136 / 159
94 助けてよぉ
◆助けてよぉ
青桐は、己が乗ってきた馬を引き、堺の屋敷までの道中を、堺と手をつないで歩いている。
堺は捕縛されたから、長い道のりを歩かされたのだ。
ある意味、市中引き回しのような辱めを受けたわけだが。朝早かったため、目撃者はそれほどいなかった。
それは幸いだったが。噂にはなってしまう。
幹部が捕縛というのは、それほどに体裁の悪いことだった。
「ほんと、間違いでした、じゃ済ませられないよな。紫輝の声明と一緒に、こちらも間違いだったと知らしめたい」
双眸をすがめて、青桐は憤るが。
通常運転の能面顔である堺は、穏便にしたい様子だ。
「ですが、知らぬ者にまで話が通るのも、良くないかと。それに、釈放されたので。私はそれでいいです」
堺は、青桐の手をキュッと握る。
地下牢で、紫輝と話したことを、青桐にも言うべきだと思って。口を開いた。
「今回のことは、避けることのできない事態でした。あの場で抵抗したら。青桐様も私も、将堂軍にいられなくなったでしょう。あれで、良かったとは思っているのです。でも、私の命は青桐様のもの。貴方の許しなく、自分の命を軽んじてしまったことは、お詫びいたします」
「堺は、今日のようなことが起きると、わかっていたんだろう? 燎源が来たとき、あわてず騒がず、彼に従った。予期していたとしか思えない。事前に教えてくれていたら、対処法をふたりで考えることもできたのに」
少し恨みがましい目で、青桐は堺を見やる。
彼にとっては、堺が奪われたことこそが痛恨の極みだったから。
「金蓮様は、お許しにならないと、わかっていたのです。乗り越える術などないと、思っていました。だから、青桐様には言えなかった。金蓮様が私を手討ちになさる、そのときが。私と貴方の、別れのときだと…」
「堺、そんな…死を覚悟していたというのか?」
「それでも、青桐様と、ともにいたかったから。燎源に連れて行かれる、一秒前まで、私は幸せでした」
堺はとても満ち足りた顔をしている。
青桐の腕の中で、安寧の中で、目を閉じる。あの顔と同じに。
でも、青桐は我慢ならなかった。
その顔で、金蓮に討たれて死にゆく堺を想像してしまっては。
憤怒の炎が、腹の内で燃え盛るのを、おさえられない。
「っ、馬鹿な…」
奥歯を噛み締め、血がにじむほどに噛み締め。青桐は吐き捨てた。
「えぇ、本当に。私は、愚かだった。もっと、抗わなければならなかった。青桐様に、助けを求めなければならなかった。地下牢で、紫輝に、さんざん怒られてしまいました」
堺は怒る青桐に向き合うと、その場にひざまずき。
しっかりとつないでいた手を、そのまま口元へ持っていき。キスした。
「愛しています、青桐様。心も、体も、この命さえも。貴方の許しなく、失することはない。私のこの身が滅びるときは、必ず貴方の目の前で。唯一の主である貴方に、すべてを捧げると誓います」
「それは、もしも、兄上に…将堂の当主に死ねと言われても、抗ってくれるということだな? 決して、堺の命を、他人に渡さないということだな?」
「はい。貴方の、龍ですから」
青桐にうながされ、堺は立ち上がる。
ここが外でなかったら、すぐにも抱き合いたいくらい、気持ちが高まっていたが。
ただただ、ふたりは熱くみつめ合っていた。
「おーい、青桐、堺ぃ」
すると、後ろから紫輝の声が聞こえた。
馬に乗って、大和と一緒に、こちらに駆けてくる。
青桐は、眉間にしわを寄せた。空気の読めない、黒猫耳めっ。
「良かったよぉ、追いついたよぉ。右の執務室に行ったら、幸直と巴は通常業務してたけど、ふたりは帰ったって言うから。お願いがあるんだ。今日はいっぱいアドリブ入れちゃったからさ。あのときなんて言ったか、とか。月光さんの検証に、付き合ってほしいんだよ。頭に血がのぼってて、なに言ったか、うろ覚えなんだよぉ。助けてよぉ」
馬を降りた紫輝に、拝み倒されるけれど。
青桐は不満げに口を結ぶ。
だって、すぐにも堺と愛を確かめ合いたかったから。
でも、朝一で捕縛されたので、今はまだ昼前なのだ。
たぶん、堺は応じない。だろうけど。
「それにさ、俺がいない間、青桐が金蓮になにを言っていたかとかも、おさらいした方がいいと思うんだ。計画のことを、ほのめかさなかったか、とか。月光さんに精査してもらった方がいいよ」
紫輝は誰にも聞こえないように、青桐の耳元にこっそりと囁く。
確かに、己が足を引っ張るわけにはいかない。
堺との未来のためにも。
「わかった、付き合ってやるよ。堺もいいな?」
すると、堺は珍しく、目をキラリと輝かせた。
「はい。紫輝の武勇伝を、青桐様にも聞いていただきたいです。私、いっぱい話します」
心強いけど、盛らないでくれよ、と。紫輝は胸のうちで思った。
「時雨将軍は、この馬にお乗りください。俺は紫輝様と相乗りいたします」
大和の申し出に、堺はうなずいた。
青桐の馬に相乗りしてもいいのだが、堺も青桐も大柄なので、青桐の牝馬にふたりで乗るのは重量オーバーなのだ。
それに、あらぬ疑い…でもないけれど。嫌疑をかけられたあとで、ふたりが密着する場を、公に見せるのも良くないので。自重していた。
その割には、手をつないで歩いてはいたが。
そこは互いにあふれる想いがあったから、仕方がないのだ。
紫輝は小柄だし、黒馬のミロは足腰のどっしりとした、安定感のある馬なので。大和が相乗りしても屁でもない。なにせ、いずれ天誠が紫輝と相乗りしたいという思惑で、プレゼントした頑丈な馬なのだ。
というわけで、残りの道中は馬に乗って、四人は堺の屋敷へと帰って行った。
堺の屋敷では、家令さんや働き手の人たちが、当主の捕縛という大事に右往左往していたけれど。
堺の顔を見て、みな、一様にほっとした顔つきを見せた。
「すまない、心配をかけて。どうやら勘違いがあったようで。無罪放免になりました」
「それは、なにも変わらないということですか? 降格も謹慎もなしですか?」
「はい。なにも変わりません」
家令の質問に、堺がしっかりうなずいたので。
使用人たちは、本当に落ち着いて。自分の仕事に各々戻っていった。
紫輝たちは囲炉裏の間に入り、お茶を出してもらったりした後、人払いをした。
ライラを出すので。
「それにしても、ほんと、間に合って良かったよ。金蓮がその場で手討ちにしていたら、救出なんかできなかったからな」
ライラを呼び出した紫輝が、青桐たちに言う。
「それは、巴が助言してくれて。処分の決定権のある兄上をおさえておけば、最悪の事態にはならないと。とにかく、堺に非はない、なにかの間違いだという方向で押すべきだと。で、堺が指令本部につく前に、兄上をおさえて。その場でどうこうは、阻止できたわけ」
「すごいな、巴は。巴さまさまだ」
紫輝は両手を合わせてナムナムと、目の前にいない巴を拝んだ。
「傷害罪に当たらなかったのも、幸運だったな。金蓮は…藤王が溺愛する堺を、目の敵にしている。藤王は金蓮よりも、堺を愛していた。それが、気に食わないのさ。なにか不手際があれば、手討ちにできる。ずっと、その機会を、虎視眈々と狙っていたのだろう。今回は、あの元家令が騒いだことで、ろくに背景を調べないで、本拠地に乗り込んできたんじゃね? 青桐を犯し、傷つけた、将堂家に仇なした龍鬼を成敗するという、免罪符を手に入れたと思い。勢い勇んで」
紫輝は、金蓮の詰めの甘さを、首をすくめて揶揄する。
後先考えないで動くから、こういうことになるんだぞ。
「ところが、ふたを開けたら。青桐が堺を抱いていたもんだから。傷害もなく、悪意もなく、叛意もなく。だから、将堂の血脈を穢したなんて、手討ちにするにはヨワヨワの理由しか残っていなかった。もしも堺が攻めだったら、ヤバかったかもな?」
「せめ?」
「挿入する方。挿入される方が受け」
「あぁ、旦那と嫁か」
「まぁ…そんな感じ」
厳密には、結婚関係でなくても、そう言うっていうか。
三百年前は、正式に結婚関係が結べなかったから、そんな感じだったわけで。
この世界では、まぁ、いいか。
「堺が攻めだったら、誰がどう言っても、犯したってまくし立てて、強行で手討ちもあったかも。だが、今回は切り抜けたが。金蓮が堺を目の敵にしているうちは、安心はできないから。まだまだ慎重に行かなければならないな」
ライラを通し、堺は、向こう側にいる月光と赤穂に、一生懸命、紫輝の武勇伝を話している。
兵を倒す紫輝が格好良かった、自分は紫輝に救われた、という話。
そんな堺を見つつ、紫輝は青桐に話しかけた。
「なぁ、青桐。堺の望みは、ただひとつ。青桐のそばにいさせてという、ほんの些細なものだった。地位も名誉もお金も、自分を豊かにするものはいっぱいあるけど。堺の心を豊かにするのは、青桐だけみたい。だから。堺にもっと、溺れるくらいの愛を教えてやって? 自ら欲しがるような。狂おしく抱き締めたくなるような。青桐に愛されることが、自分の幸せなら。それを末永く望むような。絶対離してやらないと、堺が我を張るくらいの、強い気持ちを持つような、ね?」
「はは、俺をおさえつけて求めてくるような、激しい堺は。今は考えつかないけど。そうなるよう努力するさ。そんな堺を、俺も見てみたい」
堺は、愛をみつけた。
それは素晴らしいことだと、紫輝は思う。
でも、もう一段、階段を登って。今度は、ふたりで幸せになることを、望んでほしいんだ。
だって、愛はふたりで育むんだ。
ふたりでいるんだから、愛し合わないと。
堺だけが、愛を与えるんじゃなくて。
ふたりで歩調を合わせて、幸せに向かってもらいたいんだ。
青桐は、己が乗ってきた馬を引き、堺の屋敷までの道中を、堺と手をつないで歩いている。
堺は捕縛されたから、長い道のりを歩かされたのだ。
ある意味、市中引き回しのような辱めを受けたわけだが。朝早かったため、目撃者はそれほどいなかった。
それは幸いだったが。噂にはなってしまう。
幹部が捕縛というのは、それほどに体裁の悪いことだった。
「ほんと、間違いでした、じゃ済ませられないよな。紫輝の声明と一緒に、こちらも間違いだったと知らしめたい」
双眸をすがめて、青桐は憤るが。
通常運転の能面顔である堺は、穏便にしたい様子だ。
「ですが、知らぬ者にまで話が通るのも、良くないかと。それに、釈放されたので。私はそれでいいです」
堺は、青桐の手をキュッと握る。
地下牢で、紫輝と話したことを、青桐にも言うべきだと思って。口を開いた。
「今回のことは、避けることのできない事態でした。あの場で抵抗したら。青桐様も私も、将堂軍にいられなくなったでしょう。あれで、良かったとは思っているのです。でも、私の命は青桐様のもの。貴方の許しなく、自分の命を軽んじてしまったことは、お詫びいたします」
「堺は、今日のようなことが起きると、わかっていたんだろう? 燎源が来たとき、あわてず騒がず、彼に従った。予期していたとしか思えない。事前に教えてくれていたら、対処法をふたりで考えることもできたのに」
少し恨みがましい目で、青桐は堺を見やる。
彼にとっては、堺が奪われたことこそが痛恨の極みだったから。
「金蓮様は、お許しにならないと、わかっていたのです。乗り越える術などないと、思っていました。だから、青桐様には言えなかった。金蓮様が私を手討ちになさる、そのときが。私と貴方の、別れのときだと…」
「堺、そんな…死を覚悟していたというのか?」
「それでも、青桐様と、ともにいたかったから。燎源に連れて行かれる、一秒前まで、私は幸せでした」
堺はとても満ち足りた顔をしている。
青桐の腕の中で、安寧の中で、目を閉じる。あの顔と同じに。
でも、青桐は我慢ならなかった。
その顔で、金蓮に討たれて死にゆく堺を想像してしまっては。
憤怒の炎が、腹の内で燃え盛るのを、おさえられない。
「っ、馬鹿な…」
奥歯を噛み締め、血がにじむほどに噛み締め。青桐は吐き捨てた。
「えぇ、本当に。私は、愚かだった。もっと、抗わなければならなかった。青桐様に、助けを求めなければならなかった。地下牢で、紫輝に、さんざん怒られてしまいました」
堺は怒る青桐に向き合うと、その場にひざまずき。
しっかりとつないでいた手を、そのまま口元へ持っていき。キスした。
「愛しています、青桐様。心も、体も、この命さえも。貴方の許しなく、失することはない。私のこの身が滅びるときは、必ず貴方の目の前で。唯一の主である貴方に、すべてを捧げると誓います」
「それは、もしも、兄上に…将堂の当主に死ねと言われても、抗ってくれるということだな? 決して、堺の命を、他人に渡さないということだな?」
「はい。貴方の、龍ですから」
青桐にうながされ、堺は立ち上がる。
ここが外でなかったら、すぐにも抱き合いたいくらい、気持ちが高まっていたが。
ただただ、ふたりは熱くみつめ合っていた。
「おーい、青桐、堺ぃ」
すると、後ろから紫輝の声が聞こえた。
馬に乗って、大和と一緒に、こちらに駆けてくる。
青桐は、眉間にしわを寄せた。空気の読めない、黒猫耳めっ。
「良かったよぉ、追いついたよぉ。右の執務室に行ったら、幸直と巴は通常業務してたけど、ふたりは帰ったって言うから。お願いがあるんだ。今日はいっぱいアドリブ入れちゃったからさ。あのときなんて言ったか、とか。月光さんの検証に、付き合ってほしいんだよ。頭に血がのぼってて、なに言ったか、うろ覚えなんだよぉ。助けてよぉ」
馬を降りた紫輝に、拝み倒されるけれど。
青桐は不満げに口を結ぶ。
だって、すぐにも堺と愛を確かめ合いたかったから。
でも、朝一で捕縛されたので、今はまだ昼前なのだ。
たぶん、堺は応じない。だろうけど。
「それにさ、俺がいない間、青桐が金蓮になにを言っていたかとかも、おさらいした方がいいと思うんだ。計画のことを、ほのめかさなかったか、とか。月光さんに精査してもらった方がいいよ」
紫輝は誰にも聞こえないように、青桐の耳元にこっそりと囁く。
確かに、己が足を引っ張るわけにはいかない。
堺との未来のためにも。
「わかった、付き合ってやるよ。堺もいいな?」
すると、堺は珍しく、目をキラリと輝かせた。
「はい。紫輝の武勇伝を、青桐様にも聞いていただきたいです。私、いっぱい話します」
心強いけど、盛らないでくれよ、と。紫輝は胸のうちで思った。
「時雨将軍は、この馬にお乗りください。俺は紫輝様と相乗りいたします」
大和の申し出に、堺はうなずいた。
青桐の馬に相乗りしてもいいのだが、堺も青桐も大柄なので、青桐の牝馬にふたりで乗るのは重量オーバーなのだ。
それに、あらぬ疑い…でもないけれど。嫌疑をかけられたあとで、ふたりが密着する場を、公に見せるのも良くないので。自重していた。
その割には、手をつないで歩いてはいたが。
そこは互いにあふれる想いがあったから、仕方がないのだ。
紫輝は小柄だし、黒馬のミロは足腰のどっしりとした、安定感のある馬なので。大和が相乗りしても屁でもない。なにせ、いずれ天誠が紫輝と相乗りしたいという思惑で、プレゼントした頑丈な馬なのだ。
というわけで、残りの道中は馬に乗って、四人は堺の屋敷へと帰って行った。
堺の屋敷では、家令さんや働き手の人たちが、当主の捕縛という大事に右往左往していたけれど。
堺の顔を見て、みな、一様にほっとした顔つきを見せた。
「すまない、心配をかけて。どうやら勘違いがあったようで。無罪放免になりました」
「それは、なにも変わらないということですか? 降格も謹慎もなしですか?」
「はい。なにも変わりません」
家令の質問に、堺がしっかりうなずいたので。
使用人たちは、本当に落ち着いて。自分の仕事に各々戻っていった。
紫輝たちは囲炉裏の間に入り、お茶を出してもらったりした後、人払いをした。
ライラを出すので。
「それにしても、ほんと、間に合って良かったよ。金蓮がその場で手討ちにしていたら、救出なんかできなかったからな」
ライラを呼び出した紫輝が、青桐たちに言う。
「それは、巴が助言してくれて。処分の決定権のある兄上をおさえておけば、最悪の事態にはならないと。とにかく、堺に非はない、なにかの間違いだという方向で押すべきだと。で、堺が指令本部につく前に、兄上をおさえて。その場でどうこうは、阻止できたわけ」
「すごいな、巴は。巴さまさまだ」
紫輝は両手を合わせてナムナムと、目の前にいない巴を拝んだ。
「傷害罪に当たらなかったのも、幸運だったな。金蓮は…藤王が溺愛する堺を、目の敵にしている。藤王は金蓮よりも、堺を愛していた。それが、気に食わないのさ。なにか不手際があれば、手討ちにできる。ずっと、その機会を、虎視眈々と狙っていたのだろう。今回は、あの元家令が騒いだことで、ろくに背景を調べないで、本拠地に乗り込んできたんじゃね? 青桐を犯し、傷つけた、将堂家に仇なした龍鬼を成敗するという、免罪符を手に入れたと思い。勢い勇んで」
紫輝は、金蓮の詰めの甘さを、首をすくめて揶揄する。
後先考えないで動くから、こういうことになるんだぞ。
「ところが、ふたを開けたら。青桐が堺を抱いていたもんだから。傷害もなく、悪意もなく、叛意もなく。だから、将堂の血脈を穢したなんて、手討ちにするにはヨワヨワの理由しか残っていなかった。もしも堺が攻めだったら、ヤバかったかもな?」
「せめ?」
「挿入する方。挿入される方が受け」
「あぁ、旦那と嫁か」
「まぁ…そんな感じ」
厳密には、結婚関係でなくても、そう言うっていうか。
三百年前は、正式に結婚関係が結べなかったから、そんな感じだったわけで。
この世界では、まぁ、いいか。
「堺が攻めだったら、誰がどう言っても、犯したってまくし立てて、強行で手討ちもあったかも。だが、今回は切り抜けたが。金蓮が堺を目の敵にしているうちは、安心はできないから。まだまだ慎重に行かなければならないな」
ライラを通し、堺は、向こう側にいる月光と赤穂に、一生懸命、紫輝の武勇伝を話している。
兵を倒す紫輝が格好良かった、自分は紫輝に救われた、という話。
そんな堺を見つつ、紫輝は青桐に話しかけた。
「なぁ、青桐。堺の望みは、ただひとつ。青桐のそばにいさせてという、ほんの些細なものだった。地位も名誉もお金も、自分を豊かにするものはいっぱいあるけど。堺の心を豊かにするのは、青桐だけみたい。だから。堺にもっと、溺れるくらいの愛を教えてやって? 自ら欲しがるような。狂おしく抱き締めたくなるような。青桐に愛されることが、自分の幸せなら。それを末永く望むような。絶対離してやらないと、堺が我を張るくらいの、強い気持ちを持つような、ね?」
「はは、俺をおさえつけて求めてくるような、激しい堺は。今は考えつかないけど。そうなるよう努力するさ。そんな堺を、俺も見てみたい」
堺は、愛をみつけた。
それは素晴らしいことだと、紫輝は思う。
でも、もう一段、階段を登って。今度は、ふたりで幸せになることを、望んでほしいんだ。
だって、愛はふたりで育むんだ。
ふたりでいるんだから、愛し合わないと。
堺だけが、愛を与えるんじゃなくて。
ふたりで歩調を合わせて、幸せに向かってもらいたいんだ。
あなたにおすすめの小説
繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました
こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。
しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです…
本当の花嫁じゃないとばれたら大変!
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。