68 / 159
番外 准将、将堂青桐 1
◆准将、将堂青桐
生まれたときから、己の命は己のものではなかった。
青桐の元の名前は、葵という。
長野の山奥で、爺さんに育てられた。が、それが本当に実の祖父であるかはわからない。
だが。白い模様のある黒い大翼だから、血のつながりはあるのだろう。
葵が物心ついたときには、木を積んだ籠を体の前でぶら下げ。山の下に降りて、薪を売っていた。
きこりである。
だが、会う人物はひとりだけなのだ。
爺さんは人目につくのを嫌がり、葵にもそれを強制した。
この大翼を人に見せてはいけないと言われて、葵は育ったのだ。
薪は、そのひとりの人物が乗ってくる馬車に全部積む。あとはお任せ。委託販売というやつだ。
その仕事以外では、葵は爺さんに読み書きを習い。剣道をさせられ。生活を律して、暮らしていた。
きこりに、剣道は必要なのか?
疑問に思いながらも、育ててくれる爺さんに意見を言うこともない。
だって、爺さんは言うのだ。
おまえは、おまえであっておまえではない。
なんの呪文であろう。
十八歳のとき、爺さんは亡くなったのだが。
死の間際。少し、葵に教えてくれた。
「おまえは、ある家の息子。しかしその家には、すでにもうひとりのおまえがいる。葵よ。もしも声がかかったら、その彼を助けてやりなさい。だが二十二まで声がかからなかったら。ここから旅立ち、好きに生きなさい」
よくは、わからなかった。
あの世に旅立つ前に、全部教えてくれても良くね?
だが、おそらく。誰かの影武者をするために自分は生かされていたのだと、葵は解釈した。
見も知らぬ誰かのために、なにかをしなければならないなんて、理不尽…とは思わなかった。
葵は、きこりをして。書物を読んで。体を鍛えて。そんな規則正しい生活が気に入っている。
特に、なんの不満もないのだが。
代り映えのしない生活でもある。
誰かが別の生活、別の生き方を提示してくれるのなら。それに乗っかってみてもいい。
ワクワクするのか。苦しいばかりなのか。
それは、やってみなければわからないではないか。
まぁそうは思っても、一向に声などかからなかったが。
爺さんが死んでからも、薪を買い上げていく商人は変わらずに来てくれたから、生活に不自由はない。
誰かが、なにかを頼みに来るかもしれない。そんなそわそわした気分は常にあったものの。
なんだかんだで、二十一になった。
あと一年、なにもなければ。爺さんの言うように、ここを巣立つ。
もしくは、このまま生活を維持する。
そこで葵は、首を傾げる。
誰も来なければ、生活自体はなにも変わらないな。
でも、それならそれで構わない葵だった。
しかし、そのときは唐突に訪れたのだ。
冬場に薪はよく売れるので、夏場に切り出してよく乾燥させた薪を籠に積み、山の下へ売りに行く用意をしていた。
そのとき、見知らぬ気配を感じて。
葵は、振り返りざまに薪を投げつける。
木は男のひとりに綺麗に命中するが、もうひとりは剣を構えて突進してきた。
葵は、剣道をかじってはいたが、真剣を持っていない。
苦戦するかと思ったが。大きな翼で宙に浮き、剣の代わりに長めの薪を持って男に向かった。
上からの攻撃に虚をつかれた相手は、なんの手応えもなく。木の棒で殴り倒されたのだ。
なんだったのだ?
ホッと息をつき。葵は、男たちが何者なのか調べようとする。
しかし、家の陰にもうひとり隠れていて、そいつに頭を思いっきり殴られた。
綺麗な着物を身につけた、細い目の男。
くそっ。油断した。
★★★★★
目を覚ますと。見知らぬ部屋にいた。
天井が大きくて、ひと目で己が住んでいた山小屋ではないことがわかった。
そして、かたわらに。誰かの気配がある。
自分を襲ったやつらかと思ったが。
そこにいたのは。白髪の、超美人だった。
思わず息をのんで、見てしまう。
爺さんに、本を読めば大概のことは書かれていると言われていたので。葵は読書が好きだ。
物語も、郷土資料も、歴史も、医学も、いろいろ見てきたが。
本の中に書かれていた、雪で作られた彫像。そこにいる人はそんな感じだった。
表情がなく、体温も感じられないような…まんま人形なのか? 生きているように見えなくて。
声をかけるのに、躊躇した。
人形というのは、人が作り出すものだけれど。
目の前のその人は、まるで人ではないみたいで。
どちらかと言うと、神様が作り上げた者。もしくは神や天使そのもの。
神々しさと高潔さを、肌で感じた。
あぁ、そうだ。はっきり言おう。
一目惚れしたんだ。
葵が出会った人数は、少ない。でも爺さんが死んだあとは、山を降りて買い物をしに行ったりもしたので。全く人と関わっていないわけではない。
要は、翼を見られなければいいわけだから。マントを着れば、どこへでも行けたのだ。
それに、森にあるものだけで自給自足するには、圧倒的に野菜が足りない。
体作りのためには、食の均衡を取らなければならないのだ。
まぁ、それはともかく。
つまり、今まで出会ったどの人物よりも、目の前の人は美しいということだ。
神が作り出したものだからか、いまだに男女の区別もつかない。
己は、人生を。見知らぬ誰かに捧げるつもりだった…。
この人に出会うまでは。
鼻筋がスッと通っていて、くっきりとした形の良い目元。白髪と同じ、透き通った白いまつ毛が、時折まばたきするので。それだけが、生きている証のように見えた。
薄青の瞳は、泉の水面のよう。
白皙の顔に、薄い唇がかすかに色づき。
顎の線は細いけれど、頬にはかすかな丸みがあって痩せぎすではない。
いつまで見ていても、飽きない。
葵がジッと見ていたら、その人が懐に手を入れた。
あ、動いた。人形じゃないと確信したら、つい声を出してしまった。
「貴方は、誰ですか?」
声をかけたら、その人はようやく葵が目を覚ましていることに気づいたようで。伏し目がちの白いまつ毛が動き、瞳が葵のことを認めた。
目が合った。
生気を感じられる、その青い瞳はとにかく美しかった。
これは、本当に神様かもしれない。
怖がらせたら、消えてしまうんじゃないだろうか? そう思って。葵は優しく笑いかけた。
「お、お目覚めですか?」
しゃべった。普通に、言葉を。
でも、声は男性だった。
耳を包み込むような心地よさがあるけれど、低めの声。だが、いつまでも聞いていたくなるような、穏やかで、柔らかい…。
やっぱり神様かも。人の声で、これほど魅了されたことはない。
他の人の声は、ただの声だった。
「あぁ、俺。誰かに殴られたんだっけ? 集めた焚き木はどうしたかな…」
身を起こしながら、葵は痛い頭を手でさすった。
緊張して、どうでもいいことを話してしまう。
買い物などのやり取り以外で、人とちゃんとした会話をするのは、爺さん以来だ。
「貴方が俺を助けてくれたんですか? ありがとうございます」
礼を言ったのに、ちょっと悲しそうにまつ毛が揺れる。
なんで?
それに、もっと彼の声が聞きたい。
葵は書物で、女性とはもちろん、男性とも結婚できることを知っているので。性別に関して引っかかることはなかった。
それに、身を隠して生きてきた環境から、積極的に子孫を残そうとする意識も薄い。
よくわからないが、子供を山の中で隠して育てなければならないのなら、可哀想じゃないか。
決めつけかもしれないが、普通の子供は友達と外で駆け回って遊ぶという印象がある。
自分はそういう性質ではなかったので。村で遊ぶ子供たちを、うらやましいと思ったことはないのだが。
ま、一般論として、だ。
絶対、子供を作りたくないとか。逆に子供が欲しいとか。そういうこだわりが、己にはないということ。
っていうか、そんなことより。
今は、目の前の一大事だ。
彼が欲しい。彼を悲しませたくない。彼のことで頭がいっぱいだ。
「貴方の名前を、教えてもらえませんか?」
もしかして、やっぱり神様かも。
だって、あまりにも綺麗すぎるし。
さっきから黙っているけれど、言葉、通じているのかな?
いや、お目覚めですかと言ったから、通じているはずだ。
でも、とにかく。
葵は彼がこの場に存在している人間なのか、確かめたかった。
「すみませんでした、名乗りもせず。私は、時雨堺と申します」
小さく頭を下げる。
動いた。しゃべった。
人間だとわかって、葵はすっごく嬉しくなって、思わず笑みを浮かべる。
いやいや、ここは喜んでいる場合ではない。
ここは即断、即決、すみやかに決着をつけよう。早い者勝ちだ。
まぁ、こんなに美しい人が、独り身である可能性は、極めて低いけれど。
だって、こんなにも綺麗なのだ。
だが、まずは動かなければ始まらないだろう? 当たって砕けろ。ダメ元。どんと来いっ。
表情を引き締め、葵は思いきった。
「時雨さん、あの、不躾ですけど…」
その場に正座をして、葵は堺と向かい合うと。背筋をピシリと伸ばしたまま、直球で告げた。
「貴方のような美しい人を見るのは、初めてです。どうか、俺と結婚してくれませんか?」
初対面でいきなり求婚されたら、そりゃ、誰だって驚くよ。
堺もそのようだった。
自分でも、驚いているのだ。
でも。早く。
ここで決めなければ。
彼には手が届かなくなる。そんな予感がした。
鶴の恩返しの物語のように。
主人公の失敗により、鶴が飛び去ってしまう。そんなことにはしない。
己は失敗しない。ここは逃がせない。そう思ったのだ。
己の人生は、誰かのもの。そう思って、生きてきた。
なにも欲しがらず。なに色にも染まらず。ただ日々を過ごす。それでいいと思っていたけれど。
このとき初めて、葵は自らの気持ちで、想いで、これが欲しいと手を伸ばしたのだ。
しかし…驚いていた堺が、突然涙をこぼしたから。葵はマジで慌てた。
人が泣くのを、見たのも初めてだった。
その涙は、氷の彫像からこぼれ落ちる結晶のように美しく。つい見惚れてしまうが…。
な、慰めなくては。
「え、そんな…泣くほど嫌でしたか? まぁ確かに、俺はきこりで貧乏かもしれませんが。必ず幸せにします」
堺は涙を上品な仕草で拭い、そして葵に目を合わせた。
う、涙でウルウルキラキラの破壊力が。
「はい。貧乏でも構いません。私は貴方と一緒になります」
彼がどんな気持ちで、その言葉を述べたのか。
そのときは考えず。
葵は、ただただ嬉しかった。
え? ホント? マジで?
だって、ダメ元だったのだ。一緒になるって、言った。
確かに、言ったっ!
「ほ、本当に? やった。こんな綺麗な人と結婚できるなんて、夢みたいだ」
「貴方が望むのなら、私は一生貴方のそばにいます」
膝の上に軽く置いていた手を、堺に握られた。
ひえっ、冷たい。
ひんやりとして、しっとりとした、柔らかさ。
人と触れ合うのも、葵は初めてだった。
爺さんは、子供をベタベタに甘やかす性質ではなかった。
赤子の頃は、さすがに抱いただろうが。
葵が物心ついたついたときには、すでに一定の距離感があって。
葵も、抱っこを要求するような、甘えた子供ではなかったのだ。
かといって、愛情を感じなかったわけではない。
爺さんなりに、大切に育ててくれたと思う。それに接触が多ければ、愛情深いということもないだろう。
いや、爺さんの話は、どうでもよくて。
触れた手の感触が、とても気持ちが良かったのだ。
人肌、というには冷たいが。触れたというだけで、心も近寄ったような。そんな感じ。
「嬉しいな。時雨さん、俺、きっと貴方を幸せにしてみせますからね」
貧乏なんて、させないよ。
いっぱい稼いで、貴方を幸せにする。満足させる。
だから、そばにいてください。
そう思っていたら、堺の顔が近づいてきた。
これは…。物語でよく見かける、あのくちづけですか?
本当に? もう? そんな急展開、あり?
なんて、ひとりでアワアワしていたら。
頭の中で、なにかがバチンと弾けて。暗転した。
頭を殴られた以上の、強い衝撃。
「貴方の笑顔も言葉も、生涯、私の記憶に留めます。貴方の代わりに。結婚はできませんが。嘘ではない。私の一生は貴方のものです」
薄れていく意識の中で、彼の声を聞いた。
やっぱりな。
こんなうまい話、そうそうないよ。
冷静な自分が、浮かれ上がった己にツッコミを入れる。
全くだ。
でも。堺の『私の一生は、貴方のものです』その言葉は。
強く。深く。己の中に刻まれたのだ。
★★★★★
葵は、爺さんに剣道を仕込まれたわけだが。
精神を鍛える技も同時に教わった。
どちらかというと、そちらの方に重きを置いていたような気がする。
精神鍛錬、瞑想、無心。
どのような事態になっても動じない、強い信念。などというものか。
爺さんいわく、心の軸がしっかり一本通っていれば大抵のことはなんとかなる。
たとえば、火もまた涼し、とか。猛者の剣筋がゆっくり見える、とか。
本当かよ。
その教えの中で、ひとつ、特殊に思えるものがあった。
龍鬼対策である。
「草木を操る、奇抜な戦略を練る、空を飛ぶ、などの物理攻撃が有効な龍鬼には。剣術を極めることで対処できるだろう。だが、精神を操る龍鬼だけは、己の力ではどうにもならない。己の意志とは違うことをさせられるのだからな。ならば。心を鍛えるしかないだろう」
きこりの自分が、龍鬼と戦う日なんて来ないんじゃね? と思いはするが。
なにかの役に立つ日が来ないとも限らないから、そのまま爺さんの言うとおりに鍛錬した。
★★★★★
ハッと、意識は急に浮上した。
だが、頭はぼんやりとして。霞がかっている。
なんか、思考がうまく働かない。
そうだ。こんなときは。額をグルグルするといい。
人差し指を、額の上でグルグル回す。
誰がそう言ったのかも。なんで、それがいいのかもわからないままに、ぐるぐるぐるぐる…。
そのうちなにかが引っかかったような感じがして、そこを重点的に引っ掻いたら。
頭の中で、蕾が花を咲かせるかのように、ブワッとなにかが開いた。
それはもう、見事に。鮮明に。頭がすっきりしたのだ。
「爺さん、すげぇ」
思わずつぶやいて、息をのむ。
頭がぼんやりしていたとき、爺さんのことも自分のことも忘れていた。
「これが、龍鬼の精神操作」
そうしたら、堺のことも思い出し。葵は寝たまま、辺りを見回した。
部屋には、誰もいない。
部屋は、先ほどと同じ部屋だ。
そんなに時間は経っていない、と思うのだが。
とりあえず、精神操作を解除した場面を見られず。ホッとした。
爺さんは、頭がぼんやりして考えがまとまらないときは記憶をいじられている可能性があると言った。
「なにかを忘れるとか。過去を思い出せないとか。そんなときには額に手を当て、紐をほどく想像をする。精神を操る龍鬼は、記憶を縛ると言われている」
そうは言っても、記憶を失ったら爺さんの忠告すら思い出せなくなる。
だから、頭がぼんやりしたら額をグルグル。その言葉だけをひたすら繰り返し。体の本能部分に刷り込んでおいたのだ。
「…本当に、縛られていたんだな。堺が精神を操る龍鬼、なのか?」
葵はひたすら、堺の顔だけ見ていたから、翼がないことには気づかなかった。
でも、そういえばなかったかも。
龍鬼というものがどういうものか、葵は文献で読んで、知っている。
人知の及ばぬ能力を持つ、と。
確かに、記憶を縛って言いなりにするなんてことが出来るなら、末恐ろしい能力だけれど。
でも、葵は聞いていた。意識が遠のく前の、彼の言葉。
私の一生は、貴方のものです。
言いなりにできるのに、なぜそのように苦しげな声で己を差し出すことまでするのか?
きっと。堺のせいではないのだ。
堺が望んだことではないのだ。
初対面の、己の求婚を受けたのも。
こうして記憶を消す前だったから、受けた。
せめて己の望みを叶えようと思ったのか。
それともどうせ忘れるのだから、なにを言ってもいいと思ったのか。
どっちでもいい。
結婚してと言って、うなずいたのだから。彼にはそのようにしてもらう。
どのみち堺の一生は、己のものなのだ。
ただ、記憶を縛られるのはもう勘弁だった。
次もうまいこと術を外せるとは限らない。
「さて。堺をがっちり手に入れるにはどうしたらいいかな?」
布団の上で身を起こした葵は、鮮明な頭で深く思案する。
声がかかったら、もうひとりの自分に手を貸す。この一件は、その声がかりなのだろう。
それは、いいよ。なにをするのかはまだわからないが。己の体はくれてやる。
ただ。堺はもらい受ける。
初めて欲しいと思った、美しい人。
鶴の恩返しのように、飛び立って逃げたくなるかもしれないけれど。
翼がないから、逃げられないね?
まぁ、逃がすつもりはないけれど。
生まれたときから、己の命は己のものではなかった。
青桐の元の名前は、葵という。
長野の山奥で、爺さんに育てられた。が、それが本当に実の祖父であるかはわからない。
だが。白い模様のある黒い大翼だから、血のつながりはあるのだろう。
葵が物心ついたときには、木を積んだ籠を体の前でぶら下げ。山の下に降りて、薪を売っていた。
きこりである。
だが、会う人物はひとりだけなのだ。
爺さんは人目につくのを嫌がり、葵にもそれを強制した。
この大翼を人に見せてはいけないと言われて、葵は育ったのだ。
薪は、そのひとりの人物が乗ってくる馬車に全部積む。あとはお任せ。委託販売というやつだ。
その仕事以外では、葵は爺さんに読み書きを習い。剣道をさせられ。生活を律して、暮らしていた。
きこりに、剣道は必要なのか?
疑問に思いながらも、育ててくれる爺さんに意見を言うこともない。
だって、爺さんは言うのだ。
おまえは、おまえであっておまえではない。
なんの呪文であろう。
十八歳のとき、爺さんは亡くなったのだが。
死の間際。少し、葵に教えてくれた。
「おまえは、ある家の息子。しかしその家には、すでにもうひとりのおまえがいる。葵よ。もしも声がかかったら、その彼を助けてやりなさい。だが二十二まで声がかからなかったら。ここから旅立ち、好きに生きなさい」
よくは、わからなかった。
あの世に旅立つ前に、全部教えてくれても良くね?
だが、おそらく。誰かの影武者をするために自分は生かされていたのだと、葵は解釈した。
見も知らぬ誰かのために、なにかをしなければならないなんて、理不尽…とは思わなかった。
葵は、きこりをして。書物を読んで。体を鍛えて。そんな規則正しい生活が気に入っている。
特に、なんの不満もないのだが。
代り映えのしない生活でもある。
誰かが別の生活、別の生き方を提示してくれるのなら。それに乗っかってみてもいい。
ワクワクするのか。苦しいばかりなのか。
それは、やってみなければわからないではないか。
まぁそうは思っても、一向に声などかからなかったが。
爺さんが死んでからも、薪を買い上げていく商人は変わらずに来てくれたから、生活に不自由はない。
誰かが、なにかを頼みに来るかもしれない。そんなそわそわした気分は常にあったものの。
なんだかんだで、二十一になった。
あと一年、なにもなければ。爺さんの言うように、ここを巣立つ。
もしくは、このまま生活を維持する。
そこで葵は、首を傾げる。
誰も来なければ、生活自体はなにも変わらないな。
でも、それならそれで構わない葵だった。
しかし、そのときは唐突に訪れたのだ。
冬場に薪はよく売れるので、夏場に切り出してよく乾燥させた薪を籠に積み、山の下へ売りに行く用意をしていた。
そのとき、見知らぬ気配を感じて。
葵は、振り返りざまに薪を投げつける。
木は男のひとりに綺麗に命中するが、もうひとりは剣を構えて突進してきた。
葵は、剣道をかじってはいたが、真剣を持っていない。
苦戦するかと思ったが。大きな翼で宙に浮き、剣の代わりに長めの薪を持って男に向かった。
上からの攻撃に虚をつかれた相手は、なんの手応えもなく。木の棒で殴り倒されたのだ。
なんだったのだ?
ホッと息をつき。葵は、男たちが何者なのか調べようとする。
しかし、家の陰にもうひとり隠れていて、そいつに頭を思いっきり殴られた。
綺麗な着物を身につけた、細い目の男。
くそっ。油断した。
★★★★★
目を覚ますと。見知らぬ部屋にいた。
天井が大きくて、ひと目で己が住んでいた山小屋ではないことがわかった。
そして、かたわらに。誰かの気配がある。
自分を襲ったやつらかと思ったが。
そこにいたのは。白髪の、超美人だった。
思わず息をのんで、見てしまう。
爺さんに、本を読めば大概のことは書かれていると言われていたので。葵は読書が好きだ。
物語も、郷土資料も、歴史も、医学も、いろいろ見てきたが。
本の中に書かれていた、雪で作られた彫像。そこにいる人はそんな感じだった。
表情がなく、体温も感じられないような…まんま人形なのか? 生きているように見えなくて。
声をかけるのに、躊躇した。
人形というのは、人が作り出すものだけれど。
目の前のその人は、まるで人ではないみたいで。
どちらかと言うと、神様が作り上げた者。もしくは神や天使そのもの。
神々しさと高潔さを、肌で感じた。
あぁ、そうだ。はっきり言おう。
一目惚れしたんだ。
葵が出会った人数は、少ない。でも爺さんが死んだあとは、山を降りて買い物をしに行ったりもしたので。全く人と関わっていないわけではない。
要は、翼を見られなければいいわけだから。マントを着れば、どこへでも行けたのだ。
それに、森にあるものだけで自給自足するには、圧倒的に野菜が足りない。
体作りのためには、食の均衡を取らなければならないのだ。
まぁ、それはともかく。
つまり、今まで出会ったどの人物よりも、目の前の人は美しいということだ。
神が作り出したものだからか、いまだに男女の区別もつかない。
己は、人生を。見知らぬ誰かに捧げるつもりだった…。
この人に出会うまでは。
鼻筋がスッと通っていて、くっきりとした形の良い目元。白髪と同じ、透き通った白いまつ毛が、時折まばたきするので。それだけが、生きている証のように見えた。
薄青の瞳は、泉の水面のよう。
白皙の顔に、薄い唇がかすかに色づき。
顎の線は細いけれど、頬にはかすかな丸みがあって痩せぎすではない。
いつまで見ていても、飽きない。
葵がジッと見ていたら、その人が懐に手を入れた。
あ、動いた。人形じゃないと確信したら、つい声を出してしまった。
「貴方は、誰ですか?」
声をかけたら、その人はようやく葵が目を覚ましていることに気づいたようで。伏し目がちの白いまつ毛が動き、瞳が葵のことを認めた。
目が合った。
生気を感じられる、その青い瞳はとにかく美しかった。
これは、本当に神様かもしれない。
怖がらせたら、消えてしまうんじゃないだろうか? そう思って。葵は優しく笑いかけた。
「お、お目覚めですか?」
しゃべった。普通に、言葉を。
でも、声は男性だった。
耳を包み込むような心地よさがあるけれど、低めの声。だが、いつまでも聞いていたくなるような、穏やかで、柔らかい…。
やっぱり神様かも。人の声で、これほど魅了されたことはない。
他の人の声は、ただの声だった。
「あぁ、俺。誰かに殴られたんだっけ? 集めた焚き木はどうしたかな…」
身を起こしながら、葵は痛い頭を手でさすった。
緊張して、どうでもいいことを話してしまう。
買い物などのやり取り以外で、人とちゃんとした会話をするのは、爺さん以来だ。
「貴方が俺を助けてくれたんですか? ありがとうございます」
礼を言ったのに、ちょっと悲しそうにまつ毛が揺れる。
なんで?
それに、もっと彼の声が聞きたい。
葵は書物で、女性とはもちろん、男性とも結婚できることを知っているので。性別に関して引っかかることはなかった。
それに、身を隠して生きてきた環境から、積極的に子孫を残そうとする意識も薄い。
よくわからないが、子供を山の中で隠して育てなければならないのなら、可哀想じゃないか。
決めつけかもしれないが、普通の子供は友達と外で駆け回って遊ぶという印象がある。
自分はそういう性質ではなかったので。村で遊ぶ子供たちを、うらやましいと思ったことはないのだが。
ま、一般論として、だ。
絶対、子供を作りたくないとか。逆に子供が欲しいとか。そういうこだわりが、己にはないということ。
っていうか、そんなことより。
今は、目の前の一大事だ。
彼が欲しい。彼を悲しませたくない。彼のことで頭がいっぱいだ。
「貴方の名前を、教えてもらえませんか?」
もしかして、やっぱり神様かも。
だって、あまりにも綺麗すぎるし。
さっきから黙っているけれど、言葉、通じているのかな?
いや、お目覚めですかと言ったから、通じているはずだ。
でも、とにかく。
葵は彼がこの場に存在している人間なのか、確かめたかった。
「すみませんでした、名乗りもせず。私は、時雨堺と申します」
小さく頭を下げる。
動いた。しゃべった。
人間だとわかって、葵はすっごく嬉しくなって、思わず笑みを浮かべる。
いやいや、ここは喜んでいる場合ではない。
ここは即断、即決、すみやかに決着をつけよう。早い者勝ちだ。
まぁ、こんなに美しい人が、独り身である可能性は、極めて低いけれど。
だって、こんなにも綺麗なのだ。
だが、まずは動かなければ始まらないだろう? 当たって砕けろ。ダメ元。どんと来いっ。
表情を引き締め、葵は思いきった。
「時雨さん、あの、不躾ですけど…」
その場に正座をして、葵は堺と向かい合うと。背筋をピシリと伸ばしたまま、直球で告げた。
「貴方のような美しい人を見るのは、初めてです。どうか、俺と結婚してくれませんか?」
初対面でいきなり求婚されたら、そりゃ、誰だって驚くよ。
堺もそのようだった。
自分でも、驚いているのだ。
でも。早く。
ここで決めなければ。
彼には手が届かなくなる。そんな予感がした。
鶴の恩返しの物語のように。
主人公の失敗により、鶴が飛び去ってしまう。そんなことにはしない。
己は失敗しない。ここは逃がせない。そう思ったのだ。
己の人生は、誰かのもの。そう思って、生きてきた。
なにも欲しがらず。なに色にも染まらず。ただ日々を過ごす。それでいいと思っていたけれど。
このとき初めて、葵は自らの気持ちで、想いで、これが欲しいと手を伸ばしたのだ。
しかし…驚いていた堺が、突然涙をこぼしたから。葵はマジで慌てた。
人が泣くのを、見たのも初めてだった。
その涙は、氷の彫像からこぼれ落ちる結晶のように美しく。つい見惚れてしまうが…。
な、慰めなくては。
「え、そんな…泣くほど嫌でしたか? まぁ確かに、俺はきこりで貧乏かもしれませんが。必ず幸せにします」
堺は涙を上品な仕草で拭い、そして葵に目を合わせた。
う、涙でウルウルキラキラの破壊力が。
「はい。貧乏でも構いません。私は貴方と一緒になります」
彼がどんな気持ちで、その言葉を述べたのか。
そのときは考えず。
葵は、ただただ嬉しかった。
え? ホント? マジで?
だって、ダメ元だったのだ。一緒になるって、言った。
確かに、言ったっ!
「ほ、本当に? やった。こんな綺麗な人と結婚できるなんて、夢みたいだ」
「貴方が望むのなら、私は一生貴方のそばにいます」
膝の上に軽く置いていた手を、堺に握られた。
ひえっ、冷たい。
ひんやりとして、しっとりとした、柔らかさ。
人と触れ合うのも、葵は初めてだった。
爺さんは、子供をベタベタに甘やかす性質ではなかった。
赤子の頃は、さすがに抱いただろうが。
葵が物心ついたついたときには、すでに一定の距離感があって。
葵も、抱っこを要求するような、甘えた子供ではなかったのだ。
かといって、愛情を感じなかったわけではない。
爺さんなりに、大切に育ててくれたと思う。それに接触が多ければ、愛情深いということもないだろう。
いや、爺さんの話は、どうでもよくて。
触れた手の感触が、とても気持ちが良かったのだ。
人肌、というには冷たいが。触れたというだけで、心も近寄ったような。そんな感じ。
「嬉しいな。時雨さん、俺、きっと貴方を幸せにしてみせますからね」
貧乏なんて、させないよ。
いっぱい稼いで、貴方を幸せにする。満足させる。
だから、そばにいてください。
そう思っていたら、堺の顔が近づいてきた。
これは…。物語でよく見かける、あのくちづけですか?
本当に? もう? そんな急展開、あり?
なんて、ひとりでアワアワしていたら。
頭の中で、なにかがバチンと弾けて。暗転した。
頭を殴られた以上の、強い衝撃。
「貴方の笑顔も言葉も、生涯、私の記憶に留めます。貴方の代わりに。結婚はできませんが。嘘ではない。私の一生は貴方のものです」
薄れていく意識の中で、彼の声を聞いた。
やっぱりな。
こんなうまい話、そうそうないよ。
冷静な自分が、浮かれ上がった己にツッコミを入れる。
全くだ。
でも。堺の『私の一生は、貴方のものです』その言葉は。
強く。深く。己の中に刻まれたのだ。
★★★★★
葵は、爺さんに剣道を仕込まれたわけだが。
精神を鍛える技も同時に教わった。
どちらかというと、そちらの方に重きを置いていたような気がする。
精神鍛錬、瞑想、無心。
どのような事態になっても動じない、強い信念。などというものか。
爺さんいわく、心の軸がしっかり一本通っていれば大抵のことはなんとかなる。
たとえば、火もまた涼し、とか。猛者の剣筋がゆっくり見える、とか。
本当かよ。
その教えの中で、ひとつ、特殊に思えるものがあった。
龍鬼対策である。
「草木を操る、奇抜な戦略を練る、空を飛ぶ、などの物理攻撃が有効な龍鬼には。剣術を極めることで対処できるだろう。だが、精神を操る龍鬼だけは、己の力ではどうにもならない。己の意志とは違うことをさせられるのだからな。ならば。心を鍛えるしかないだろう」
きこりの自分が、龍鬼と戦う日なんて来ないんじゃね? と思いはするが。
なにかの役に立つ日が来ないとも限らないから、そのまま爺さんの言うとおりに鍛錬した。
★★★★★
ハッと、意識は急に浮上した。
だが、頭はぼんやりとして。霞がかっている。
なんか、思考がうまく働かない。
そうだ。こんなときは。額をグルグルするといい。
人差し指を、額の上でグルグル回す。
誰がそう言ったのかも。なんで、それがいいのかもわからないままに、ぐるぐるぐるぐる…。
そのうちなにかが引っかかったような感じがして、そこを重点的に引っ掻いたら。
頭の中で、蕾が花を咲かせるかのように、ブワッとなにかが開いた。
それはもう、見事に。鮮明に。頭がすっきりしたのだ。
「爺さん、すげぇ」
思わずつぶやいて、息をのむ。
頭がぼんやりしていたとき、爺さんのことも自分のことも忘れていた。
「これが、龍鬼の精神操作」
そうしたら、堺のことも思い出し。葵は寝たまま、辺りを見回した。
部屋には、誰もいない。
部屋は、先ほどと同じ部屋だ。
そんなに時間は経っていない、と思うのだが。
とりあえず、精神操作を解除した場面を見られず。ホッとした。
爺さんは、頭がぼんやりして考えがまとまらないときは記憶をいじられている可能性があると言った。
「なにかを忘れるとか。過去を思い出せないとか。そんなときには額に手を当て、紐をほどく想像をする。精神を操る龍鬼は、記憶を縛ると言われている」
そうは言っても、記憶を失ったら爺さんの忠告すら思い出せなくなる。
だから、頭がぼんやりしたら額をグルグル。その言葉だけをひたすら繰り返し。体の本能部分に刷り込んでおいたのだ。
「…本当に、縛られていたんだな。堺が精神を操る龍鬼、なのか?」
葵はひたすら、堺の顔だけ見ていたから、翼がないことには気づかなかった。
でも、そういえばなかったかも。
龍鬼というものがどういうものか、葵は文献で読んで、知っている。
人知の及ばぬ能力を持つ、と。
確かに、記憶を縛って言いなりにするなんてことが出来るなら、末恐ろしい能力だけれど。
でも、葵は聞いていた。意識が遠のく前の、彼の言葉。
私の一生は、貴方のものです。
言いなりにできるのに、なぜそのように苦しげな声で己を差し出すことまでするのか?
きっと。堺のせいではないのだ。
堺が望んだことではないのだ。
初対面の、己の求婚を受けたのも。
こうして記憶を消す前だったから、受けた。
せめて己の望みを叶えようと思ったのか。
それともどうせ忘れるのだから、なにを言ってもいいと思ったのか。
どっちでもいい。
結婚してと言って、うなずいたのだから。彼にはそのようにしてもらう。
どのみち堺の一生は、己のものなのだ。
ただ、記憶を縛られるのはもう勘弁だった。
次もうまいこと術を外せるとは限らない。
「さて。堺をがっちり手に入れるにはどうしたらいいかな?」
布団の上で身を起こした葵は、鮮明な頭で深く思案する。
声がかかったら、もうひとりの自分に手を貸す。この一件は、その声がかりなのだろう。
それは、いいよ。なにをするのかはまだわからないが。己の体はくれてやる。
ただ。堺はもらい受ける。
初めて欲しいと思った、美しい人。
鶴の恩返しのように、飛び立って逃げたくなるかもしれないけれど。
翼がないから、逃げられないね?
まぁ、逃がすつもりはないけれど。
あなたにおすすめの小説
繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました
こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。
しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです…
本当の花嫁じゃないとばれたら大変!
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。