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66 雨の慕情 ② ★
額を思いきり引っかいたあと、目を見開いたまま固まってしまった堺を、青桐は心配した。
薄青の瞳は、瞳孔の濃い色が際立つが。少し普段より開いているように見え。
もしかしたら意識がないのか? そこまで考えてしまう。
「堺、大丈夫か?」
肩に触れ、少し体を揺さぶると。
堺は青桐と目を合わせた。
くっきりとした形の良い目が、白く長いまつ毛に縁どられた目蓋で、そっと閉じられ。
唐突に、唇を寄せてくる。
彼からもたらされるキスを、青桐が拒むわけはない。
今まで、堺とは何度もキスしてきて、慣れていなかった堺も青桐のくちづけに応えられるくらいに上達して。上手になったと思うのだが。
触れる唇の動きや吐息に、なんとなく、溺れる者が藁を掴むような必死さを感じ。
青桐は堺の肩を押し戻し、唇をほどいた。
「堺、どうした? 記憶は戻ったか?」
青桐の問いかけに堺は瞳を揺らし、またくちづけようとする。
やはり様子がおかしい。
キスをしないで、抱き締めた。頭を撫でて彼をなだめる。
「大丈夫だよ。なにも心配しないでいい。なにがあっても。俺は受け止めてやる」
「青桐様、キスを、してください…お願いします。キスを…」
いつも清楚な堺が自分からキスをねだるのは、なにか理由があるのだろうとわかっていたが。
それも、どんなことも飲み込んでやるという意気込みで、堺を狂おしく抱き締めて深くくちづけた。
堺が求めているのだ。応えなきゃ、伴侶にあるまじきだ。
唇で唇を塞げば、堺の方から舌を差し入れてくる。
舌の真ん中をくすぐるキスではなく。強く舌同士を結びつけるような激しさがあり。
落ち着くよう、堺の舌先を甘く噛めば。薄青の瞳が情欲に潤んで、濃い青色になった。
「好きぃ…それ。青桐様、好きぃ」
舌を噛まれて、ろれつは怪しいが、そのようなことを言った。
それは、無理無理。ギュンとなるよ。おさえられねぇ。
舌を己に捕らわれているから、唾液が飲み込めなくて顎からしたたり落ちる。
そのしずくさえも、取りこぼすのはもったいないような気がして。青桐は舌でベロリと舐め取った。
「堺、俺は堺を愛しているんだ。怖がらせたくないのに、ゆっくり愛したいのに。これ以上煽られたら堺を傷つけてしまいそうなんだよ」
今の堺は凶悪的に可愛くて、色っぽい。
どこかぼんやりとして。だがそれが誘うように見える目の色。
薄く開いて、己を待ちわびているように見える唇。
なにもかもが、青桐のオスを刺激している。
でも同時に、大事にしろと黒猫耳が耳元でギャンギャンわめいているな。
わかってる。わかってる…。
「なんでも、いいです。なにをしても、いいから。御迷惑でしょうが…貴方のキスをください」
泣きそうな顔で、堺が言う。
ひと目で魅入られた薄青の瞳…その色に、青桐は弱かった。
なにをしてもいいなんて、狼に言ったらダメなんだぞ、堺。
それは、あとで教える。
けど、今は無理。
ご迷惑でしょうが、なんて健気なことを言われたら、青桐を縛る太い鎖など簡単にブッチギレてしまう。
紫輝の叫びも遠のいた。つか、いろいろと限界です。
青桐はくちづけしながら、堺の革帯に手をかける。剣を放り投げ、軍服を剥いで。防具も光の勢いで外した。
雨の音しかしなかった静寂な書庫に。
淫靡な、荒い息づかいが加わる。
堺を床板に押し倒し、青桐は彼の体をまたいで堺の白い肌を貪った。
昨夜のように堺の体のいいところを暴いていくような、優しい愛撫ではなく。
己の欲望のままに、舌を這わせる。
首筋や胸板の白さに、吸いついて。赤い痕を残す。
堺は己のもの。その所有の証をずっとつけたいと思っていた。
「ん、あ、青桐、さま…」
桃色の乳首を両の親指でクリクリと刺激すると、青桐の愛撫に堺は身悶える。
でも唇を離しすぎると、彼は不安そうな声を出した。
その乳首を舌で存分に可愛がりたいが、青桐は堺の唇を塞ぐ。
すると彼は、安堵したみたいに目を細めるのだ。
その柔らかな眼差し。
己のキスを待ち望んでいるのがわかって。
精神鍛錬して余程のことがないと動かない翼が、歓喜にビビッと震えた。
「ん、ふっ…ふぅん」
舌を甘く噛まれるのが気に入ったようで、あむあむと前歯で優しく噛んでやると。堺は気持ち良さそうな鼻息を漏らした。
ううぅ、可愛いっつうの。
青桐は堺のズボンのひもをほどき、膝を立てさせると、その間に己の体を入れ込んだ。
全く、余裕がなかった…。
「んぁ…」
温かい青桐の唇が離れていって、堺は彼を求めるように舌先をさ迷わせた。
閉じていた目を開けると、目の前の青桐の舌先から唾液の糸が引いている。
堺は蜜をすするように、青桐の舌先に伸びる唾液を舌で舐め取った。
青桐の頬は赤く染まり、息も荒く、眼差しは熱にうかされたようにとろんとしている。
雄々しさの中に色気があり、長い前髪がひと筋目の前に垂れると、壮絶に魅惑的で…。
堺は、この男に。青桐に、己のすべてを捧げたかった。
ハッと息を吸いこんだ青桐に、再び唇を塞がれ。堺は身も心も青桐に投げ出した。
なにをしてもいいのです。己は、貴方の龍だから。
だけど。このあとのことを、堺はあまりよく覚えていなかった。
ただただ嵐に巻き込まれ。
腰の辺りを、マグマでグルグルにかき回されたような。
揉みくちゃになって。青桐にしがみついて。
その情熱の渦に巻き込まれたのだ。
★★★★★
書庫に、雨の音だけの静寂が戻り。
青桐は堺の裸の肩を抱いて、床板に横たわっていた。
頬をすり寄せてくる堺についばむ優しいキスを送り、心地いい余韻に身を漂わせている。
「あの日のことを思い出しました。やはり熱を出していて、断片的に、なのですが。前線基地から屋敷に戻り。発熱がつらくて、とりあえず布団を引っ張り出して寝ていた私に、母が薬を持ってきたのです。これを飲んで寝ていなさいと。私は、今まで母に心配されたようなことがなかったので嬉しかったのですが。お恥ずかしながら。私は粉薬が飲めないのです」
「ふふ、可愛いなぁ。でも粉薬が飲めないと、どうしていたのだ?」
「龍鬼には龍鬼を診る医者がいます。井上医師なら、私には飲み薬を用意してくれるのですが。母は私が粉薬を苦手にしていることすら知らなかったのです」
青桐をみつめるときはきらりと輝く瞳が、暗く陰った。
堺をないがしろにする親の気持ちが、青桐にはさっぱりわからない。
これほどに心根が綺麗で、可愛らしい息子の、なにが不満だ?
「それで薬は飲まずに寝ていたのですが。いつの間にか兄が帰ってきていて。兄は、前線基地にいるはずだったのです。私と赤穂様…赤穂様の隊列と、入れ違いに基地に入ったので」
堺は青桐に赤穂の話をしたくはなくて、声を途切らせた。
赤穂の話は、記憶を呼び覚ます危険があったから。
でも青桐の記憶はもう戻っているのだと、改めて思って。話を続ける。
「兄は私を看病してくれました。体を拭いて、着物も整えてくれて。兄がいればもう安心だと思いました。でも両親はどうやら、私を見限ったようなのです。薬は毒だったようで。堺はいらぬ、と言った父の声が。いつまでも私の胸を、剣で突き刺すかのようでした」
たまらなくなって、青桐は堺の頭を胸に抱いた。
幼子を慰めるように。堺の白髪を大きな手で何度も撫でる。
己が堺の親ならば。決してこんな想いをさせはしないのにっ。
「兄は私を殺そうとする両親から、私を守ってくれた。でも…両親を討ったのは、手裏の龍鬼だったのです。今まで見たことのない、龍鬼。私は両親を殺されたことに逆上し、その龍鬼に剣を向けたが。兄が、その龍鬼をかばった。私の剣は兄の手を貫いてしまって…血が…」
そこで堺は。一瞬、瞳を揺らし。
青桐を、その美しい瞳でみつめる。
「…あの。私は…兄に求婚されて。くちづけられました。その当時は、それがなんなのかよくわからなくて。熱で朦朧としていたし。でも今ならわかります。青桐様に教えてもらったので。兄の舌が、私の舌に巻きつくような…」
「ちょ、ちょ、ちょ…待て、堺。兄に、深いキスをされたのか? キスだけか? 情交は?」
青桐はギョッとした。
堺の兄は、弟に懸想していたのか?
いや、これほどに可愛らしく美しい弟がいつもそばにいて、慕ってきたとしたら、グラッときちゃう気もわからないでもないでもないが。
いやいや、同意、大切。
それが紫輝の教えだ。
それよりも熱で朦朧としている堺と、一線超えていないだろうな。超えてたら、許さない。
「情交とは、どのようなものなのでしょう?」
「う、う…さっき、俺と堺がしたみたいなやつ…だけど」
なんとなく気まずくて、青桐は言葉をにごしてしまう。
清々しい堺の目でみつめられると、疚しさが大爆発で、いたたまれなくなんだよぉ。
「あの、マグマの中で揉みくちゃになったみたいなやつですか? なにをされたのですか?」
堺は先ほどの状況をよくわかっていなかったようだ。まぁ、うん。
「さっきは、俺の陰茎と堺の陰茎をこすり合わせて、抱き合って情を交わしたのだが。正確には、まだ情交じゃない。男同士の情交は、堺のここに俺の陰茎を挿入して、動かして…」
青桐は堺の背に手を回し、背筋をたどって下におろし、双丘の奥に息づく蕾に指を当てた。
堺のここに、と言ったときに少し指をもぐり込ませる。
そこは柔らかく、青桐の指をくわえ込んだ。
先ほど、己のモノと堺のモノをこすり合わせ、腰を激しく動かして刺激したとき。青桐は堺の先走りを利用して、少し蕾をほぐした。
できれば一線超えたいと思ったし。堺が求めてくるから、いいのではないかと思って。
理性は焼き切れていたし。堺を抱きたい気持ちは、究極まで高まっていたし…で。
己の頭もいい加減のぼせていたわけだが。
堺自身も記憶が戻ったばかりで取り乱しているように見えたし。
なによりこんな本に囲まれた、小さくて薄暗い埃っぽい雰囲気もなにもないようなところで、堺の初めてを奪うのは。嫌だった。
浪漫がないじゃん。
ふたりとも正気で、互いに互いを求め合って、柔らかいランプの灯の元で、厳かに、ゆっくり、しっぽり、愛し合いたいではないかっ。
だから、青桐は。
ブッチギレた太い鎖を二重に巻きつけて。
焼き切れた理性にも水をブッかけて。
最後の一線だけは死守したわけなのだ。
己の欲を堺に押しつけてしまったけれど、同意のないうちに突っ込んで、強姦して、堺を壊すことにでもなったら大変だ。
紫輝にぶっ殺されるまでもなく。己が自害する。
まぁ、その最悪な事態は回避できた。できる限り堺を大切にできたと思う。
それでも未練がましく、堺の後孔に指を差し入れてくちゅくちゅしてしまうのだが。
そうしたら、堺が言った。
「は…破廉恥なっ」
すみません。邪な想いでいっぱいで。
堺に怒られてしまった。
やっぱりまだ、情交を匂わすのは堺には早かったかな?
だとしたら、欲のままに突っ走らないで本当に良かった。と青桐は思っていたのだが。
「青桐様に、そのような破廉恥なことをさせてしまうなんて。申し訳ありません」
また泣きそうな顔つきで堺が言うから。青桐は苦笑してしまった。
「馬鹿な。俺が堺に破廉恥なことをしたんだ。ここを指でいじられながらイっちゃった堺、可愛かったよ」
トントンと意味深に指をうごめかせて、そこを意識させると。
堺は顔を真っ赤にして。恥じらった。
「すみません。イくと、お知らせもできず…」
そこか?
そんなこと言われたら、またたぎってくるって。
いや、教えてと言ったのは己だが。
「大丈夫だよ。次は…ちゃんと意識のある中で、ふたりで気持ち良くなろう? そうしたら堺はちゃんと俺に教えられるよ。楽しみにしている」
あんまり可愛いが過ぎるので、青桐は堺にくちづけた。
甘く、甘く、とろかすように、舌を舌で撫で上げて、唇を離す間際に甘噛みして。
蕾の中に指を少し深く押し込んだ。
堺は『は、ん』と、啼いて。まつ毛で涙を弾いた。
舌先を噛むと、すごく敏感になるのを…発見してしまった。
「あぁ、早くここに俺のを入れて、堺と一番深いところまでつながりたい。堺の全部を俺のものにできる日を夢見てる」
名残惜しげに、唇をつけたまま囁くと。堺も少し息を乱しながら言ってきた。
「今、していただいても。私は構いません」
「ダメダメ。堺の初めては、寝台の上で。ゆっくり、愛し合いたいからな。お互いに幸福感に満たされる、本当の情交を堺としたいんだ」
青桐はくちづけをほどき。蕾をいじっていた指も離した。
「今晩、堺を俺のものにしてもいい? 抱いて、身も心も奪っていい?」
真摯に、堺の目をみつめてたずねると。堺は小花が開くような柔らかい微笑みを浮かべた。
「はい」
それは、恥じらいと嬉しさが入り混じる、だけどはっきりとした肯定の『はい』だった。
青桐の好きな『はい』。
もう、今すぐギューッとしてやりたくなった。
「うん。…で、その。兄に情交はされてないよな?」
キリがない。
堺の可愛さには、際限がないので。青桐は気を引き締めて話を戻し、堺に問いかけた。
「そのようなことはなかったです。求婚のあと、兄が私の記憶を封じたみたいなので。兄が…私の能力を模倣した。でもそれはすごく難しいことなのです。龍鬼には、各々特異能力というものがあります。私のは記憶を縛るものですが。誰も真似できないから特異能力と呼ばれているのです。だから兄が私の記憶を縛ったことは…今、思い出してみても、信じられなくて」
眉間を軽く寄せ、堺は難しい面持ちになる。
「謎はまだあります。なぜ兄さんが両親を殺した手裏兵とともに姿を消したのか。それも理由がわかりません。両親が私を殺そうとした理由は…なんとなくわかるのです。時雨家の存続のためだと。ふたり目の龍鬼がいることで、時雨家はいつも謀反を疑われていた。私は火種のようなものだったのです。将堂家が代替わりしたことで、父は追い込まれたのでしょう。しかし。兄が両親を殺したわけではない。兄には、姿を消す理由がない」
青桐も考えてみる。
青桐が一番引っかかる点は、兄が堺に求婚したということだが。
兄が弟に懸想する。近親婚はあまり推奨されないが、血脈を維持するという点で、今の世ではそれほど珍しいことではなく。
特に同性同士では、さほど禁忌という印象はない。
だから兄が堺を愛したからといって、姿を消すほどの理由にはならないような気がするのだ。
深いキスをしたとはいえ…。
「あれ? 堺がさっき俺にキスを求めたのは、兄にキスされたことを思い出したからか?」
聞くと、堺は眉間にしわを寄せたまま、眉を歪ませるという高等技術を使った。
「取り乱して、すみません。初めてのくちづけが貴方とではなかったことに、動揺してしまったのです」
「いいや。堺がキスを許した相手が、本物の初めてのキスだよ。訳がわからないうちにされたくちづけは、数に入れなくていいんだ」
「でも青桐様。兄にされたくちづけが、そのときはどういうことなのかわからなくて。熱で朦朧としていたこともあり、ただ混乱していたのですが。もしアレが恋人のキスだと知っていたとしても、受け入れたのではないかと思うのです。だって兄さんは、当時唯一私を愛してくれた人だった」
ちょっと。
いや、かなり胸がガサガサにかき回されるような気分だったが。
それを押し込め。青桐は堺に、問い詰めるように聞こえない程度にやんわりとたずねた。
「堺も、兄のことを愛していたのか?」
「つい最近まで、そう思っていました。兄の伴侶になるのだろうと漠然と考えていた時期も確かにあったのです。でも紫輝に、愛情にはいろいろ種類があるのだと教えられて。今では私の兄への想いは、肉親への愛情だったと気づいています。青桐様への想いとは…違うのです」
どう違うのか、そこを追求したい想いはあったが。
青桐は。堺が兄を恋愛的に好きではなかったというだけで、嬉しかった。
つか、紫輝くん。ありがとう。
「そんな私でも、青桐様とのキスを最初のキスだと思って良いのでしょうか?」
「いいに決まっている。堺の唇は俺のものだ」
チュッと音の鳴るくちづけで堺の唇を吸うと、堺はうっとりと己をみつめてきた。
もうっ。どんだけ己を惚れさせれば気が済むのだろうか?
「縛られていた記憶は戻ったのですが、でもあの日の出来事がすっかりとわかったわけではありません。熱のせいで、ところどころ意識がなく。私の剣から、兄があの龍鬼をかばった理由もわからないし。なんとなく手裏と兄さんが話し込んでいたような光景は見えるのですが。話の内容は覚えていなくて」
「うん、謎はまだ残るということか。しかし兄の思惑は、もう本人に聞くしかないだろう。真相は結局兄が握っているということのようだな。とはいえ、さっき堺が恐れていたように。堺が両親を殺し、兄を殺し、自分で自分の記憶を縛った。なんてことはなかった。やはり堺は誰も殺していなかったじゃないか。思い切って記憶を取り戻してみて、良かったな?」
堺は青桐の、顔の前に垂れた前髪を後ろに撫でつけて、青桐の頬を手で包んだ。
「はい。胸を張って、貴方のそばにいられます。私を、貴方の龍にしてください」
「堺、俺の龍。生涯離すつもりはないから、覚悟しろ」
額から鼻の上にかけて、青桐は堺に慈愛を込めた細かいキスを贈る。
そうしてふたり、幸せそうに笑い合った。
薄青の瞳は、瞳孔の濃い色が際立つが。少し普段より開いているように見え。
もしかしたら意識がないのか? そこまで考えてしまう。
「堺、大丈夫か?」
肩に触れ、少し体を揺さぶると。
堺は青桐と目を合わせた。
くっきりとした形の良い目が、白く長いまつ毛に縁どられた目蓋で、そっと閉じられ。
唐突に、唇を寄せてくる。
彼からもたらされるキスを、青桐が拒むわけはない。
今まで、堺とは何度もキスしてきて、慣れていなかった堺も青桐のくちづけに応えられるくらいに上達して。上手になったと思うのだが。
触れる唇の動きや吐息に、なんとなく、溺れる者が藁を掴むような必死さを感じ。
青桐は堺の肩を押し戻し、唇をほどいた。
「堺、どうした? 記憶は戻ったか?」
青桐の問いかけに堺は瞳を揺らし、またくちづけようとする。
やはり様子がおかしい。
キスをしないで、抱き締めた。頭を撫でて彼をなだめる。
「大丈夫だよ。なにも心配しないでいい。なにがあっても。俺は受け止めてやる」
「青桐様、キスを、してください…お願いします。キスを…」
いつも清楚な堺が自分からキスをねだるのは、なにか理由があるのだろうとわかっていたが。
それも、どんなことも飲み込んでやるという意気込みで、堺を狂おしく抱き締めて深くくちづけた。
堺が求めているのだ。応えなきゃ、伴侶にあるまじきだ。
唇で唇を塞げば、堺の方から舌を差し入れてくる。
舌の真ん中をくすぐるキスではなく。強く舌同士を結びつけるような激しさがあり。
落ち着くよう、堺の舌先を甘く噛めば。薄青の瞳が情欲に潤んで、濃い青色になった。
「好きぃ…それ。青桐様、好きぃ」
舌を噛まれて、ろれつは怪しいが、そのようなことを言った。
それは、無理無理。ギュンとなるよ。おさえられねぇ。
舌を己に捕らわれているから、唾液が飲み込めなくて顎からしたたり落ちる。
そのしずくさえも、取りこぼすのはもったいないような気がして。青桐は舌でベロリと舐め取った。
「堺、俺は堺を愛しているんだ。怖がらせたくないのに、ゆっくり愛したいのに。これ以上煽られたら堺を傷つけてしまいそうなんだよ」
今の堺は凶悪的に可愛くて、色っぽい。
どこかぼんやりとして。だがそれが誘うように見える目の色。
薄く開いて、己を待ちわびているように見える唇。
なにもかもが、青桐のオスを刺激している。
でも同時に、大事にしろと黒猫耳が耳元でギャンギャンわめいているな。
わかってる。わかってる…。
「なんでも、いいです。なにをしても、いいから。御迷惑でしょうが…貴方のキスをください」
泣きそうな顔で、堺が言う。
ひと目で魅入られた薄青の瞳…その色に、青桐は弱かった。
なにをしてもいいなんて、狼に言ったらダメなんだぞ、堺。
それは、あとで教える。
けど、今は無理。
ご迷惑でしょうが、なんて健気なことを言われたら、青桐を縛る太い鎖など簡単にブッチギレてしまう。
紫輝の叫びも遠のいた。つか、いろいろと限界です。
青桐はくちづけしながら、堺の革帯に手をかける。剣を放り投げ、軍服を剥いで。防具も光の勢いで外した。
雨の音しかしなかった静寂な書庫に。
淫靡な、荒い息づかいが加わる。
堺を床板に押し倒し、青桐は彼の体をまたいで堺の白い肌を貪った。
昨夜のように堺の体のいいところを暴いていくような、優しい愛撫ではなく。
己の欲望のままに、舌を這わせる。
首筋や胸板の白さに、吸いついて。赤い痕を残す。
堺は己のもの。その所有の証をずっとつけたいと思っていた。
「ん、あ、青桐、さま…」
桃色の乳首を両の親指でクリクリと刺激すると、青桐の愛撫に堺は身悶える。
でも唇を離しすぎると、彼は不安そうな声を出した。
その乳首を舌で存分に可愛がりたいが、青桐は堺の唇を塞ぐ。
すると彼は、安堵したみたいに目を細めるのだ。
その柔らかな眼差し。
己のキスを待ち望んでいるのがわかって。
精神鍛錬して余程のことがないと動かない翼が、歓喜にビビッと震えた。
「ん、ふっ…ふぅん」
舌を甘く噛まれるのが気に入ったようで、あむあむと前歯で優しく噛んでやると。堺は気持ち良さそうな鼻息を漏らした。
ううぅ、可愛いっつうの。
青桐は堺のズボンのひもをほどき、膝を立てさせると、その間に己の体を入れ込んだ。
全く、余裕がなかった…。
「んぁ…」
温かい青桐の唇が離れていって、堺は彼を求めるように舌先をさ迷わせた。
閉じていた目を開けると、目の前の青桐の舌先から唾液の糸が引いている。
堺は蜜をすするように、青桐の舌先に伸びる唾液を舌で舐め取った。
青桐の頬は赤く染まり、息も荒く、眼差しは熱にうかされたようにとろんとしている。
雄々しさの中に色気があり、長い前髪がひと筋目の前に垂れると、壮絶に魅惑的で…。
堺は、この男に。青桐に、己のすべてを捧げたかった。
ハッと息を吸いこんだ青桐に、再び唇を塞がれ。堺は身も心も青桐に投げ出した。
なにをしてもいいのです。己は、貴方の龍だから。
だけど。このあとのことを、堺はあまりよく覚えていなかった。
ただただ嵐に巻き込まれ。
腰の辺りを、マグマでグルグルにかき回されたような。
揉みくちゃになって。青桐にしがみついて。
その情熱の渦に巻き込まれたのだ。
★★★★★
書庫に、雨の音だけの静寂が戻り。
青桐は堺の裸の肩を抱いて、床板に横たわっていた。
頬をすり寄せてくる堺についばむ優しいキスを送り、心地いい余韻に身を漂わせている。
「あの日のことを思い出しました。やはり熱を出していて、断片的に、なのですが。前線基地から屋敷に戻り。発熱がつらくて、とりあえず布団を引っ張り出して寝ていた私に、母が薬を持ってきたのです。これを飲んで寝ていなさいと。私は、今まで母に心配されたようなことがなかったので嬉しかったのですが。お恥ずかしながら。私は粉薬が飲めないのです」
「ふふ、可愛いなぁ。でも粉薬が飲めないと、どうしていたのだ?」
「龍鬼には龍鬼を診る医者がいます。井上医師なら、私には飲み薬を用意してくれるのですが。母は私が粉薬を苦手にしていることすら知らなかったのです」
青桐をみつめるときはきらりと輝く瞳が、暗く陰った。
堺をないがしろにする親の気持ちが、青桐にはさっぱりわからない。
これほどに心根が綺麗で、可愛らしい息子の、なにが不満だ?
「それで薬は飲まずに寝ていたのですが。いつの間にか兄が帰ってきていて。兄は、前線基地にいるはずだったのです。私と赤穂様…赤穂様の隊列と、入れ違いに基地に入ったので」
堺は青桐に赤穂の話をしたくはなくて、声を途切らせた。
赤穂の話は、記憶を呼び覚ます危険があったから。
でも青桐の記憶はもう戻っているのだと、改めて思って。話を続ける。
「兄は私を看病してくれました。体を拭いて、着物も整えてくれて。兄がいればもう安心だと思いました。でも両親はどうやら、私を見限ったようなのです。薬は毒だったようで。堺はいらぬ、と言った父の声が。いつまでも私の胸を、剣で突き刺すかのようでした」
たまらなくなって、青桐は堺の頭を胸に抱いた。
幼子を慰めるように。堺の白髪を大きな手で何度も撫でる。
己が堺の親ならば。決してこんな想いをさせはしないのにっ。
「兄は私を殺そうとする両親から、私を守ってくれた。でも…両親を討ったのは、手裏の龍鬼だったのです。今まで見たことのない、龍鬼。私は両親を殺されたことに逆上し、その龍鬼に剣を向けたが。兄が、その龍鬼をかばった。私の剣は兄の手を貫いてしまって…血が…」
そこで堺は。一瞬、瞳を揺らし。
青桐を、その美しい瞳でみつめる。
「…あの。私は…兄に求婚されて。くちづけられました。その当時は、それがなんなのかよくわからなくて。熱で朦朧としていたし。でも今ならわかります。青桐様に教えてもらったので。兄の舌が、私の舌に巻きつくような…」
「ちょ、ちょ、ちょ…待て、堺。兄に、深いキスをされたのか? キスだけか? 情交は?」
青桐はギョッとした。
堺の兄は、弟に懸想していたのか?
いや、これほどに可愛らしく美しい弟がいつもそばにいて、慕ってきたとしたら、グラッときちゃう気もわからないでもないでもないが。
いやいや、同意、大切。
それが紫輝の教えだ。
それよりも熱で朦朧としている堺と、一線超えていないだろうな。超えてたら、許さない。
「情交とは、どのようなものなのでしょう?」
「う、う…さっき、俺と堺がしたみたいなやつ…だけど」
なんとなく気まずくて、青桐は言葉をにごしてしまう。
清々しい堺の目でみつめられると、疚しさが大爆発で、いたたまれなくなんだよぉ。
「あの、マグマの中で揉みくちゃになったみたいなやつですか? なにをされたのですか?」
堺は先ほどの状況をよくわかっていなかったようだ。まぁ、うん。
「さっきは、俺の陰茎と堺の陰茎をこすり合わせて、抱き合って情を交わしたのだが。正確には、まだ情交じゃない。男同士の情交は、堺のここに俺の陰茎を挿入して、動かして…」
青桐は堺の背に手を回し、背筋をたどって下におろし、双丘の奥に息づく蕾に指を当てた。
堺のここに、と言ったときに少し指をもぐり込ませる。
そこは柔らかく、青桐の指をくわえ込んだ。
先ほど、己のモノと堺のモノをこすり合わせ、腰を激しく動かして刺激したとき。青桐は堺の先走りを利用して、少し蕾をほぐした。
できれば一線超えたいと思ったし。堺が求めてくるから、いいのではないかと思って。
理性は焼き切れていたし。堺を抱きたい気持ちは、究極まで高まっていたし…で。
己の頭もいい加減のぼせていたわけだが。
堺自身も記憶が戻ったばかりで取り乱しているように見えたし。
なによりこんな本に囲まれた、小さくて薄暗い埃っぽい雰囲気もなにもないようなところで、堺の初めてを奪うのは。嫌だった。
浪漫がないじゃん。
ふたりとも正気で、互いに互いを求め合って、柔らかいランプの灯の元で、厳かに、ゆっくり、しっぽり、愛し合いたいではないかっ。
だから、青桐は。
ブッチギレた太い鎖を二重に巻きつけて。
焼き切れた理性にも水をブッかけて。
最後の一線だけは死守したわけなのだ。
己の欲を堺に押しつけてしまったけれど、同意のないうちに突っ込んで、強姦して、堺を壊すことにでもなったら大変だ。
紫輝にぶっ殺されるまでもなく。己が自害する。
まぁ、その最悪な事態は回避できた。できる限り堺を大切にできたと思う。
それでも未練がましく、堺の後孔に指を差し入れてくちゅくちゅしてしまうのだが。
そうしたら、堺が言った。
「は…破廉恥なっ」
すみません。邪な想いでいっぱいで。
堺に怒られてしまった。
やっぱりまだ、情交を匂わすのは堺には早かったかな?
だとしたら、欲のままに突っ走らないで本当に良かった。と青桐は思っていたのだが。
「青桐様に、そのような破廉恥なことをさせてしまうなんて。申し訳ありません」
また泣きそうな顔つきで堺が言うから。青桐は苦笑してしまった。
「馬鹿な。俺が堺に破廉恥なことをしたんだ。ここを指でいじられながらイっちゃった堺、可愛かったよ」
トントンと意味深に指をうごめかせて、そこを意識させると。
堺は顔を真っ赤にして。恥じらった。
「すみません。イくと、お知らせもできず…」
そこか?
そんなこと言われたら、またたぎってくるって。
いや、教えてと言ったのは己だが。
「大丈夫だよ。次は…ちゃんと意識のある中で、ふたりで気持ち良くなろう? そうしたら堺はちゃんと俺に教えられるよ。楽しみにしている」
あんまり可愛いが過ぎるので、青桐は堺にくちづけた。
甘く、甘く、とろかすように、舌を舌で撫で上げて、唇を離す間際に甘噛みして。
蕾の中に指を少し深く押し込んだ。
堺は『は、ん』と、啼いて。まつ毛で涙を弾いた。
舌先を噛むと、すごく敏感になるのを…発見してしまった。
「あぁ、早くここに俺のを入れて、堺と一番深いところまでつながりたい。堺の全部を俺のものにできる日を夢見てる」
名残惜しげに、唇をつけたまま囁くと。堺も少し息を乱しながら言ってきた。
「今、していただいても。私は構いません」
「ダメダメ。堺の初めては、寝台の上で。ゆっくり、愛し合いたいからな。お互いに幸福感に満たされる、本当の情交を堺としたいんだ」
青桐はくちづけをほどき。蕾をいじっていた指も離した。
「今晩、堺を俺のものにしてもいい? 抱いて、身も心も奪っていい?」
真摯に、堺の目をみつめてたずねると。堺は小花が開くような柔らかい微笑みを浮かべた。
「はい」
それは、恥じらいと嬉しさが入り混じる、だけどはっきりとした肯定の『はい』だった。
青桐の好きな『はい』。
もう、今すぐギューッとしてやりたくなった。
「うん。…で、その。兄に情交はされてないよな?」
キリがない。
堺の可愛さには、際限がないので。青桐は気を引き締めて話を戻し、堺に問いかけた。
「そのようなことはなかったです。求婚のあと、兄が私の記憶を封じたみたいなので。兄が…私の能力を模倣した。でもそれはすごく難しいことなのです。龍鬼には、各々特異能力というものがあります。私のは記憶を縛るものですが。誰も真似できないから特異能力と呼ばれているのです。だから兄が私の記憶を縛ったことは…今、思い出してみても、信じられなくて」
眉間を軽く寄せ、堺は難しい面持ちになる。
「謎はまだあります。なぜ兄さんが両親を殺した手裏兵とともに姿を消したのか。それも理由がわかりません。両親が私を殺そうとした理由は…なんとなくわかるのです。時雨家の存続のためだと。ふたり目の龍鬼がいることで、時雨家はいつも謀反を疑われていた。私は火種のようなものだったのです。将堂家が代替わりしたことで、父は追い込まれたのでしょう。しかし。兄が両親を殺したわけではない。兄には、姿を消す理由がない」
青桐も考えてみる。
青桐が一番引っかかる点は、兄が堺に求婚したということだが。
兄が弟に懸想する。近親婚はあまり推奨されないが、血脈を維持するという点で、今の世ではそれほど珍しいことではなく。
特に同性同士では、さほど禁忌という印象はない。
だから兄が堺を愛したからといって、姿を消すほどの理由にはならないような気がするのだ。
深いキスをしたとはいえ…。
「あれ? 堺がさっき俺にキスを求めたのは、兄にキスされたことを思い出したからか?」
聞くと、堺は眉間にしわを寄せたまま、眉を歪ませるという高等技術を使った。
「取り乱して、すみません。初めてのくちづけが貴方とではなかったことに、動揺してしまったのです」
「いいや。堺がキスを許した相手が、本物の初めてのキスだよ。訳がわからないうちにされたくちづけは、数に入れなくていいんだ」
「でも青桐様。兄にされたくちづけが、そのときはどういうことなのかわからなくて。熱で朦朧としていたこともあり、ただ混乱していたのですが。もしアレが恋人のキスだと知っていたとしても、受け入れたのではないかと思うのです。だって兄さんは、当時唯一私を愛してくれた人だった」
ちょっと。
いや、かなり胸がガサガサにかき回されるような気分だったが。
それを押し込め。青桐は堺に、問い詰めるように聞こえない程度にやんわりとたずねた。
「堺も、兄のことを愛していたのか?」
「つい最近まで、そう思っていました。兄の伴侶になるのだろうと漠然と考えていた時期も確かにあったのです。でも紫輝に、愛情にはいろいろ種類があるのだと教えられて。今では私の兄への想いは、肉親への愛情だったと気づいています。青桐様への想いとは…違うのです」
どう違うのか、そこを追求したい想いはあったが。
青桐は。堺が兄を恋愛的に好きではなかったというだけで、嬉しかった。
つか、紫輝くん。ありがとう。
「そんな私でも、青桐様とのキスを最初のキスだと思って良いのでしょうか?」
「いいに決まっている。堺の唇は俺のものだ」
チュッと音の鳴るくちづけで堺の唇を吸うと、堺はうっとりと己をみつめてきた。
もうっ。どんだけ己を惚れさせれば気が済むのだろうか?
「縛られていた記憶は戻ったのですが、でもあの日の出来事がすっかりとわかったわけではありません。熱のせいで、ところどころ意識がなく。私の剣から、兄があの龍鬼をかばった理由もわからないし。なんとなく手裏と兄さんが話し込んでいたような光景は見えるのですが。話の内容は覚えていなくて」
「うん、謎はまだ残るということか。しかし兄の思惑は、もう本人に聞くしかないだろう。真相は結局兄が握っているということのようだな。とはいえ、さっき堺が恐れていたように。堺が両親を殺し、兄を殺し、自分で自分の記憶を縛った。なんてことはなかった。やはり堺は誰も殺していなかったじゃないか。思い切って記憶を取り戻してみて、良かったな?」
堺は青桐の、顔の前に垂れた前髪を後ろに撫でつけて、青桐の頬を手で包んだ。
「はい。胸を張って、貴方のそばにいられます。私を、貴方の龍にしてください」
「堺、俺の龍。生涯離すつもりはないから、覚悟しろ」
額から鼻の上にかけて、青桐は堺に慈愛を込めた細かいキスを贈る。
そうしてふたり、幸せそうに笑い合った。
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