、肉の部分を、天誠の肉と合わせたのだ。
骨の部分を紙で巻いて、手を汚さないように配慮してあるところが、以前の世界風だ。
そして、満を持してガブリといった。
醤油としょうがとニンニクのたまらないハーモニー、そして外側カリカリ、中はジューシー。
「これだ、これだ。うんまーい」
「やべぇ、地鶏だから、身がぷりぷりして、サイコーだな」
唐揚げは、共食い的な嫌悪感があるようなので、パーティー会場では出さなかったのだが。
クリスマスだから、どうしてもチキンが食べたくなって。橘にお願いして、揚げてもらったのだ。
なんでだろう、この日はコレを食べるべき、と言われると。食べたくなるものなんだよな。
ウナギとか、誕生日の寿司とか。
あぁ、でも。唐揚げ文化は浸透しないかもしれない。
だけど、いいんだもんね。天誠とふたりで食べるもんね。
「こんな美味しいものを食べないなんて、人生半分損してるよな」
「全くだな。これがあったら、まずい酒も進むのに」
「まずい酒なら、飲まなければいいんじゃね?」
「まずい酒、というのは。出たくない集まりの比喩だ」
あぁ、なるほど。
天誠も面倒くさいお付き合いがあるから、苦労してんだな。と、紫輝は同情してしまう。
「実は。三々九度のとき、酒を鼻に通すなって言われたこと、よくわからなかったんだ。だから思いっきり、鼻で息しちゃって。おえってなった」
「飲み慣れると、酒臭いのも、いい匂いってなるようだが。俺も、まだその域ではないよ。ただ、酒は飲み方の極意を掴むと、途端に美味しいと思うようになる。まずは飲み慣れることだが…紫輝はまだ駄目」
「なんでだよぉ?」
「可愛くて、色っぽくて、ヤバくなるからに決まってんだろ?」
「出たよ、天誠のブラコンモード、からの過保護」
ケラケラケラと、紫輝が笑う。
ん? 酔ってる?
三々九度の日本酒が、まだ残っているのか?
「なぁ、天誠。俺、そっくりな、小さい子がいるんだって。天誠が俺より若い、そっちの子を好きになったら、どうしよう…」
顔色や言ってることは、それほどおかしくはないのだが。
兄の威厳にこだわる紫輝が、こういう甘えることを言うのは、兄モードが酒でゆるんでいるからだろう。
いや。甘えるのは、どんどん甘えてほしいのだが。
酔いが進んで、ふにゃふにゃになったら。せっかくの初夜が台無しになるからな。
「今その子、六才だろ。そんなこと、あるわけない。というか、兄さんは俺より、七歳も年下になっちゃって。充分に若いっていうのに。紫輝より年下に手を出したら、ロリコン? ショタコン変態だ」
素知らぬ顔で、天誠は幼少時の紫輝に萌えていたことを棚に上げた。
紫輝だから、萌えたのだ。紫輝以外の者なら、同じ顔でも触手は動かない。
「まぁ、紫輝相手なら、ショタ力発揮してもいいけどな?」
紫輝は、天誠の言葉を聞いて、安堵した。
彼は、同じ顔の双子の弟が現れても、自分から目を離さない。自分だけを見てくれる。
自分だけのものだと。実感できたから。
「兄さんが、俺を試すなんて、珍しいな」
「俺だって、おまえを愛してるから。おまえの愛は、試すまでもないって、知ってるよ。溺愛。つか、溺れすぎ。でも、たまに見てみたくなるんだ。今、天誠はどんだけ溺れてんのかな? って」
基本、紫輝は。己に自信がない。
容姿も、極悪ノラ猫顔だし。体格もチビでガリだし。頭脳だって、天誠に遠く及ばない。
女性でないから、柔らかい体や、優しく包み込む深い愛情とか、可愛い仕草や、旦那をねぎらう家事力もないし。
愛する人の子孫を残すことも、できない。
だから、たまに。自分より若い子とか、女性の影が見えたら。
こんな俺でもいいのか? って、天誠に確かめたくなるのだ。
天誠が、自分によくやるやつ。
ウザ絡み、だけどね。
「悪趣味だな。溺れている俺を見たいなんて。ま、いつ見たって、溺れているのは間違いない」
そんなふうに言いながら、天誠はワインを飲むが。
なんでか嬉しそうに見えた。
「おまえは、兄貴に溺れる、困った弟だよ。客観的に見て、おまえはヤバいやつだ。俺を全力で縛りつけて、外堀埋めて、退路を断って、そうなるように仕向けて、離さない。俺が好きにならなかったら、犯罪一歩手前だぞ」
「いいや、完全に犯罪者だな。兄さんが俺を愛さなかったら。縛りつけて、閉じ込めて、強引に俺のものにしただろうからね」
「でも、そうはならなかった。俺がおまえを愛したから」
紫輝は天誠の黒髪を、スッと撫でた。
手触りの良い彼の髪が、紫輝は好きだ。
髪に触れられている天誠は、髪の先までも神経が通っている心地で。気持ち良さそうに、紫輝の手の感触を楽しんだ。
「兄さんは、なんで、こんなイタイ弟を好きになったんだ?」
自分で自分のことをイタイ弟と言う天誠を、紫輝は彼の頬を指でつついてなだめる。
イタイのは事実。
でも、紫輝にとって弟は、そういうものなのだ。
「んー、魂かな。おまえの魂が、幼い頃から俺を温めてくれたから。そして、どこの誰ともわからない俺を、求めてくれた。愛してくれ、癒してくれって、俺に叫んでいた。だから、愛したくなった。癒してあげたくなった。求めてくれた分、与えたくなった」
こんな言葉では足りないような気がして、紫輝は小首を傾げながら、愛の言葉を重ねていった。
「おまえは、ヤバいやつ。でも俺は。そんなおまえが、好きなんだ。それほどに求めてくれるのが、心地いいんだ。この場に居て良いって、思わせてくれる。天誠の良いところなんて、馬鹿みたいに、たくさんあるけど。一番は、やっぱり。おまえの魂が、俺の魂の形に、ぴったり、かっちり、気持ち良くはまったから。んー、ぼんやりしてて、わかりづらいかな。なんていうか、たぶん、唯一なんだ。天誠に出会えて良かったって。マジで思うよ」
つたない言葉で、一生懸命伝えた甲斐があったのか。
天誠は満足そうに、嬉しそうに、目を細め。慈愛深い眼差しで、紫輝をみつめた。
「俺は、貪欲だよ。きっと、一生分の愛じゃ足りない」
「ならば、好きなだけ。過去も、現在も、未来も、だ」
どちらからともなく、唇を寄せて、紫輝と天誠はキスをした。
そして唇を合わせたまま、天誠は紫輝を抱き上げ、ベッドへ連れて行く。
大事な大事な宝物を、丁寧に寝台に寝かせると、天誠は紫輝に覆いかぶさった。
「初夜、だな」
「初夜…何回目?」
あどけない目で、紫輝は天誠を見る。
天誠と、初めてエッチしたときも。初夜のような気分だったし。
結婚しようと宣言してから、初めて体を合わせたときも、初夜の気分だった。
あれから何度も、体を合わせたから。今日はもう、さすがに、初夜とは言えないのではないかと思うのだが。
天誠は言うのだ。
「何度、エッチしていても。結婚式のあとに初めてする情交は、初夜」
「なんか、俺たち、もしかして何回も結婚してね?」
「初々しいのは、いい刺激になる。だから何回でも、俺はウェルカムだが?」
羽で触れるような優しいタッチで、天誠は紫輝の頬や目蓋や耳にくちづける。
そして耳の際をかじりながら、甘く甘く囁いた。
鼓膜をくすぐるような、腰骨に響くような、久々の美声攻撃に、紫輝は頬を赤く染めた。
「せっかくだから、初めてのこと、してみる?」
紫輝の帯をほどきながら、天誠が提案してくる。
紫輝も天誠の髪の先にキスして、聞いた。
「初めてのことって? 大概のことは、もうしているんじゃないか?」
すると、首元を舌で舐めていた天誠が、顔を上げ。紫輝の唇を、親指でスッとなぞった。
「俺の、飲んでみる?」
黒い天誠の虹彩が、情欲の色を帯びて、きらめいている。
紫輝は、どきりと胸を高鳴らせた。
天誠の剛直を、口で愛撫したことはある。舐めて、高ぶらせるところまでは。
でも天誠が達する前に、剛直は紫輝の中におさめられた。
「外で出すのはもったいない。紫輝の中でイきたい」
なんて、いつも言われていたから。
飲みたい…わけではないけれど。初めて…は興味あるかな?
「うん。じゃあ、せっかくなんで…」
なにが、せっかくなのかは、ともかく。
紫輝と天誠は、互いの浴衣を脱がせ合い、一糸まとわぬ体で向かい合った。
天誠はベッドヘッドに枕を積んで、その上に寄り掛かる。上半身を少し起こした状態だ。
紫輝は、天誠の足の間に体を入れ込み。彼の剛直の前に顔を寄せた。
もう、すでに、芯を持っているモノを、紫輝は両手で握り。茎の部分に、舌を這わせた。
「あぁ、兄さんが俺のを…って思うと。いつも感動する」
紫輝は、手で剛直を揉みながら、舐め濡らしていく。びくびくと雄々しくみなぎっていく過程が、手の感触から伝わり。紫輝はどきどきしてきた。
「なんだよ。想像してた、とか?」
「めちゃめちゃ想像したよ。兄さんは口が小さいから。俺のは、喉の奥にまで入らないだろうな、とか?」
「リアルだ。確かに、無理かも」
剛直の張り出した部分を、甘く噛み。突端のつるりと剥き出しの部分を、舌で強めにえぐる。
そして口に含んだ。
歯で傷つけないように、気をつけていれば。この大きなモノが、喉の奥まで入るわけもない。上顎に擦りつけるのが精いっぱいだ。
「ん、んっ…んぅ」
舌で先端を撫でながら、上顎でくちゅくちゅくすぐると。天誠の先走りが、口の中に広がる。
己の唾液とまじりあって、紫輝はこくりと、彼をくわえたまま嚥下した。
「んっ、兄さん、いいよ。すごい、気持ち良い」
天誠が手を伸ばし、紫輝の頭を支える。
指先で、髪をすいたり、耳をくすぐったりしながら。紫輝を愛撫した。
紫輝は剛直を口にした状態で、彼を上目で見やる。
頬を上気させた天誠が、うっとり、己をみつめている。
「兄さん、可愛い俺の兄さんが、小さい口で、俺のを頬張って。美味そうに、もぐもぐしてるとか…。想像以上にエロイな」
チュプッと唇をすぼめて先端を吸い、口を離すと。唾液が糸を引いたので。紫輝は舌で、もう一度舐め取って。それから天誠に言った。
「なんだよ、今日は、弟の甘えモードなのか?」
「そう、天誠。今日はずっと、弟の天誠だ。今日は、紫輝の弟だった天誠が、夢に見た、最高の日だから。天誠でいさせて?」
少し考えてみた。
十七歳までの天誠は、紫輝にとっては、つい最近のことだから。想像はたやすい。
紫輝に好きだと告げた天誠は。好きと思った頃から、自分と一緒になることを夢見て、いろいろ夢想してきたのだな、と。
好きな人と、共にある未来を。夢見て、脳裏で描いてきたのだな、と。
そう思うと。弟が健気で、可愛い。
「想像の俺は、どういうふうに、天誠のことを可愛がったんだ?」
「ソフトクリームを舐めるみたいに、ぺろぺろして」
即答だった。
紫輝は苦笑して、天誠の言うように、剛直の先をぺろぺろする。
「ん、こうか?」
「可愛いよ、兄さん。あぁ、そんなにエッチに舌をとがらせて。こんなところ、誰にも見せちゃダメだぞ」
「はは、見せないよ」
軽く笑ったら、天誠の手が、紫輝の頭を剛直に寄せた。
くわえろと、うながされ。紫輝は従順に口に含む。
「さっきみたいに、上手にごっくんしてね」
そう言って、天誠は小刻みに腰を揺らした。
上顎に、熱い肉棒がこすられて。紫輝の体も熱くなる。
もどかしくて、足をこすり合わせる。天誠のモノを口にしているだけで、紫輝も高ぶってしまい。屹立が充溢していた。
「頭、ちっさ。もう、可愛くて、マジ、食べちゃいたい」
天誠の大きな手が、紫輝の髪をわしゃわしゃかき回す。
頭を撫でられたり、はねた髪の先をいじくられたりする、そんな些細な触感なのに。背筋がゾワリとして、体が高ぶるエッセンスになる。
「もう、出すよ。俺の、全部飲んでね。こぼしたら、ペナルティーだからな?」
え? 罰則あり?
そんなの聞いてないんですけどぉ? と思って、慌てていたら。
紫輝の口の中に、天誠の精が放たれた。
量が多くて、飲み込めきれないが。とにかく一生懸命嚥下して。
苦いとか不味いとか思う前に、喉の奥に流し込んでいた。
とにかく、喉が焼けるようだった。
プハッと、剛直から口を離し、息を大きく吸い込む。そして、こぼして陰茎の方に垂れてしまった天誠の精を、舌で丁寧に舐め取る。
達したばかりでも、紫輝が綺麗に舐め拭っていく刺激で、天誠のモノは再びみなぎっていった。
「上手に飲めたね、兄さん?」
子猫がミルクを飲んだあとみたいに、濡れている紫輝の唇を、天誠は親指で拭う。
その手の感触が気持ち良くて、紫輝は、酒に酔ったみたいな、ふわふわとした心地で、天誠の首に抱きついた。
「ん、飲んだ。なんか、まだ喉に日本酒の感じが残ってんのかなぁ? あんま、苦くなかったし。天誠の精を飲んだとき、体がジンと熱くなって。体中を、天誠のものが駆け巡っているみたいで…気持ち良い…」
コテンと、首元に頭を預けた紫輝を見て。
天誠は…どうしてくれようと思う。
「兄さん…想像の上を行く、ヤバエロ可愛いことするの、やめてくれる?」
普通なら、精液飲まされて、まずいとか、ふざけんなとか、怒ってもいいところなのに。
己の精液飲んで、ふにゃふにゃになって、しがみついて、気持ち良いとか言うなんて。
ここまでは、想像できませんでした。
興奮して、天誠は紫輝を押し倒す。
いつだって、最愛の兄を目の前にして、余裕なんかないけれど。
天誠は、紫輝の濡れた唇を、何度も、貪るように、ついばんだ。
「兄さんの、この唇に初めて触れたときから、この日を夢に見てきた」
「…この日?」
「結婚式だ。結婚して、唇だけじゃなくて、兄さんのすべてに触れて、愛し合うことができる日を…」
十歳の、紫輝のファーストキスを奪い。
兄弟で、唇にチュウしちゃダメなんだよ、と言われ。
それから全く触れていなかったわけではないけれど。
同意で紫輝に触れることができたのは、つい最近。その間、およそ十六年。
天誠は、それはそれは、我慢してきたのだ。兄の可愛らしい唇も。兄の、なにもかもを。
子供の頃に、漠然と思い描いた、兄との結婚。
一般的な結婚式場で、みんなに祝福されて…。
そんなものは、小学校卒業する頃には。サンタと同じくらいの、絵空事だとわかっていた。
それでも、夢を見ずにはいられなくて。
「あの頃、想像したものとは、だいぶ違うものになったが。あの頃、想像していた以上の、上等な結末だった」
紫輝の両親、ライラ、家族同様の者たち、友人が揃った、正式な、素晴らしい結婚式。
そしてなにより、兄が自分を愛して、伴侶として望んでくれたのだ。
なにをどう策略したって、紫輝の心だけは操れない。
そんな兄が、自分を愛してくれたことこそが、本当に奇跡だと、天誠は思うのだ。
「結末じゃない。俺たちのこれからは、始まったばかりだろ?」
紫輝に言われ、天誠はハッとする。
そうだ。結婚がゴールじゃない。
「そうだ。もっと、もっと、兄さんを幸せにしなきゃ」
「俺も、天誠を幸せにする。一緒に、幸せになろう」
温かで麗らかで、明るい光が降り注ぐかのような、紫輝の笑顔を見て。
天誠は、こんなところで満足なんかしていられないと思う。
兄を、世界で一番幸せな男にするのだ。
そして、自分も。
紫輝がそばにいるだけで、自分は幸せなのだから。
兄が己を幸せにするのは、楽勝だな。そう思い。
天誠は紫輝に、万感の思いを込めたキスをする。
愛してる。愛してる。
唇が触れるたびに、心の中で愛してると囁いた。
「ん、ん…てん、せい…愛して、る…」
唇が、ちょっと離れる隙を縫って、紫輝も天誠に愛を囁く。
最愛の弟に、想いを捧げるように。
思いを遂げるため、天誠は紫輝の体を性急に求めた。
首筋から胸へと舌でたどり、手は腰骨を撫で、後孔をほぐしていく。
天誠のモノを口淫していたときから、体を高ぶらせていたから。蕾も柔らかくなっていて。
紫輝のなにもかもが、自分を受け入れてくれているみたいで。天誠は歓喜する。
「兄さん、足を開いて」
紫輝の方から迎え入れてほしい、そんな気持ちで、天誠はうながす。
羞恥に頬を染めながらも、紫輝はおずおずと、膝頭を離し。天誠に、己のすべてを、無防備にさらした。
すでに天を向いている屹立も、柔らかくほころんでいる桃色の蕾も、白く滑らかな肌も、ツンと立つ小さな乳首も。紫輝の全部が、天誠を誘っている。
天誠は、紫輝の太ももに手をかけ、少しくの字に曲げると、剛直の先を蕾に押し当てた。
そして体重をかけて、ゆっくりと中へ挿入していく。
剛直の一番張り出した部分が、蕾の中に入り込むと。紫輝の内側をえぐりつつ、太く、長く、熱いモノが。中を支配していく。
「あ、あ、て、天誠…」
紫輝は体を満たす弟の熱を感じながら、彼に向かって手を伸ばした。
「あぁ、兄さん、兄さんっ」
根元まで己を入れ込んだ天誠は、紫輝の太ももから手を離し。紫輝をギュッと、腕の中に抱き締める。
黒曜石の瞳を潤ませ、優美に微笑み、手を差し伸べるその姿は…まるで慈愛の女神のようだった。
飛び立ってしまわないように、早く腕の中に閉じ込めないと。
「天誠ぃ、あっちい、ね?」
首にしがみついて、天誠の黒髪を撫でる紫輝は。からかうみたいに、耳元に囁いた。
そのまま、天誠が動かないでいると。物欲しそうに、腰をもじもじさせる。
「兄さんが、気持ち良いようにしていいよ。ほら…ここ、好きでしょ?」
張り出したカリを、紫輝の一番、敏感な、前立腺にあてる。
激しく動かず、ただ、あてるだけ。
でも中は、うずうずする愉悦を産み出し、紫輝をもどかしい快楽でさいなむ。
「んん、動いて。意地悪、しない、で」
「だめ。兄さんが、するの。気持ち良いって顔、見せて」
紫輝が天誠に目を合わせると、彼は淫靡な空気をまとい、蕩けるような眼差しで紫輝をみつめていた。
己を、快楽の虜にする、妖艶な悪魔のようにも。獲物にすぐにも食らいつきたい、獰猛な獣のようにも、見える。
それでも、ジンジンする体は、動かさないでいる方がつらくて。
彼の濡れた黒目に、じっくりとみつめられ。恥ずかしさで、頭が煮えそうだけど。紫輝は腰を動かした。
ズクリと、快楽のつまった蜜壺に触れ。紫輝は声高にあえいだ。
「あ、あぁ…っ」
でも、一度、その魅惑の悦を知ってしまったら。動きを止められなくて。
紫輝は無我夢中で、行為に溺れた。
「ん、ん…イイ、ここ、イイっ」
はしたないけど、イイところを、ずっとこすっていたくて、腰を揺らめかせてしまう。
天誠が攻めるほど、自分で動いても、強烈な刺激を得られないが。
逆に、じりじりした甘ったるい気持ち良さが、長く続いて。陶酔してしまう。
「薄く唇開いて、ピンクの舌がちらちら見えるのが、いやらしいのに、可愛いなぁ。ふふ、唇、引き結んじゃった。恥ずかしいの? 頬を真っ赤にして我慢してる兄さん、色っぽいね?」
解説しないで、と伝えられないほど。紫輝は没頭して、官能を追求している。
でも、もっと強い刺激が欲しい。
「も、天誠、動いて…天誠がするの、が、イイ」
「もう、もっと俺の下であえぐ兄さんを堪能したかったのに、そんなこと言われたら…」
いきなりグンと天誠に突き上げられ、紫輝は声にならない悲鳴を上げた。
「本能が、制御できないだろ?」
言って、天誠はニヤリと笑う。
完全に、捕食者のギラギラした目だ。
でも、そんな天誠を見ても、紫輝は脅えたりしない。
むしろ野性的なところが、良く見えてしまうから…自分も大概、彼に魅了されているなと思うのだ。
「じゃあ、兄さんの言うとおり、動いてあげるよ。弟は兄さんの言うことには逆らえないからね。その代わり…こっちには触れないよ?」
人差し指の背の方で、天誠は紫輝の屹立をそっと撫でる。そこは高ぶり切っていて、先走りの蜜で、びちょびちょに濡れそぼっていた。
少し触れられただけで、ギュンと性感が高まる。
「やぁ…そこも、触ってぇ?」
「兄さんは、もう中イきできるんだから。どっちも欲しいなんて、兄さんはそんな、エッチなこと言わないよね?」
両方をねだるのはエッチなことだと、天誠に吹き込まれ。
それを望んだことに、猛烈な恥ずかしさを覚える。
でも、紫輝は悩んだ。
自分は、エッチじゃないと思うのだが。
中でイくのは、気持ちが良いけれど、すっごく追い込まれないとならないから、つらい。
どうしたらいいのか?
「それとも、エッチなお兄さんだから、弟にいっぱいエッチなことされたくて、そう言うのかなぁ?」
「エッチじゃないっ」
売り言葉に買い言葉で、紫輝はつい返事をしてしまった。
天誠は、御満悦な笑みで、紫輝を見下ろす。
「じゃあ、上手に中イきしようね、兄さん?」
麗しの微笑を浮かべた天誠が、紫輝の屹立を再び指でなぞる。
はめられた、と紫輝は思うが。
下から上に向かうその接触に、紫輝は瞬時にとろけてしまう。
もう少し、強くこすって。
そうしたらイけるのに…。
でも無情にも指は紫輝から離れていってしまった。意地悪。
「大丈夫、前立腺を擦れば、すぐにイけるのはわかっているんだから。でも、俺がイくまで、お預けだけどな」
そうして天誠は。前後に紫輝を揺さぶり始めた。
紫輝は天誠の首にまたしがみついて、大きな波に耐え忍ぶ。
とろ火で炙られた紫輝の中は、天誠からもたらされる強烈な刺激に、すぐにも燃え上がる。
「兄さんが、俺にしがみついて、身悶えてんの…燃える。俺の、兄さん…」
「んん、天誠、好きっ」
セックス中は、ちょっと意地悪だけど。それ以外は、大きな愛で包んでくれる弟を、紫輝も愛している。
快楽だけではなく。
こうして抱き合うことで、溶けて、混ざり合って、ひとつになりたいと切望するほどに。
紫輝は、天誠の頭をかき抱き、深くくちづける。
舌先でくすぐり、ベロの腹の部分を舐め合って、しっかりと絡めて結びつける。
離さないで。離さない。
そんな想いを雄弁に語るように、体をくっつけ、撫でこすり。ふたりはひとつになろうとした。
そして熱烈に剛直が出し入れされて、そのときが唐突にやってきた。
「んぁっ…」
紫輝が、急に体を跳ね上げた。中がびくびくと収縮し、天誠のモノをきつく締めあげる。
紫輝はポーンと高みへ放り出され、達してしまったのだが。中だけが、長く長く痙攣していて。屹立からは、射精していない。
「くっ…イイ。兄さん、これ、ヤバ…っ」
「あっ、あっ、イイ、天誠…やぁ、イイの、続いて…あぁ、やぁぁ…」
紫輝に煽られるように、天誠も、びくびくとわななく中に、何度も突き入れ。紫輝の中に、何度も射精する。
すべてを出し切るように、搾り取られるように。
そして中イきが、ようやくおさまった頃には。紫輝はぐったりしていた。
でも、まだ。屹立は、しっかり勃起したままだ。
天誠はそこをやんわり握る。
「やぁ、イった、から…しないでぇ」
「でも、出さないと、つらいだろう? 俺に任せて」
ちゅ、ちゅ、と紫輝の柔らかい頬や目蓋に、癒しのキスを贈りながら、天誠は屹立をしごいた。
「ゆっくり、優しく、な?」
「あ、ん。や、ぁ」
むずかりつつも、紫輝は天誠の肩を撫で。身悶えるのに、天誠への愛撫も欠かさない。
兄の矜持なのかなと、天誠は思うが。
紫輝の兄の矜持って、本当に可愛いし、愛らしいし、たまらない。と感じ入るのだった。
「イ、く。も…ぅっ」
今度は、自己申告する余裕があったみたいで。言った直後、紫輝は達した。
屹立の先端から、ビュクッと白濁が飛んで。
天誠が、突端を親指で撫でるが、蜜口がパクパクとうごめくだけで、もう精は出なかった。
挿入したままだった天誠の剛直は、紫輝の絶頂で、また締めつけられる。
己を、まんべんなく愛撫するような、紫輝の中の脈動を。天誠は堪能した。
最高の刺激を受けてしまったら、やはりきざしてしまうが。
紫輝が限界なのを見て取って。
天誠は紫輝から、剛直を慎重に抜き取るのだった。
でも突端が出るまで、引き留めるように締めつけてくるから。天誠は理性をかき集めなければならなかった。
突き上げたいけど…紫輝を壊すわけにはいかないので。
「お疲れ様、兄さん。今日も、すっごく良かったよ。ありがとう」
疲労困憊の紫輝が、寝台に身を沈めている中。天誠は、紫輝の顔中に、感謝のキスの嵐を贈る。
天誠はいつも、己を受け入れてくれてありがとう、という心境なのだ。
なにせ、イタイ弟の自覚があるので。
「…なんか、変じゃなかった?」
中イきからのイきっぱなし、という衝撃に、紫輝はびっくりして目を回していたのだ。
というか、自分になにが起きたのか、よくわかっていない。
「なにも変なことはないよ、大丈夫。初夜だから、ふたりで、初めての体験をしただけさ」
安心させるかのように、優しい目でみつめる天誠に、紫輝はチュッと音の鳴るキスをした。
「本当? 天誠がいいなら、いいけど…」
いつもの感じではなかったから、紫輝は不安なのだ。天誠が満足できたのか、わからなくて。
でも天誠には。全然、怒った様子はないし。
むしろ機嫌は良さそう? 大丈夫?
「もちろんさ。最高の初夜だ」
しっかり彼がうなずいてくれたから。紫輝は、ふと天誠に笑いかけ。彼の二の腕を枕にして、満たされた心地で目を閉じた。
己の腕枕で、安心して眠りにつく兄を、天誠は見やる。
今日は朝から、長いイベントに出て。初めてのお酒も飲んで。濃厚な初夜セックスもしたから。
紫輝の電池は切れてしまったようだ。
愛おしくてならない兄を、天誠は指先でそっと撫でる。
つるっとした頬は、ずっと赤く色づいて、祝言の喜びを伝えていた。
小さな唇は、己のモノをくわえて、精まで飲んでくれた。
今は閉ざされた、黒い瞳は、ずっと自分をみつめてくれた。
なんて素敵な日。なんて最高な日だ。
「あぁ…手裏になんか、戻りたくない」
切実な本音をつぶやく天誠だった。
祝言とクリパを無事に終えた、紫輝と天誠とライラは。公会堂を出て、本棟に戻った。
屋敷で、すみれに衣装を脱がせてもらって。浴衣に半纏という軽装になると。ようやく肩の荷が下りる。
そして、まずライラをねぎらった。
「ライラ、お疲れ様。今日はおとなしくしてて、えらかったなぁ?」
「おんちゃん、あたし、ポンポンぱんぱんよぉ」
人の生気が食事であるライラは、宴席でみんなが発していた陽の気を、つまみ食いしていたのだ。
美味しい食事にありつけて、ライラは超ご機嫌さんである。
「そうか。じゃあ、もうねんねしていいぞ」
ライラの赤いリボンを外してやると。彼女はライラ専用ベッドに入り、ひと回りぐるりとしてから、ドシンと横たわった。
豪快だな。
寝室にある小さなテーブルには、ふたりの二次会用に、軽食が並べられていて。衣装を受け取ったすみれと、軽食を並べた橘が、一礼して部屋を出て行った。
「じゃあ、ささやかながら、二次会を始めますか」
天誠は、自分のコップにはワインを注ぐが。紫輝には、お茶の入った湯飲みを手渡す。
「えぇ? 俺もワイン飲みたいぃ。祝言あげて、大人の仲間入りしたのにぃ」
「駄目だ。お酒は二十歳になってから」
唇をとがらせつつも。紫輝は天誠と乾杯した。
善き日に、喧嘩してたら、つまらない。
「まぁ、でも。さっきの日本酒は、ヤバかったからいいや。酒って…あんま美味しくないかも?」
「美味しいというより、喉を熱くする刺激を楽しむ感じかな。酔いが回ってくると、それが癖になるんだ。あと、つまみと酒を交互に飲むと、美味いと思う瞬間もある。まぁ、初心者の意見だが」
「天誠でも初心者?」
「俺だって二十代だぞ。五十代の酒のエキスパートからすれば、若造の飲み方だって鼻で笑われるさ」
「ふーん、それより、それより。早く食べたいものが、ありますよぉ??」
紫輝と天誠は、今日のメインディッシュを手に取り、乾杯のときのように合わせた。
「唐揚げにカンパーイ」
唐揚げを持って、肉の部分を、天誠の肉と合わせたのだ。
骨の部分を紙で巻いて、手を汚さないように配慮してあるところが、以前の世界風だ。
そして、満を持してガブリといった。
醤油としょうがとニンニクのたまらないハーモニー、そして外側カリカリ、中はジューシー。
「これだ、これだ。うんまーい」
「やべぇ、地鶏だから、身がぷりぷりして、サイコーだな」
唐揚げは、共食い的な嫌悪感があるようなので、パーティー会場では出さなかったのだが。
クリスマスだから、どうしてもチキンが食べたくなって。橘にお願いして、揚げてもらったのだ。
なんでだろう、この日はコレを食べるべき、と言われると。食べたくなるものなんだよな。
ウナギとか、誕生日の寿司とか。
あぁ、でも。唐揚げ文化は浸透しないかもしれない。
だけど、いいんだもんね。天誠とふたりで食べるもんね。
「こんな美味しいものを食べないなんて、人生半分損してるよな」
「全くだな。これがあったら、まずい酒も進むのに」
「まずい酒なら、飲まなければいいんじゃね?」
「まずい酒、というのは。出たくない集まりの比喩だ」
あぁ、なるほど。
天誠も面倒くさいお付き合いがあるから、苦労してんだな。と、紫輝は同情してしまう。
「実は。三々九度のとき、酒を鼻に通すなって言われたこと、よくわからなかったんだ。だから思いっきり、鼻で息しちゃって。おえってなった」
「飲み慣れると、酒臭いのも、いい匂いってなるようだが。俺も、まだその域ではないよ。ただ、酒は飲み方の極意を掴むと、途端に美味しいと思うようになる。まずは飲み慣れることだが…紫輝はまだ駄目」
「なんでだよぉ?」
「可愛くて、色っぽくて、ヤバくなるからに決まってんだろ?」
「出たよ、天誠のブラコンモード、からの過保護」
ケラケラケラと、紫輝が笑う。
ん? 酔ってる?
三々九度の日本酒が、まだ残っているのか?
「なぁ、天誠。俺、そっくりな、小さい子がいるんだって。天誠が俺より若い、そっちの子を好きになったら、どうしよう…」
顔色や言ってることは、それほどおかしくはないのだが。
兄の威厳にこだわる紫輝が、こういう甘えることを言うのは、兄モードが酒でゆるんでいるからだろう。
いや。甘えるのは、どんどん甘えてほしいのだが。
酔いが進んで、ふにゃふにゃになったら。せっかくの初夜が台無しになるからな。
「今その子、六才だろ。そんなこと、あるわけない。というか、兄さんは俺より、七歳も年下になっちゃって。充分に若いっていうのに。紫輝より年下に手を出したら、ロリコン? ショタコン変態だ」
素知らぬ顔で、天誠は幼少時の紫輝に萌えていたことを棚に上げた。
紫輝だから、萌えたのだ。紫輝以外の者なら、同じ顔でも触手は動かない。
「まぁ、紫輝相手なら、ショタ力発揮してもいいけどな?」
紫輝は、天誠の言葉を聞いて、安堵した。
彼は、同じ顔の双子の弟が現れても、自分から目を離さない。自分だけを見てくれる。
自分だけのものだと。実感できたから。
「兄さんが、俺を試すなんて、珍しいな」
「俺だって、おまえを愛してるから。おまえの愛は、試すまでもないって、知ってるよ。溺愛。つか、溺れすぎ。でも、たまに見てみたくなるんだ。今、天誠はどんだけ溺れてんのかな? って」
基本、紫輝は。己に自信がない。
容姿も、極悪ノラ猫顔だし。体格もチビでガリだし。頭脳だって、天誠に遠く及ばない。
女性でないから、柔らかい体や、優しく包み込む深い愛情とか、可愛い仕草や、旦那をねぎらう家事力もないし。
愛する人の子孫を残すことも、できない。
だから、たまに。自分より若い子とか、女性の影が見えたら。
こんな俺でもいいのか? って、天誠に確かめたくなるのだ。
天誠が、自分によくやるやつ。
ウザ絡み、だけどね。
「悪趣味だな。溺れている俺を見たいなんて。ま、いつ見たって、溺れているのは間違いない」
そんなふうに言いながら、天誠はワインを飲むが。
なんでか嬉しそうに見えた。
「おまえは、兄貴に溺れる、困った弟だよ。客観的に見て、おまえはヤバいやつだ。俺を全力で縛りつけて、外堀埋めて、退路を断って、そうなるように仕向けて、離さない。俺が好きにならなかったら、犯罪一歩手前だぞ」
「いいや、完全に犯罪者だな。兄さんが俺を愛さなかったら。縛りつけて、閉じ込めて、強引に俺のものにしただろうからね」
「でも、そうはならなかった。俺がおまえを愛したから」
紫輝は天誠の黒髪を、スッと撫でた。
手触りの良い彼の髪が、紫輝は好きだ。
髪に触れられている天誠は、髪の先までも神経が通っている心地で。気持ち良さそうに、紫輝の手の感触を楽しんだ。
「兄さんは、なんで、こんなイタイ弟を好きになったんだ?」
自分で自分のことをイタイ弟と言う天誠を、紫輝は彼の頬を指でつついてなだめる。
イタイのは事実。
でも、紫輝にとって弟は、そういうものなのだ。
「んー、魂かな。おまえの魂が、幼い頃から俺を温めてくれたから。そして、どこの誰ともわからない俺を、求めてくれた。愛してくれ、癒してくれって、俺に叫んでいた。だから、愛したくなった。癒してあげたくなった。求めてくれた分、与えたくなった」
こんな言葉では足りないような気がして、紫輝は小首を傾げながら、愛の言葉を重ねていった。
「おまえは、ヤバいやつ。でも俺は。そんなおまえが、好きなんだ。それほどに求めてくれるのが、心地いいんだ。この場に居て良いって、思わせてくれる。天誠の良いところなんて、馬鹿みたいに、たくさんあるけど。一番は、やっぱり。おまえの魂が、俺の魂の形に、ぴったり、かっちり、気持ち良くはまったから。んー、ぼんやりしてて、わかりづらいかな。なんていうか、たぶん、唯一なんだ。天誠に出会えて良かったって。マジで思うよ」
つたない言葉で、一生懸命伝えた甲斐があったのか。
天誠は満足そうに、嬉しそうに、目を細め。慈愛深い眼差しで、紫輝をみつめた。
「俺は、貪欲だよ。きっと、一生分の愛じゃ足りない」
「ならば、好きなだけ。過去も、現在も、未来も、だ」
どちらからともなく、唇を寄せて、紫輝と天誠はキスをした。
そして唇を合わせたまま、天誠は紫輝を抱き上げ、ベッドへ連れて行く。
大事な大事な宝物を、丁寧に寝台に寝かせると、天誠は紫輝に覆いかぶさった。
「初夜、だな」
「初夜…何回目?」
あどけない目で、紫輝は天誠を見る。
天誠と、初めてエッチしたときも。初夜のような気分だったし。
結婚しようと宣言してから、初めて体を合わせたときも、初夜の気分だった。
あれから何度も、体を合わせたから。今日はもう、さすがに、初夜とは言えないのではないかと思うのだが。
天誠は言うのだ。
「何度、エッチしていても。結婚式のあとに初めてする情交は、初夜」
「なんか、俺たち、もしかして何回も結婚してね?」
「初々しいのは、いい刺激になる。だから何回でも、俺はウェルカムだが?」
羽で触れるような優しいタッチで、天誠は紫輝の頬や目蓋や耳にくちづける。
そして耳の際をかじりながら、甘く甘く囁いた。
鼓膜をくすぐるような、腰骨に響くような、久々の美声攻撃に、紫輝は頬を赤く染めた。
「せっかくだから、初めてのこと、してみる?」
紫輝の帯をほどきながら、天誠が提案してくる。
紫輝も天誠の髪の先にキスして、聞いた。
「初めてのことって? 大概のことは、もうしているんじゃないか?」
すると、首元を舌で舐めていた天誠が、顔を上げ。紫輝の唇を、親指でスッとなぞった。
「俺の、飲んでみる?」
黒い天誠の虹彩が、情欲の色を帯びて、きらめいている。
紫輝は、どきりと胸を高鳴らせた。
天誠の剛直を、口で愛撫したことはある。舐めて、高ぶらせるところまでは。
でも天誠が達する前に、剛直は紫輝の中におさめられた。
「外で出すのはもったいない。紫輝の中でイきたい」
なんて、いつも言われていたから。
飲みたい…わけではないけれど。初めて…は興味あるかな?
「うん。じゃあ、せっかくなんで…」
なにが、せっかくなのかは、ともかく。
紫輝と天誠は、互いの浴衣を脱がせ合い、一糸まとわぬ体で向かい合った。
天誠はベッドヘッドに枕を積んで、その上に寄り掛かる。上半身を少し起こした状態だ。
紫輝は、天誠の足の間に体を入れ込み。彼の剛直の前に顔を寄せた。
もう、すでに、芯を持っているモノを、紫輝は両手で握り。茎の部分に、舌を這わせた。
「あぁ、兄さんが俺のを…って思うと。いつも感動する」
紫輝は、手で剛直を揉みながら、舐め濡らしていく。びくびくと雄々しくみなぎっていく過程が、手の感触から伝わり。紫輝はどきどきしてきた。
「なんだよ。想像してた、とか?」
「めちゃめちゃ想像したよ。兄さんは口が小さいから。俺のは、喉の奥にまで入らないだろうな、とか?」
「リアルだ。確かに、無理かも」
剛直の張り出した部分を、甘く噛み。突端のつるりと剥き出しの部分を、舌で強めにえぐる。
そして口に含んだ。
歯で傷つけないように、気をつけていれば。この大きなモノが、喉の奥まで入るわけもない。上顎に擦りつけるのが精いっぱいだ。
「ん、んっ…んぅ」
舌で先端を撫でながら、上顎でくちゅくちゅくすぐると。天誠の先走りが、口の中に広がる。
己の唾液とまじりあって、紫輝はこくりと、彼をくわえたまま嚥下した。
「んっ、兄さん、いいよ。すごい、気持ち良い」
天誠が手を伸ばし、紫輝の頭を支える。
指先で、髪をすいたり、耳をくすぐったりしながら。紫輝を愛撫した。
紫輝は剛直を口にした状態で、彼を上目で見やる。
頬を上気させた天誠が、うっとり、己をみつめている。
「兄さん、可愛い俺の兄さんが、小さい口で、俺のを頬張って。美味そうに、もぐもぐしてるとか…。想像以上にエロイな」
チュプッと唇をすぼめて先端を吸い、口を離すと。唾液が糸を引いたので。紫輝は舌で、もう一度舐め取って。それから天誠に言った。
「なんだよ、今日は、弟の甘えモードなのか?」
「そう、天誠。今日はずっと、弟の天誠だ。今日は、紫輝の弟だった天誠が、夢に見た、最高の日だから。天誠でいさせて?」
少し考えてみた。
十七歳までの天誠は、紫輝にとっては、つい最近のことだから。想像はたやすい。
紫輝に好きだと告げた天誠は。好きと思った頃から、自分と一緒になることを夢見て、いろいろ夢想してきたのだな、と。
好きな人と、共にある未来を。夢見て、脳裏で描いてきたのだな、と。
そう思うと。弟が健気で、可愛い。
「想像の俺は、どういうふうに、天誠のことを可愛がったんだ?」
「ソフトクリームを舐めるみたいに、ぺろぺろして」
即答だった。
紫輝は苦笑して、天誠の言うように、剛直の先をぺろぺろする。
「ん、こうか?」
「可愛いよ、兄さん。あぁ、そんなにエッチに舌をとがらせて。こんなところ、誰にも見せちゃダメだぞ」
「はは、見せないよ」
軽く笑ったら、天誠の手が、紫輝の頭を剛直に寄せた。
くわえろと、うながされ。紫輝は従順に口に含む。
「さっきみたいに、上手にごっくんしてね」
そう言って、天誠は小刻みに腰を揺らした。
上顎に、熱い肉棒がこすられて。紫輝の体も熱くなる。
もどかしくて、足をこすり合わせる。天誠のモノを口にしているだけで、紫輝も高ぶってしまい。屹立が充溢していた。
「頭、ちっさ。もう、可愛くて、マジ、食べちゃいたい」
天誠の大きな手が、紫輝の髪をわしゃわしゃかき回す。
頭を撫でられたり、はねた髪の先をいじくられたりする、そんな些細な触感なのに。背筋がゾワリとして、体が高ぶるエッセンスになる。
「もう、出すよ。俺の、全部飲んでね。こぼしたら、ペナルティーだからな?」
え? 罰則あり?
そんなの聞いてないんですけどぉ? と思って、慌てていたら。
紫輝の口の中に、天誠の精が放たれた。
量が多くて、飲み込めきれないが。とにかく一生懸命嚥下して。
苦いとか不味いとか思う前に、喉の奥に流し込んでいた。
とにかく、喉が焼けるようだった。
プハッと、剛直から口を離し、息を大きく吸い込む。そして、こぼして陰茎の方に垂れてしまった天誠の精を、舌で丁寧に舐め取る。
達したばかりでも、紫輝が綺麗に舐め拭っていく刺激で、天誠のモノは再びみなぎっていった。
「上手に飲めたね、兄さん?」
子猫がミルクを飲んだあとみたいに、濡れている紫輝の唇を、天誠は親指で拭う。
その手の感触が気持ち良くて、紫輝は、酒に酔ったみたいな、ふわふわとした心地で、天誠の首に抱きついた。
「ん、飲んだ。なんか、まだ喉に日本酒の感じが残ってんのかなぁ? あんま、苦くなかったし。天誠の精を飲んだとき、体がジンと熱くなって。体中を、天誠のものが駆け巡っているみたいで…気持ち良い…」
コテンと、首元に頭を預けた紫輝を見て。
天誠は…どうしてくれようと思う。
「兄さん…想像の上を行く、ヤバエロ可愛いことするの、やめてくれる?」
普通なら、精液飲まされて、まずいとか、ふざけんなとか、怒ってもいいところなのに。
己の精液飲んで、ふにゃふにゃになって、しがみついて、気持ち良いとか言うなんて。
ここまでは、想像できませんでした。
興奮して、天誠は紫輝を押し倒す。
いつだって、最愛の兄を目の前にして、余裕なんかないけれど。
天誠は、紫輝の濡れた唇を、何度も、貪るように、ついばんだ。
「兄さんの、この唇に初めて触れたときから、この日を夢に見てきた」
「…この日?」
「結婚式だ。結婚して、唇だけじゃなくて、兄さんのすべてに触れて、愛し合うことができる日を…」
十歳の、紫輝のファーストキスを奪い。
兄弟で、唇にチュウしちゃダメなんだよ、と言われ。
それから全く触れていなかったわけではないけれど。
同意で紫輝に触れることができたのは、つい最近。その間、およそ十六年。
天誠は、それはそれは、我慢してきたのだ。兄の可愛らしい唇も。兄の、なにもかもを。
子供の頃に、漠然と思い描いた、兄との結婚。
一般的な結婚式場で、みんなに祝福されて…。
そんなものは、小学校卒業する頃には。サンタと同じくらいの、絵空事だとわかっていた。
それでも、夢を見ずにはいられなくて。
「あの頃、想像したものとは、だいぶ違うものになったが。あの頃、想像していた以上の、上等な結末だった」
紫輝の両親、ライラ、家族同様の者たち、友人が揃った、正式な、素晴らしい結婚式。
そしてなにより、兄が自分を愛して、伴侶として望んでくれたのだ。
なにをどう策略したって、紫輝の心だけは操れない。
そんな兄が、自分を愛してくれたことこそが、本当に奇跡だと、天誠は思うのだ。
「結末じゃない。俺たちのこれからは、始まったばかりだろ?」
紫輝に言われ、天誠はハッとする。
そうだ。結婚がゴールじゃない。
「そうだ。もっと、もっと、兄さんを幸せにしなきゃ」
「俺も、天誠を幸せにする。一緒に、幸せになろう」
温かで麗らかで、明るい光が降り注ぐかのような、紫輝の笑顔を見て。
天誠は、こんなところで満足なんかしていられないと思う。
兄を、世界で一番幸せな男にするのだ。
そして、自分も。
紫輝がそばにいるだけで、自分は幸せなのだから。
兄が己を幸せにするのは、楽勝だな。そう思い。
天誠は紫輝に、万感の思いを込めたキスをする。
愛してる。愛してる。
唇が触れるたびに、心の中で愛してると囁いた。
「ん、ん…てん、せい…愛して、る…」
唇が、ちょっと離れる隙を縫って、紫輝も天誠に愛を囁く。
最愛の弟に、想いを捧げるように。
思いを遂げるため、天誠は紫輝の体を性急に求めた。
首筋から胸へと舌でたどり、手は腰骨を撫で、後孔をほぐしていく。
天誠のモノを口淫していたときから、体を高ぶらせていたから。蕾も柔らかくなっていて。
紫輝のなにもかもが、自分を受け入れてくれているみたいで。天誠は歓喜する。
「兄さん、足を開いて」
紫輝の方から迎え入れてほしい、そんな気持ちで、天誠はうながす。
羞恥に頬を染めながらも、紫輝はおずおずと、膝頭を離し。天誠に、己のすべてを、無防備にさらした。
すでに天を向いている屹立も、柔らかくほころんでいる桃色の蕾も、白く滑らかな肌も、ツンと立つ小さな乳首も。紫輝の全部が、天誠を誘っている。
天誠は、紫輝の太ももに手をかけ、少しくの字に曲げると、剛直の先を蕾に押し当てた。
そして体重をかけて、ゆっくりと中へ挿入していく。
剛直の一番張り出した部分が、蕾の中に入り込むと。紫輝の内側をえぐりつつ、太く、長く、熱いモノが。中を支配していく。
「あ、あ、て、天誠…」
紫輝は体を満たす弟の熱を感じながら、彼に向かって手を伸ばした。
「あぁ、兄さん、兄さんっ」
根元まで己を入れ込んだ天誠は、紫輝の太ももから手を離し。紫輝をギュッと、腕の中に抱き締める。
黒曜石の瞳を潤ませ、優美に微笑み、手を差し伸べるその姿は…まるで慈愛の女神のようだった。
飛び立ってしまわないように、早く腕の中に閉じ込めないと。
「天誠ぃ、あっちい、ね?」
首にしがみついて、天誠の黒髪を撫でる紫輝は。からかうみたいに、耳元に囁いた。
そのまま、天誠が動かないでいると。物欲しそうに、腰をもじもじさせる。
「兄さんが、気持ち良いようにしていいよ。ほら…ここ、好きでしょ?」
張り出したカリを、紫輝の一番、敏感な、前立腺にあてる。
激しく動かず、ただ、あてるだけ。
でも中は、うずうずする愉悦を産み出し、紫輝をもどかしい快楽でさいなむ。
「んん、動いて。意地悪、しない、で」
「だめ。兄さんが、するの。気持ち良いって顔、見せて」
紫輝が天誠に目を合わせると、彼は淫靡な空気をまとい、蕩けるような眼差しで紫輝をみつめていた。
己を、快楽の虜にする、妖艶な悪魔のようにも。獲物にすぐにも食らいつきたい、獰猛な獣のようにも、見える。
それでも、ジンジンする体は、動かさないでいる方がつらくて。
彼の濡れた黒目に、じっくりとみつめられ。恥ずかしさで、頭が煮えそうだけど。紫輝は腰を動かした。
ズクリと、快楽のつまった蜜壺に触れ。紫輝は声高にあえいだ。
「あ、あぁ…っ」
でも、一度、その魅惑の悦を知ってしまったら。動きを止められなくて。
紫輝は無我夢中で、行為に溺れた。
「ん、ん…イイ、ここ、イイっ」
はしたないけど、イイところを、ずっとこすっていたくて、腰を揺らめかせてしまう。
天誠が攻めるほど、自分で動いても、強烈な刺激を得られないが。
逆に、じりじりした甘ったるい気持ち良さが、長く続いて。陶酔してしまう。
「薄く唇開いて、ピンクの舌がちらちら見えるのが、いやらしいのに、可愛いなぁ。ふふ、唇、引き結んじゃった。恥ずかしいの? 頬を真っ赤にして我慢してる兄さん、色っぽいね?」
解説しないで、と伝えられないほど。紫輝は没頭して、官能を追求している。
でも、もっと強い刺激が欲しい。
「も、天誠、動いて…天誠がするの、が、イイ」
「もう、もっと俺の下であえぐ兄さんを堪能したかったのに、そんなこと言われたら…」
いきなりグンと天誠に突き上げられ、紫輝は声にならない悲鳴を上げた。
「本能が、制御できないだろ?」
言って、天誠はニヤリと笑う。
完全に、捕食者のギラギラした目だ。
でも、そんな天誠を見ても、紫輝は脅えたりしない。
むしろ野性的なところが、良く見えてしまうから…自分も大概、彼に魅了されているなと思うのだ。
「じゃあ、兄さんの言うとおり、動いてあげるよ。弟は兄さんの言うことには逆らえないからね。その代わり…こっちには触れないよ?」
人差し指の背の方で、天誠は紫輝の屹立をそっと撫でる。そこは高ぶり切っていて、先走りの蜜で、びちょびちょに濡れそぼっていた。
少し触れられただけで、ギュンと性感が高まる。
「やぁ…そこも、触ってぇ?」
「兄さんは、もう中イきできるんだから。どっちも欲しいなんて、兄さんはそんな、エッチなこと言わないよね?」
両方をねだるのはエッチなことだと、天誠に吹き込まれ。
それを望んだことに、猛烈な恥ずかしさを覚える。
でも、紫輝は悩んだ。
自分は、エッチじゃないと思うのだが。
中でイくのは、気持ちが良いけれど、すっごく追い込まれないとならないから、つらい。
どうしたらいいのか?
「それとも、エッチなお兄さんだから、弟にいっぱいエッチなことされたくて、そう言うのかなぁ?」
「エッチじゃないっ」
売り言葉に買い言葉で、紫輝はつい返事をしてしまった。
天誠は、御満悦な笑みで、紫輝を見下ろす。
「じゃあ、上手に中イきしようね、兄さん?」
麗しの微笑を浮かべた天誠が、紫輝の屹立を再び指でなぞる。
はめられた、と紫輝は思うが。
下から上に向かうその接触に、紫輝は瞬時にとろけてしまう。
もう少し、強くこすって。
そうしたらイけるのに…。
でも無情にも指は紫輝から離れていってしまった。意地悪。
「大丈夫、前立腺を擦れば、すぐにイけるのはわかっているんだから。でも、俺がイくまで、お預けだけどな」
そうして天誠は。前後に紫輝を揺さぶり始めた。
紫輝は天誠の首にまたしがみついて、大きな波に耐え忍ぶ。
とろ火で炙られた紫輝の中は、天誠からもたらされる強烈な刺激に、すぐにも燃え上がる。
「兄さんが、俺にしがみついて、身悶えてんの…燃える。俺の、兄さん…」
「んん、天誠、好きっ」
セックス中は、ちょっと意地悪だけど。それ以外は、大きな愛で包んでくれる弟を、紫輝も愛している。
快楽だけではなく。
こうして抱き合うことで、溶けて、混ざり合って、ひとつになりたいと切望するほどに。
紫輝は、天誠の頭をかき抱き、深くくちづける。
舌先でくすぐり、ベロの腹の部分を舐め合って、しっかりと絡めて結びつける。
離さないで。離さない。
そんな想いを雄弁に語るように、体をくっつけ、撫でこすり。ふたりはひとつになろうとした。
そして熱烈に剛直が出し入れされて、そのときが唐突にやってきた。
「んぁっ…」
紫輝が、急に体を跳ね上げた。中がびくびくと収縮し、天誠のモノをきつく締めあげる。
紫輝はポーンと高みへ放り出され、達してしまったのだが。中だけが、長く長く痙攣していて。屹立からは、射精していない。
「くっ…イイ。兄さん、これ、ヤバ…っ」
「あっ、あっ、イイ、天誠…やぁ、イイの、続いて…あぁ、やぁぁ…」
紫輝に煽られるように、天誠も、びくびくとわななく中に、何度も突き入れ。紫輝の中に、何度も射精する。
すべてを出し切るように、搾り取られるように。
そして中イきが、ようやくおさまった頃には。紫輝はぐったりしていた。
でも、まだ。屹立は、しっかり勃起したままだ。
天誠はそこをやんわり握る。
「やぁ、イった、から…しないでぇ」
「でも、出さないと、つらいだろう? 俺に任せて」
ちゅ、ちゅ、と紫輝の柔らかい頬や目蓋に、癒しのキスを贈りながら、天誠は屹立をしごいた。
「ゆっくり、優しく、な?」
「あ、ん。や、ぁ」
むずかりつつも、紫輝は天誠の肩を撫で。身悶えるのに、天誠への愛撫も欠かさない。
兄の矜持なのかなと、天誠は思うが。
紫輝の兄の矜持って、本当に可愛いし、愛らしいし、たまらない。と感じ入るのだった。
「イ、く。も…ぅっ」
今度は、自己申告する余裕があったみたいで。言った直後、紫輝は達した。
屹立の先端から、ビュクッと白濁が飛んで。
天誠が、突端を親指で撫でるが、蜜口がパクパクとうごめくだけで、もう精は出なかった。
挿入したままだった天誠の剛直は、紫輝の絶頂で、また締めつけられる。
己を、まんべんなく愛撫するような、紫輝の中の脈動を。天誠は堪能した。
最高の刺激を受けてしまったら、やはりきざしてしまうが。
紫輝が限界なのを見て取って。
天誠は紫輝から、剛直を慎重に抜き取るのだった。
でも突端が出るまで、引き留めるように締めつけてくるから。天誠は理性をかき集めなければならなかった。
突き上げたいけど…紫輝を壊すわけにはいかないので。
「お疲れ様、兄さん。今日も、すっごく良かったよ。ありがとう」
疲労困憊の紫輝が、寝台に身を沈めている中。天誠は、紫輝の顔中に、感謝のキスの嵐を贈る。
天誠はいつも、己を受け入れてくれてありがとう、という心境なのだ。
なにせ、イタイ弟の自覚があるので。
「…なんか、変じゃなかった?」
中イきからのイきっぱなし、という衝撃に、紫輝はびっくりして目を回していたのだ。
というか、自分になにが起きたのか、よくわかっていない。
「なにも変なことはないよ、大丈夫。初夜だから、ふたりで、初めての体験をしただけさ」
安心させるかのように、優しい目でみつめる天誠に、紫輝はチュッと音の鳴るキスをした。
「本当? 天誠がいいなら、いいけど…」
いつもの感じではなかったから、紫輝は不安なのだ。天誠が満足できたのか、わからなくて。
でも天誠には。全然、怒った様子はないし。
むしろ機嫌は良さそう? 大丈夫?
「もちろんさ。最高の初夜だ」
しっかり彼がうなずいてくれたから。紫輝は、ふと天誠に笑いかけ。彼の二の腕を枕にして、満たされた心地で目を閉じた。
己の腕枕で、安心して眠りにつく兄を、天誠は見やる。
今日は朝から、長いイベントに出て。初めてのお酒も飲んで。濃厚な初夜セックスもしたから。
紫輝の電池は切れてしまったようだ。
愛おしくてならない兄を、天誠は指先でそっと撫でる。
つるっとした頬は、ずっと赤く色づいて、祝言の喜びを伝えていた。
小さな唇は、己のモノをくわえて、精まで飲んでくれた。
今は閉ざされた、黒い瞳は、ずっと自分をみつめてくれた。
なんて素敵な日。なんて最高な日だ。
「あぁ…手裏になんか、戻りたくない」
切実な本音をつぶやく天誠だった。
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