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幕間 その頃の幸直と巴 ★
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◆幕間 その頃の幸直と巴
視察という名で、本拠地を出て行った青桐たちを。堺の屋敷の前で見送った、幸直と巴は。堺の家令に告げた。
「今日は俺たちも、自分の屋敷に戻る。主のいない屋敷に泊まるのは、肩身が狭いからな」
家令は承りましたと頭を下げ。
そして幸直たちは、いつもどおり指令本部に行く。
青桐たちがいなくても、書類は待ったなしだ。
夕方まで、みっちり机に張りついて仕事をし、日暮れ前に終える。
指令本部から屋敷までの道のりは、それなりにある。なので、馬に乗って帰宅するわけだが。
特に体を動かしたわけでもないのに、疲労を感じる体を、馬の上で伸ばしてほぐす幸直に。並列で馬に乗る巴が聞いてきた。
「幸直、今日は…」
堺の家に帰らないのなら、これからどうするのだ? と巴は聞きたいのだろうと、幸直は思った。
「俺の家に来いよ、巴。邪魔者のいないところで、ゆっくり甘えさせてもらうから」
「それもいいのだが。今日は、僕の屋敷に来ないか? もてなしをさせてくれ」
「巴のもてなし、というと…酌をしてくれるとか? 膝枕とか? 風呂で体洗ってくれるとか?」
周りには誰もいないが、馬を少し寄せて、幸直はひっそりと囁く。
巴は、それに苦笑いだ。
「まぁ…してもいいが。絵を見てもらおうと思って」
幸直は、その言葉に目を輝かせた。
年末に、ちらりとだけ見たが。それ以後、幸直は巴の絵を見たことがない。
絵を描いていたというのも、年末に初めて知って。この前、紫輝との話の中で、巴が絵を描いて暮らしたいという望みを持っていることも、そのとき初めて知ったのだ。
「わぁ、見る見る。この前は、あまり見せてもらえなかったから、気になっていたんだよぉ」
「あれは途中だったから。半端な絵は見せたくないんだ」
「俺は、自分では描かないが、美術品などは、それなりに見てきたから。目は肥えているぞ。巴、大丈夫か?」
「さぁ、僕は胸の中にあるなにものかを、吐き出したいから、描いているだけだ。ま、評価は存分にしてくれ」
どんな絵が見られるのだろうと、幸直はわくわくして。巴の屋敷に、馬の頭を向けたのだ。
★★★★★
久しぶりに、自分の屋敷に戻った巴だったが。留守中も、使用人が屋敷を綺麗に整えてくれていた。
幸直をもてなす料理や用意を頼んで。巴は幸直を、絵の仕事部屋へ案内した。
紙に描く鉛筆画や墨絵は、その気になったときにサッと描けるので、膨大な量があるが。幹部にもなって、金銭に余裕ができたので。掛け軸や屏風などにも、絵を描くようになっていた。
題材は、もっぱら、幸直が持ってきた季節の花々や。今まで目にしてきた、雄大な自然風景だ。
部屋に入ってすぐ、幸直の目に飛び込んだ、大きな屏風に描かれていたのは。
綺麗な百合の花だった。
屏風は二枚、または複数枚の縦長の板に丈夫な紙を貼りつけた、風よけの道具だが。
幸直が目にしているのは、横長の、腰高屏風に描かれた、一枚絵である。
用途は寝台の目隠しや部屋の仕切りだが、おおよそ美術品扱いだ。
「うわぁ、すごく綺麗だな。立体感が。なんか、花びらの質感とか、茎とか、触れそうだ」
絵に、手で触れてはいけないことくらいは、わかっているので。しないが。本当に、飛び出て見えるほどに、そのものが、そこにあるように目に映った。
それは、今まで見た絵画の中の、どれとも違う。そして明らかに玄人以上の、質と出来だった。
「幸直が、僕に初めてくれた花だった。そのときの感動を残しておきたくて、すぐに絵にしたのだが。物足りなくて、屏風にしてしまった。気に入ったなら、幸直の屋敷に送ってやるが?」
「でも、巴が欲しくて作ったのだろう?」
「僕は、いくつでも描けるから」
「本当に? じゃあ、貰おうかな。巴の絵を、毎日見て暮らせるなんて、最高だ。それにこの百合は、巴の立ち姿に似ていると思って贈ったものだから、なんとなく、そこに巴が立っているようにも見えるよ」
幸直の言葉に、巴はポッと頬を赤らめた。
「そういうふうに言われると。なんだか気恥ずかしいな」
「ダメダメ、この屏風は、もう俺のものだから。ちゃんと、送ってくれ。あ、名も記してな」
「あぁ。じゃあ、幸直が僕の、初めてのご贔屓さんだな」
巴の作品を、己が一番に手にできるのも、嬉しいことだが。
あの、ドキドキしながら巴に贈った花束が、いまだ絵の中に色鮮やかに残っているのを知り。
幸直は超感動したのだった。
★★★★★
風呂では、巴に、髪も体も丁寧に洗ってもらい。その細い指先の動きを、堪能した。
石鹸は高級品で、普段は使用しないが。手に泡を作り、肩や胸を撫でるように、巴が繊細な手つきで洗ってくれる。
湯けむりの中、巴の一重の目蓋が、妖艶に見え。誘われるように、くちづけた。
胸と胸を合わせて、鼓動を重ね。ゆるりと動いて、互いに泡をこすりつけ合う。
波に漂うような心地よさの中に、性感の愉悦が生まれ。互いの局部も、張り詰めてくる。
「ん、んぅ…」
唇を離さないから、鼻から艶声が漏れた。
ぬるりとした局部の刺激に、巴はお尻をくねらせて逃げるが。幸直は臀部を力強く掴んで。逆に、巴の屹立に剛直を押しつける。
その淫猥な享楽に酔いしれ。腕の中で巴が身悶えるサマを、長く、目で楽しんだ。
舌を絡める、くちゅくちゅとした音と。泡がはじける、にゅるにゅるとした音が。ふたりを高ぶらせ。精を吐き出すまで、その淫靡な音と甘い吐息が、浴室に響いていた。
風呂上りは、浴衣と丹前という楽な格好になり。夕食で酌をしてもらい。自分も巴に、酒を注いで。ほろ酔いの良い気分になって。
御馳走を堪能したあと、巴の部屋に、ふたりで入った。
今は、寝台の上で膝枕をしてもらっているところだ。
あぁ、なんていう至福の時間。手厚いおもてなしに、幸直は御満悦だった。
「ここは、天国か、楽園か。なぁ、巴。明日の仕事は休みにして、一日中、寝台の中で過ごそうぜ?」
「駄目だよ、幸直。それでなくても、上司が不在なんだ。幹部が誰もいない状況は、作り出せない」
「もう、真面目だな、巴はっ」
幸直は巴の胴に腕を回し、腿に頭をすりつける。
年末、巴に膝枕してもらってから、常々、もう一度体験したいと思っていたのだ。
究極に、甘え倒しているという感覚になる。
そして、その甘えを、許されている。それが心地いいのだ。
「その代わり、彼らが帰ってきたら、休暇を貰おう。外に遊びに出てもいいし。二日間、寝台にこもってもいい」
「なにそれ…最高じゃん。そうしよう。よし、明日も仕事するぞ」
巴の提案に、幸直は、がぜんやる気が出てきた。
だが、それはそれ、これはこれだ。
「じゃあ、今日は。なにして遊ぶ?」
巴の浴衣の帯をほどきながら聞く、幸直の問いに。艶事の意味合いがあるのは、わかっている。
「風呂でも充分盛り上がったのに、まだご所望ですか? ご主人様」
「もう、そういうのなしだぞ。俺と巴は、対等だ」
怒って、そうは言うけど。幸直は自分の浴衣を寝台の下に投げ捨てながら、巴を組み敷くのだ。
「…命令じゃないけどぉ、口で、してくれるか?」
幸直は、巴の唇に人差し指を当てる。
その柔らかい唇の弾力を楽しみ。口の端から口の端へ、なぞるように行き来させてから、下唇をめくって、指を口腔に差し入れる。
言われる前に、巴は、幸直の指先にチュッと吸いついて。舌で指先を包むように舐め撫でる。
命令でも、命令でなくても、巴は幸直の要望にはなんでも従うつもりだ。
「初めて会ったときから、思ってた。柔らかそうな唇だって。巴に咥えてもらったら…夢心地になるだろうって」
チュプと音をさせて、幸直の指を離し、唾液を舌先で拭うと。
巴は幸直を、熱くみつめた。
「夢を壊したら、すまない。でも、最善を尽くすよ」
枕をいっぱい詰んだ上に、一糸まとわぬ幸直を寝かせる。
少し上半身が起きた状態で、立てた足の間に、巴は体を入れ込んだ。
巴は…まだ浴衣を羽織った状態だが、全裸同士になると肌色が多いな、なんて。絵面を考えてしまい。このままでいいかと思うのだった。
「間近に見ると、おっきぃな。これが自分の中に入るとか、信じられない」
期待してか、すでに隆々とみなぎっている幸直のモノを、巴はしげしげと見やってから。チュッとキスをした。そして茎にパクリと食いつく。
幸直は、歯を立てられたわけでもないが、少しひやりとする。
でも、巴が唇で揉むようにしながら、舌でなぞり上げていくのを見て。ぞくぞくと官能が湧き上がってくる。
落として、上げられ。逆に敏感になるみたいな。
突端にたどり着いた巴の舌先が、己の雁首を熱心に舐めるから。快感がどんどん襲い来る。
ヤバい。全く躊躇することなく、飴玉を味わうみたいに、巴はつるりとした幸直の先端を、チュプチュプといやらしい音を立てながら、舐めしゃぶった。
そして蜜口に舌先を入れ込む。
「く…ぅ」
そこは、マジで、ヤバいって。声、出る。
だが巴は、幸直が反応したことに気を良くして、微笑みさえ浮かべながら、そこを重点的に攻めてくる。
いつも、弱いところを攻められているから、お返しのつもりか?
でも。そうはいかない。
「巴、口を開けて…含んで」
言われるとおり、巴は、あの柔らかい唇をおずおずと開く。歯を当てないよう、先端をムニュッとした感触の唇で優しく覆い、ゆっくりと剛直を咥えこんでいった。
枕と己の体の間に挟まる翼が、ビビビッとなる。
ずっと、したいと思っていた状況が、目の前にっ。
己のモノが、巴の口の中にっ。
視界の暴力。破壊力が半端ない。
「…っ、頭を動かして、口の中の柔らかい部分に、俺のを当てるように」
うなずく頭の動きで、巴は幸直のモノを愛撫する。
幸直は手を伸ばして、巴の頭を支え。彼の上顎で、突端をこするように動かす。
上顎のぼこぼこした感触が、敏感な突端を刺激し。腰を突き上げたい衝動に駆られる。
「ん、ん、んん…」
でも、巴が苦しげな吐息を鼻から漏らすから。
我慢我慢。
飲み込めきれない唾液が、茎をツッと伝い降りる。その些細な感触にも、幸直は奥歯を噛むほど感じた。
「あぁ、いい。巴、こっち見て」
剛直を咥えたまま、巴は幸直に視線を送る。
重めの目蓋が、上目遣いで開き、可愛い顔。
情欲に濡れる黒真珠の瞳、色づいた唇に包まれた己のモノ、目に見えるすべてが、淫猥で刺激的だった。
幸直は支えていた手で、巴の頭を上げさせた。
「ん、ぁ…幸直っ」
美味しいものを取り上げられた、みたいな声を巴があげる。
なにそれ、愛おしすぎるっつうの。
大丈夫、一番の御馳走を取り上げたりはしないから。
「先走りを、舌で舐め取って。先端ばかりじゃなくて、根元から全部、愛して?」
「ん、わかった」
唇をいつものへの字にして、小さくうなずくと。巴は再び、剛直にむしゃぶりついた。
もう、可愛いっつうの。
両手で剛直を支え持ち、垂れた唾液も、己の蜜液も、丁寧に舐め取って。舌先をとがらせて根元を突くように刺激したり、繊細な指の動きで撫でさすったり。
「あふれるの、吸い取って」
舌でペロペロして先走りを拭った巴は、先端に吸いつき。口を離すときに、チュポッと音をさせる。
それを何度か繰り返されると、たまらなかった。
腰の奥から、なにかが吸い出されるような感覚。
その鮮烈な性感に、没頭してしまう。もう、限界が近かった。
「舌を動かすのも忘れないで…あぁ、いい。巴、イくよ」
言うと、巴は。再び剛直を口に迎えた。充分に高まり切っていた幸直は、巴の上顎に少し己をこすりつけるだけで、極めてしまう。
勢いよく、巴の口の中に精をほとばしらせた。
「んん…んっ、んっ」
剛直を含んだまま、巴は精を嚥下した。
放出の体感に、幸直はいつも至福を味わうが。それは、巴の愛に包まれているからだ。
飲み込めきれずに、こぼした白濁も。すべて綺麗に舐め取っていく。その巴の行いに、幸直はひしひしとそれを感じた。
「おいで、巴」
両手を広げて誘うと、巴は、はにかんだ笑みを見せ。幸直の胸に飛び込んだ。
巴の頬に飛ぶ己の白濁を、幸直は親指で拭い取り。感謝のキスを顔中に散りばめる。
「巴、俺のこと、愛してくれて、ありがとう。嫌じゃなかったか?」
「嫌なことなどあるわけない。僕は幸直の、どんな顔も見たいんだから。口に含んでいくときの、期待に輝く目も。僕に煽られて、情欲にゆるむ頬も。快感を噛みしめて耐える、野性的な顔も…」
巴は幸直の頬を両手で包んで、いかにも愛おしげに微笑んだ。
「でも、いつも達するときの顔は、見れないんだ。今も、幸直に頭をおさえられて、見れなかった」
巴は、それほど表情豊かではないのだが。あからさまに、シュンとしているのはわかる。
そんなに?
「そんな、まぬけな顔、見られたくないんだが」
あの瞬間は、顔を作ることなどできないから。絶対にアホみたいな顔をしてるに違いない。
己の顔が好きだと言う巴に、見せたい顔ではないな。
「イくときは、僕も一緒のことが多いから。いつも目をつぶって、見れない」
「じゃあ、いつも一緒に達するようにしてやる。絶頂のときの顔など、屏風にされたらかなわない」
幸直が言うと、巴は少し残念そうに、眉尻を下げる。
おい、まさか。己の顔を屏風に残す気じゃないだろうな?
「俺の春画を作るのは禁止だぞ」
「…一番好きなのは、僕を組み敷くときの、ギラギラした目つきの顔だ。その美しい顔に、人間味と、生命力が乗る瞬間が。いいのだが?」
巴が、自分の下着を脱いで、誘うから。
幸直は胸を躍らせ、巴を甘やかに抱き締める。
「いいよ。じゃあ、翼を開いて。俺に全部ちょうだい」
枕を積み上げた上に、今度は巴が翼を開いてあおむけになり。両手を差し伸べる。
「すべて、君のものだよ。幸直」
不敵にニヤリと笑い、幸直は巴のすべてを奪うべく、彼を組み敷いた。
「今度は、イく顔、見れると良いな?」
見せるつもりはないけどな、と思いながら。幸直は巴にくちづける。
ふたりの夜は、これからだ。
視察という名で、本拠地を出て行った青桐たちを。堺の屋敷の前で見送った、幸直と巴は。堺の家令に告げた。
「今日は俺たちも、自分の屋敷に戻る。主のいない屋敷に泊まるのは、肩身が狭いからな」
家令は承りましたと頭を下げ。
そして幸直たちは、いつもどおり指令本部に行く。
青桐たちがいなくても、書類は待ったなしだ。
夕方まで、みっちり机に張りついて仕事をし、日暮れ前に終える。
指令本部から屋敷までの道のりは、それなりにある。なので、馬に乗って帰宅するわけだが。
特に体を動かしたわけでもないのに、疲労を感じる体を、馬の上で伸ばしてほぐす幸直に。並列で馬に乗る巴が聞いてきた。
「幸直、今日は…」
堺の家に帰らないのなら、これからどうするのだ? と巴は聞きたいのだろうと、幸直は思った。
「俺の家に来いよ、巴。邪魔者のいないところで、ゆっくり甘えさせてもらうから」
「それもいいのだが。今日は、僕の屋敷に来ないか? もてなしをさせてくれ」
「巴のもてなし、というと…酌をしてくれるとか? 膝枕とか? 風呂で体洗ってくれるとか?」
周りには誰もいないが、馬を少し寄せて、幸直はひっそりと囁く。
巴は、それに苦笑いだ。
「まぁ…してもいいが。絵を見てもらおうと思って」
幸直は、その言葉に目を輝かせた。
年末に、ちらりとだけ見たが。それ以後、幸直は巴の絵を見たことがない。
絵を描いていたというのも、年末に初めて知って。この前、紫輝との話の中で、巴が絵を描いて暮らしたいという望みを持っていることも、そのとき初めて知ったのだ。
「わぁ、見る見る。この前は、あまり見せてもらえなかったから、気になっていたんだよぉ」
「あれは途中だったから。半端な絵は見せたくないんだ」
「俺は、自分では描かないが、美術品などは、それなりに見てきたから。目は肥えているぞ。巴、大丈夫か?」
「さぁ、僕は胸の中にあるなにものかを、吐き出したいから、描いているだけだ。ま、評価は存分にしてくれ」
どんな絵が見られるのだろうと、幸直はわくわくして。巴の屋敷に、馬の頭を向けたのだ。
★★★★★
久しぶりに、自分の屋敷に戻った巴だったが。留守中も、使用人が屋敷を綺麗に整えてくれていた。
幸直をもてなす料理や用意を頼んで。巴は幸直を、絵の仕事部屋へ案内した。
紙に描く鉛筆画や墨絵は、その気になったときにサッと描けるので、膨大な量があるが。幹部にもなって、金銭に余裕ができたので。掛け軸や屏風などにも、絵を描くようになっていた。
題材は、もっぱら、幸直が持ってきた季節の花々や。今まで目にしてきた、雄大な自然風景だ。
部屋に入ってすぐ、幸直の目に飛び込んだ、大きな屏風に描かれていたのは。
綺麗な百合の花だった。
屏風は二枚、または複数枚の縦長の板に丈夫な紙を貼りつけた、風よけの道具だが。
幸直が目にしているのは、横長の、腰高屏風に描かれた、一枚絵である。
用途は寝台の目隠しや部屋の仕切りだが、おおよそ美術品扱いだ。
「うわぁ、すごく綺麗だな。立体感が。なんか、花びらの質感とか、茎とか、触れそうだ」
絵に、手で触れてはいけないことくらいは、わかっているので。しないが。本当に、飛び出て見えるほどに、そのものが、そこにあるように目に映った。
それは、今まで見た絵画の中の、どれとも違う。そして明らかに玄人以上の、質と出来だった。
「幸直が、僕に初めてくれた花だった。そのときの感動を残しておきたくて、すぐに絵にしたのだが。物足りなくて、屏風にしてしまった。気に入ったなら、幸直の屋敷に送ってやるが?」
「でも、巴が欲しくて作ったのだろう?」
「僕は、いくつでも描けるから」
「本当に? じゃあ、貰おうかな。巴の絵を、毎日見て暮らせるなんて、最高だ。それにこの百合は、巴の立ち姿に似ていると思って贈ったものだから、なんとなく、そこに巴が立っているようにも見えるよ」
幸直の言葉に、巴はポッと頬を赤らめた。
「そういうふうに言われると。なんだか気恥ずかしいな」
「ダメダメ、この屏風は、もう俺のものだから。ちゃんと、送ってくれ。あ、名も記してな」
「あぁ。じゃあ、幸直が僕の、初めてのご贔屓さんだな」
巴の作品を、己が一番に手にできるのも、嬉しいことだが。
あの、ドキドキしながら巴に贈った花束が、いまだ絵の中に色鮮やかに残っているのを知り。
幸直は超感動したのだった。
★★★★★
風呂では、巴に、髪も体も丁寧に洗ってもらい。その細い指先の動きを、堪能した。
石鹸は高級品で、普段は使用しないが。手に泡を作り、肩や胸を撫でるように、巴が繊細な手つきで洗ってくれる。
湯けむりの中、巴の一重の目蓋が、妖艶に見え。誘われるように、くちづけた。
胸と胸を合わせて、鼓動を重ね。ゆるりと動いて、互いに泡をこすりつけ合う。
波に漂うような心地よさの中に、性感の愉悦が生まれ。互いの局部も、張り詰めてくる。
「ん、んぅ…」
唇を離さないから、鼻から艶声が漏れた。
ぬるりとした局部の刺激に、巴はお尻をくねらせて逃げるが。幸直は臀部を力強く掴んで。逆に、巴の屹立に剛直を押しつける。
その淫猥な享楽に酔いしれ。腕の中で巴が身悶えるサマを、長く、目で楽しんだ。
舌を絡める、くちゅくちゅとした音と。泡がはじける、にゅるにゅるとした音が。ふたりを高ぶらせ。精を吐き出すまで、その淫靡な音と甘い吐息が、浴室に響いていた。
風呂上りは、浴衣と丹前という楽な格好になり。夕食で酌をしてもらい。自分も巴に、酒を注いで。ほろ酔いの良い気分になって。
御馳走を堪能したあと、巴の部屋に、ふたりで入った。
今は、寝台の上で膝枕をしてもらっているところだ。
あぁ、なんていう至福の時間。手厚いおもてなしに、幸直は御満悦だった。
「ここは、天国か、楽園か。なぁ、巴。明日の仕事は休みにして、一日中、寝台の中で過ごそうぜ?」
「駄目だよ、幸直。それでなくても、上司が不在なんだ。幹部が誰もいない状況は、作り出せない」
「もう、真面目だな、巴はっ」
幸直は巴の胴に腕を回し、腿に頭をすりつける。
年末、巴に膝枕してもらってから、常々、もう一度体験したいと思っていたのだ。
究極に、甘え倒しているという感覚になる。
そして、その甘えを、許されている。それが心地いいのだ。
「その代わり、彼らが帰ってきたら、休暇を貰おう。外に遊びに出てもいいし。二日間、寝台にこもってもいい」
「なにそれ…最高じゃん。そうしよう。よし、明日も仕事するぞ」
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だが、それはそれ、これはこれだ。
「じゃあ、今日は。なにして遊ぶ?」
巴の浴衣の帯をほどきながら聞く、幸直の問いに。艶事の意味合いがあるのは、わかっている。
「風呂でも充分盛り上がったのに、まだご所望ですか? ご主人様」
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怒って、そうは言うけど。幸直は自分の浴衣を寝台の下に投げ捨てながら、巴を組み敷くのだ。
「…命令じゃないけどぉ、口で、してくれるか?」
幸直は、巴の唇に人差し指を当てる。
その柔らかい唇の弾力を楽しみ。口の端から口の端へ、なぞるように行き来させてから、下唇をめくって、指を口腔に差し入れる。
言われる前に、巴は、幸直の指先にチュッと吸いついて。舌で指先を包むように舐め撫でる。
命令でも、命令でなくても、巴は幸直の要望にはなんでも従うつもりだ。
「初めて会ったときから、思ってた。柔らかそうな唇だって。巴に咥えてもらったら…夢心地になるだろうって」
チュプと音をさせて、幸直の指を離し、唾液を舌先で拭うと。
巴は幸直を、熱くみつめた。
「夢を壊したら、すまない。でも、最善を尽くすよ」
枕をいっぱい詰んだ上に、一糸まとわぬ幸直を寝かせる。
少し上半身が起きた状態で、立てた足の間に、巴は体を入れ込んだ。
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幸直は、歯を立てられたわけでもないが、少しひやりとする。
でも、巴が唇で揉むようにしながら、舌でなぞり上げていくのを見て。ぞくぞくと官能が湧き上がってくる。
落として、上げられ。逆に敏感になるみたいな。
突端にたどり着いた巴の舌先が、己の雁首を熱心に舐めるから。快感がどんどん襲い来る。
ヤバい。全く躊躇することなく、飴玉を味わうみたいに、巴はつるりとした幸直の先端を、チュプチュプといやらしい音を立てながら、舐めしゃぶった。
そして蜜口に舌先を入れ込む。
「く…ぅ」
そこは、マジで、ヤバいって。声、出る。
だが巴は、幸直が反応したことに気を良くして、微笑みさえ浮かべながら、そこを重点的に攻めてくる。
いつも、弱いところを攻められているから、お返しのつもりか?
でも。そうはいかない。
「巴、口を開けて…含んで」
言われるとおり、巴は、あの柔らかい唇をおずおずと開く。歯を当てないよう、先端をムニュッとした感触の唇で優しく覆い、ゆっくりと剛直を咥えこんでいった。
枕と己の体の間に挟まる翼が、ビビビッとなる。
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視界の暴力。破壊力が半端ない。
「…っ、頭を動かして、口の中の柔らかい部分に、俺のを当てるように」
うなずく頭の動きで、巴は幸直のモノを愛撫する。
幸直は手を伸ばして、巴の頭を支え。彼の上顎で、突端をこするように動かす。
上顎のぼこぼこした感触が、敏感な突端を刺激し。腰を突き上げたい衝動に駆られる。
「ん、ん、んん…」
でも、巴が苦しげな吐息を鼻から漏らすから。
我慢我慢。
飲み込めきれない唾液が、茎をツッと伝い降りる。その些細な感触にも、幸直は奥歯を噛むほど感じた。
「あぁ、いい。巴、こっち見て」
剛直を咥えたまま、巴は幸直に視線を送る。
重めの目蓋が、上目遣いで開き、可愛い顔。
情欲に濡れる黒真珠の瞳、色づいた唇に包まれた己のモノ、目に見えるすべてが、淫猥で刺激的だった。
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「ん、ぁ…幸直っ」
美味しいものを取り上げられた、みたいな声を巴があげる。
なにそれ、愛おしすぎるっつうの。
大丈夫、一番の御馳走を取り上げたりはしないから。
「先走りを、舌で舐め取って。先端ばかりじゃなくて、根元から全部、愛して?」
「ん、わかった」
唇をいつものへの字にして、小さくうなずくと。巴は再び、剛直にむしゃぶりついた。
もう、可愛いっつうの。
両手で剛直を支え持ち、垂れた唾液も、己の蜜液も、丁寧に舐め取って。舌先をとがらせて根元を突くように刺激したり、繊細な指の動きで撫でさすったり。
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腰の奥から、なにかが吸い出されるような感覚。
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「舌を動かすのも忘れないで…あぁ、いい。巴、イくよ」
言うと、巴は。再び剛直を口に迎えた。充分に高まり切っていた幸直は、巴の上顎に少し己をこすりつけるだけで、極めてしまう。
勢いよく、巴の口の中に精をほとばしらせた。
「んん…んっ、んっ」
剛直を含んだまま、巴は精を嚥下した。
放出の体感に、幸直はいつも至福を味わうが。それは、巴の愛に包まれているからだ。
飲み込めきれずに、こぼした白濁も。すべて綺麗に舐め取っていく。その巴の行いに、幸直はひしひしとそれを感じた。
「おいで、巴」
両手を広げて誘うと、巴は、はにかんだ笑みを見せ。幸直の胸に飛び込んだ。
巴の頬に飛ぶ己の白濁を、幸直は親指で拭い取り。感謝のキスを顔中に散りばめる。
「巴、俺のこと、愛してくれて、ありがとう。嫌じゃなかったか?」
「嫌なことなどあるわけない。僕は幸直の、どんな顔も見たいんだから。口に含んでいくときの、期待に輝く目も。僕に煽られて、情欲にゆるむ頬も。快感を噛みしめて耐える、野性的な顔も…」
巴は幸直の頬を両手で包んで、いかにも愛おしげに微笑んだ。
「でも、いつも達するときの顔は、見れないんだ。今も、幸直に頭をおさえられて、見れなかった」
巴は、それほど表情豊かではないのだが。あからさまに、シュンとしているのはわかる。
そんなに?
「そんな、まぬけな顔、見られたくないんだが」
あの瞬間は、顔を作ることなどできないから。絶対にアホみたいな顔をしてるに違いない。
己の顔が好きだと言う巴に、見せたい顔ではないな。
「イくときは、僕も一緒のことが多いから。いつも目をつぶって、見れない」
「じゃあ、いつも一緒に達するようにしてやる。絶頂のときの顔など、屏風にされたらかなわない」
幸直が言うと、巴は少し残念そうに、眉尻を下げる。
おい、まさか。己の顔を屏風に残す気じゃないだろうな?
「俺の春画を作るのは禁止だぞ」
「…一番好きなのは、僕を組み敷くときの、ギラギラした目つきの顔だ。その美しい顔に、人間味と、生命力が乗る瞬間が。いいのだが?」
巴が、自分の下着を脱いで、誘うから。
幸直は胸を躍らせ、巴を甘やかに抱き締める。
「いいよ。じゃあ、翼を開いて。俺に全部ちょうだい」
枕を積み上げた上に、今度は巴が翼を開いてあおむけになり。両手を差し伸べる。
「すべて、君のものだよ。幸直」
不敵にニヤリと笑い、幸直は巴のすべてを奪うべく、彼を組み敷いた。
「今度は、イく顔、見れると良いな?」
見せるつもりはないけどな、と思いながら。幸直は巴にくちづける。
ふたりの夜は、これからだ。
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最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
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