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山奈ちさとは目を閉じた
しおりを挟む素敵な話はこの世にいくらでも溢れている。それを見ようとしなければ、なかなか人は教えてくれない。
良い話なんて、そんなもんだろう。
「~♪」
可愛い笑顔で口笛なんて吹いてるせいで、クラスの視線は今、みゆに集まっている。
あまりこのクラスでは私以外の人と積極的に話そうとしないみゆが、
「あ、その荷物重いでしょ。守ってあげる」
なんて言っている。どうしたの可愛い。お休みの間に何があったというんですか。
「み、みゆ……おはよう」
「おはよう、ちさとちゃん」
くっ。眩しい。
ただでさえ何もしなくても可愛いと噂されるみゆだ。そんなみゆの笑顔にクラッと来ないはずがない。私がモブじゃなかったら確実に恋に落ちている。ずるい……ずるいよ、それは。
「ずいぶん機嫌いいね」
「んー、そうかなぁ」
「もしかしてーー」
みゆの好きな人、篠山先輩と何かあったのかな。そうだとしたらモブとして聞いておきたい。萌えたい、その話に。
口に出そうとすれば、みゆはそっと自分の口に人差し指を当てて。
「ごめんねちさとちゃん。この話は内緒かな」
「っ……!」
幸せそうに、意地悪そうに笑うその笑顔。みゆは篠山先輩との大体の話は話してくれるけど、こういう変に機嫌がいい日は話してくれない。
それは、私の予想だけど、ちょっとした独占欲かもしれない。みゆの大好きな篠山先輩の姿は、想像ですら渡したくないみたいな。もうそうであればいいのにと思う。
「へへ」
「……!」
にこにこと頬杖をつきながら笑顔なみゆは本当に可愛い。クラスが今、またざわつきはじめたのを、きっと浮かれているみゆは気付いていない。
「みゆ……ほんと」
あぁ、今日はもう、朝だけでお腹がいっぱいだ。これ以上甘いご飯があるだろうか。
「ありがとう……ございました……!!」
「まだ一時限目も始まってないよ?」
今日もお腹いっぱい満たされた。
二人だけの内緒の話なら、聞こうとするだけ野暮だろう。
「ごちそうさまです!」
「だからまだ朝だってば?!」
戸惑うみゆを横目に見ながら、私はそっと目を閉じた。
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