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朝だ。
コルルル、と目覚ましの転がるような音を耳にしながら、楓は目を開いた。
カーテンの外は電飾の明かりが漏れており、いつもよりずっと……陽が昇るよりも早くに目が覚めたのだと伝えている。それもそのはず、今日から新しい仕事が始まるのだ。
まだ鳴り続ける目覚まし時計を手を伸ばして止めると、のろりと彼女は起き上がった。
シャワーに入り、朝食を食べて、ニュースを見ながら準備をする。社員証は昨日貰った。財布や免許証などを忘れずに鞄に入れて、両手に柔らかな白手袋を履くと、最後に鏡を見て身なりを確認し、玄関に向かう。
扉を開くと途端に表通りの賑やかな音が耳に飛び込んで来る。それから、ビルの外の空に飛んでいくカラフルな風船の色も。目に痛いほどに鮮やかなそれを視界から追いやって楓は扉を閉じるとノブを捻った。オートロックはかかるけれど、自分でもちゃんと締まっていると確認しないと座りが悪い性格なのだ。
エレベーターから下に降りる。内装も作りも平凡なエレベーターなのに微かに鳴っているサウンドはまるでパレードだ。このサウンドは政策で例えどのような場所でも公共施設ならば四六時中必ず鳴らす事が義務付けられている。それでも、まだ控え目な音量に管理人の良心が見て取れた。腕を組んで壁に凭れ地上に着くのを待ち、やっとで開いた扉から一階のロビーへ、エントランスを潜り外へ出る。
ビルの外はそれまでとは比べ物にならない。360°何処を見渡しても、ピンク、紫、ルビー、七色八色極彩色。ふわふわした形ときらきらした色とパレード音楽で溢れ返っている。
コットンピンク星。それがこの惑星のあだ名だった。本当の名前はβ-ドリーミング星というのだが、あだ名とさしたる違いはないだろう。
この星は、惑星を挙げて『少女趣味』を掲げており、何処を見ても乙女の夢を実現化した、という呼び込みの惑星だった。通りにはふわふわした服や小物やぬいぐるみを専門とする店が立ち並び、空にはカラフルな風船が飛び、頻繁にパレードがあり、飲食店に至ってもいっそ毒々しいほどに鮮やかな色をしたものばかり。とは言え、また別の区画はゴシックロリータをテーマとして黒とフリルと棘に溢れていたり、クールキュートをテーマとした区画は青色と緑色ばかりといった様相で全てがピンク色ではないのだが、それでもフワフワ・もこもこのコットンピンクがこの惑星の大半を占めていた。
観光惑星であるこの星で、楓は暮らしている。この星で働いている訳ではないし少女趣味でもないのだが、単純に母親が楓の幼い頃にここに引っ越して来たというそれだけだ。あのマンションの一室は買い取った母から楓の名義になっているし、楓が成人する前に母はこの惑星に飽きて別の星に移り住んでしまった。今は自然の多い惑星にいるが、週末の通話ではそろそろ別の星に行きたいと言っていた。居住星が気に入っている訳ではないが折角買った家なのだからと住み続けている楓とはまるで違う。親子だと言うのに楓と母の性格は全く似ていない。
気に入らなければ売っちゃって別の星に行けばいいのに。
母はそう言って笑ったが、それも気が進まない。別にこの星が嫌いな訳ではないのだ。
ふう、と溜息をつき、楓は星間ポーターが開くのを待った。
星間ポーターは名前の通りに星と星を繋ぐゲートのような施設で、巨大なポーターは有名な惑星にしかない。コットンピンク星もそのひとつで、移動に便利なポーターがあるのもこの星に住み続けている理由のひとつだった。
星間ポーターの本来の名前は亜速転移式銀河ステーションと言うが、やはりこれも正式名で呼ぶ者は余りいない。
ドア状の出入口が開き、顔を輝かせた少女たちの一群がぞろぞろと出て来る。学生かクラブの観光だろう、引率と思われる女性が最後に出て、一度出入り口が閉じた。その間に楓は表示板を仰ぎ見て行先を確かめる。それが間違っていないと確認した所でポーターの口が開いた。
行先は新アレクサンドリア。博物館や美術館が集まる、巨大な学術惑星だった。
ポーターの中は一本道の移動式通路のようになっており、規定として出口に辿り着くまで自身で歩く事は禁じられている。この通路をゆっくり進む間に外側ではとてつもない速度で星から星への距離を渡り歩いているのだ、『安全な速度』である移動式通路の速さを跨ごうという者は余りいない。噂では、学生がこの通路を走って渡ろうとしたら出口のゲートから踏み出した瞬間にミンチになったとか姿自体が消えてしまっただとか聞くが、真偽は定かではない。
楓は今日も規定通りにポーターを通り、普通にゲートから外に出た。するとそこはもう、学術惑星ネオ・アレクサンドリアの銀河ステーションだ。
歩きながら時計を見遣り、時間には間に合いそうだと息をつく。ここからはバスかライナーが出ているが、時間的にはライナーが良さそうだ。もう一度時計を確認してから、楓はライナー乗り場へと向かった。
ネオ・アレクサンドリアは図書館や博物館・美術館が集められた学術惑星であり、楓の新しい職場もまたこの惑星にある一つの博物館だった。名は、『第七彷徨博物館』。その通り第一を親施設として続く博物館の七館目にあたる施設だった。ちなみに彷徨博物館としては第七が末子にあたるらしい。
様々な博物館が並ぶこの惑星でもメジャー・マイナーは存在する。その中でも彷徨博物館はマイナーな施設で、楓もこの施設にスカウトされる前までは存在すら知らなかった。
彷徨博物館は元々、個人の私設博物館であった。博物館とも呼べない程の小さなそれは、星間をさまよいながら名も知られていない辺境の、それもこれから滅びゆく惑星の品を蒐集する、一台の渡航船だったのだ。船の主である変わり者の老人は数人の弟子だけを連れて私設博物館を称する私船で星々を飛び回っており、船を『彷徨博物館』と名付けて愛していた。老人の没後、船の老朽化と相まって旅を続ける事が困難になると弟子の一人がネオ・アレクサンドリアに寄贈を申し入れ、学術惑星の審査職員はこの船に蒐集された珍品の数々と船が辿った奇妙な道のりに驚き、手厚く迎え入れた。現在、老人が生涯愛したその船は修繕されて第一彷徨博物館として現物展示されている。
以降、彷徨博物館は学術的価値が浅かったり歴史が浅かったりと主流の学界から重要視はされないが他とは違う特色のある惑星の品や現象などの記録と蒐集展示を請け負う博物館となり、成り立ちや奇妙な展示物から愛好家もいるという少し変わった立ち位置の施設になっていた。最も、首都にあるような立派な文化施設の面々からは施設も職員も酔狂な一派だと嗤われているが、実のところこうした変わった施設は彷徨博物館だけに限らず、地方に行けば行く程に〝酔狂な〟施設や愛好家は多かったりもする。中には予算を受け取らず私財と寄付金だけで運営している所もあるという。彷徨博物館は中央委員会から予算は貰っている公共施設である分、マイナーな中でもマイナーメジャーと呼ばれる位置らしい、とか。
就職が決まってから調べた彷徨博物館の知識を頭で思い返しつつライナーから降りると、そこには綺麗に刈り揃えられた緑の芝生と、その向こうに白いパビリオンの四角い建物が見えて来た。
第七彷徨博物館は第一から第六がそうであるように、『滅びゆく惑星の品』を蒐集展示しており、現在は主に『アルビレオ』という惑星を担当しているらしい。アルビレオの仕事が終わると次の惑星に移り、第七の展示物が一杯になると第八が造られる、らしい。
……滅びゆく惑星の品。つまるところそれは、惑星の遺品の蒐集。楓の新しい仕事は、その手伝いだった。
「おはよう、楓ちゃん!」
職員連絡口からIDカードを通して中に入ると、ちょうど通りかかった女性がにこやかに声を掛けて来た。彼女は昨日オリエンテーションの担当でもあった人だ。楓はちょこりと頭を下げた。
「おはようございます、フレイアさん」
「うんうん、いい朝よね。今日から本格的にお仕事も始めて貰うから、少しずつ頑張っていきましょうね」
「はい」
「今から朝礼だから、一緒に行きましょう」
「はい」
鮮やかなオレンジ色の髪を肩口まで伸ばし、それを片方に括っている女性の名はイヴフレイアと言う。ここの博物館のキュレーターであり、柔和で人当たりの良い彼女はどこか人の警戒心を溶かしてしまうような安心できる雰囲気を纏っている。人見知りで物怖じする性格の楓も、フレイアとは少し会話をしただけで緊張が解けて、そんな自分に後から驚いた程だ。
「今日は午前にひとつのお仕事を任せるのだけれど……地味だってガッカリしないでちょうだいね」
困ったように笑うフレイアの言葉に楓は首を傾げた。そもそも、華々しく学会に論文を掲げるような場合でもない限り、博物館の職員なんてよほどでない限りは地味な仕事ではないだろうか。楓の疑問を感じ取ったのかフレイアは苦笑を深めた。
「楓ちゃんが想像してるよりずっと地味なのよ」
「はあ……」
でもそれは自分にとってはありがたい事でもあるのだけど、と楓は思いながらフレイアの後を追って事務所に入った。
事務所の自身に振り当てられた机に荷物を置き、ホールへと向かう。開館前の朝礼は全職員集まってそこで朝礼をするのが決まりだった。小さなホールには少数の職員しかおらず、この博物館の小ぢんまりとした規模を物語っている。
「皆揃ったかな。今日は病欠が一名、自宅待機が二名、館長は……いつものように不在なので私、副館長のメルクリウスが朝礼を行おう」
並ぶ顔を見ながら副館長のメルクリウスは溜息と共に宣言し、ぱらぱらと立ち並ぶ職員のうち、楓に目をやった。
「皆も聞いていると思うが、今日から我々と共に働く新人が入った。シュヴァンくんだ」
手で示されて、視線が集まる中で楓は小さく頭を下げる。
「……楓・Φ・シュヴァンです。宜しくお願いします」
へちへちと小さく拍手をするのは楓の隣の隣にいた男性の、その膝辺りの背丈しかない……スーツを着て後ろ脚で立つ黒猫だった。黒猫の肉球ごしの拍手に押されたのか隣の男性も小さく拍手をして、フレイアもにこにこと手を叩いている。むず痒いような感覚に困っていると、副館長はさっと話題を変えた。
「シュヴァンくんはしばらくの間、フレイアかクジについて貰おう。業務上の申し送りは特になし。皆、引き続き業務に当たってくれ。館長から連絡のあった者はすぐ私に知らせること」
「連絡があるとすれば私ですが」
「……君以外に言ってるのだよ、電話番」
しゅたっと黒猫が挙手して申し出るのに対し、副館長は更に溜息をつきそうな顔で付け足す。オリエンテーションで聞いた、ここの館長が神出鬼没でなかなか捕まらないという話は冗談ではなかったらしい。
「では、解散。今日も一日頑張りましょう」
ぱん、と副館長が手を叩き、同時に黒猫の頭を横にいたツナギ服の青年がちょいと突く。
「おまえ以外に連絡を入れるって可能性もあるって事だよ、白靴下」
「私に電話をするのが一番早いのにですか? イタチ、それは現実的ではありませんね」
「屁理屈猫だなぁ。……あ、フレイアさん、これ」
頭を突かれた黒猫がツナギの青年……イタチの手を払いのけ、イタチはそれに構わず黒猫の頭をわしゃわしゃと撫でた後で顔を上げフレイアに小箱を渡して来た。
「えーと、シュヴァンさん? あんたに今日からお願いする仕事だ。頼むな」
「は、はい」
「イタチくん、確かに受け取ったわ。ありがとう」
「うっす」
頷く青年は薄い茶色の髪を手ぬぐいで頭巾のように巻き、薄汚れたツナギに手袋という出で立ちをしている。彼は博物館技師であり、展示品の保存や処理を一手に請け負い、持ち込まれた品の鑑定までこなすという職人だった。彼が『白靴下』と呼んだのは子供ほどの大きさの黒猫で、ヴ・ヴィという種族である。つま先だけが白く他の体色は黒一色で、そのためにそんなあだ名で呼ばれているのだろう。イタチ以外からは専ら『電話番』と呼ばれているようで、『白靴下』はイタチしか呼んでいないようである。彼は『電話番』の通りに外部からの連絡の送受信の担当であり、ヴ・ヴィという種族は髭をアンテナのように使い銀河系丸々一つカバー出来るという程の超伝達能力を持つ者達だった。
副館長のメルクリウス、キュレーターのフレイア、博物館技師のイタチ、連絡係の電話番、それからもう一人。朝礼の間もずっと口を開かず静かに佇む、深い青色の髪を持つ男性。フレイアと同じくキュレーターのクジという男性で、彼は必要がなければ特に話もせず関わりもしないという性格であるらしい。良く言えばクール、悪く言えば冷淡に見えがちな印象だが、楓も大勢と広く関わるのは得意な方ではないのでクジの対応は逆にありがたかった。
彼らと、そして楓。それが現在この博物館にいる職員だった。病欠と自宅待機の職員もいるが、現場職員はこれだけである。自宅待機職員のうち一人であるシノという女性はオリエンテーションの時に通信機ごしに挨拶をした。彼女は知識は豊富であるが身体が弱く病がちであるために必要があれば自宅から通信機ごしに来客の対応をするという形態を取っているらしい。
朝礼後に事務所に戻ると、フレイアが小さな箱を楓に差し出した。イタチから渡された箱だ。目線で問いかけるとフレイアは微笑んで頷いたので、箱の蓋を開く。箱の中には、上質な紫のシルク生地に乗せられた銀色の鍵が収まっていた。
「鍵、ですか?」
「そうよ。楓ちゃんの今日の仕事……というか、当面の間かしら。朝一番にやって貰うのは、この銀の鍵を磨くこと」
「……鍵を?」
確かに鍵は多少錆び付いているが、磨くだけでいいのだろうか。疑問に首を傾げていると、フレイアはうんうんと頷く。
「そう、ただ磨くだけ。まだ素手で触らないでね。……冗談だと思うかもしれないけど、その鍵は気まぐれでね。放っておくとすぐに全部錆びるし、気に食わないとやっぱり錆びるの。特に機嫌を損ねると形まで変えちゃうのよ。……イタチくんとクジくんはそれでこの子にすっかり嫌われちゃって」
ふふ、と笑うフレイアに冗談なのかどうかの判別がつかず、楓は困ってしまう。とりあえず、と別添えのシルク生地を手渡され、
「宜しくね。私は隣で作業をしているから、解らない事があれば何でも聞いて」
「……はい」
頷き、何であれこれが初仕事なのだと、楓は鍵に向き合った。……見れば見る程に普通の鍵だが。この鍵自体が生きているかのように、えり好みをするという。疑問に思う事はまだあるが……ひとまず、シルク生地を手に取り楓は鍵磨きを始めた。
無心で鍵を磨き続ける事二時間、あらかたの錆を落とし終えた所で楓はふうと一息をつく。実の所、こうして地味で地道な単純作業は嫌いではないのでさして苦痛にも感じなかったが、さすがに目と手首が多少辛くなって来た。
「――あら、凄いじゃない! こんなに綺麗になるなんて」
隣のフレイアも気付いたのか楓の持つ鍵を見て声を上げる。
「そ、そうですかね……?」
そこまで感嘆されるような事ではないし、新人の自分に気を使ってくれたのだろうか、と楓が卑屈めいた事を思っていると。
「うっそ、マジで? これあのクソ鍵?」
後ろからそんな声も上がる。顔を向けるとそこには小ぶりの箱を抱えたイタチがいた。その出で立ちからすると、偶然に通り掛かったものらしい。彼はこの二時間の間にも頻繁に展示物や資料を運び込んだりしていたので、今回もそうだろう。
すげーすげーと本気で感心しているらしいイタチにフレイアがふふふと笑う。
「そうよ、あなたとクジくんがこぞって機嫌を損ねたあの鍵よ」
「それは……反省してますって。でも、いっそ調理油で磨いたらどうかって言いだしたのクジの奴なんですよ」
「さすがにあそこまで形を変えたのは電話番があれを踏んでお昼寝してた時以来だったけれど?」
「……安物の植物油のせいですかね。バターだったらあるいは」
「決して試さないでね?」
「ハイ」
イタチとフレイアの会話を聞いて、楓は恐る恐ると口を挟む。
「あの……もしかして、形を変えるって、本当に変わるんですか?」
楓の質問にフレイアは困ったように笑い、イタチは眉を寄せた。
「んん、変わるんだわ、これが。こいつに合う扉も何処かにあるはずだから探さなきゃならないってのに、こいつ自身が気まぐれで錆びるし変形するしで困ってたんだよ」
「でも、機嫌さえ良ければ本来の形を保ち続けるはずなのよ。それで私達は毎日この子がご機嫌でいられるように磨いてたのだけど……最近はずっとご機嫌斜めでね。楓ちゃんは鍵のお気に召したみたいで良かったわ」
「はあ……」
どうやら鍵の機嫌というものは比喩でも何でもなく、本当に、真正に鍵の意思であるらしい。そんな事があるものだろうかと首を捻りつつ、しかし、だからこそこのような博物館があるのだと楓は思い直す。――彼女をここにスカウトした、この博物館の館長もそう言っていたのだから。
「んじゃあこのワガママ鍵は楓ちゃんに面倒見て貰うってことで。扉が見つかり次第鍵も使用するから、それまで毎朝の定期作業に組み込んでおいてくれ。副館長には俺から言っておくよ」
「は、はい」
いつの間にかイタチからの呼び名が名前とちゃん付けになっているが、別に嫌という程でもないので楓はただ頷いた。イタチは荷を持ったまま、「じゃあなー!」と元気に事務所から出ていく。
「それじゃあ、鍵はその箱に戻しておいてね。午後からは『出自待ち』をひとつ見て貰う事になるけど、構わない?」
「はい。やってみます」
フレイアの指示通りに箱の中に鍵を戻し、楓はぐっと頷いた。ここまではオリエンテーションの続きのようなものだった。楓がここに来た理由、そして楓の能力で何処まで出来るか。午後からはそれが試されていく事となる。
楓にはひとつだけ、他者とは違う特異な能力があった。それは、素手で触れたものの『記憶』が覗けるというものだ。
楓の望むと望まざるとに関わらずこの力は発揮され、そのために楓は常に手袋を着けて生活している。だが、例えば誰かに強く触れた時や握手などの親しい接触をした場合、稀にだが手袋をも貫通して発揮される事があり、そのために楓は長く仕事も続けられず苦悩の中に引き篭もっていた。その楓に、偶然出会った男性が自身の博物館の職員にならないかと声を掛けてくれたのだ。
それが、この第七彷徨博物館であり、館長のユピテルという人だった。
死にゆく惑星の記憶の遺品、惑星の不思議な思い出たち。
忘れ去られるだけにならないよう、彼らの思い出を残す手伝いをしてほしいと。
そうして楓はここにいる。
疎んでいた能力を使い、惑星の思い出を残すために。
コルルル、と目覚ましの転がるような音を耳にしながら、楓は目を開いた。
カーテンの外は電飾の明かりが漏れており、いつもよりずっと……陽が昇るよりも早くに目が覚めたのだと伝えている。それもそのはず、今日から新しい仕事が始まるのだ。
まだ鳴り続ける目覚まし時計を手を伸ばして止めると、のろりと彼女は起き上がった。
シャワーに入り、朝食を食べて、ニュースを見ながら準備をする。社員証は昨日貰った。財布や免許証などを忘れずに鞄に入れて、両手に柔らかな白手袋を履くと、最後に鏡を見て身なりを確認し、玄関に向かう。
扉を開くと途端に表通りの賑やかな音が耳に飛び込んで来る。それから、ビルの外の空に飛んでいくカラフルな風船の色も。目に痛いほどに鮮やかなそれを視界から追いやって楓は扉を閉じるとノブを捻った。オートロックはかかるけれど、自分でもちゃんと締まっていると確認しないと座りが悪い性格なのだ。
エレベーターから下に降りる。内装も作りも平凡なエレベーターなのに微かに鳴っているサウンドはまるでパレードだ。このサウンドは政策で例えどのような場所でも公共施設ならば四六時中必ず鳴らす事が義務付けられている。それでも、まだ控え目な音量に管理人の良心が見て取れた。腕を組んで壁に凭れ地上に着くのを待ち、やっとで開いた扉から一階のロビーへ、エントランスを潜り外へ出る。
ビルの外はそれまでとは比べ物にならない。360°何処を見渡しても、ピンク、紫、ルビー、七色八色極彩色。ふわふわした形ときらきらした色とパレード音楽で溢れ返っている。
コットンピンク星。それがこの惑星のあだ名だった。本当の名前はβ-ドリーミング星というのだが、あだ名とさしたる違いはないだろう。
この星は、惑星を挙げて『少女趣味』を掲げており、何処を見ても乙女の夢を実現化した、という呼び込みの惑星だった。通りにはふわふわした服や小物やぬいぐるみを専門とする店が立ち並び、空にはカラフルな風船が飛び、頻繁にパレードがあり、飲食店に至ってもいっそ毒々しいほどに鮮やかな色をしたものばかり。とは言え、また別の区画はゴシックロリータをテーマとして黒とフリルと棘に溢れていたり、クールキュートをテーマとした区画は青色と緑色ばかりといった様相で全てがピンク色ではないのだが、それでもフワフワ・もこもこのコットンピンクがこの惑星の大半を占めていた。
観光惑星であるこの星で、楓は暮らしている。この星で働いている訳ではないし少女趣味でもないのだが、単純に母親が楓の幼い頃にここに引っ越して来たというそれだけだ。あのマンションの一室は買い取った母から楓の名義になっているし、楓が成人する前に母はこの惑星に飽きて別の星に移り住んでしまった。今は自然の多い惑星にいるが、週末の通話ではそろそろ別の星に行きたいと言っていた。居住星が気に入っている訳ではないが折角買った家なのだからと住み続けている楓とはまるで違う。親子だと言うのに楓と母の性格は全く似ていない。
気に入らなければ売っちゃって別の星に行けばいいのに。
母はそう言って笑ったが、それも気が進まない。別にこの星が嫌いな訳ではないのだ。
ふう、と溜息をつき、楓は星間ポーターが開くのを待った。
星間ポーターは名前の通りに星と星を繋ぐゲートのような施設で、巨大なポーターは有名な惑星にしかない。コットンピンク星もそのひとつで、移動に便利なポーターがあるのもこの星に住み続けている理由のひとつだった。
星間ポーターの本来の名前は亜速転移式銀河ステーションと言うが、やはりこれも正式名で呼ぶ者は余りいない。
ドア状の出入口が開き、顔を輝かせた少女たちの一群がぞろぞろと出て来る。学生かクラブの観光だろう、引率と思われる女性が最後に出て、一度出入り口が閉じた。その間に楓は表示板を仰ぎ見て行先を確かめる。それが間違っていないと確認した所でポーターの口が開いた。
行先は新アレクサンドリア。博物館や美術館が集まる、巨大な学術惑星だった。
ポーターの中は一本道の移動式通路のようになっており、規定として出口に辿り着くまで自身で歩く事は禁じられている。この通路をゆっくり進む間に外側ではとてつもない速度で星から星への距離を渡り歩いているのだ、『安全な速度』である移動式通路の速さを跨ごうという者は余りいない。噂では、学生がこの通路を走って渡ろうとしたら出口のゲートから踏み出した瞬間にミンチになったとか姿自体が消えてしまっただとか聞くが、真偽は定かではない。
楓は今日も規定通りにポーターを通り、普通にゲートから外に出た。するとそこはもう、学術惑星ネオ・アレクサンドリアの銀河ステーションだ。
歩きながら時計を見遣り、時間には間に合いそうだと息をつく。ここからはバスかライナーが出ているが、時間的にはライナーが良さそうだ。もう一度時計を確認してから、楓はライナー乗り場へと向かった。
ネオ・アレクサンドリアは図書館や博物館・美術館が集められた学術惑星であり、楓の新しい職場もまたこの惑星にある一つの博物館だった。名は、『第七彷徨博物館』。その通り第一を親施設として続く博物館の七館目にあたる施設だった。ちなみに彷徨博物館としては第七が末子にあたるらしい。
様々な博物館が並ぶこの惑星でもメジャー・マイナーは存在する。その中でも彷徨博物館はマイナーな施設で、楓もこの施設にスカウトされる前までは存在すら知らなかった。
彷徨博物館は元々、個人の私設博物館であった。博物館とも呼べない程の小さなそれは、星間をさまよいながら名も知られていない辺境の、それもこれから滅びゆく惑星の品を蒐集する、一台の渡航船だったのだ。船の主である変わり者の老人は数人の弟子だけを連れて私設博物館を称する私船で星々を飛び回っており、船を『彷徨博物館』と名付けて愛していた。老人の没後、船の老朽化と相まって旅を続ける事が困難になると弟子の一人がネオ・アレクサンドリアに寄贈を申し入れ、学術惑星の審査職員はこの船に蒐集された珍品の数々と船が辿った奇妙な道のりに驚き、手厚く迎え入れた。現在、老人が生涯愛したその船は修繕されて第一彷徨博物館として現物展示されている。
以降、彷徨博物館は学術的価値が浅かったり歴史が浅かったりと主流の学界から重要視はされないが他とは違う特色のある惑星の品や現象などの記録と蒐集展示を請け負う博物館となり、成り立ちや奇妙な展示物から愛好家もいるという少し変わった立ち位置の施設になっていた。最も、首都にあるような立派な文化施設の面々からは施設も職員も酔狂な一派だと嗤われているが、実のところこうした変わった施設は彷徨博物館だけに限らず、地方に行けば行く程に〝酔狂な〟施設や愛好家は多かったりもする。中には予算を受け取らず私財と寄付金だけで運営している所もあるという。彷徨博物館は中央委員会から予算は貰っている公共施設である分、マイナーな中でもマイナーメジャーと呼ばれる位置らしい、とか。
就職が決まってから調べた彷徨博物館の知識を頭で思い返しつつライナーから降りると、そこには綺麗に刈り揃えられた緑の芝生と、その向こうに白いパビリオンの四角い建物が見えて来た。
第七彷徨博物館は第一から第六がそうであるように、『滅びゆく惑星の品』を蒐集展示しており、現在は主に『アルビレオ』という惑星を担当しているらしい。アルビレオの仕事が終わると次の惑星に移り、第七の展示物が一杯になると第八が造られる、らしい。
……滅びゆく惑星の品。つまるところそれは、惑星の遺品の蒐集。楓の新しい仕事は、その手伝いだった。
「おはよう、楓ちゃん!」
職員連絡口からIDカードを通して中に入ると、ちょうど通りかかった女性がにこやかに声を掛けて来た。彼女は昨日オリエンテーションの担当でもあった人だ。楓はちょこりと頭を下げた。
「おはようございます、フレイアさん」
「うんうん、いい朝よね。今日から本格的にお仕事も始めて貰うから、少しずつ頑張っていきましょうね」
「はい」
「今から朝礼だから、一緒に行きましょう」
「はい」
鮮やかなオレンジ色の髪を肩口まで伸ばし、それを片方に括っている女性の名はイヴフレイアと言う。ここの博物館のキュレーターであり、柔和で人当たりの良い彼女はどこか人の警戒心を溶かしてしまうような安心できる雰囲気を纏っている。人見知りで物怖じする性格の楓も、フレイアとは少し会話をしただけで緊張が解けて、そんな自分に後から驚いた程だ。
「今日は午前にひとつのお仕事を任せるのだけれど……地味だってガッカリしないでちょうだいね」
困ったように笑うフレイアの言葉に楓は首を傾げた。そもそも、華々しく学会に論文を掲げるような場合でもない限り、博物館の職員なんてよほどでない限りは地味な仕事ではないだろうか。楓の疑問を感じ取ったのかフレイアは苦笑を深めた。
「楓ちゃんが想像してるよりずっと地味なのよ」
「はあ……」
でもそれは自分にとってはありがたい事でもあるのだけど、と楓は思いながらフレイアの後を追って事務所に入った。
事務所の自身に振り当てられた机に荷物を置き、ホールへと向かう。開館前の朝礼は全職員集まってそこで朝礼をするのが決まりだった。小さなホールには少数の職員しかおらず、この博物館の小ぢんまりとした規模を物語っている。
「皆揃ったかな。今日は病欠が一名、自宅待機が二名、館長は……いつものように不在なので私、副館長のメルクリウスが朝礼を行おう」
並ぶ顔を見ながら副館長のメルクリウスは溜息と共に宣言し、ぱらぱらと立ち並ぶ職員のうち、楓に目をやった。
「皆も聞いていると思うが、今日から我々と共に働く新人が入った。シュヴァンくんだ」
手で示されて、視線が集まる中で楓は小さく頭を下げる。
「……楓・Φ・シュヴァンです。宜しくお願いします」
へちへちと小さく拍手をするのは楓の隣の隣にいた男性の、その膝辺りの背丈しかない……スーツを着て後ろ脚で立つ黒猫だった。黒猫の肉球ごしの拍手に押されたのか隣の男性も小さく拍手をして、フレイアもにこにこと手を叩いている。むず痒いような感覚に困っていると、副館長はさっと話題を変えた。
「シュヴァンくんはしばらくの間、フレイアかクジについて貰おう。業務上の申し送りは特になし。皆、引き続き業務に当たってくれ。館長から連絡のあった者はすぐ私に知らせること」
「連絡があるとすれば私ですが」
「……君以外に言ってるのだよ、電話番」
しゅたっと黒猫が挙手して申し出るのに対し、副館長は更に溜息をつきそうな顔で付け足す。オリエンテーションで聞いた、ここの館長が神出鬼没でなかなか捕まらないという話は冗談ではなかったらしい。
「では、解散。今日も一日頑張りましょう」
ぱん、と副館長が手を叩き、同時に黒猫の頭を横にいたツナギ服の青年がちょいと突く。
「おまえ以外に連絡を入れるって可能性もあるって事だよ、白靴下」
「私に電話をするのが一番早いのにですか? イタチ、それは現実的ではありませんね」
「屁理屈猫だなぁ。……あ、フレイアさん、これ」
頭を突かれた黒猫がツナギの青年……イタチの手を払いのけ、イタチはそれに構わず黒猫の頭をわしゃわしゃと撫でた後で顔を上げフレイアに小箱を渡して来た。
「えーと、シュヴァンさん? あんたに今日からお願いする仕事だ。頼むな」
「は、はい」
「イタチくん、確かに受け取ったわ。ありがとう」
「うっす」
頷く青年は薄い茶色の髪を手ぬぐいで頭巾のように巻き、薄汚れたツナギに手袋という出で立ちをしている。彼は博物館技師であり、展示品の保存や処理を一手に請け負い、持ち込まれた品の鑑定までこなすという職人だった。彼が『白靴下』と呼んだのは子供ほどの大きさの黒猫で、ヴ・ヴィという種族である。つま先だけが白く他の体色は黒一色で、そのためにそんなあだ名で呼ばれているのだろう。イタチ以外からは専ら『電話番』と呼ばれているようで、『白靴下』はイタチしか呼んでいないようである。彼は『電話番』の通りに外部からの連絡の送受信の担当であり、ヴ・ヴィという種族は髭をアンテナのように使い銀河系丸々一つカバー出来るという程の超伝達能力を持つ者達だった。
副館長のメルクリウス、キュレーターのフレイア、博物館技師のイタチ、連絡係の電話番、それからもう一人。朝礼の間もずっと口を開かず静かに佇む、深い青色の髪を持つ男性。フレイアと同じくキュレーターのクジという男性で、彼は必要がなければ特に話もせず関わりもしないという性格であるらしい。良く言えばクール、悪く言えば冷淡に見えがちな印象だが、楓も大勢と広く関わるのは得意な方ではないのでクジの対応は逆にありがたかった。
彼らと、そして楓。それが現在この博物館にいる職員だった。病欠と自宅待機の職員もいるが、現場職員はこれだけである。自宅待機職員のうち一人であるシノという女性はオリエンテーションの時に通信機ごしに挨拶をした。彼女は知識は豊富であるが身体が弱く病がちであるために必要があれば自宅から通信機ごしに来客の対応をするという形態を取っているらしい。
朝礼後に事務所に戻ると、フレイアが小さな箱を楓に差し出した。イタチから渡された箱だ。目線で問いかけるとフレイアは微笑んで頷いたので、箱の蓋を開く。箱の中には、上質な紫のシルク生地に乗せられた銀色の鍵が収まっていた。
「鍵、ですか?」
「そうよ。楓ちゃんの今日の仕事……というか、当面の間かしら。朝一番にやって貰うのは、この銀の鍵を磨くこと」
「……鍵を?」
確かに鍵は多少錆び付いているが、磨くだけでいいのだろうか。疑問に首を傾げていると、フレイアはうんうんと頷く。
「そう、ただ磨くだけ。まだ素手で触らないでね。……冗談だと思うかもしれないけど、その鍵は気まぐれでね。放っておくとすぐに全部錆びるし、気に食わないとやっぱり錆びるの。特に機嫌を損ねると形まで変えちゃうのよ。……イタチくんとクジくんはそれでこの子にすっかり嫌われちゃって」
ふふ、と笑うフレイアに冗談なのかどうかの判別がつかず、楓は困ってしまう。とりあえず、と別添えのシルク生地を手渡され、
「宜しくね。私は隣で作業をしているから、解らない事があれば何でも聞いて」
「……はい」
頷き、何であれこれが初仕事なのだと、楓は鍵に向き合った。……見れば見る程に普通の鍵だが。この鍵自体が生きているかのように、えり好みをするという。疑問に思う事はまだあるが……ひとまず、シルク生地を手に取り楓は鍵磨きを始めた。
無心で鍵を磨き続ける事二時間、あらかたの錆を落とし終えた所で楓はふうと一息をつく。実の所、こうして地味で地道な単純作業は嫌いではないのでさして苦痛にも感じなかったが、さすがに目と手首が多少辛くなって来た。
「――あら、凄いじゃない! こんなに綺麗になるなんて」
隣のフレイアも気付いたのか楓の持つ鍵を見て声を上げる。
「そ、そうですかね……?」
そこまで感嘆されるような事ではないし、新人の自分に気を使ってくれたのだろうか、と楓が卑屈めいた事を思っていると。
「うっそ、マジで? これあのクソ鍵?」
後ろからそんな声も上がる。顔を向けるとそこには小ぶりの箱を抱えたイタチがいた。その出で立ちからすると、偶然に通り掛かったものらしい。彼はこの二時間の間にも頻繁に展示物や資料を運び込んだりしていたので、今回もそうだろう。
すげーすげーと本気で感心しているらしいイタチにフレイアがふふふと笑う。
「そうよ、あなたとクジくんがこぞって機嫌を損ねたあの鍵よ」
「それは……反省してますって。でも、いっそ調理油で磨いたらどうかって言いだしたのクジの奴なんですよ」
「さすがにあそこまで形を変えたのは電話番があれを踏んでお昼寝してた時以来だったけれど?」
「……安物の植物油のせいですかね。バターだったらあるいは」
「決して試さないでね?」
「ハイ」
イタチとフレイアの会話を聞いて、楓は恐る恐ると口を挟む。
「あの……もしかして、形を変えるって、本当に変わるんですか?」
楓の質問にフレイアは困ったように笑い、イタチは眉を寄せた。
「んん、変わるんだわ、これが。こいつに合う扉も何処かにあるはずだから探さなきゃならないってのに、こいつ自身が気まぐれで錆びるし変形するしで困ってたんだよ」
「でも、機嫌さえ良ければ本来の形を保ち続けるはずなのよ。それで私達は毎日この子がご機嫌でいられるように磨いてたのだけど……最近はずっとご機嫌斜めでね。楓ちゃんは鍵のお気に召したみたいで良かったわ」
「はあ……」
どうやら鍵の機嫌というものは比喩でも何でもなく、本当に、真正に鍵の意思であるらしい。そんな事があるものだろうかと首を捻りつつ、しかし、だからこそこのような博物館があるのだと楓は思い直す。――彼女をここにスカウトした、この博物館の館長もそう言っていたのだから。
「んじゃあこのワガママ鍵は楓ちゃんに面倒見て貰うってことで。扉が見つかり次第鍵も使用するから、それまで毎朝の定期作業に組み込んでおいてくれ。副館長には俺から言っておくよ」
「は、はい」
いつの間にかイタチからの呼び名が名前とちゃん付けになっているが、別に嫌という程でもないので楓はただ頷いた。イタチは荷を持ったまま、「じゃあなー!」と元気に事務所から出ていく。
「それじゃあ、鍵はその箱に戻しておいてね。午後からは『出自待ち』をひとつ見て貰う事になるけど、構わない?」
「はい。やってみます」
フレイアの指示通りに箱の中に鍵を戻し、楓はぐっと頷いた。ここまではオリエンテーションの続きのようなものだった。楓がここに来た理由、そして楓の能力で何処まで出来るか。午後からはそれが試されていく事となる。
楓にはひとつだけ、他者とは違う特異な能力があった。それは、素手で触れたものの『記憶』が覗けるというものだ。
楓の望むと望まざるとに関わらずこの力は発揮され、そのために楓は常に手袋を着けて生活している。だが、例えば誰かに強く触れた時や握手などの親しい接触をした場合、稀にだが手袋をも貫通して発揮される事があり、そのために楓は長く仕事も続けられず苦悩の中に引き篭もっていた。その楓に、偶然出会った男性が自身の博物館の職員にならないかと声を掛けてくれたのだ。
それが、この第七彷徨博物館であり、館長のユピテルという人だった。
死にゆく惑星の記憶の遺品、惑星の不思議な思い出たち。
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そうして楓はここにいる。
疎んでいた能力を使い、惑星の思い出を残すために。
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