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番外 筆頭参謀、里中巴 5 ★
本拠地に入り、本当なら青桐邸で、青桐の准将としての教育を続ける予定だったが。
不慮の出来事が起き、今は、堺の屋敷に世話になっている。
堺の指導のおかげか、青桐は着々と力をつけ、准将として振舞えるようになってきたが。
記憶喪失の者に書類仕事は任せられない。
本拠地に戻って、少しはのんびりできるのかな、などと甘く考えていた巴は。毎日の書類仕事に、げんなりしている。
今までの経過についての報告とか、人事案とか、下から上がってくる作戦についての詳細とか。
あぁ、紙の無駄遣い。裏に絵とか描きたい。
「巴、今日はここに泊まろう。この雨じゃ帰れない」
書類に集中していた巴が顔をあげると、外はすっかり日が落ちて。さらには雨と風がすさまじい感じになっていた。
冬の嵐だ。
堺の屋敷まで、馬で十分ほどかかるし。この世界では、雨の夜中、灯りのない外を出歩く人はまずいない。
「日が落ちる前に、教えてくれれば良かったのに。僕が集中すると、周りが見えなくなる質だって、幸直はわかっているだろう?」
「日が落ちる前だって、雨がひどくて帰れなかったよ。別室に職員が寝床の準備を整えてくれたから、今日は仕事を終えよう」
今、巴たちがいるのは、指令本部なので。本来は、人が泊まるような施設ではないのだが。
こうした突発的に帰れなくなる事態や、手裏の奇襲などに備え、寝泊りできる最低限のものは用意されている。
寝床が敷かれているのは、机を端に寄せた会議室なので。本当に寝るだけだが。
おにぎりと漬物、ランプ、あと清拭用の湯と手拭い、寝間着の浴衣が室内に置かれてあった。
これは幹部仕様で。他の職員は大会議室で、着の身着のままの雑魚寝である。
夕食をとったあと、軽く体を拭いて、浴衣に着替える。
軍服は堅苦しいので、楽になった。
本来は、基地や本部などにいるときは、戦闘態勢を崩さず、軍服着用を義務付けられている。
寝るときだけ、防具は外していいのだが。
でも、今日は土砂降りなので。こんな中、手裏は仕掛けて来ない。
前線基地ならともかく、本拠地は将堂の領地のど真ん中なので、さらに危機感は薄くなる。
「巴、ちょっと話していいか?」
布団の上に座って、あとは寝るだけという感じになったとき。幸直が切り出した。
なにもすることはないので、嵐の夜長、お話は大歓迎である。
「昨日の午後、近況を知らせに、本邸に帰ったときに。妻が言ったんだ。妊娠五ヶ月だと。七月に休暇がありましたよね、ってさ」
「…え?」
幹部は大体、四月から十月まで前線基地に詰める。
その間、休みなしなのは厳しいので。一週間くらいだが、休暇をもらえるのだ。
今年は六月に大規模戦闘があり、七月に手裏が兵を引いた。そこに合わせて休暇をもらったのだけれど。
「幸直は、七月の休暇に、帰郷はしなかったよな?」
手裏の兵が引いたばかりで、気が抜けない状態だった。
幸直と巴は、休暇をもらったのだが。ふたりで、地形調査に向かったのだ。
奇襲で使えるような地形がないかを探しつつ、再び手裏が大規模戦闘を仕掛けてきたなら、すぐに基地に戻れるよう、近場に滞在していて。敵兵が陣を敷きやすい、湖の探索や。戦場に近い崖の状況。馬が走らせられる傾斜があるか、みたいなことを調べて回った。
ふたり、だったが。
逢引き、のような色っぽい雰囲気では決してない。
話の内容は、ずっと戦術についてだったので。
問題はそこではない。幸直が帰郷していないということは、だ。
「実は、ふたり目も、怪しいんだ。時期が微妙にずれていて。しかし、女性のことはわからないだろ? 十月十日というけれど、早いときも遅いときもあるし…」
しかし、今度ばかりは全く身に覚えがないと。
幸直に、ふたり目の子供が生まれたというのは、巴は噂に聞いたのだ。
家族のことを、彼は巴にあまり話したがらないので、触れられたくないことなのだと思って。巴も、そのことは聞かないでいたのだが。
まさか、疑念があって言えなかったのか?
「ぶっちゃけ、親父に寝取られたんだ。お姫様は屋敷から出ないし、親父はまだまだ男盛り。俺の母親が亡くなって久しいしな。クマタカ血脈なら、誰だって構わないんじゃね?」
自分の妻を、幸直はお姫様と揶揄して言う。側仕えを何人も連れて歩き、ふたりで話もままならないとか。
夫婦というには歪な関係だと、以前も思ったことがある。
幸直は自嘲するように、皮肉げに笑って肩をすくめるけど。
「馬鹿。僕の前で、強がるな」
言ってやると、彼はいつもの自信満々の顔ではなく。
どこか、途方に暮れた少年のような顔になる。
「なんて顔をしているんだ? 僕の知っている幸直は、快活明朗で、堂々としていて、威厳があって、美しい。僕の自慢の友達だぞ」
一瞬、瞳を陰らせた幸直は。寝床をまたいで巴を抱き締めると、キスしてきた。
いつもの、優しく甘いものではなく。
必死にもがいているような、がむしゃらなくちづけ。
あまり執拗だと、巴は一線引くのだが。今日ばかりは、幸直を突き放せない。
巴は翼を広げて、彼の望むまま布団に押し倒されてやった。あおむけに寝るのは、翼を畳んでいるより、開いた方が痛くない。
「いいのか? このままじゃ、俺はおまえを抱くぞ。巴は男に犯られるの、嫌なんじゃないのか?」
覆い被さる幸直が、巴を見下ろす。
巴は、欲情して目をぎらつかせる、野性味のある幸直の顔に、ぞくぞくしていた。
「好きでもない男に犯られるのが、嫌なんだ。幸直のことは、好きだよ。こうして、幸直の気が晴れるなら、それでいいと思うくらいにはな。好き…」
幸直は巴の頬に手を当て、情熱的にくちづけてきた。
いつもはゆっくりと舌を舐めて、絡めて、吸い上げるような、穏やかで、心地よいキスが多いが。
今は舌先を甘く噛んで、舌をきつくまといつかせ、絡ませる、ぐちゅぐちゅと口腔から音が鳴るような、激しいキスだ。
こんなくちづけは初めてで。巴は目がくらみそうになる。
一応、絵を描くうえで、女性も男性も、骨格や身体的特徴、女性なら丸みを帯びた肉付き、男性なら筋肉の盛り上がり、なんかを勉強しているし。
基成として、閨の教育を受けていて。
体験はしていないけれど。まぁ、情交のやり方は女相手も男相手も、わかっている。
わかっているけど…初めては初めて。
ここは、経験者の幸直に任せてしまうしかない。
それにさぁ、目が離せないよ。幸直がエロくて。
深いキスをしているときに、ちらちら見える、舌の動きのなまめかしさとか。
少し垂れて、色っぽいと思っている目元が、赤くなって、艶がいよいよ増しているとか。
野生の獣が獲物を食らうように、己の乳首を貪っているとか。
ヤバい。体がじんじんしてきて。もっと幸直を見たいのに、のぼせてしまう。
「すまない、巴。俺、おまえに甘えているな。でも、俺がこんな弱味見せられんの、巴だけだ。巴、だけが…俺の」
襟を崩して首筋や胸を舐めていたが、幸直は巴の帯をほどいて。贈り物を包む風呂敷を開けるときのように喜々とした顔で、浴衣の前を開く。
そして本格的に右胸に舌を這わせ、攻め始めた。
平らな胸などつまらないだろうに、なんだかねっとりと美味そうに食いついている…。
楽しいなら、まあ、いいけど。
でも、こちらの感覚は、あまり余裕がないかな。
くすぐったいような、チクチクするような。
殴られているときでも、うめき声なんかあげなかったが。この感覚はなんだか、声を我慢できない感じ。
「…ふ、ぅぁ」
喉が締まるのに、声は漏れて。
その声に、幸直の舌の動きが早くなる。
舌先を固くとがらせて、乳頭を弾いていじめるような。
「そ、れ…や、ぁ…幸直…あぁ」
「声、聞かせて。巴。巴を抱いてるって、実感したい」
上目づかいでねだられて。
その、少し可哀想な感じでみつめてくるの、ずるいぃ。
「や、め…も、ぉ…くすぐったい、って…ふ、んぁ」
「巴の、その、ひっそり微笑む顔、好き。俺の全部、許してるみたいで」
巴の顔を両手で包んで、愛しげに見やると。幸直は極上の笑みを浮かべて、くちづけた。
なに、それ。すっごく愛されているみたいで、誤解しちゃうぞ。
幸直は、奥さんのことを好きではないかもしれないけれど。
父に取られて、傷ついていないわけではない。
ただ、傷ついた心を寄り添わせる相手に、己を選んだ。それだけのことなのだ。
怪我をしたら、医者に診てもらうようなもの。
深い意味なんて、ないのに。
「あおむけで、痛くないか? 初めては…後ろからの方が楽だと聞くが」
そんな。うつ伏せになったら、幸直の快楽に耐えて眉をしかめる表情や、イく瞬間の顔とか、見られないじゃないか。
そんな絶好の機会を奪われるわけにはいかない。
「このままが、いい。幸直の顔、見たい」
「見知らぬ誰かに、なぶられるように思っちゃうのか? そんな怖い記憶は、俺が消してやるからっ」
いや、大抵の者は倒してきたので、幸直が想像するような、怖い思いはしていないんですが。
なんか、そう思い込んで。強く抱き締めてくるし。
イく顔が見たいなんて本当のことも言えないので、そのままにしておいた。
ランプの灯が揺れる、薄暗がりの室内に、巴のあえぎが響くが。外の暴風の音が、かき消してくれる。
巴のなやましい声音を耳にするのは、そばにいる幸直だけだった。
幸直は巴の陰茎を上下に擦り立てて、先に極めさせた。
だが、ここからが本番だと、わかっている。
吐き出した巴の白濁を、幸直は蕾になすりつけ、指で後孔をこじ開けていく。
そこは本来、入ってくる場所ではないから。無意識に幸直の指を拒んでしまうが。
今日は幸直も止まらず。巴も彼を止めなかった。
それに、体の奥に、気持ち良くなる場所があることを知っている。そこを探し当てることができれば、男性同士の情交でも快感を得られると、教育された。
戦場では、男性ばかりの環境で過ごすので、手裏の当主がそうして欲を晴らすこともあるだろう…ということだったのだが。
される側になってしまったな。
「顔見て、睦み合うの、初めてなんだが。いいな。巴がいい場所とか、よくわかる」
つぶやいて、幸直は巴の内壁を、奥から抜ける際のところまで、じっくりと愛撫する。
巴は、どこに触れられても、肌が粟立つほどに感じるが。その中でも、飛びきり反応する部分があって。
それをみつけると、幸直は無邪気に笑った。
彼は大抵、格好いいのだが。たまに可愛い顔をする。その緩急がいいのだ。
「あ、あ…そこ…」
指がかすめた、ある一点を、巴は訴える。
すると幸直は的確に、そこを探し当てた。深く中に挿し込まれた幸直の中指が、念入りにその部分を撫でこする。
「あぁ、んぁ、そこ、あ、あっ、幸直、駄目、ゆっくりして…ん、そ、う…ゆっくり、んっ」
先ほど出したばかりなのに、幸直にそこを撫でられていると、みるみる屹立がみなぎってくるのがわかる。
幸直を受け入れて、体がつらくならないよう、そこを撫でられる感覚に集中していると。
指が二本に増やされた。
「すご、柔らかい。あぁ、早く。巴を食いたい」
「いいよ、来て」
少しぐらい、痛くても大丈夫だ。タコ殴りよりは、痛くないだろうと思うので。両手を広げて幸直を誘うが。
彼は奥歯を噛みしめる癖に、首を横に振る。
「口、三角にして…煽るな。傷つけたくないし。痛くしたら、二度目はないかも」
口、三角って、なに? とは思いつつ。
唇を一度引き結ぶ。
だらしなく、口開けてんなってことかな?
ま、いっか。
巴は薄く笑って、幸直にうなずいて見せる。もう大丈夫だから。
「そんな意地悪言わないから。ほら、来い」
なんか、泣きそうな顔をして、幸直は眉間を寄せた。
その顔、良いな。
さっきの、奥歯噛み締めた顔も、悪い男みたいで良かったぞ。あとで描き起こそう。
「巴…俺の巴。大好きだよ」
後ろから指を引き抜いた幸直は、手を広げた巴の胸の中に体を埋めて、抱き締める。
巴も彼の首に腕を回した。
そして、彼が腰を入れると、後孔に幸直の先端が当たり。そのままゆっくり侵入してくる。
「う、あ、あ…」
幸直は巴の膝裏を手で掴んで、足を開かせて押し上げると。蕾の中にグンと剛直を突き入れてきた。
一気に入ってきた物凄い質量に、さすがの巴も、息をのむ。
痛い、ではなく。苦しい、だ。
「力、抜いて。巴、上手にできてるから…な?」
「あ、あぁ…。幸直。信じて、いるっ」
己の精で濡れたそこが、ぐちゅぐちゅと音を立てている。
幸直のモノで、かき回されているのがわかるが。彼は、それほど激しく動いているわけではなく。まだ、巴の中で己を馴染ませている最中だ。
いきなり無茶するような男じゃない。
幸直は優しいから。わかっているよ。
体の中に、熱いものがある。幸直がいる。
それを思うだけで、中がウズウズじんじんしてきた。もどかしくて、やるせなくて、せつなくて。
「幸直、も…うご、いて」
「巴っ」
感極まったように、幸直は巴をかき抱き、唇で唇を深く結びつけると、腰を小刻みに律動させた。
「巴は、巴だけは、ずっと、俺のそばに、いるよな」
わかってやっているのか、幸直は剛直で、巴の中の良い部分を常に刺激している。
初めて、体の奥を開かれた、ヒリヒリした痛みやジリジリする痺れはあるものの。それすら押し流す勢いの快感が生まれていた。
たぶん、これが経験値だな。
初めての己から官能を引き出す、そうする余裕があるのだ。
だから己は幸直に任せていれば、極上の情交を味わえるはず。
「いるっ。幸直のそばに、いる、ぁ…」
一番大事な己の親友だ。君が望む限り、そばにいる。
巴は、せつない想いを胸に秘め、幸直の頭をゆるりと撫でた。
甘えん坊の、己の親友。
ちょっとチャラいけど。その明るさが君の魅力だよ。
みんなが君を好きなのに。なんで己だけだなんて言うのだろう?
あぁ、わからない。考えがまとまらない。
ひりつくほどの、ただれるほどの、強烈な刺激が、ずっと腰に渦巻いて、幸直が突き入れるたびに。ギュン、ギュン、と快楽が体の内で暴れるのだ。
「っん…あっ」
「イきそう? 巴、イける?」
うかがうように、幸直が聞いてくる。
たぶん、無意識に、中が収縮して、剛直を締めつけているのだ。
「ん、イく。わ、かんないけど…イき、そう…」
言うと、幸直は巴の陰茎を手で握り、こすり上げた。剥き出しの神経のようなそこを、まさぐられれば、すぐにも性感が高まって。唐突に宙に放り投げられた感覚がした。
「…あぁっ」
巴は体を身震いさせ、精を放った。
「くっ…」
後孔がビクビクとわななく中、幸直が根元まで深く剛直を挿入する。腰を揺すりあげ。熱い精を己の中に注ぎ込んだ。
体の奥、己の全部が、幸直のものになったという感覚で、心までも満たされる。
は! 大事な瞬間、目をつぶってしまった。
慌てて目を開けると。幸直はすでに、ニヤリと余裕の笑みを浮かべている。
あぁ、究極の瞬間、見そびれた…。
脱力して、抱えあげられていた足を、バタリと布団におろす。
だが。身を起こした幸直は、浴衣を脱いだ。
脱いでくれたっ!
太い首の下に、盛り上がった胸筋、引き締まった筋肉は鎧のように、幸直の体躯を飾り立て。それは見事な、均整の取れた体つきだった。
やった。ご褒美ですか? 一度はこの目で拝んでみたいと思っていた、極上の完璧肉体。最高です。
そんなふうに見惚れていた巴を、幸直はじっくりと見下ろし。再び身を屈めてくちづけた。
巴もありがとうの気持ちを込めて、そのキスを迎え入れる。
眼福です。御馳走さまです。
しかしキスの熱量はどんどん高まっていく。
舌を、己の舌に巻きつけて、ねっとりと絡めて。先ほどの余裕のないがむしゃらなキスとは別物の、濃厚で甘ったるくて、しつこい接吻。
「ん…んふぅ…っん?」
情交は、終わったのかと思ったが。体の中の剛直は、みるみるみなぎっていき、ゆっくり動いている。
剛直の突端が、内壁を摩擦しながら行き来し、あの良い部分を、何度もこすられる。
これが、抜かずのもう一回ですか?
唇を離した幸直が、濡れた唇を舌なめずりして、聞いてくる。
「もっと、欲しい。巴…俺に全部、くれよ」
彼のヤバエロい顔を見て、巴の脳みそに小さな雷が落ちた。
「ふふ、そんなにぼんやりした目で俺を見て…気持ち良かった? もう一度、いい?」
よくわからないけど、とりあえず流れでうなずいたら。幸直は巴の浴衣を脱がし、手を自分の首に回させて。上体を引き起こした。
剛直を抜かぬまま、座る幸直の上に体を下ろされる。
対面座位というやつだな。って、考察している場合じゃない。
一糸まとわぬ己の膝裏に、幸直の手が差し入れられ。その手の動きで上下に揺さぶられる。
第二回戦に突入してしまった。
「わっ、深ぃ…あ、あ…幸直っ、これはっ、あぁっ」
幹部のいる区画には、誰も来ないと思うが。
声を、誰にも聞かれたくはない。でも、漏れ出てしまうから。幸直の耳元で、おさえめにあえぐことになってしまう。
「あぁ、可愛い。巴、マジ、可愛い。いいぜ。もっと。全部、俺のものだ」
揺さぶられると怖いから、しがみつきたいが。今度こそ、幸直の良い顔を拝みたいと思って。
腿の上に座ることで、同じ高さの顔の位置になる幸直を、みつめる。
巴は…自分も幸直に見られてしまうことには、気づいていなかった。
「巴の、その黒い目にみつめられると、いつも吸い込まれそうな気分になる。俺の顔、好きなのか?」
うっとりした、その顔つき。いい。
問いかけてくる眼差しの色も。いい。
幸直にそんなふうに聞かれたら。本音が漏れてしまうよ。
「ん、好き。幸直、好き」
「あぁ、可愛い。ごめんな、初めてなのに、二度もさせて。でも、健気に俺のこと、受け入れてくれて。いっぱい俺のこと甘やかしてくれて。あんまり巴が可愛いから、止まんねぇ…」
欲望のままに、幸直は巴を揺さぶった。
重力で、必ず幸直を根元まで迎え入れることになるから。奥をズンズン突き上げられて、苦しい、もどかしい。
「あ、あ、あ…もっと、ゆっくり…ん、んぁ」
でも、ゆっくりと言ったら。幸直が巴の足を揺らさないで、腰だけを突き入れる動きに変えてくれた。
奥を叩かれる感じはなくなって、ホッとする。
「巴は、ゆっくりが好きだな。ん? こうすると。気持ち良い?」
幸直が腰を揺らすと、ぐちゅぐちゅと後孔がかき回されるような感じがする。
二回分の精液で濡らされ、剛直の異物感はあまりなくなっていた。
ただただ、じんじんして。
良いのかどうかはわからない。
でも、幸直が厚めの唇を頬笑ませ、気持ち良い? なんて聞いてくるのを見たら。
心がキュンと握り込まれたような気になって。いい。
「幸直は、イイのか? 俺なんかで、気持ち良くなれるか?」
「馬鹿。ギンギンなの、わかるだろ? そういう可愛いこと言うと…マジ、止まんなくなるぞ」
また足を持ち上げ、幸直は激しく動き出した。
ガクガクと揺さぶられ、中の良い部分をジュクジュクとこすり立てられ、悦楽が湧き上がってくる、が。
目の前の幸直の顔が。気持ち良いのだろうけど、眉間にしわを寄せて、なにかに耐えているようにも見えてしまい。
巴は幸直の眉の間を、指で撫でた。
「大丈夫。幸直、僕がそばにいるから。ひとりにしないから」
幸直は。一瞬、泣きそうな顔になって。そっと巴の唇にくちづけた。
「あぁ、胸、鷲掴みされたわぁ…こんな気持ちになんの、初めて。好き。もう…本当に、好き。巴は俺のだ。なにがあっても離さねぇからっ」
下から熱烈に突き上げられると、バサバサ音がした。己の翼が、意図せず動いている。
「イきそうなの、わかる。羽、ぱたぱたして、可愛い」
なんだか、幸直が。己を可愛い可愛い連呼しているが。
自分はそんな、可愛い容姿をしていないはずだった。
手裏家には、かなりの高級品である鏡があったのだ。
己の顔は、凡庸で。目蓋は重く、いつも『眠そうな顔をしているな。シャキッとしろ』と父に言われていたほどだし。口も鼻も小さい方だし。なにより、審美眼のある己のお眼鏡にかなわないのだから。たいしたことはないのだ。
幸直は、ちょっと変わっている。
「可愛い巴。今度は中だけで、イって見せて」
いつも、ふさふさの柔らかそうな茶髪が、情事の汗に濡れ。まなじりが赤く染まり。微笑む口元は、卑猥な言葉をつむぐ。
壮絶にエロい顔で言われて。
そんなの無理って、思ったけれど。
小刻みに突き上げられ、中をぐちゅぐちゅにされ、じんじんがウズウズに変わって。
体が、幸直を求めてキュンキュンして。
いやらしくて、もどかしい熱を誤魔化すように。くちづけてくる幸直の唇に、齧りついて。甘く舌を絡めて。
「あ、ん…や、あ、あ…ダメ、あっ、幸直…あぁ、幸直っ」
もう訳がわからない、という感じで惑乱したら。
屹立を刺激される前に、達してしまった。
そのあとも、惑乱状態が続いて、あまりよく覚えていないが。
また押し倒されて、幸直に体中を舐め回されて、もう出ないって泣かされるまで愛撫されて。
一晩中、飢える獣に貪られていた。
結局、幸直が達する瞬間を、目にできなかったことだけが、心残りだけど。
でも幸直と睦み合ったのは、己が受け入れたことだから、すごく幸せな時間だったよ、うん。
このときは、まさか次の日に。堺と紫輝に身バレして、この関係が一回で終了するなんて。思いもしなかったから。
尚更そう思うよね。幸せな時間だったなって。
不慮の出来事が起き、今は、堺の屋敷に世話になっている。
堺の指導のおかげか、青桐は着々と力をつけ、准将として振舞えるようになってきたが。
記憶喪失の者に書類仕事は任せられない。
本拠地に戻って、少しはのんびりできるのかな、などと甘く考えていた巴は。毎日の書類仕事に、げんなりしている。
今までの経過についての報告とか、人事案とか、下から上がってくる作戦についての詳細とか。
あぁ、紙の無駄遣い。裏に絵とか描きたい。
「巴、今日はここに泊まろう。この雨じゃ帰れない」
書類に集中していた巴が顔をあげると、外はすっかり日が落ちて。さらには雨と風がすさまじい感じになっていた。
冬の嵐だ。
堺の屋敷まで、馬で十分ほどかかるし。この世界では、雨の夜中、灯りのない外を出歩く人はまずいない。
「日が落ちる前に、教えてくれれば良かったのに。僕が集中すると、周りが見えなくなる質だって、幸直はわかっているだろう?」
「日が落ちる前だって、雨がひどくて帰れなかったよ。別室に職員が寝床の準備を整えてくれたから、今日は仕事を終えよう」
今、巴たちがいるのは、指令本部なので。本来は、人が泊まるような施設ではないのだが。
こうした突発的に帰れなくなる事態や、手裏の奇襲などに備え、寝泊りできる最低限のものは用意されている。
寝床が敷かれているのは、机を端に寄せた会議室なので。本当に寝るだけだが。
おにぎりと漬物、ランプ、あと清拭用の湯と手拭い、寝間着の浴衣が室内に置かれてあった。
これは幹部仕様で。他の職員は大会議室で、着の身着のままの雑魚寝である。
夕食をとったあと、軽く体を拭いて、浴衣に着替える。
軍服は堅苦しいので、楽になった。
本来は、基地や本部などにいるときは、戦闘態勢を崩さず、軍服着用を義務付けられている。
寝るときだけ、防具は外していいのだが。
でも、今日は土砂降りなので。こんな中、手裏は仕掛けて来ない。
前線基地ならともかく、本拠地は将堂の領地のど真ん中なので、さらに危機感は薄くなる。
「巴、ちょっと話していいか?」
布団の上に座って、あとは寝るだけという感じになったとき。幸直が切り出した。
なにもすることはないので、嵐の夜長、お話は大歓迎である。
「昨日の午後、近況を知らせに、本邸に帰ったときに。妻が言ったんだ。妊娠五ヶ月だと。七月に休暇がありましたよね、ってさ」
「…え?」
幹部は大体、四月から十月まで前線基地に詰める。
その間、休みなしなのは厳しいので。一週間くらいだが、休暇をもらえるのだ。
今年は六月に大規模戦闘があり、七月に手裏が兵を引いた。そこに合わせて休暇をもらったのだけれど。
「幸直は、七月の休暇に、帰郷はしなかったよな?」
手裏の兵が引いたばかりで、気が抜けない状態だった。
幸直と巴は、休暇をもらったのだが。ふたりで、地形調査に向かったのだ。
奇襲で使えるような地形がないかを探しつつ、再び手裏が大規模戦闘を仕掛けてきたなら、すぐに基地に戻れるよう、近場に滞在していて。敵兵が陣を敷きやすい、湖の探索や。戦場に近い崖の状況。馬が走らせられる傾斜があるか、みたいなことを調べて回った。
ふたり、だったが。
逢引き、のような色っぽい雰囲気では決してない。
話の内容は、ずっと戦術についてだったので。
問題はそこではない。幸直が帰郷していないということは、だ。
「実は、ふたり目も、怪しいんだ。時期が微妙にずれていて。しかし、女性のことはわからないだろ? 十月十日というけれど、早いときも遅いときもあるし…」
しかし、今度ばかりは全く身に覚えがないと。
幸直に、ふたり目の子供が生まれたというのは、巴は噂に聞いたのだ。
家族のことを、彼は巴にあまり話したがらないので、触れられたくないことなのだと思って。巴も、そのことは聞かないでいたのだが。
まさか、疑念があって言えなかったのか?
「ぶっちゃけ、親父に寝取られたんだ。お姫様は屋敷から出ないし、親父はまだまだ男盛り。俺の母親が亡くなって久しいしな。クマタカ血脈なら、誰だって構わないんじゃね?」
自分の妻を、幸直はお姫様と揶揄して言う。側仕えを何人も連れて歩き、ふたりで話もままならないとか。
夫婦というには歪な関係だと、以前も思ったことがある。
幸直は自嘲するように、皮肉げに笑って肩をすくめるけど。
「馬鹿。僕の前で、強がるな」
言ってやると、彼はいつもの自信満々の顔ではなく。
どこか、途方に暮れた少年のような顔になる。
「なんて顔をしているんだ? 僕の知っている幸直は、快活明朗で、堂々としていて、威厳があって、美しい。僕の自慢の友達だぞ」
一瞬、瞳を陰らせた幸直は。寝床をまたいで巴を抱き締めると、キスしてきた。
いつもの、優しく甘いものではなく。
必死にもがいているような、がむしゃらなくちづけ。
あまり執拗だと、巴は一線引くのだが。今日ばかりは、幸直を突き放せない。
巴は翼を広げて、彼の望むまま布団に押し倒されてやった。あおむけに寝るのは、翼を畳んでいるより、開いた方が痛くない。
「いいのか? このままじゃ、俺はおまえを抱くぞ。巴は男に犯られるの、嫌なんじゃないのか?」
覆い被さる幸直が、巴を見下ろす。
巴は、欲情して目をぎらつかせる、野性味のある幸直の顔に、ぞくぞくしていた。
「好きでもない男に犯られるのが、嫌なんだ。幸直のことは、好きだよ。こうして、幸直の気が晴れるなら、それでいいと思うくらいにはな。好き…」
幸直は巴の頬に手を当て、情熱的にくちづけてきた。
いつもはゆっくりと舌を舐めて、絡めて、吸い上げるような、穏やかで、心地よいキスが多いが。
今は舌先を甘く噛んで、舌をきつくまといつかせ、絡ませる、ぐちゅぐちゅと口腔から音が鳴るような、激しいキスだ。
こんなくちづけは初めてで。巴は目がくらみそうになる。
一応、絵を描くうえで、女性も男性も、骨格や身体的特徴、女性なら丸みを帯びた肉付き、男性なら筋肉の盛り上がり、なんかを勉強しているし。
基成として、閨の教育を受けていて。
体験はしていないけれど。まぁ、情交のやり方は女相手も男相手も、わかっている。
わかっているけど…初めては初めて。
ここは、経験者の幸直に任せてしまうしかない。
それにさぁ、目が離せないよ。幸直がエロくて。
深いキスをしているときに、ちらちら見える、舌の動きのなまめかしさとか。
少し垂れて、色っぽいと思っている目元が、赤くなって、艶がいよいよ増しているとか。
野生の獣が獲物を食らうように、己の乳首を貪っているとか。
ヤバい。体がじんじんしてきて。もっと幸直を見たいのに、のぼせてしまう。
「すまない、巴。俺、おまえに甘えているな。でも、俺がこんな弱味見せられんの、巴だけだ。巴、だけが…俺の」
襟を崩して首筋や胸を舐めていたが、幸直は巴の帯をほどいて。贈り物を包む風呂敷を開けるときのように喜々とした顔で、浴衣の前を開く。
そして本格的に右胸に舌を這わせ、攻め始めた。
平らな胸などつまらないだろうに、なんだかねっとりと美味そうに食いついている…。
楽しいなら、まあ、いいけど。
でも、こちらの感覚は、あまり余裕がないかな。
くすぐったいような、チクチクするような。
殴られているときでも、うめき声なんかあげなかったが。この感覚はなんだか、声を我慢できない感じ。
「…ふ、ぅぁ」
喉が締まるのに、声は漏れて。
その声に、幸直の舌の動きが早くなる。
舌先を固くとがらせて、乳頭を弾いていじめるような。
「そ、れ…や、ぁ…幸直…あぁ」
「声、聞かせて。巴。巴を抱いてるって、実感したい」
上目づかいでねだられて。
その、少し可哀想な感じでみつめてくるの、ずるいぃ。
「や、め…も、ぉ…くすぐったい、って…ふ、んぁ」
「巴の、その、ひっそり微笑む顔、好き。俺の全部、許してるみたいで」
巴の顔を両手で包んで、愛しげに見やると。幸直は極上の笑みを浮かべて、くちづけた。
なに、それ。すっごく愛されているみたいで、誤解しちゃうぞ。
幸直は、奥さんのことを好きではないかもしれないけれど。
父に取られて、傷ついていないわけではない。
ただ、傷ついた心を寄り添わせる相手に、己を選んだ。それだけのことなのだ。
怪我をしたら、医者に診てもらうようなもの。
深い意味なんて、ないのに。
「あおむけで、痛くないか? 初めては…後ろからの方が楽だと聞くが」
そんな。うつ伏せになったら、幸直の快楽に耐えて眉をしかめる表情や、イく瞬間の顔とか、見られないじゃないか。
そんな絶好の機会を奪われるわけにはいかない。
「このままが、いい。幸直の顔、見たい」
「見知らぬ誰かに、なぶられるように思っちゃうのか? そんな怖い記憶は、俺が消してやるからっ」
いや、大抵の者は倒してきたので、幸直が想像するような、怖い思いはしていないんですが。
なんか、そう思い込んで。強く抱き締めてくるし。
イく顔が見たいなんて本当のことも言えないので、そのままにしておいた。
ランプの灯が揺れる、薄暗がりの室内に、巴のあえぎが響くが。外の暴風の音が、かき消してくれる。
巴のなやましい声音を耳にするのは、そばにいる幸直だけだった。
幸直は巴の陰茎を上下に擦り立てて、先に極めさせた。
だが、ここからが本番だと、わかっている。
吐き出した巴の白濁を、幸直は蕾になすりつけ、指で後孔をこじ開けていく。
そこは本来、入ってくる場所ではないから。無意識に幸直の指を拒んでしまうが。
今日は幸直も止まらず。巴も彼を止めなかった。
それに、体の奥に、気持ち良くなる場所があることを知っている。そこを探し当てることができれば、男性同士の情交でも快感を得られると、教育された。
戦場では、男性ばかりの環境で過ごすので、手裏の当主がそうして欲を晴らすこともあるだろう…ということだったのだが。
される側になってしまったな。
「顔見て、睦み合うの、初めてなんだが。いいな。巴がいい場所とか、よくわかる」
つぶやいて、幸直は巴の内壁を、奥から抜ける際のところまで、じっくりと愛撫する。
巴は、どこに触れられても、肌が粟立つほどに感じるが。その中でも、飛びきり反応する部分があって。
それをみつけると、幸直は無邪気に笑った。
彼は大抵、格好いいのだが。たまに可愛い顔をする。その緩急がいいのだ。
「あ、あ…そこ…」
指がかすめた、ある一点を、巴は訴える。
すると幸直は的確に、そこを探し当てた。深く中に挿し込まれた幸直の中指が、念入りにその部分を撫でこする。
「あぁ、んぁ、そこ、あ、あっ、幸直、駄目、ゆっくりして…ん、そ、う…ゆっくり、んっ」
先ほど出したばかりなのに、幸直にそこを撫でられていると、みるみる屹立がみなぎってくるのがわかる。
幸直を受け入れて、体がつらくならないよう、そこを撫でられる感覚に集中していると。
指が二本に増やされた。
「すご、柔らかい。あぁ、早く。巴を食いたい」
「いいよ、来て」
少しぐらい、痛くても大丈夫だ。タコ殴りよりは、痛くないだろうと思うので。両手を広げて幸直を誘うが。
彼は奥歯を噛みしめる癖に、首を横に振る。
「口、三角にして…煽るな。傷つけたくないし。痛くしたら、二度目はないかも」
口、三角って、なに? とは思いつつ。
唇を一度引き結ぶ。
だらしなく、口開けてんなってことかな?
ま、いっか。
巴は薄く笑って、幸直にうなずいて見せる。もう大丈夫だから。
「そんな意地悪言わないから。ほら、来い」
なんか、泣きそうな顔をして、幸直は眉間を寄せた。
その顔、良いな。
さっきの、奥歯噛み締めた顔も、悪い男みたいで良かったぞ。あとで描き起こそう。
「巴…俺の巴。大好きだよ」
後ろから指を引き抜いた幸直は、手を広げた巴の胸の中に体を埋めて、抱き締める。
巴も彼の首に腕を回した。
そして、彼が腰を入れると、後孔に幸直の先端が当たり。そのままゆっくり侵入してくる。
「う、あ、あ…」
幸直は巴の膝裏を手で掴んで、足を開かせて押し上げると。蕾の中にグンと剛直を突き入れてきた。
一気に入ってきた物凄い質量に、さすがの巴も、息をのむ。
痛い、ではなく。苦しい、だ。
「力、抜いて。巴、上手にできてるから…な?」
「あ、あぁ…。幸直。信じて、いるっ」
己の精で濡れたそこが、ぐちゅぐちゅと音を立てている。
幸直のモノで、かき回されているのがわかるが。彼は、それほど激しく動いているわけではなく。まだ、巴の中で己を馴染ませている最中だ。
いきなり無茶するような男じゃない。
幸直は優しいから。わかっているよ。
体の中に、熱いものがある。幸直がいる。
それを思うだけで、中がウズウズじんじんしてきた。もどかしくて、やるせなくて、せつなくて。
「幸直、も…うご、いて」
「巴っ」
感極まったように、幸直は巴をかき抱き、唇で唇を深く結びつけると、腰を小刻みに律動させた。
「巴は、巴だけは、ずっと、俺のそばに、いるよな」
わかってやっているのか、幸直は剛直で、巴の中の良い部分を常に刺激している。
初めて、体の奥を開かれた、ヒリヒリした痛みやジリジリする痺れはあるものの。それすら押し流す勢いの快感が生まれていた。
たぶん、これが経験値だな。
初めての己から官能を引き出す、そうする余裕があるのだ。
だから己は幸直に任せていれば、極上の情交を味わえるはず。
「いるっ。幸直のそばに、いる、ぁ…」
一番大事な己の親友だ。君が望む限り、そばにいる。
巴は、せつない想いを胸に秘め、幸直の頭をゆるりと撫でた。
甘えん坊の、己の親友。
ちょっとチャラいけど。その明るさが君の魅力だよ。
みんなが君を好きなのに。なんで己だけだなんて言うのだろう?
あぁ、わからない。考えがまとまらない。
ひりつくほどの、ただれるほどの、強烈な刺激が、ずっと腰に渦巻いて、幸直が突き入れるたびに。ギュン、ギュン、と快楽が体の内で暴れるのだ。
「っん…あっ」
「イきそう? 巴、イける?」
うかがうように、幸直が聞いてくる。
たぶん、無意識に、中が収縮して、剛直を締めつけているのだ。
「ん、イく。わ、かんないけど…イき、そう…」
言うと、幸直は巴の陰茎を手で握り、こすり上げた。剥き出しの神経のようなそこを、まさぐられれば、すぐにも性感が高まって。唐突に宙に放り投げられた感覚がした。
「…あぁっ」
巴は体を身震いさせ、精を放った。
「くっ…」
後孔がビクビクとわななく中、幸直が根元まで深く剛直を挿入する。腰を揺すりあげ。熱い精を己の中に注ぎ込んだ。
体の奥、己の全部が、幸直のものになったという感覚で、心までも満たされる。
は! 大事な瞬間、目をつぶってしまった。
慌てて目を開けると。幸直はすでに、ニヤリと余裕の笑みを浮かべている。
あぁ、究極の瞬間、見そびれた…。
脱力して、抱えあげられていた足を、バタリと布団におろす。
だが。身を起こした幸直は、浴衣を脱いだ。
脱いでくれたっ!
太い首の下に、盛り上がった胸筋、引き締まった筋肉は鎧のように、幸直の体躯を飾り立て。それは見事な、均整の取れた体つきだった。
やった。ご褒美ですか? 一度はこの目で拝んでみたいと思っていた、極上の完璧肉体。最高です。
そんなふうに見惚れていた巴を、幸直はじっくりと見下ろし。再び身を屈めてくちづけた。
巴もありがとうの気持ちを込めて、そのキスを迎え入れる。
眼福です。御馳走さまです。
しかしキスの熱量はどんどん高まっていく。
舌を、己の舌に巻きつけて、ねっとりと絡めて。先ほどの余裕のないがむしゃらなキスとは別物の、濃厚で甘ったるくて、しつこい接吻。
「ん…んふぅ…っん?」
情交は、終わったのかと思ったが。体の中の剛直は、みるみるみなぎっていき、ゆっくり動いている。
剛直の突端が、内壁を摩擦しながら行き来し、あの良い部分を、何度もこすられる。
これが、抜かずのもう一回ですか?
唇を離した幸直が、濡れた唇を舌なめずりして、聞いてくる。
「もっと、欲しい。巴…俺に全部、くれよ」
彼のヤバエロい顔を見て、巴の脳みそに小さな雷が落ちた。
「ふふ、そんなにぼんやりした目で俺を見て…気持ち良かった? もう一度、いい?」
よくわからないけど、とりあえず流れでうなずいたら。幸直は巴の浴衣を脱がし、手を自分の首に回させて。上体を引き起こした。
剛直を抜かぬまま、座る幸直の上に体を下ろされる。
対面座位というやつだな。って、考察している場合じゃない。
一糸まとわぬ己の膝裏に、幸直の手が差し入れられ。その手の動きで上下に揺さぶられる。
第二回戦に突入してしまった。
「わっ、深ぃ…あ、あ…幸直っ、これはっ、あぁっ」
幹部のいる区画には、誰も来ないと思うが。
声を、誰にも聞かれたくはない。でも、漏れ出てしまうから。幸直の耳元で、おさえめにあえぐことになってしまう。
「あぁ、可愛い。巴、マジ、可愛い。いいぜ。もっと。全部、俺のものだ」
揺さぶられると怖いから、しがみつきたいが。今度こそ、幸直の良い顔を拝みたいと思って。
腿の上に座ることで、同じ高さの顔の位置になる幸直を、みつめる。
巴は…自分も幸直に見られてしまうことには、気づいていなかった。
「巴の、その黒い目にみつめられると、いつも吸い込まれそうな気分になる。俺の顔、好きなのか?」
うっとりした、その顔つき。いい。
問いかけてくる眼差しの色も。いい。
幸直にそんなふうに聞かれたら。本音が漏れてしまうよ。
「ん、好き。幸直、好き」
「あぁ、可愛い。ごめんな、初めてなのに、二度もさせて。でも、健気に俺のこと、受け入れてくれて。いっぱい俺のこと甘やかしてくれて。あんまり巴が可愛いから、止まんねぇ…」
欲望のままに、幸直は巴を揺さぶった。
重力で、必ず幸直を根元まで迎え入れることになるから。奥をズンズン突き上げられて、苦しい、もどかしい。
「あ、あ、あ…もっと、ゆっくり…ん、んぁ」
でも、ゆっくりと言ったら。幸直が巴の足を揺らさないで、腰だけを突き入れる動きに変えてくれた。
奥を叩かれる感じはなくなって、ホッとする。
「巴は、ゆっくりが好きだな。ん? こうすると。気持ち良い?」
幸直が腰を揺らすと、ぐちゅぐちゅと後孔がかき回されるような感じがする。
二回分の精液で濡らされ、剛直の異物感はあまりなくなっていた。
ただただ、じんじんして。
良いのかどうかはわからない。
でも、幸直が厚めの唇を頬笑ませ、気持ち良い? なんて聞いてくるのを見たら。
心がキュンと握り込まれたような気になって。いい。
「幸直は、イイのか? 俺なんかで、気持ち良くなれるか?」
「馬鹿。ギンギンなの、わかるだろ? そういう可愛いこと言うと…マジ、止まんなくなるぞ」
また足を持ち上げ、幸直は激しく動き出した。
ガクガクと揺さぶられ、中の良い部分をジュクジュクとこすり立てられ、悦楽が湧き上がってくる、が。
目の前の幸直の顔が。気持ち良いのだろうけど、眉間にしわを寄せて、なにかに耐えているようにも見えてしまい。
巴は幸直の眉の間を、指で撫でた。
「大丈夫。幸直、僕がそばにいるから。ひとりにしないから」
幸直は。一瞬、泣きそうな顔になって。そっと巴の唇にくちづけた。
「あぁ、胸、鷲掴みされたわぁ…こんな気持ちになんの、初めて。好き。もう…本当に、好き。巴は俺のだ。なにがあっても離さねぇからっ」
下から熱烈に突き上げられると、バサバサ音がした。己の翼が、意図せず動いている。
「イきそうなの、わかる。羽、ぱたぱたして、可愛い」
なんだか、幸直が。己を可愛い可愛い連呼しているが。
自分はそんな、可愛い容姿をしていないはずだった。
手裏家には、かなりの高級品である鏡があったのだ。
己の顔は、凡庸で。目蓋は重く、いつも『眠そうな顔をしているな。シャキッとしろ』と父に言われていたほどだし。口も鼻も小さい方だし。なにより、審美眼のある己のお眼鏡にかなわないのだから。たいしたことはないのだ。
幸直は、ちょっと変わっている。
「可愛い巴。今度は中だけで、イって見せて」
いつも、ふさふさの柔らかそうな茶髪が、情事の汗に濡れ。まなじりが赤く染まり。微笑む口元は、卑猥な言葉をつむぐ。
壮絶にエロい顔で言われて。
そんなの無理って、思ったけれど。
小刻みに突き上げられ、中をぐちゅぐちゅにされ、じんじんがウズウズに変わって。
体が、幸直を求めてキュンキュンして。
いやらしくて、もどかしい熱を誤魔化すように。くちづけてくる幸直の唇に、齧りついて。甘く舌を絡めて。
「あ、ん…や、あ、あ…ダメ、あっ、幸直…あぁ、幸直っ」
もう訳がわからない、という感じで惑乱したら。
屹立を刺激される前に、達してしまった。
そのあとも、惑乱状態が続いて、あまりよく覚えていないが。
また押し倒されて、幸直に体中を舐め回されて、もう出ないって泣かされるまで愛撫されて。
一晩中、飢える獣に貪られていた。
結局、幸直が達する瞬間を、目にできなかったことだけが、心残りだけど。
でも幸直と睦み合ったのは、己が受け入れたことだから、すごく幸せな時間だったよ、うん。
このときは、まさか次の日に。堺と紫輝に身バレして、この関係が一回で終了するなんて。思いもしなかったから。
尚更そう思うよね。幸せな時間だったなって。
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