【完結】異世界行ったら龍認定されました

北川晶

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番外 筆頭参謀、里中巴 5   ★

 本拠地に入り、本当なら青桐邸で、青桐の准将としての教育を続ける予定だったが。
 不慮の出来事が起き、今は、堺の屋敷に世話になっている。

 堺の指導のおかげか、青桐は着々と力をつけ、准将として振舞えるようになってきたが。
 記憶喪失の者に書類仕事は任せられない。
 本拠地に戻って、少しはのんびりできるのかな、などと甘く考えていた巴は。毎日の書類仕事に、げんなりしている。
 今までの経過についての報告とか、人事案とか、下から上がってくる作戦についての詳細とか。
 あぁ、紙の無駄遣い。裏に絵とか描きたい。

「巴、今日はここに泊まろう。この雨じゃ帰れない」
 書類に集中していた巴が顔をあげると、外はすっかり日が落ちて。さらには雨と風がすさまじい感じになっていた。
 冬の嵐だ。
 堺の屋敷まで、馬で十分ほどかかるし。この世界では、雨の夜中、灯りのない外を出歩く人はまずいない。

「日が落ちる前に、教えてくれれば良かったのに。僕が集中すると、周りが見えなくなるたちだって、幸直はわかっているだろう?」
「日が落ちる前だって、雨がひどくて帰れなかったよ。別室に職員が寝床の準備を整えてくれたから、今日は仕事を終えよう」

 今、巴たちがいるのは、指令本部なので。本来は、人が泊まるような施設ではないのだが。
 こうした突発的に帰れなくなる事態や、手裏の奇襲などに備え、寝泊りできる最低限のものは用意されている。
 寝床が敷かれているのは、机を端に寄せた会議室なので。本当に寝るだけだが。
 おにぎりと漬物、ランプ、あと清拭用の湯と手拭い、寝間着の浴衣が室内に置かれてあった。

 これは幹部仕様で。他の職員は大会議室で、着の身着のままの雑魚寝ざこねである。

 夕食をとったあと、軽く体を拭いて、浴衣に着替える。
 軍服は堅苦しいので、楽になった。
 本来は、基地や本部などにいるときは、戦闘態勢を崩さず、軍服着用を義務付けられている。
 寝るときだけ、防具は外していいのだが。
 でも、今日は土砂降りなので。こんな中、手裏は仕掛けて来ない。
 前線基地ならともかく、本拠地は将堂の領地のど真ん中なので、さらに危機感は薄くなる。

「巴、ちょっと話していいか?」
 布団の上に座って、あとは寝るだけという感じになったとき。幸直が切り出した。
 なにもすることはないので、嵐の夜長、お話は大歓迎である。

「昨日の午後、近況を知らせに、本邸に帰ったときに。妻が言ったんだ。妊娠五ヶ月だと。七月に休暇がありましたよね、ってさ」
「…え?」

 幹部は大体、四月から十月まで前線基地に詰める。
 その間、休みなしなのは厳しいので。一週間くらいだが、休暇をもらえるのだ。
 今年は六月に大規模戦闘があり、七月に手裏が兵を引いた。そこに合わせて休暇をもらったのだけれど。

「幸直は、七月の休暇に、帰郷はしなかったよな?」
 手裏の兵が引いたばかりで、気が抜けない状態だった。
 幸直と巴は、休暇をもらったのだが。ふたりで、地形調査に向かったのだ。
 奇襲で使えるような地形がないかを探しつつ、再び手裏が大規模戦闘を仕掛けてきたなら、すぐに基地に戻れるよう、近場に滞在していて。敵兵が陣を敷きやすい、湖の探索や。戦場に近い崖の状況。馬が走らせられる傾斜があるか、みたいなことを調べて回った。
 ふたり、だったが。
 逢引き、のような色っぽい雰囲気では決してない。
 話の内容は、ずっと戦術についてだったので。

 問題はそこではない。幸直が帰郷していないということは、だ。

「実は、ふたり目も、怪しいんだ。時期が微妙にずれていて。しかし、女性のことはわからないだろ? 十月十日というけれど、早いときも遅いときもあるし…」

 しかし、今度ばかりは全く身に覚えがないと。
 幸直に、ふたり目の子供が生まれたというのは、巴は噂に聞いたのだ。
 家族のことを、彼は巴にあまり話したがらないので、触れられたくないことなのだと思って。巴も、そのことは聞かないでいたのだが。

 まさか、疑念があって言えなかったのか?

「ぶっちゃけ、親父に寝取られたんだ。お姫様は屋敷から出ないし、親父はまだまだ男盛り。俺の母親が亡くなって久しいしな。クマタカ血脈なら、誰だって構わないんじゃね?」

 自分の妻を、幸直はお姫様と揶揄して言う。側仕えを何人も連れて歩き、ふたりで話もままならないとか。
 夫婦というには歪な関係だと、以前も思ったことがある。
 幸直は自嘲するように、皮肉げに笑って肩をすくめるけど。

「馬鹿。僕の前で、強がるな」
 言ってやると、彼はいつもの自信満々の顔ではなく。
 どこか、途方に暮れた少年のような顔になる。

「なんて顔をしているんだ? 僕の知っている幸直は、快活明朗で、堂々としていて、威厳があって、美しい。僕の自慢の友達だぞ」
 一瞬、瞳を陰らせた幸直は。寝床をまたいで巴を抱き締めると、キスしてきた。
 いつもの、優しく甘いものではなく。
 必死にもがいているような、がむしゃらなくちづけ。
 あまり執拗だと、巴は一線引くのだが。今日ばかりは、幸直を突き放せない。
 巴は翼を広げて、彼の望むまま布団に押し倒されてやった。あおむけに寝るのは、翼を畳んでいるより、開いた方が痛くない。

「いいのか? このままじゃ、俺はおまえを抱くぞ。巴は男にられるの、嫌なんじゃないのか?」
 覆い被さる幸直が、巴を見下ろす。
 巴は、欲情して目をぎらつかせる、野性味のある幸直の顔に、ぞくぞくしていた。

「好きでもない男に犯られるのが、嫌なんだ。幸直のことは、好きだよ。こうして、幸直の気が晴れるなら、それでいいと思うくらいにはな。好き…」
 幸直は巴の頬に手を当て、情熱的にくちづけてきた。
 いつもはゆっくりと舌を舐めて、絡めて、吸い上げるような、穏やかで、心地よいキスが多いが。
 今は舌先を甘く噛んで、舌をきつくまといつかせ、絡ませる、ぐちゅぐちゅと口腔から音が鳴るような、激しいキスだ。

 こんなくちづけは初めてで。巴は目がくらみそうになる。

 一応、絵を描くうえで、女性も男性も、骨格や身体的特徴、女性なら丸みを帯びた肉付き、男性なら筋肉の盛り上がり、なんかを勉強しているし。
 基成として、ねやの教育を受けていて。
 体験はしていないけれど。まぁ、情交のやり方は女相手も男相手も、わかっている。

 わかっているけど…初めては初めて。
 ここは、経験者の幸直に任せてしまうしかない。

 それにさぁ、目が離せないよ。幸直がエロくて。

 深いキスをしているときに、ちらちら見える、舌の動きのなまめかしさとか。
 少し垂れて、色っぽいと思っている目元が、赤くなって、艶がいよいよ増しているとか。
 野生の獣が獲物を食らうように、己の乳首を貪っているとか。

 ヤバい。体がじんじんしてきて。もっと幸直を見たいのに、のぼせてしまう。

「すまない、巴。俺、おまえに甘えているな。でも、俺がこんな弱味見せられんの、巴だけだ。巴、だけが…俺の」
 襟を崩して首筋や胸を舐めていたが、幸直は巴の帯をほどいて。贈り物を包む風呂敷を開けるときのように喜々とした顔で、浴衣の前を開く。
 そして本格的に右胸に舌を這わせ、攻め始めた。
 平らな胸などつまらないだろうに、なんだかねっとりと美味そうに食いついている…。
 楽しいなら、まあ、いいけど。

 でも、こちらの感覚は、あまり余裕がないかな。
 くすぐったいような、チクチクするような。
 殴られているときでも、うめき声なんかあげなかったが。この感覚はなんだか、声を我慢できない感じ。

「…ふ、ぅぁ」
 喉が締まるのに、声は漏れて。
 その声に、幸直の舌の動きが早くなる。
 舌先を固くとがらせて、乳頭を弾いていじめるような。

「そ、れ…や、ぁ…幸直…あぁ」
「声、聞かせて。巴。巴を抱いてるって、実感したい」
 上目づかいでねだられて。
 その、少し可哀想な感じでみつめてくるの、ずるいぃ。

「や、め…も、ぉ…くすぐったい、って…ふ、んぁ」
「巴の、その、ひっそり微笑む顔、好き。俺の全部、許してるみたいで」

 巴の顔を両手で包んで、愛しげに見やると。幸直は極上の笑みを浮かべて、くちづけた。
 なに、それ。すっごく愛されているみたいで、誤解しちゃうぞ。

 幸直は、奥さんのことを好きではないかもしれないけれど。
 父に取られて、傷ついていないわけではない。
 ただ、傷ついた心を寄り添わせる相手に、己を選んだ。それだけのことなのだ。
 怪我をしたら、医者に診てもらうようなもの。
 深い意味なんて、ないのに。

「あおむけで、痛くないか? 初めては…後ろからの方が楽だと聞くが」
 そんな。うつ伏せになったら、幸直の快楽に耐えて眉をしかめる表情や、イく瞬間の顔とか、見られないじゃないか。
 そんな絶好の機会を奪われるわけにはいかない。

「このままが、いい。幸直の顔、見たい」
「見知らぬ誰かに、なぶられるように思っちゃうのか? そんな怖い記憶は、俺が消してやるからっ」

 いや、大抵の者は倒してきたので、幸直が想像するような、怖い思いはしていないんですが。
 なんか、そう思い込んで。強く抱き締めてくるし。

 イく顔が見たいなんて本当のことも言えないので、そのままにしておいた。

 ランプの灯が揺れる、薄暗がりの室内に、巴のあえぎが響くが。外の暴風の音が、かき消してくれる。
 巴のなやましい声音を耳にするのは、そばにいる幸直だけだった。

 幸直は巴の陰茎を上下に擦り立てて、先に極めさせた。
 だが、ここからが本番だと、わかっている。
 吐き出した巴の白濁を、幸直は蕾になすりつけ、指で後孔をこじ開けていく。
 そこは本来、入ってくる場所ではないから。無意識に幸直の指を拒んでしまうが。

 今日は幸直も止まらず。巴も彼を止めなかった。

 それに、体の奥に、気持ち良くなる場所があることを知っている。そこを探し当てることができれば、男性同士の情交でも快感を得られると、教育された。
 戦場では、男性ばかりの環境で過ごすので、手裏の当主がそうして欲を晴らすこともあるだろう…ということだったのだが。
 される側になってしまったな。

「顔見て、睦み合うの、初めてなんだが。いいな。巴がいい場所とか、よくわかる」
 つぶやいて、幸直は巴の内壁を、奥から抜ける際のところまで、じっくりと愛撫する。
 巴は、どこに触れられても、肌が粟立あわだつほどに感じるが。その中でも、飛びきり反応する部分があって。

 それをみつけると、幸直は無邪気に笑った。

 彼は大抵、格好いいのだが。たまに可愛い顔をする。その緩急がいいのだ。
「あ、あ…そこ…」
 指がかすめた、ある一点を、巴は訴える。
 すると幸直は的確に、そこを探し当てた。深く中に挿し込まれた幸直の中指が、念入りにその部分を撫でこする。

「あぁ、んぁ、そこ、あ、あっ、幸直、駄目、ゆっくりして…ん、そ、う…ゆっくり、んっ」
 先ほど出したばかりなのに、幸直にそこを撫でられていると、みるみる屹立がみなぎってくるのがわかる。
 幸直を受け入れて、体がつらくならないよう、そこを撫でられる感覚に集中していると。
 指が二本に増やされた。

「すご、柔らかい。あぁ、早く。巴を食いたい」
「いいよ、来て」
 少しぐらい、痛くても大丈夫だ。タコ殴りよりは、痛くないだろうと思うので。両手を広げて幸直を誘うが。
 彼は奥歯を噛みしめる癖に、首を横に振る。

「口、三角にして…煽るな。傷つけたくないし。痛くしたら、二度目はないかも」

 口、三角って、なに? とは思いつつ。
 唇を一度引き結ぶ。
 だらしなく、口開けてんなってことかな?
 ま、いっか。
 巴は薄く笑って、幸直にうなずいて見せる。もう大丈夫だから。

「そんな意地悪言わないから。ほら、来い」
 なんか、泣きそうな顔をして、幸直は眉間を寄せた。
 その顔、良いな。
 さっきの、奥歯噛み締めた顔も、悪い男みたいで良かったぞ。あとで描き起こそう。

「巴…俺の巴。大好きだよ」
 後ろから指を引き抜いた幸直は、手を広げた巴の胸の中に体を埋めて、抱き締める。
 巴も彼の首に腕を回した。
 そして、彼が腰を入れると、後孔に幸直の先端が当たり。そのままゆっくり侵入してくる。

「う、あ、あ…」
 幸直は巴の膝裏を手で掴んで、足を開かせて押し上げると。蕾の中にグンと剛直を突き入れてきた。
 一気に入ってきた物凄い質量に、さすがの巴も、息をのむ。
 痛い、ではなく。苦しい、だ。

「力、抜いて。巴、上手にできてるから…な?」
「あ、あぁ…。幸直。信じて、いるっ」
 己の精で濡れたそこが、ぐちゅぐちゅと音を立てている。
 幸直のモノで、かき回されているのがわかるが。彼は、それほど激しく動いているわけではなく。まだ、巴の中で己を馴染ませている最中だ。
 いきなり無茶するような男じゃない。
 幸直は優しいから。わかっているよ。

 体の中に、熱いものがある。幸直がいる。
 それを思うだけで、中がウズウズじんじんしてきた。もどかしくて、やるせなくて、せつなくて。

「幸直、も…うご、いて」
「巴っ」
 感極まったように、幸直は巴をかき抱き、唇で唇を深く結びつけると、腰を小刻みに律動させた。

「巴は、巴だけは、ずっと、俺のそばに、いるよな」
 わかってやっているのか、幸直は剛直で、巴の中の良い部分を常に刺激している。
 初めて、体の奥を開かれた、ヒリヒリした痛みやジリジリする痺れはあるものの。それすら押し流す勢いの快感が生まれていた。
 たぶん、これが経験値だな。
 初めての己から官能を引き出す、そうする余裕があるのだ。
 だから己は幸直に任せていれば、極上の情交を味わえるはず。

「いるっ。幸直のそばに、いる、ぁ…」
 一番大事な己の親友だ。君が望む限り、そばにいる。
 巴は、せつない想いを胸に秘め、幸直の頭をゆるりと撫でた。

 甘えん坊の、己の親友。
 ちょっとチャラいけど。その明るさが君の魅力だよ。
 みんなが君を好きなのに。なんで己だけだなんて言うのだろう?

 あぁ、わからない。考えがまとまらない。
 ひりつくほどの、ただれるほどの、強烈な刺激が、ずっと腰に渦巻いて、幸直が突き入れるたびに。ギュン、ギュン、と快楽が体の内で暴れるのだ。

「っん…あっ」
「イきそう? 巴、イける?」
 うかがうように、幸直が聞いてくる。
 たぶん、無意識に、中が収縮して、剛直を締めつけているのだ。

「ん、イく。わ、かんないけど…イき、そう…」
 言うと、幸直は巴の陰茎を手で握り、こすり上げた。剥き出しの神経のようなそこを、まさぐられれば、すぐにも性感が高まって。唐突に宙に放り投げられた感覚がした。

「…あぁっ」
 巴は体を身震いさせ、精を放った。
「くっ…」
 後孔がビクビクとわななく中、幸直が根元まで深く剛直を挿入する。腰を揺すりあげ。熱い精を己の中に注ぎ込んだ。
 体の奥、己の全部が、幸直のものになったという感覚で、心までも満たされる。

 は! 大事な瞬間、目をつぶってしまった。

 慌てて目を開けると。幸直はすでに、ニヤリと余裕の笑みを浮かべている。
 あぁ、究極の瞬間、見そびれた…。
 脱力して、抱えあげられていた足を、バタリと布団におろす。
 だが。身を起こした幸直は、浴衣を脱いだ。

 脱いでくれたっ!

 太い首の下に、盛り上がった胸筋、引き締まった筋肉は鎧のように、幸直の体躯を飾り立て。それは見事な、均整の取れた体つきだった。

 やった。ご褒美ですか? 一度はこの目で拝んでみたいと思っていた、極上の完璧肉体。最高です。

 そんなふうに見惚れていた巴を、幸直はじっくりと見下ろし。再び身を屈めてくちづけた。
 巴もありがとうの気持ちを込めて、そのキスを迎え入れる。
 眼福です。御馳走さまです。

 しかしキスの熱量はどんどん高まっていく。
 舌を、己の舌に巻きつけて、ねっとりと絡めて。先ほどの余裕のないがむしゃらなキスとは別物の、濃厚で甘ったるくて、しつこい接吻せっぷん

「ん…んふぅ…っん?」
 情交は、終わったのかと思ったが。体の中の剛直は、みるみるみなぎっていき、ゆっくり動いている。
 剛直の突端が、内壁を摩擦しながら行き来し、あの良い部分を、何度もこすられる。

 これが、抜かずのもう一回ですか? 

 唇を離した幸直が、濡れた唇を舌なめずりして、聞いてくる。
「もっと、欲しい。巴…俺に全部、くれよ」
 彼のヤバエロい顔を見て、巴の脳みそに小さな雷が落ちた。

「ふふ、そんなにぼんやりした目で俺を見て…気持ち良かった? もう一度、いい?」
 よくわからないけど、とりあえず流れでうなずいたら。幸直は巴の浴衣を脱がし、手を自分の首に回させて。上体を引き起こした。
 剛直を抜かぬまま、座る幸直の上に体を下ろされる。

 対面座位というやつだな。って、考察している場合じゃない。

 一糸まとわぬ己の膝裏に、幸直の手が差し入れられ。その手の動きで上下に揺さぶられる。
 第二回戦に突入してしまった。

「わっ、深ぃ…あ、あ…幸直っ、これはっ、あぁっ」
 幹部のいる区画には、誰も来ないと思うが。
 声を、誰にも聞かれたくはない。でも、漏れ出てしまうから。幸直の耳元で、おさえめにあえぐことになってしまう。

「あぁ、可愛い。巴、マジ、可愛い。いいぜ。もっと。全部、俺のものだ」
 揺さぶられると怖いから、しがみつきたいが。今度こそ、幸直の良い顔をおがみたいと思って。
 ももの上に座ることで、同じ高さの顔の位置になる幸直を、みつめる。
 巴は…自分も幸直に見られてしまうことには、気づいていなかった。

「巴の、その黒い目にみつめられると、いつも吸い込まれそうな気分になる。俺の顔、好きなのか?」
 うっとりした、その顔つき。いい。
 問いかけてくる眼差しの色も。いい。
 幸直にそんなふうに聞かれたら。本音が漏れてしまうよ。

「ん、好き。幸直、好き」
「あぁ、可愛い。ごめんな、初めてなのに、二度もさせて。でも、健気けなげに俺のこと、受け入れてくれて。いっぱい俺のこと甘やかしてくれて。あんまり巴が可愛いから、止まんねぇ…」

 欲望のままに、幸直は巴を揺さぶった。
 重力で、必ず幸直を根元まで迎え入れることになるから。奥をズンズン突き上げられて、苦しい、もどかしい。

「あ、あ、あ…もっと、ゆっくり…ん、んぁ」
 でも、ゆっくりと言ったら。幸直が巴の足を揺らさないで、腰だけを突き入れる動きに変えてくれた。
 奥を叩かれる感じはなくなって、ホッとする。

「巴は、ゆっくりが好きだな。ん? こうすると。気持ち良い?」
 幸直が腰を揺らすと、ぐちゅぐちゅと後孔がかき回されるような感じがする。
 二回分の精液で濡らされ、剛直の異物感はあまりなくなっていた。
 ただただ、じんじんして。
 良いのかどうかはわからない。

 でも、幸直が厚めの唇を頬笑ませ、気持ち良い? なんて聞いてくるのを見たら。
 心がキュンと握り込まれたような気になって。いい。

「幸直は、イイのか? 俺なんかで、気持ち良くなれるか?」
「馬鹿。ギンギンなの、わかるだろ? そういう可愛いこと言うと…マジ、止まんなくなるぞ」
 また足を持ち上げ、幸直は激しく動き出した。
 ガクガクと揺さぶられ、中の良い部分をジュクジュクとこすり立てられ、悦楽が湧き上がってくる、が。

 目の前の幸直の顔が。気持ち良いのだろうけど、眉間にしわを寄せて、なにかに耐えているようにも見えてしまい。
 巴は幸直の眉の間を、指で撫でた。

「大丈夫。幸直、僕がそばにいるから。ひとりにしないから」
 幸直は。一瞬、泣きそうな顔になって。そっと巴の唇にくちづけた。

「あぁ、胸、鷲掴みされたわぁ…こんな気持ちになんの、初めて。好き。もう…本当に、好き。巴は俺のだ。なにがあっても離さねぇからっ」
 下から熱烈に突き上げられると、バサバサ音がした。己の翼が、意図せず動いている。

「イきそうなの、わかる。羽、ぱたぱたして、可愛い」
 なんだか、幸直が。己を可愛い可愛い連呼しているが。
 自分はそんな、可愛い容姿をしていないはずだった。
 手裏家には、かなりの高級品である鏡があったのだ。
 己の顔は、凡庸で。目蓋は重く、いつも『眠そうな顔をしているな。シャキッとしろ』と父に言われていたほどだし。口も鼻も小さい方だし。なにより、審美眼のある己のお眼鏡にかなわないのだから。たいしたことはないのだ。

 幸直は、ちょっと変わっている。

「可愛い巴。今度は中だけで、イって見せて」
 いつも、ふさふさの柔らかそうな茶髪が、情事の汗に濡れ。まなじりが赤く染まり。微笑む口元は、卑猥な言葉をつむぐ。
 壮絶にエロい顔で言われて。
 そんなの無理って、思ったけれど。
 小刻みに突き上げられ、中をぐちゅぐちゅにされ、じんじんがウズウズに変わって。
 体が、幸直を求めてキュンキュンして。

 いやらしくて、もどかしい熱を誤魔化すように。くちづけてくる幸直の唇に、齧りついて。甘く舌を絡めて。
「あ、ん…や、あ、あ…ダメ、あっ、幸直…あぁ、幸直っ」

 もう訳がわからない、という感じで惑乱したら。
 屹立を刺激される前に、達してしまった。
 そのあとも、惑乱状態が続いて、あまりよく覚えていないが。
 また押し倒されて、幸直に体中を舐め回されて、もう出ないって泣かされるまで愛撫されて。

 一晩中、飢える獣に貪られていた。

 結局、幸直が達する瞬間を、目にできなかったことだけが、心残りだけど。
 でも幸直と睦み合ったのは、己が受け入れたことだから、すごく幸せな時間だったよ、うん。
 このときは、まさか次の日に。堺と紫輝に身バレして、この関係が一回で終了するなんて。思いもしなかったから。

 尚更そう思うよね。幸せな時間だったなって。

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