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番外 側近、瀬来月光 2
赤穂は右次将軍、月光はその補佐。参謀に堺と瀬間という強力布陣で、赤穂は戦果をあげていった。
赤穂は馬術も得意なので、騎馬を使った奇襲を何度も成功させ。黒き闘将、黒旋風などと言われ。手裏を震え上がらせている。
その奇襲には、月光の頭脳も不可欠だ。
地形や気象を利用し、より効果的な場所と時間を選んで赤穂たちを出撃させる。
彼の隣で剣を振るわなくても、赤穂には傷ひとつつけないという意気込みだった。
赤穂が戦果をあげるのと同時に、奇抜な作戦を用いる軍師であった月光も注目され。
月光は十二歳のときに、将堂の宝玉という称号を、当時の大将であった赤穂の父から賜った。
上官は父親世代で、子供たちが武勲をあげることを喜ぶ者が多い。
ただ、中には面白く思わない者もいる。瀬来の父親だ。
瀬来家の中でも凡人で、目立った手柄をあげず。家柄だけでその地位に就いていた瀬来の父は、息子の活躍に肩身が狭い思いをしていた。
将堂の宝玉と呼ばれることは、瀬来家の誉れであると一族の者には褒められたが。
父親には冷たい一瞥を向けられた。
よくやった、の言葉ひとつもなかった。
そういう態度だと、やはり父は喜んでいないのだなと感づいてしまう。
でも嫉妬されても、なにもできないし。
それよりも、次はどんな作戦で手裏を追い立てようかと赤穂たちと話し合う方が面白くて…。
月光は父を放置してしまったのだ。
戦場で戦うことは、気分を高揚させ。命の危機感から、体をも高ぶらせる。それが人の仕組みだ。
簡単に言うと、盛る。
子孫を残そうとする本能が働くのだと、医学書には書いてあるわけだが。
それは本当なんだなと、月光は赤穂にくちづけられながら思った。
月光は、戦場から帰ってきた赤穂に、樹海の奥に連れ込まれ、性急に体を求められた。木に背中を押しつけられ、月光は赤穂の熱い抱擁を受ける。
荒い息遣いの合間に、舌も唇も噛みつかれるような勢いでキスされた。
「赤穂、外で、これ以上は…」
「あぁ、だが、どうにも高ぶって…月光、なぁ、駄目か? 月光?」
頬や目蓋を舐め、赤穂は身をすり寄せる。
こんなに余裕のない赤穂は、初めてだ。
月光は、赤穂に求められても体目当てとか女扱いされているとか思ったことはない。
だって、精通があって、情交の気持ち良さを知った若い体だから。とにかく、くすぶったものを吐き出したいと思うのは仕方がないことじゃん?
そんなふうに、月光は達観した気持ちで思う。
赤穂とは同い年だけど、月光の脳みそは老成しているので、精神的には十歳ほど違うかもしれなかった。
それに、こんなふうに欲しがられたら。月光も捧げたくなってしまう。
愛しているから、ね。
「なにをやっているのだ」
そこに、冷や水を浴びせるような声が響いた。
月光の父親が、こんな樹海の奥にいた。
そんなわけない。
つけられてしまったな、と月光は歯噛みした。
「…瀬来殿、これは」
慌てて、赤穂が説明しようとするが。
父が聞くわけもない。これを待っていたのだから。
「男同士で、汚らわしい。赤穂様。将堂の御方とはいえ、うちの月光にこのような所業は許せませんよ」
「待て。俺は月光のことを真剣に想っている。正式に付き合うことを父に打診しても…」
「困ります。月光は将堂の宝玉、そして瀬来家の跡取りです。子を成して、一族を栄えさせる義務がある」
そのようなことは、父から一度も言われたことはない。
月光は父をいぶかしんだ。
将堂とのつながりは、父親がもっとも欲しいものではないのか、と。
父親は月光の手を引っ張って、赤穂から離れた。
「今後、月光には触れないでいただきたい。軍師としての役割ならば、触れずともできるでしょう?」
振り返っても、赤穂が見えないくらいの距離が離れてから。
月光は父の手を振り払い、聞いた。
「なぜ、このようなことを? 赤穂との関係は、瀬来家にとっても良いものではないのですか?」
「おまえは将堂の宝玉などと言われて、図に乗っているのだな。頭ばっかり良くたって、女を抱けねば男ではない。瀬来の役に立ちたいのなら、まず子を成せ。赤穂は所詮、傍流だ。仲良くしたところで瀬来の実にはならんよ。そんなこともわからないから馬鹿なのだ、おまえは」
賢いと言われてきた月光は、初めて馬鹿だと言われ。マジでびっくりした。
「だいたい、その女々しい顔つきが我慢ならん。赤穂とともに育って、なぜそんなにも細くなよなよした体つきになるのだ? 気持ち悪い」
別に、筋肉ムキムキにならなくたって剣術は会得していますけど。
と、月光はいろいろ反論したかったが。
一応、瀬来家の当主である父に反抗するのは愚策だった。
っていうか、顔とか体つきとか、どうにもならないところを指摘するの、マジ最低。
それが息子に言う言葉か? と、脳内では愚痴がぐちぐちあふれていた。
「言い訳もできないとか、将堂の宝玉もたいしたことはない」
言いたいことはそこに尽きるのだろうな、と月光は分析する。
父親が、自分に嫉妬していたことは知っていたのだ。
だが、父親だから。
まさか息子に噛みついてくるとは思わないではないか。
「とにかく、おまえにはすぐにも女を用意する。子を成して、瀬来家に貢献しろ」
そういう言い方、女性に失礼じゃないか。
それに、自分のことも種馬扱いだ。
嫉妬心で、彼は己をただ傷つけたいのか?
作戦の邪魔などは、将堂軍の足を引っ張ることにもなるのでできないから、己に矛先を向けたのか?
冷静に分析するが。
今は、どうにも分が悪い。
当主の父に逆らって勘当にでもなったら、赤穂のそばにいられなくなる。
ここは従うしかない。
月光は、自分に価値があることを知っていた。
この頭脳は赤穂の為になるのだ。
養子という弱い立場の赤穂が、軍で戦果をあげれば、彼には居場所ができる。
緻密な戦術を構築することで、赤穂を後押しするのだ。
将堂家での立ち居振る舞いを助言し、彼の敵を増やさないようにもしている。
だから。
たとえ恋人の部分を切り離さなければならなくても、自分は赤穂のそばにいるべきなのだ。
一週間後には、十月になり。右軍と左軍が交代する。前線基地から下がれば、父はすぐにも月光を領地に押し込め、本当に結婚相手を連れてくるかもしれない。
どうしたらいいかな。まずするのは、赤穂への対処だ。
おそらくこの一週間、仕事以外で赤穂と接触できなくなる。父親が監視するだろうから。
側仕えの瀬間と相談して、赤穂のことを頼むしかない。
あぁ、心のままに生きられないの、面倒くさい。
★★★★★
月光は、赤穂のことを瀬間に頼んだ。
相談相手になってやってくれと。
そうしたらあいつ、赤穂に女性を紹介したのだ、腹立つ。
でも自分以外と深い付き合いをする者が赤穂にはいないから、いい機会だとも思っていた。将堂を率いる者として、他者と関わるのは大事なことだ。
赤穂の頭脳としては、それが赤穂にとって良いことだと思い。
赤穂の恋人としては、自分以外に触れないでと思う。
だけど月光は、赤穂の忠実なる家臣なのだ。赤穂の為になることを選ぶのが、当然。
実にならぬ己の恋心は、踏み潰すことができる。
冬期休暇中、月光は赤穂に会えなかった。
こんなに長く彼といられないのは、生まれてから一度もない。
父親は案の定、結婚相手を見繕ってきたが。月光は手を出さない。
というか、女性と体を合わせる気になれない。
月光が愛しているのは、赤穂だけだ。
たとえ赤穂が、自分を好きではなくても。
自分は赤穂以外の者を愛することはない。
しかしそんな月光の態度に業を煮やした父親は、半ば無理矢理、月光に女性を抱かせようとした。
合意のない情交は、加害者が女性でも、強姦である。
結果からすると、月光は勃起しなかったのだ。
強姦は不成立。
父親は月光を病気扱いし、医者に診せた。
すると精液が極端に薄く、情交をしても子供はできないだろうと言われた。
それは、驚いた。
赤穂ほど精力はなかったが、それなりに彼との情事を楽しんでいたから、健康だと思っていたのだ。
でも、医者の言うことに心当たりがあった。
月光は風邪をひきやすい体質で、たびたび高熱に苦しんだことがある。精液を作る組織は熱に弱いと聞いたことがあったので。それかな、と思うのだ。
ともかく医者がそう言うので、子種のない月光の結婚話はなくなるだろうと安易に考えていた。
しかし、それから父親の精神攻撃が始まった。
まぁ、聞くに堪えない罵倒を月光に浴びせるようになったのだ。
それは、男女差別もはなはだしい内容だ。思い出したくもない。
さすがに、実の父親に拒絶、罵倒、嫌味を言われると。月光も傷ついて、心が委縮し、なにも言いたくなくなる。
月光は口をつぐんで、ただ父のそばにいるようになった。
当主の意向には逆らえない、名家の悪しき宿命だ。
その年の冬、赤穂の義父であり将堂家当主の将堂山吹が、討ち死にした。
年明け早々、金蓮が将堂家当主になり。
月光は父とともに、お悔やみと家臣の挨拶をしに将堂家を訪れた。
そこで父は、思いもよらないことを金蓮に言ったのだ。
「時雨家に、龍鬼がふたりも生まれたのは、偶然ではないのでは? 時雨将軍は龍鬼の力を我が物とするため、承知の上で龍鬼と交わった者を妻にしたのでしょう。己の血脈を穢してでも、力を欲するとは、嘆かわしい。まさか将堂家を乗っ取ろうとしている…いやいや、それは考え過ぎでしたな、失礼」
なにを言い出すのかと、去っていく父の後ろ姿を月光は睨んだが。
金蓮はつぶやいた。
「瀬来側近の懸念は杞憂に過ぎないが、疑いを晴らすためにも、時雨家には更なる忠誠を誓ってもらわねばな」
金蓮が真に受けていないようなので、月光は、その場では良かったと思ったのだが。
数日後に時雨家に暴漢が入り、堺の父母が惨殺された。
堺は、当時の記憶はないものの、無傷。
しかし藤王は、その日から姿を消した。
父はこの日、月光とともにいたので。この一連の事件が父の仕業とは思わないが。
この頃から、なんとなくきな臭い感じを、月光は感じ始めていたのだ。
★★★★★
赤穂は義父が亡くなったことで、兄の金蓮に助力するため、一層剣技を極めていった。
戦場でのことは自分に任せてほしい、と言うかのように。
そんな赤穂を、月光も陰で支えた。
恋人ではなくなってしまったけれど、月光は赤穂のことを今でも親友だと思っていたから。
友達の絆は、永遠だからね。
そしてこの頃から、月光は隠密を育て始めていた。
瀬来家は隠密を使って情報収集をし、戦術のヒントにしたり、時期や環境を調べたりすることを昔からしていた。
月光の父親は、あまり隠密を重視していない。
けれど月光は、情報はあればあるほど作戦や戦術に生かすことができると認識していた。
それに、防衛のためでもあった。
父の監視の目はいまだに厳しいが、それをかいくぐって赤穂と接触している。
以前のような恋人ではないが、心を寄り添わせることも大切ではないか。
将堂家という大きなものを、赤穂は兄とともに背負っている。
その手助けがしたいのに、邪魔しないでほしいんだよね。
子供のときのように、ひとりでうつむく赤穂に、ひとりではないよと言って隣に並んであげたいだけなのだ。
それすらも許さないというのは、家臣として良くないよ。
父の心は嫉妬心で歪み。恋人ではなくなった月光と赤穂の姿も、歪ませて。男同士の付き合いなど許せんと、いつまでも声高に叫ぶのだ。
いい加減にしろ。
月光はもう、父に付き合うのがつらいのだ。
気に食わないのなら勘当すれば? と、この頃は思う。
赤穂のそばにいられなくなると困るから、勘当は勘弁と思っていた時期もあるが。
兵士として、軍師として、もうそれなりの地位があるから大丈夫だと気づいたのだ。
でも勘当は、瀬来一族が許さない。
将堂の宝玉は瀬来家の誉だから。面倒くさっ。
十月、瀬来の領地にはススキ野原が見渡す限りに広がっていて。夜中にこっそり、そこで赤穂と会うのだ。
自分たちの胸の高さまであるススキの穂は、しゃがんでしまえば誰からも見えない。
ワサワサと豊かな穂は、誰の目からもふたりの姿を隠して。
月の光で銀色に揺れるススキ野原で、秘密の逢瀬だ。
月光は、十月に左軍と右軍が交代したので、領地にて休暇中。
赤穂は、家の立て直しに忙しい兄に代わって左軍を率いて、まだ前線基地にいる。
超過勤務だ。
基地と瀬来の領地はそれほど離れていないから、たまにこうして、父の目を盗んで赤穂と逢引きしていた。
まぁ逢引きといっても、やましいことはしていない。
単純に会って、話をするだけ。
友達として、愚痴を言い合うだけ。
「家ってさ、本当に面倒くさいよね」
「あぁ、面倒くさいな」
そう言って、ふたりでため息をつく、みたいな。
「誰も彼も、俺の後ろの家を見やがる。俺自身のことを見てくれる奴なんか、もうおまえしかいないよ」
瀬間に女性を紹介されて、赤穂はその何人かと関係を持った。
お節介なことに、瀬間がいちいち報告してくるから腹立たしいのだが。
瀬間には悪気がない。だからこそ、腹立たしいのだけど。
瀬間の気持ちとしては、月光と赤穂が別れたから、傷心の赤穂に女性を紹介したということのようだ。
赤穂がうまくいっていると報告すれば、フッた月光も後ろめたさがなくなるだろう? という見解だ。
フッてないし。家の都合だし。
つか、わかっていないよね? 剣道馬鹿の朴念仁だからな、瀬間は。
元恋人が、他の人と付き合っているのを知って嬉しがるような人間はいないんだよ。
なにかしら、チクリと胸に刺さるものなんだよ。
恋愛したことないのか? ないんだな?
そう、瀬間は恋愛をしたことがない。
ヤマドリ血脈を残すために、同じ血脈の者と結婚したが。結婚式当日に相手と会ったというのだから。
相性も、恋も愛もないのだ。
そして色恋に費やす時間などないと言い切る、剣道馬鹿だ。
生き方が大雑把すぎて、やっぱり瀬間とは合わなーい、と月光は思う。
そうじゃなくて。
赤穂は、何人かと付き合ったが。みんな赤穂自身を愛してはくれなかったみたい。
女性は、自分を守ってくれるかどうかが、一番に来る。その次が愛なのだ。
衣食住に困らないことは、子供を産み育てるためにも、必要なこと。
だから、赤穂の後ろにある家を、どうしても見ちゃうよね。
将堂家なら安泰だもん。
そう思うのは仕方がないことだよ。
でも、赤穂はそれが見えてしまうと、もう駄目みたい。
「月光は、俺が将堂家の赤穂だから好きになったんじゃないだろ?」
「まぁね。将堂家がなにかわかる前に、そばに赤穂がいたからね」
「俺は、気づいたんだよ。家族は俺を愛してはくれなかったが。おまえがずっと愛してくれた。それはとても尊いものだった。出会う女性には、好きと言ってもらえるが。誰もおまえのようじゃない」
「そりゃ、僕じゃないんだから、誰も僕のようではないだろう」
「…うまく言えないが。おまえの愛情が一番心地よいんだ。月光、もう一度俺を愛してくれないか?」
月光の父に触れるなと言われてから、赤穂は月光に触れなかった。
でも今、小指と小指が触れている。
キスも情交もしてきた相手なのに、ほんのわずかに触れた指のぬくもりが、これほどに恋しいなんて。
月光は頬を染め。赤穂の体温をじっくり味わった。
「愛しているよ、赤穂。愛していない瞬間など、一秒もない」
「ならば、もう一度俺と…」
首を横に振る月光に、赤穂は押し黙った。
「赤穂の出世を願う軍師の僕が、それは駄目だと告げている。女性と結婚して子供をもうけ、将堂家での地位を盤石にする。それが赤穂の為だ」
「おまえの愛情を心地よいと知っているのに、他の者と付き合うのは不実じゃないか」
月光も、種馬のように扱われて傷ついた。赤穂に同じことを言いたくはない。
でも、赤穂は。養子であり傍流だと、あなどられることもある。
赤穂に確固とした力をあげたいのだと、軍師の月光は言う。
本音と建て前、ではない。どちらも本音だから、始末が悪い。
「うん。わからないな。わからない…」
「将堂の宝玉でも、わからないことがあるのか?」
苦笑して、赤穂が月光の顔をのぞき込む。
「わからないことだらけさ。だから家とか、本当に面倒くさいって言うんだ」
重いため息をついて、月光は銀色に光る月を見上げた。
自分と同じ名前の、美しいものを。
「子供の頃は、なんにも考えずに、心のままに好きなものを好きと言い、抱き締めて、ずっと笑っていられて、良かったよね。でも、もう子供ではいられない。瀬来家は僕を離してくれないし。赤穂も大きな家を背負っている」
「俺は、おまえと愛し合いたいだけだ」
「だから…愛してるってば」
にっこり笑って、月光は赤穂と小指を絡めた。今は、それだけ。
赤穂は馬術も得意なので、騎馬を使った奇襲を何度も成功させ。黒き闘将、黒旋風などと言われ。手裏を震え上がらせている。
その奇襲には、月光の頭脳も不可欠だ。
地形や気象を利用し、より効果的な場所と時間を選んで赤穂たちを出撃させる。
彼の隣で剣を振るわなくても、赤穂には傷ひとつつけないという意気込みだった。
赤穂が戦果をあげるのと同時に、奇抜な作戦を用いる軍師であった月光も注目され。
月光は十二歳のときに、将堂の宝玉という称号を、当時の大将であった赤穂の父から賜った。
上官は父親世代で、子供たちが武勲をあげることを喜ぶ者が多い。
ただ、中には面白く思わない者もいる。瀬来の父親だ。
瀬来家の中でも凡人で、目立った手柄をあげず。家柄だけでその地位に就いていた瀬来の父は、息子の活躍に肩身が狭い思いをしていた。
将堂の宝玉と呼ばれることは、瀬来家の誉れであると一族の者には褒められたが。
父親には冷たい一瞥を向けられた。
よくやった、の言葉ひとつもなかった。
そういう態度だと、やはり父は喜んでいないのだなと感づいてしまう。
でも嫉妬されても、なにもできないし。
それよりも、次はどんな作戦で手裏を追い立てようかと赤穂たちと話し合う方が面白くて…。
月光は父を放置してしまったのだ。
戦場で戦うことは、気分を高揚させ。命の危機感から、体をも高ぶらせる。それが人の仕組みだ。
簡単に言うと、盛る。
子孫を残そうとする本能が働くのだと、医学書には書いてあるわけだが。
それは本当なんだなと、月光は赤穂にくちづけられながら思った。
月光は、戦場から帰ってきた赤穂に、樹海の奥に連れ込まれ、性急に体を求められた。木に背中を押しつけられ、月光は赤穂の熱い抱擁を受ける。
荒い息遣いの合間に、舌も唇も噛みつかれるような勢いでキスされた。
「赤穂、外で、これ以上は…」
「あぁ、だが、どうにも高ぶって…月光、なぁ、駄目か? 月光?」
頬や目蓋を舐め、赤穂は身をすり寄せる。
こんなに余裕のない赤穂は、初めてだ。
月光は、赤穂に求められても体目当てとか女扱いされているとか思ったことはない。
だって、精通があって、情交の気持ち良さを知った若い体だから。とにかく、くすぶったものを吐き出したいと思うのは仕方がないことじゃん?
そんなふうに、月光は達観した気持ちで思う。
赤穂とは同い年だけど、月光の脳みそは老成しているので、精神的には十歳ほど違うかもしれなかった。
それに、こんなふうに欲しがられたら。月光も捧げたくなってしまう。
愛しているから、ね。
「なにをやっているのだ」
そこに、冷や水を浴びせるような声が響いた。
月光の父親が、こんな樹海の奥にいた。
そんなわけない。
つけられてしまったな、と月光は歯噛みした。
「…瀬来殿、これは」
慌てて、赤穂が説明しようとするが。
父が聞くわけもない。これを待っていたのだから。
「男同士で、汚らわしい。赤穂様。将堂の御方とはいえ、うちの月光にこのような所業は許せませんよ」
「待て。俺は月光のことを真剣に想っている。正式に付き合うことを父に打診しても…」
「困ります。月光は将堂の宝玉、そして瀬来家の跡取りです。子を成して、一族を栄えさせる義務がある」
そのようなことは、父から一度も言われたことはない。
月光は父をいぶかしんだ。
将堂とのつながりは、父親がもっとも欲しいものではないのか、と。
父親は月光の手を引っ張って、赤穂から離れた。
「今後、月光には触れないでいただきたい。軍師としての役割ならば、触れずともできるでしょう?」
振り返っても、赤穂が見えないくらいの距離が離れてから。
月光は父の手を振り払い、聞いた。
「なぜ、このようなことを? 赤穂との関係は、瀬来家にとっても良いものではないのですか?」
「おまえは将堂の宝玉などと言われて、図に乗っているのだな。頭ばっかり良くたって、女を抱けねば男ではない。瀬来の役に立ちたいのなら、まず子を成せ。赤穂は所詮、傍流だ。仲良くしたところで瀬来の実にはならんよ。そんなこともわからないから馬鹿なのだ、おまえは」
賢いと言われてきた月光は、初めて馬鹿だと言われ。マジでびっくりした。
「だいたい、その女々しい顔つきが我慢ならん。赤穂とともに育って、なぜそんなにも細くなよなよした体つきになるのだ? 気持ち悪い」
別に、筋肉ムキムキにならなくたって剣術は会得していますけど。
と、月光はいろいろ反論したかったが。
一応、瀬来家の当主である父に反抗するのは愚策だった。
っていうか、顔とか体つきとか、どうにもならないところを指摘するの、マジ最低。
それが息子に言う言葉か? と、脳内では愚痴がぐちぐちあふれていた。
「言い訳もできないとか、将堂の宝玉もたいしたことはない」
言いたいことはそこに尽きるのだろうな、と月光は分析する。
父親が、自分に嫉妬していたことは知っていたのだ。
だが、父親だから。
まさか息子に噛みついてくるとは思わないではないか。
「とにかく、おまえにはすぐにも女を用意する。子を成して、瀬来家に貢献しろ」
そういう言い方、女性に失礼じゃないか。
それに、自分のことも種馬扱いだ。
嫉妬心で、彼は己をただ傷つけたいのか?
作戦の邪魔などは、将堂軍の足を引っ張ることにもなるのでできないから、己に矛先を向けたのか?
冷静に分析するが。
今は、どうにも分が悪い。
当主の父に逆らって勘当にでもなったら、赤穂のそばにいられなくなる。
ここは従うしかない。
月光は、自分に価値があることを知っていた。
この頭脳は赤穂の為になるのだ。
養子という弱い立場の赤穂が、軍で戦果をあげれば、彼には居場所ができる。
緻密な戦術を構築することで、赤穂を後押しするのだ。
将堂家での立ち居振る舞いを助言し、彼の敵を増やさないようにもしている。
だから。
たとえ恋人の部分を切り離さなければならなくても、自分は赤穂のそばにいるべきなのだ。
一週間後には、十月になり。右軍と左軍が交代する。前線基地から下がれば、父はすぐにも月光を領地に押し込め、本当に結婚相手を連れてくるかもしれない。
どうしたらいいかな。まずするのは、赤穂への対処だ。
おそらくこの一週間、仕事以外で赤穂と接触できなくなる。父親が監視するだろうから。
側仕えの瀬間と相談して、赤穂のことを頼むしかない。
あぁ、心のままに生きられないの、面倒くさい。
★★★★★
月光は、赤穂のことを瀬間に頼んだ。
相談相手になってやってくれと。
そうしたらあいつ、赤穂に女性を紹介したのだ、腹立つ。
でも自分以外と深い付き合いをする者が赤穂にはいないから、いい機会だとも思っていた。将堂を率いる者として、他者と関わるのは大事なことだ。
赤穂の頭脳としては、それが赤穂にとって良いことだと思い。
赤穂の恋人としては、自分以外に触れないでと思う。
だけど月光は、赤穂の忠実なる家臣なのだ。赤穂の為になることを選ぶのが、当然。
実にならぬ己の恋心は、踏み潰すことができる。
冬期休暇中、月光は赤穂に会えなかった。
こんなに長く彼といられないのは、生まれてから一度もない。
父親は案の定、結婚相手を見繕ってきたが。月光は手を出さない。
というか、女性と体を合わせる気になれない。
月光が愛しているのは、赤穂だけだ。
たとえ赤穂が、自分を好きではなくても。
自分は赤穂以外の者を愛することはない。
しかしそんな月光の態度に業を煮やした父親は、半ば無理矢理、月光に女性を抱かせようとした。
合意のない情交は、加害者が女性でも、強姦である。
結果からすると、月光は勃起しなかったのだ。
強姦は不成立。
父親は月光を病気扱いし、医者に診せた。
すると精液が極端に薄く、情交をしても子供はできないだろうと言われた。
それは、驚いた。
赤穂ほど精力はなかったが、それなりに彼との情事を楽しんでいたから、健康だと思っていたのだ。
でも、医者の言うことに心当たりがあった。
月光は風邪をひきやすい体質で、たびたび高熱に苦しんだことがある。精液を作る組織は熱に弱いと聞いたことがあったので。それかな、と思うのだ。
ともかく医者がそう言うので、子種のない月光の結婚話はなくなるだろうと安易に考えていた。
しかし、それから父親の精神攻撃が始まった。
まぁ、聞くに堪えない罵倒を月光に浴びせるようになったのだ。
それは、男女差別もはなはだしい内容だ。思い出したくもない。
さすがに、実の父親に拒絶、罵倒、嫌味を言われると。月光も傷ついて、心が委縮し、なにも言いたくなくなる。
月光は口をつぐんで、ただ父のそばにいるようになった。
当主の意向には逆らえない、名家の悪しき宿命だ。
その年の冬、赤穂の義父であり将堂家当主の将堂山吹が、討ち死にした。
年明け早々、金蓮が将堂家当主になり。
月光は父とともに、お悔やみと家臣の挨拶をしに将堂家を訪れた。
そこで父は、思いもよらないことを金蓮に言ったのだ。
「時雨家に、龍鬼がふたりも生まれたのは、偶然ではないのでは? 時雨将軍は龍鬼の力を我が物とするため、承知の上で龍鬼と交わった者を妻にしたのでしょう。己の血脈を穢してでも、力を欲するとは、嘆かわしい。まさか将堂家を乗っ取ろうとしている…いやいや、それは考え過ぎでしたな、失礼」
なにを言い出すのかと、去っていく父の後ろ姿を月光は睨んだが。
金蓮はつぶやいた。
「瀬来側近の懸念は杞憂に過ぎないが、疑いを晴らすためにも、時雨家には更なる忠誠を誓ってもらわねばな」
金蓮が真に受けていないようなので、月光は、その場では良かったと思ったのだが。
数日後に時雨家に暴漢が入り、堺の父母が惨殺された。
堺は、当時の記憶はないものの、無傷。
しかし藤王は、その日から姿を消した。
父はこの日、月光とともにいたので。この一連の事件が父の仕業とは思わないが。
この頃から、なんとなくきな臭い感じを、月光は感じ始めていたのだ。
★★★★★
赤穂は義父が亡くなったことで、兄の金蓮に助力するため、一層剣技を極めていった。
戦場でのことは自分に任せてほしい、と言うかのように。
そんな赤穂を、月光も陰で支えた。
恋人ではなくなってしまったけれど、月光は赤穂のことを今でも親友だと思っていたから。
友達の絆は、永遠だからね。
そしてこの頃から、月光は隠密を育て始めていた。
瀬来家は隠密を使って情報収集をし、戦術のヒントにしたり、時期や環境を調べたりすることを昔からしていた。
月光の父親は、あまり隠密を重視していない。
けれど月光は、情報はあればあるほど作戦や戦術に生かすことができると認識していた。
それに、防衛のためでもあった。
父の監視の目はいまだに厳しいが、それをかいくぐって赤穂と接触している。
以前のような恋人ではないが、心を寄り添わせることも大切ではないか。
将堂家という大きなものを、赤穂は兄とともに背負っている。
その手助けがしたいのに、邪魔しないでほしいんだよね。
子供のときのように、ひとりでうつむく赤穂に、ひとりではないよと言って隣に並んであげたいだけなのだ。
それすらも許さないというのは、家臣として良くないよ。
父の心は嫉妬心で歪み。恋人ではなくなった月光と赤穂の姿も、歪ませて。男同士の付き合いなど許せんと、いつまでも声高に叫ぶのだ。
いい加減にしろ。
月光はもう、父に付き合うのがつらいのだ。
気に食わないのなら勘当すれば? と、この頃は思う。
赤穂のそばにいられなくなると困るから、勘当は勘弁と思っていた時期もあるが。
兵士として、軍師として、もうそれなりの地位があるから大丈夫だと気づいたのだ。
でも勘当は、瀬来一族が許さない。
将堂の宝玉は瀬来家の誉だから。面倒くさっ。
十月、瀬来の領地にはススキ野原が見渡す限りに広がっていて。夜中にこっそり、そこで赤穂と会うのだ。
自分たちの胸の高さまであるススキの穂は、しゃがんでしまえば誰からも見えない。
ワサワサと豊かな穂は、誰の目からもふたりの姿を隠して。
月の光で銀色に揺れるススキ野原で、秘密の逢瀬だ。
月光は、十月に左軍と右軍が交代したので、領地にて休暇中。
赤穂は、家の立て直しに忙しい兄に代わって左軍を率いて、まだ前線基地にいる。
超過勤務だ。
基地と瀬来の領地はそれほど離れていないから、たまにこうして、父の目を盗んで赤穂と逢引きしていた。
まぁ逢引きといっても、やましいことはしていない。
単純に会って、話をするだけ。
友達として、愚痴を言い合うだけ。
「家ってさ、本当に面倒くさいよね」
「あぁ、面倒くさいな」
そう言って、ふたりでため息をつく、みたいな。
「誰も彼も、俺の後ろの家を見やがる。俺自身のことを見てくれる奴なんか、もうおまえしかいないよ」
瀬間に女性を紹介されて、赤穂はその何人かと関係を持った。
お節介なことに、瀬間がいちいち報告してくるから腹立たしいのだが。
瀬間には悪気がない。だからこそ、腹立たしいのだけど。
瀬間の気持ちとしては、月光と赤穂が別れたから、傷心の赤穂に女性を紹介したということのようだ。
赤穂がうまくいっていると報告すれば、フッた月光も後ろめたさがなくなるだろう? という見解だ。
フッてないし。家の都合だし。
つか、わかっていないよね? 剣道馬鹿の朴念仁だからな、瀬間は。
元恋人が、他の人と付き合っているのを知って嬉しがるような人間はいないんだよ。
なにかしら、チクリと胸に刺さるものなんだよ。
恋愛したことないのか? ないんだな?
そう、瀬間は恋愛をしたことがない。
ヤマドリ血脈を残すために、同じ血脈の者と結婚したが。結婚式当日に相手と会ったというのだから。
相性も、恋も愛もないのだ。
そして色恋に費やす時間などないと言い切る、剣道馬鹿だ。
生き方が大雑把すぎて、やっぱり瀬間とは合わなーい、と月光は思う。
そうじゃなくて。
赤穂は、何人かと付き合ったが。みんな赤穂自身を愛してはくれなかったみたい。
女性は、自分を守ってくれるかどうかが、一番に来る。その次が愛なのだ。
衣食住に困らないことは、子供を産み育てるためにも、必要なこと。
だから、赤穂の後ろにある家を、どうしても見ちゃうよね。
将堂家なら安泰だもん。
そう思うのは仕方がないことだよ。
でも、赤穂はそれが見えてしまうと、もう駄目みたい。
「月光は、俺が将堂家の赤穂だから好きになったんじゃないだろ?」
「まぁね。将堂家がなにかわかる前に、そばに赤穂がいたからね」
「俺は、気づいたんだよ。家族は俺を愛してはくれなかったが。おまえがずっと愛してくれた。それはとても尊いものだった。出会う女性には、好きと言ってもらえるが。誰もおまえのようじゃない」
「そりゃ、僕じゃないんだから、誰も僕のようではないだろう」
「…うまく言えないが。おまえの愛情が一番心地よいんだ。月光、もう一度俺を愛してくれないか?」
月光の父に触れるなと言われてから、赤穂は月光に触れなかった。
でも今、小指と小指が触れている。
キスも情交もしてきた相手なのに、ほんのわずかに触れた指のぬくもりが、これほどに恋しいなんて。
月光は頬を染め。赤穂の体温をじっくり味わった。
「愛しているよ、赤穂。愛していない瞬間など、一秒もない」
「ならば、もう一度俺と…」
首を横に振る月光に、赤穂は押し黙った。
「赤穂の出世を願う軍師の僕が、それは駄目だと告げている。女性と結婚して子供をもうけ、将堂家での地位を盤石にする。それが赤穂の為だ」
「おまえの愛情を心地よいと知っているのに、他の者と付き合うのは不実じゃないか」
月光も、種馬のように扱われて傷ついた。赤穂に同じことを言いたくはない。
でも、赤穂は。養子であり傍流だと、あなどられることもある。
赤穂に確固とした力をあげたいのだと、軍師の月光は言う。
本音と建て前、ではない。どちらも本音だから、始末が悪い。
「うん。わからないな。わからない…」
「将堂の宝玉でも、わからないことがあるのか?」
苦笑して、赤穂が月光の顔をのぞき込む。
「わからないことだらけさ。だから家とか、本当に面倒くさいって言うんだ」
重いため息をついて、月光は銀色に光る月を見上げた。
自分と同じ名前の、美しいものを。
「子供の頃は、なんにも考えずに、心のままに好きなものを好きと言い、抱き締めて、ずっと笑っていられて、良かったよね。でも、もう子供ではいられない。瀬来家は僕を離してくれないし。赤穂も大きな家を背負っている」
「俺は、おまえと愛し合いたいだけだ」
「だから…愛してるってば」
にっこり笑って、月光は赤穂と小指を絡めた。今は、それだけ。
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