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【ろく:理想の大人に近付けない】
しおりを挟む一月六日。
今日は私の誕生日だ。
昔は誕生日プレゼントがもらえるから当然待ちわびたものだが、例年恐怖と焦燥が増してきた。
「三十……三十路……」
一切の実感がない。
小学生一年生の時、道を教えてくれた大学生のお姉さんを見て、なんて大人っぽいんだろうと。自分もあの年になれば自然と大人っぽくなるんだろうと考えていたが、そんなことはなかった。
私は私のままで、身長が伸びて体重が重くなって。大学生ではシミやニキビを気にして化粧をするようになったけど、憧れたお姉さんのようにはなれなかった。
頑張っても報われないことが増えて、理不尽に耐えなければいけないことも増えて、どれだけ心と言葉を尽くしても伝わらない、返ってこないことがあるのだと知った。
スマホが鳴って、友人二人から「誕生日おめでとう!」のメッセージをもらった。
日付けが変わったと同時にいくつも通知が来ていた時もあったのに、今はこの二人とあとは家族が言ってくれるくらいでおそらく終わる。
大人になるというのはそういうことだと母に言われた。
それぞれに新しい生き方があって、忙しくて疎遠になるのはわかる。
わかるけれど。
私の中ではずっとイコールにはならない。
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