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番外 氷龍、時雨堺 5
氷の棺から己を救い出してくれた、紫輝。
堺の中で紫輝が特別な存在になるのは必然だった。
堺を罵倒する金蓮から全力でかばってくれて。友達になってくれて。
手をつないだり、抱きついたり、そんな接触も躊躇なくしてくれる。
家族以上に良くしてくれる紫輝を、堺は運命の相手だと思ってしまった。
でもそれは、違ったのだ。
愛情を向けてくれた相手が、恋の相手。それは同義ではない。
愛情にも種類がある。親愛、友愛、恋愛、その繊細な違いが、人と関りを断っていた堺にはわからなくなっていて。
そのことについて考えたこともなかったのだ。
好きなら、伴侶に。
そんな両極端な、偏った考え方しかできなくなっていたのだが。
紫輝はそうではないと、丁寧に優しく教えてくれた。
確かに、優しくしてくれた人と即結婚、というのは乱暴な話ですね。
恋愛はなんとしてもその人を欲しいと思う、欲がついてくるという。
堺は、どうしてもこの人と添い遂げたいのだ、とか。手に入れたいのだ、とか。そういう欲を誰にも感じたことがない。
紫輝にでさえ。
初めて、己に親身になってくれた人。
自分も親しみを感じ。ずっとそばにいて、できれば一緒の家に住みたい、なんて思うほどに慕い。
彼が危機になったら、命を張ってでも助けたいと思う。
そんな強い意識があるのに。
紫輝と抱き合いたい、彼を誰にも渡したくない、そんな欲は生まれなかった。
それは兄に対しても同じ。
紫輝に向ける感覚と、兄に向けていた感覚は、すごく似ている。
ほのぼのとした、慕う気持ち。命を張れるほどの強い想いはあるが。情欲はないという感じだ。
兄も紫輝も、愛を注いでくれた。
だから己も返したい。
だが彼らへのその想いは。柔らかくて、温かくて、包み込みたい、そんなふんわりした愛情。
紫輝や兄に向けていた堺の感情は、おそらく親愛であった。
親や家族、兄弟に向けての愛情。優しい愛。
紫輝から教えられた、恋というものは。
抱き締めて、腕の中に閉じ込めて、ひとりで食らうような、そんな激烈な感情だった。
己の中にそんな凶暴な気持ちが湧くということを、堺は想像もできない。
それが恋だというのなら。己には恋はできないかもしれない。
恋は、堺が知りえない、全く別のなにかなのだ。
それがなにかは、まだわからない。
★★★★★
堺は、もし己が恋をすることがあったら…もしくは伴侶となる人がいるとしたら、同じ龍鬼だろうと思っていた。そうでなくてはいけないと思っていた。
龍鬼を忌み嫌う、普通の人々と恋などできないし。
そばに寄って怖がらせるのも、可哀想ではないか。
そのような目で見ること自体が、人々を恐れさせるのだろうと考えていたからだ。
でも紫輝の伴侶には、翼がある。
紫輝の心をのぞいたときに見た天誠が、普通の人物かというと、よくわからないのだが。
だって元は翼がなかった三百年前の人物で、今は翼があるとか。でたらめです。
だから紫輝は特別枠なのだ。
しかし、高槻の恋人は確実に普通の人である。
龍鬼が普通の人と恋愛できると、高槻が証明した。すごいです。
だけど。高槻はそういう相手に会えただろうが。
自分には無理だ。
紫輝や兄が恋の相手にならないのなら。やはり自分は、ひとりで生きていくしかないのだろう。
そんなふうに思っていた頃、堺は青桐に出会った。
記憶を奪う前の、本当の初対面のとき、堺は青桐に求婚された。
貴方のような美しい人を見るのは初めて、なんて言ってくれたのだ。
己を美しいと言ったのは、兄、紫輝に続いて三人目。
兄はひいき目だとして。
審美眼がない人物、その二の出現に。堺はおおいに驚いた。
でも真剣な顔つきで求婚してくれた彼には、好感の気持ちしかない。
龍鬼である己を恐れず、美しいと言ってくれた彼を、拒む理由などなかった。
結婚して、という彼の言葉は。堺の中で一生忘れられないくらいの、大切な宝物になった。
こんな化け物のような自分には、二度ともたらされることはない、キラキラの宝物。
人知れず、堺は胸の中でその言葉を抱き締める。
大事に、大事に。
命令で仕方がなかったとはいえ、彼の記憶を奪ってしまったことは。本当に心苦しいことだった。
平穏に暮らしてきた一般人を、戦に巻き込む罪の代償を。堺は支払わなければならない。
必ず、貴方をお守りします。
己のすべてを捧げます。
そう、心の中で彼に誓った。
求婚してくれた彼はいなくなってしまうけれど。
どのような貴方でも、誠心誠意お仕えします。
そう思っていたのだが。
求婚していることは忘れているはずなのに。記憶を奪ったあとも、青桐は己のことを好きだ、綺麗だ、可愛いと言う。
記憶を縛っても、審美眼が良くなることはないのですね。
将堂の氷の魔物、血塗られた白き魔物と恐れられている己に、可愛いだなんて。
あまりにも不釣り合いな言葉に、内心苦笑した。
そんなおかしな言葉は、貴方しか言いませんよ。
青桐は己に好意を示し、手を握る。
ゆっくりと距離を縮めてくる。
龍鬼である己が青桐に触れることを躊躇する、その脅えまでも包み込んで。人との触れ合いを、なにも知らぬ己を気遣いながら。優しく、優しく、己に寄り添ってくれた。
とても紳士な人なのです。
しばらくして、触れることに慣れてほしいと言われ。
どちらかというと、醜く、穢れた化け物に触れても大丈夫なのですか? と心配になってしまう。
けれど堺自身は、嬉しかった。
だって好き好んで己に触りたいなどと言う者なんか、今までいなかったのだから。
それは貴重な存在。
孤独で凍った堺の心を、手で包んで温めてくれるような、とてもありがたい存在なのだ。
実際、彼はひだまりのように、そばにいるだけでぬくもりを感じられるのです。
でも青桐が触れるその感触は。たまに紫輝が抱きついてくる、それとはまるで別物だった。
優しくて、荒々しくて。真綿のようで、嵐のようで。麗らかで、灼熱だった。
その感触は堺を、ときに戸惑わせ。ときに溺れさせ。ときに翻弄され。
ときに…甘酸っぱい心地にさせた。
キス、された。
初めてのキスは、ただただびっくりして。なにが起きているのかわからなかった。
それよりも体の一番繊細な部分を人と龍鬼が触れ合わせてしまって大丈夫なのか、と。それだけが心配だった。
己のせいで青桐になにかがあっては…。
噂の通り、翼が腐ったり龍鬼の能力がうつったり、化け物に変化してしまったり、そんなことがあったら。どうお詫びすればいいのかわからなくて。頭がグルグルした。
でも青桐が、龍鬼でもキスは大丈夫だと紫輝が言っていた、と言うから。
少しホッとしたけれど。
だが触れ合いは大丈夫だとしても。
今度は将堂家の方になった青桐に触れられることこそが、恐れ多いと思い始めてしまう。
この感覚は、なかなか拭えない。
当主である金蓮に、何年にもわたって罵倒されたから。
龍鬼である堺が、将堂の者に触れてはいけないのだと刷り込まれているのだ。
青桐は金蓮とは別人である。
青桐が金蓮と同じような考えを持っていないことも、理解している。
でもいつか、金蓮のように。青桐も己を罵倒する日が来るのではないか。そんな恐れを無意識に感じているのかもしれない。
けれどその恐れを乗り越えても、彼の求めに応えたい。
彼のそばにいたいと感じるようになっていった。
★★★★★
紫輝が以前、恋心を測るのに使用したたとえ話を、青桐にした。
彼がとても優しいから。
己への感情が同情なのか、それとも恋愛の好きなのかわからなくて、不安になったから。
それで青桐は恋の欲を持って己を好きだと言い。触れてくるのだとわかって。嬉しかった。
嬉しいと思うほどに、彼のことを好きになっていたようなのだが。
堺は、そのときは。自分の気持ちにまだ気づいていなかった。
「俺と一生キスできなくても、いい?」
青桐にそう聞かれ、堺は嫌だと思った。
自らの意志で己に触れてくるのは、青桐しかいないのに。
温かい体温で寄り添ってくれるのは、青桐しかいないのに。
くちづけで己の心をかき乱すのは、青桐だけなのに。
よく考えぬまま、堺は青桐の唇にキスした。
彼のようにうまくはできなくて、場所が外れてしまったけど。
今、キスしたい。今、キスしなきゃ。そう思ったのだ。
もっと貴方とキスしたい。
触れてほしい。離れたくない。
この激しい感情の発露は、紫輝が言っていた、あの恋なのだと。
堺は…彼の熱烈なくちづけを受けながら、自覚した。
★★★★★
青桐と赤穂は、同じ顔だ。
でも赤穂に感じなかったことを、青桐に感じる。
やんわり目を細めると、目元が色っぽいとか。
優しくて温かいとか。博識だなとか。意外と強引な面もあるのだなとか。
でもそれが、嫌ではなかったり。微笑ましい気持ちや。守ってあげたい、など。
距離感が初めから近くて戸惑ってしまうし。でも触れられると心地よいと感じ。龍鬼の体液を舐めるなんて、常識に外れたことをして、ものすごく慌ててしまったりもした。
あまりにも怖いものなしで、困ってしまう。
ドキドキ、ワクワク、ソワソワ、ホワホワ、そんな感情の動きが、もう初めて感じることばかりで。
これほどに心を揺さぶられることこそ、堺の初体験だった。
青桐は、堺が今まで出会った人物の誰とも違う。
だからいつも戸惑っている。
本気の勝負をと言われ、道場で堺は青桐と相対している最中だが。
己の木刀をあちこち体に受けて壁にぶち当たる青桐を見て、今も戸惑っていた。
これ以上は、体に障ります。もう立ち上がらないでください。
昨夜青桐が、龍鬼には熊が詰まっていると言った。
そうなのです。得体の知れないものが詰まっているのです。
だから己は強いのです。誰にも負けないのです。
だから、貴方を守れるのです。この力は貴方を守るためのものであって、貴方を傷つけるものにはしたくないのです。
彼が熊と評したこの力は、堺がずっと嫌悪してきた己の中の闇だった。
ただただ他人を傷つけるだけの能力。
人の心を暴く、節操のない能力。
青桐の記憶を奪った、汚らわしい能力。
堺は己の能力が嫌いだった。
でも青桐は、どれほど凶暴な熊が詰まっていても、それが俺の堺だ、と。大好きだ、と。言ってくれる。
己の嫌いな部分までも好きと言ってくれる。
そんな青桐を、好きにならずにいられないではないか。
金蓮はよく堺を蔑んだが。兄のことは美しい龍、私の龍と言って賛美していた。
どこかで、仕えるべき当主に目を掛けられている兄をうらやましく思っていた。
孤独で、ひとりでうつむいて、誰も己を求めない。醜く、汚らわしい存在だけど。
自分もきっと誰かの龍になりたかったのだ。
美しい龍、俺だけの龍と言われたかった。
それは過ぎた願いだと思っていた。なのに青桐は、俺の龍だと言ってくれて。
そのとき、体に衝撃が走り抜け。涙が出た。
嬉しかった。
私は貴方の龍だと、叫びたくなるくらい。
青桐、己を貴方のものにしてください。
己のすべてを、貴方のものに。
足先から頭のてっぺんまで、貴方に所有されたい。
切実な想いが、心の奥底から湧き上がってくる。
胸が締めつけられた。
これは、なんなのですか?
苦しいのに、嬉しい。嬉しい方が勝っている、だから苦しいけど、苦しくない。
抱き締めてほしかった。同じ苦しいのなら、青桐に抱き締められて苦しくなりたかった。
だからすがりついて、貴方の龍ですと告げた。
できる限りそばにいさせてほしいと、願った。
もちろん青桐はそれを承諾してくれて。ずっと一緒だと言ってくれた。
でも。それはないのだ。
記憶をずっと封じ込めることはできないから。
以前のことを思い出したい、取り戻したいと強く願えば、明日にでも記憶を縛る糸はほどけてしまう。
堺の記憶を縛る能力は、それほど強い術ではないのだ。
人の心というものは、縛りつけたって、ずっと縛られているような、そんな弱いものではない。
強い想いがあればあるほど、堺の能力など簡単に跳ね除けてしまうもの。
だから。ずっとはないのです。
それに青桐が、堺が記憶を奪った張本人だと知ったら…。
ずっとなど。永遠などない。
それを思うたびに、悲しくなる。
もうこんなにも青桐を愛してしまっているのに。
でも青桐のためにも。拒絶されたら、すぐに離れます。
その悲壮な覚悟を堺はすでに決めていた。
その上で、できるだけ長く青桐とともにいられる時間を多く過ごしたいと思っていた。
「あぁ、こんなところにいた。探したよ、青桐。堺。ん? なにやってんの?」
道場の扉を開けたのは紫輝だった。
壁を背にしてぐったりしている青桐を目にして、紫輝が首を傾げた。
「私が賭けに負けたのです」
「堺が賭けに負けたのに、青桐がコテンパンなのか?」
無傷の己に、ぼろぼろの青桐だ。負けた方が元気なのがよくわからない、という顔を紫輝はしている。
「俺が、賭けに勝ったら、本気の勝負してくれって頼んだんだ。手加減なしの…」
青桐がため息交じりに言うのに、紫輝は満面の笑みになった。
「いいね。俺とも手合せしてくれよ、堺。あ、俺は手加減希望です」
紫輝が入ってきたら、途端に場が明るくなったような気がする。
紫輝は本当に、太陽のような人だ。
紫輝が剣を後ろ手に取り出したので、堺も木刀を捨てて剣を抜いた。
「いいですよ。初めての手合わせですね?」
フッと笑って、堺は紫輝に剣を合わせた。
赤穂と渡り合った紫輝の剣は、どのくらいの実力なのか。堺も楽しみだった。
ガンガンと堺は紫輝の剣を受ける。早くて迷いのない剣筋、だが、軽すぎる。
紫輝は、一回剣を合わせれば相手が昏倒する。そういう能力を使っている。
だから。ある意味一撃必殺なのだ。死なないけど。
でも今は能力を使っていないので、堺は徐々に紫輝を圧倒していく。
「ね、なにを賭けたの?」
きゅるん、とした顔で紫輝に聞かれ。堺はギョッとした。
体で感じたら…なんて。それは、言えません。
しかしそんな堺の動揺を見て取って、紫輝はニヤニヤ笑いでツッコんでくる。
「言えないこと、ないよね? 堺は俺に隠し事、しないよね?」
「いえ、これは、隠し事では、なくて」
動揺に言葉が切れるたび、剣の拍子が取れなくなり、紫輝の剣筋に一歩遅れてしまう。
その隙をついて、踏み込まれた。
ダンと前に出て、一閃。堺は剣を立てて防御し、後ろに一歩引かされた。
「うん。それでいい」
ニコリと笑う紫輝。でも堺は意味がわからなかった。
「青桐と賭けをするなんて、楽しそうなことしてんじゃん? めいっぱい楽しんで。恋愛は甘いも苦いも、喜びも悲しみも、嬉しいもつらいも、半分半分だよ。ついたり離れたり、悩んだりえっちしたり。いろいろすればいいの」
紫輝がそばに寄ってきて、こっそり囁いて。
堺は頭の毛が逆立ったような気になった。
賭けの対象がえっちなことだと、気づかれてしまったのでしょうか?
「おい、なに堺とこそこそしてんだよっ、紫輝、俺とも一戦付き合えよ」
「ダメダメ、これから行くところがあるから。ふたりとも汗かいてるなら早く着替えてきてくれよ」
「えぇ? 良い感じになってきたのに。どこ行くんだよ? 黒猫耳」
「青桐の屋敷、奪還作戦だよ。あと、猫じゃねぇしっ」
紫輝と青桐の仲良しさんなやり取りを見て、ほのぼのしていた堺だが。
紫輝に道場を追い出されてしまい。仕方なく、着替えに自室へ向かおうとした。
おもむろに横にスッと青桐が寄ってきて。ひそ、と囁く。
「昨日の約束は、今日、守ってもらうから」
堺がカッと頬を赤くしたのを見て、青桐は艶っぽく唇の端を引きあげる。
昨夜、一緒に寝ようと言われたのだ。
待っていて、と念を押されて。
でもひと晩中彼に抱き締められたら。もう、すっごく好きなのに。いつか離れなければならないのに、離れられなくなってしまいそうで…。
怖くなって逃げてしまったのだ。すみません。
でもこういうことを考えるのが、紫輝の言う、甘いも苦いもなのだろうか?
青桐と離れることを考えると、本当に悲しくてつらいのに。
みんな、こんなふうに悩んだり苦しんだりしているのだとしたら…恋愛ってしんどいものなのですね。
堺の中で紫輝が特別な存在になるのは必然だった。
堺を罵倒する金蓮から全力でかばってくれて。友達になってくれて。
手をつないだり、抱きついたり、そんな接触も躊躇なくしてくれる。
家族以上に良くしてくれる紫輝を、堺は運命の相手だと思ってしまった。
でもそれは、違ったのだ。
愛情を向けてくれた相手が、恋の相手。それは同義ではない。
愛情にも種類がある。親愛、友愛、恋愛、その繊細な違いが、人と関りを断っていた堺にはわからなくなっていて。
そのことについて考えたこともなかったのだ。
好きなら、伴侶に。
そんな両極端な、偏った考え方しかできなくなっていたのだが。
紫輝はそうではないと、丁寧に優しく教えてくれた。
確かに、優しくしてくれた人と即結婚、というのは乱暴な話ですね。
恋愛はなんとしてもその人を欲しいと思う、欲がついてくるという。
堺は、どうしてもこの人と添い遂げたいのだ、とか。手に入れたいのだ、とか。そういう欲を誰にも感じたことがない。
紫輝にでさえ。
初めて、己に親身になってくれた人。
自分も親しみを感じ。ずっとそばにいて、できれば一緒の家に住みたい、なんて思うほどに慕い。
彼が危機になったら、命を張ってでも助けたいと思う。
そんな強い意識があるのに。
紫輝と抱き合いたい、彼を誰にも渡したくない、そんな欲は生まれなかった。
それは兄に対しても同じ。
紫輝に向ける感覚と、兄に向けていた感覚は、すごく似ている。
ほのぼのとした、慕う気持ち。命を張れるほどの強い想いはあるが。情欲はないという感じだ。
兄も紫輝も、愛を注いでくれた。
だから己も返したい。
だが彼らへのその想いは。柔らかくて、温かくて、包み込みたい、そんなふんわりした愛情。
紫輝や兄に向けていた堺の感情は、おそらく親愛であった。
親や家族、兄弟に向けての愛情。優しい愛。
紫輝から教えられた、恋というものは。
抱き締めて、腕の中に閉じ込めて、ひとりで食らうような、そんな激烈な感情だった。
己の中にそんな凶暴な気持ちが湧くということを、堺は想像もできない。
それが恋だというのなら。己には恋はできないかもしれない。
恋は、堺が知りえない、全く別のなにかなのだ。
それがなにかは、まだわからない。
★★★★★
堺は、もし己が恋をすることがあったら…もしくは伴侶となる人がいるとしたら、同じ龍鬼だろうと思っていた。そうでなくてはいけないと思っていた。
龍鬼を忌み嫌う、普通の人々と恋などできないし。
そばに寄って怖がらせるのも、可哀想ではないか。
そのような目で見ること自体が、人々を恐れさせるのだろうと考えていたからだ。
でも紫輝の伴侶には、翼がある。
紫輝の心をのぞいたときに見た天誠が、普通の人物かというと、よくわからないのだが。
だって元は翼がなかった三百年前の人物で、今は翼があるとか。でたらめです。
だから紫輝は特別枠なのだ。
しかし、高槻の恋人は確実に普通の人である。
龍鬼が普通の人と恋愛できると、高槻が証明した。すごいです。
だけど。高槻はそういう相手に会えただろうが。
自分には無理だ。
紫輝や兄が恋の相手にならないのなら。やはり自分は、ひとりで生きていくしかないのだろう。
そんなふうに思っていた頃、堺は青桐に出会った。
記憶を奪う前の、本当の初対面のとき、堺は青桐に求婚された。
貴方のような美しい人を見るのは初めて、なんて言ってくれたのだ。
己を美しいと言ったのは、兄、紫輝に続いて三人目。
兄はひいき目だとして。
審美眼がない人物、その二の出現に。堺はおおいに驚いた。
でも真剣な顔つきで求婚してくれた彼には、好感の気持ちしかない。
龍鬼である己を恐れず、美しいと言ってくれた彼を、拒む理由などなかった。
結婚して、という彼の言葉は。堺の中で一生忘れられないくらいの、大切な宝物になった。
こんな化け物のような自分には、二度ともたらされることはない、キラキラの宝物。
人知れず、堺は胸の中でその言葉を抱き締める。
大事に、大事に。
命令で仕方がなかったとはいえ、彼の記憶を奪ってしまったことは。本当に心苦しいことだった。
平穏に暮らしてきた一般人を、戦に巻き込む罪の代償を。堺は支払わなければならない。
必ず、貴方をお守りします。
己のすべてを捧げます。
そう、心の中で彼に誓った。
求婚してくれた彼はいなくなってしまうけれど。
どのような貴方でも、誠心誠意お仕えします。
そう思っていたのだが。
求婚していることは忘れているはずなのに。記憶を奪ったあとも、青桐は己のことを好きだ、綺麗だ、可愛いと言う。
記憶を縛っても、審美眼が良くなることはないのですね。
将堂の氷の魔物、血塗られた白き魔物と恐れられている己に、可愛いだなんて。
あまりにも不釣り合いな言葉に、内心苦笑した。
そんなおかしな言葉は、貴方しか言いませんよ。
青桐は己に好意を示し、手を握る。
ゆっくりと距離を縮めてくる。
龍鬼である己が青桐に触れることを躊躇する、その脅えまでも包み込んで。人との触れ合いを、なにも知らぬ己を気遣いながら。優しく、優しく、己に寄り添ってくれた。
とても紳士な人なのです。
しばらくして、触れることに慣れてほしいと言われ。
どちらかというと、醜く、穢れた化け物に触れても大丈夫なのですか? と心配になってしまう。
けれど堺自身は、嬉しかった。
だって好き好んで己に触りたいなどと言う者なんか、今までいなかったのだから。
それは貴重な存在。
孤独で凍った堺の心を、手で包んで温めてくれるような、とてもありがたい存在なのだ。
実際、彼はひだまりのように、そばにいるだけでぬくもりを感じられるのです。
でも青桐が触れるその感触は。たまに紫輝が抱きついてくる、それとはまるで別物だった。
優しくて、荒々しくて。真綿のようで、嵐のようで。麗らかで、灼熱だった。
その感触は堺を、ときに戸惑わせ。ときに溺れさせ。ときに翻弄され。
ときに…甘酸っぱい心地にさせた。
キス、された。
初めてのキスは、ただただびっくりして。なにが起きているのかわからなかった。
それよりも体の一番繊細な部分を人と龍鬼が触れ合わせてしまって大丈夫なのか、と。それだけが心配だった。
己のせいで青桐になにかがあっては…。
噂の通り、翼が腐ったり龍鬼の能力がうつったり、化け物に変化してしまったり、そんなことがあったら。どうお詫びすればいいのかわからなくて。頭がグルグルした。
でも青桐が、龍鬼でもキスは大丈夫だと紫輝が言っていた、と言うから。
少しホッとしたけれど。
だが触れ合いは大丈夫だとしても。
今度は将堂家の方になった青桐に触れられることこそが、恐れ多いと思い始めてしまう。
この感覚は、なかなか拭えない。
当主である金蓮に、何年にもわたって罵倒されたから。
龍鬼である堺が、将堂の者に触れてはいけないのだと刷り込まれているのだ。
青桐は金蓮とは別人である。
青桐が金蓮と同じような考えを持っていないことも、理解している。
でもいつか、金蓮のように。青桐も己を罵倒する日が来るのではないか。そんな恐れを無意識に感じているのかもしれない。
けれどその恐れを乗り越えても、彼の求めに応えたい。
彼のそばにいたいと感じるようになっていった。
★★★★★
紫輝が以前、恋心を測るのに使用したたとえ話を、青桐にした。
彼がとても優しいから。
己への感情が同情なのか、それとも恋愛の好きなのかわからなくて、不安になったから。
それで青桐は恋の欲を持って己を好きだと言い。触れてくるのだとわかって。嬉しかった。
嬉しいと思うほどに、彼のことを好きになっていたようなのだが。
堺は、そのときは。自分の気持ちにまだ気づいていなかった。
「俺と一生キスできなくても、いい?」
青桐にそう聞かれ、堺は嫌だと思った。
自らの意志で己に触れてくるのは、青桐しかいないのに。
温かい体温で寄り添ってくれるのは、青桐しかいないのに。
くちづけで己の心をかき乱すのは、青桐だけなのに。
よく考えぬまま、堺は青桐の唇にキスした。
彼のようにうまくはできなくて、場所が外れてしまったけど。
今、キスしたい。今、キスしなきゃ。そう思ったのだ。
もっと貴方とキスしたい。
触れてほしい。離れたくない。
この激しい感情の発露は、紫輝が言っていた、あの恋なのだと。
堺は…彼の熱烈なくちづけを受けながら、自覚した。
★★★★★
青桐と赤穂は、同じ顔だ。
でも赤穂に感じなかったことを、青桐に感じる。
やんわり目を細めると、目元が色っぽいとか。
優しくて温かいとか。博識だなとか。意外と強引な面もあるのだなとか。
でもそれが、嫌ではなかったり。微笑ましい気持ちや。守ってあげたい、など。
距離感が初めから近くて戸惑ってしまうし。でも触れられると心地よいと感じ。龍鬼の体液を舐めるなんて、常識に外れたことをして、ものすごく慌ててしまったりもした。
あまりにも怖いものなしで、困ってしまう。
ドキドキ、ワクワク、ソワソワ、ホワホワ、そんな感情の動きが、もう初めて感じることばかりで。
これほどに心を揺さぶられることこそ、堺の初体験だった。
青桐は、堺が今まで出会った人物の誰とも違う。
だからいつも戸惑っている。
本気の勝負をと言われ、道場で堺は青桐と相対している最中だが。
己の木刀をあちこち体に受けて壁にぶち当たる青桐を見て、今も戸惑っていた。
これ以上は、体に障ります。もう立ち上がらないでください。
昨夜青桐が、龍鬼には熊が詰まっていると言った。
そうなのです。得体の知れないものが詰まっているのです。
だから己は強いのです。誰にも負けないのです。
だから、貴方を守れるのです。この力は貴方を守るためのものであって、貴方を傷つけるものにはしたくないのです。
彼が熊と評したこの力は、堺がずっと嫌悪してきた己の中の闇だった。
ただただ他人を傷つけるだけの能力。
人の心を暴く、節操のない能力。
青桐の記憶を奪った、汚らわしい能力。
堺は己の能力が嫌いだった。
でも青桐は、どれほど凶暴な熊が詰まっていても、それが俺の堺だ、と。大好きだ、と。言ってくれる。
己の嫌いな部分までも好きと言ってくれる。
そんな青桐を、好きにならずにいられないではないか。
金蓮はよく堺を蔑んだが。兄のことは美しい龍、私の龍と言って賛美していた。
どこかで、仕えるべき当主に目を掛けられている兄をうらやましく思っていた。
孤独で、ひとりでうつむいて、誰も己を求めない。醜く、汚らわしい存在だけど。
自分もきっと誰かの龍になりたかったのだ。
美しい龍、俺だけの龍と言われたかった。
それは過ぎた願いだと思っていた。なのに青桐は、俺の龍だと言ってくれて。
そのとき、体に衝撃が走り抜け。涙が出た。
嬉しかった。
私は貴方の龍だと、叫びたくなるくらい。
青桐、己を貴方のものにしてください。
己のすべてを、貴方のものに。
足先から頭のてっぺんまで、貴方に所有されたい。
切実な想いが、心の奥底から湧き上がってくる。
胸が締めつけられた。
これは、なんなのですか?
苦しいのに、嬉しい。嬉しい方が勝っている、だから苦しいけど、苦しくない。
抱き締めてほしかった。同じ苦しいのなら、青桐に抱き締められて苦しくなりたかった。
だからすがりついて、貴方の龍ですと告げた。
できる限りそばにいさせてほしいと、願った。
もちろん青桐はそれを承諾してくれて。ずっと一緒だと言ってくれた。
でも。それはないのだ。
記憶をずっと封じ込めることはできないから。
以前のことを思い出したい、取り戻したいと強く願えば、明日にでも記憶を縛る糸はほどけてしまう。
堺の記憶を縛る能力は、それほど強い術ではないのだ。
人の心というものは、縛りつけたって、ずっと縛られているような、そんな弱いものではない。
強い想いがあればあるほど、堺の能力など簡単に跳ね除けてしまうもの。
だから。ずっとはないのです。
それに青桐が、堺が記憶を奪った張本人だと知ったら…。
ずっとなど。永遠などない。
それを思うたびに、悲しくなる。
もうこんなにも青桐を愛してしまっているのに。
でも青桐のためにも。拒絶されたら、すぐに離れます。
その悲壮な覚悟を堺はすでに決めていた。
その上で、できるだけ長く青桐とともにいられる時間を多く過ごしたいと思っていた。
「あぁ、こんなところにいた。探したよ、青桐。堺。ん? なにやってんの?」
道場の扉を開けたのは紫輝だった。
壁を背にしてぐったりしている青桐を目にして、紫輝が首を傾げた。
「私が賭けに負けたのです」
「堺が賭けに負けたのに、青桐がコテンパンなのか?」
無傷の己に、ぼろぼろの青桐だ。負けた方が元気なのがよくわからない、という顔を紫輝はしている。
「俺が、賭けに勝ったら、本気の勝負してくれって頼んだんだ。手加減なしの…」
青桐がため息交じりに言うのに、紫輝は満面の笑みになった。
「いいね。俺とも手合せしてくれよ、堺。あ、俺は手加減希望です」
紫輝が入ってきたら、途端に場が明るくなったような気がする。
紫輝は本当に、太陽のような人だ。
紫輝が剣を後ろ手に取り出したので、堺も木刀を捨てて剣を抜いた。
「いいですよ。初めての手合わせですね?」
フッと笑って、堺は紫輝に剣を合わせた。
赤穂と渡り合った紫輝の剣は、どのくらいの実力なのか。堺も楽しみだった。
ガンガンと堺は紫輝の剣を受ける。早くて迷いのない剣筋、だが、軽すぎる。
紫輝は、一回剣を合わせれば相手が昏倒する。そういう能力を使っている。
だから。ある意味一撃必殺なのだ。死なないけど。
でも今は能力を使っていないので、堺は徐々に紫輝を圧倒していく。
「ね、なにを賭けたの?」
きゅるん、とした顔で紫輝に聞かれ。堺はギョッとした。
体で感じたら…なんて。それは、言えません。
しかしそんな堺の動揺を見て取って、紫輝はニヤニヤ笑いでツッコんでくる。
「言えないこと、ないよね? 堺は俺に隠し事、しないよね?」
「いえ、これは、隠し事では、なくて」
動揺に言葉が切れるたび、剣の拍子が取れなくなり、紫輝の剣筋に一歩遅れてしまう。
その隙をついて、踏み込まれた。
ダンと前に出て、一閃。堺は剣を立てて防御し、後ろに一歩引かされた。
「うん。それでいい」
ニコリと笑う紫輝。でも堺は意味がわからなかった。
「青桐と賭けをするなんて、楽しそうなことしてんじゃん? めいっぱい楽しんで。恋愛は甘いも苦いも、喜びも悲しみも、嬉しいもつらいも、半分半分だよ。ついたり離れたり、悩んだりえっちしたり。いろいろすればいいの」
紫輝がそばに寄ってきて、こっそり囁いて。
堺は頭の毛が逆立ったような気になった。
賭けの対象がえっちなことだと、気づかれてしまったのでしょうか?
「おい、なに堺とこそこそしてんだよっ、紫輝、俺とも一戦付き合えよ」
「ダメダメ、これから行くところがあるから。ふたりとも汗かいてるなら早く着替えてきてくれよ」
「えぇ? 良い感じになってきたのに。どこ行くんだよ? 黒猫耳」
「青桐の屋敷、奪還作戦だよ。あと、猫じゃねぇしっ」
紫輝と青桐の仲良しさんなやり取りを見て、ほのぼのしていた堺だが。
紫輝に道場を追い出されてしまい。仕方なく、着替えに自室へ向かおうとした。
おもむろに横にスッと青桐が寄ってきて。ひそ、と囁く。
「昨日の約束は、今日、守ってもらうから」
堺がカッと頬を赤くしたのを見て、青桐は艶っぽく唇の端を引きあげる。
昨夜、一緒に寝ようと言われたのだ。
待っていて、と念を押されて。
でもひと晩中彼に抱き締められたら。もう、すっごく好きなのに。いつか離れなければならないのに、離れられなくなってしまいそうで…。
怖くなって逃げてしまったのだ。すみません。
でもこういうことを考えるのが、紫輝の言う、甘いも苦いもなのだろうか?
青桐と離れることを考えると、本当に悲しくてつらいのに。
みんな、こんなふうに悩んだり苦しんだりしているのだとしたら…恋愛ってしんどいものなのですね。
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