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君に届くまで2
しおりを挟む息を吸うのは一回で、深く吸う。
しばらく吸ったら息を止めて、思い切り叫ぶ。
「好きです花島先生!」
「近所迷惑ですからやめてください!」
私、橋波くららの想いは止まらない。好きになってしまったんだ。簡単には諦められない。
「先生おはよう、今日も可愛いね」
「おはようございます橋波さん、教室へ帰りなさい」
「先生と一分でも長く過ごす時間を確保するために予鈴ってあると思うんだ」
「授業に遅刻しないためにあるんです」
つれないなぁ。そこも可愛いんだけど。
毎日休み時間の度に先生のもとへ行き、職員室まで送り届ける。気分はさながら騎士だよ。
「ね、私のお姫様になる気はないですか?」
「全くもってないので安心してください」
花島みれい、25歳。なかなかガードが固いですな。お菓子が好きって聞いたから、作って持ってこようかな。
「ケーキとか好き?」
「なんですかいきなり」
「私のケーキを食べてメロメロに」
「絶対食べませんから」
何を入れる気ですかなんて聞かれてムッとする。失礼な、神聖なお菓子に危険なものなんて入れるわけないじゃん。
「愛情はたっぷり入れるけどね」
「もうお腹いっぱいですよ」
まだまだ、こんなんじゃ足りない。なんせ先生は私の世界を照らしてくれた人だ。あとは卒業を待つだけだった私に、甘いときめきをくれたんだ。
「だから好きだよ先生」
「う……」
「法律の許す範囲内でいいから」
「……台無しですね」
盛大にため息をつく先生。何が台無しというんだろう。もうそろそろ私にときめいてもいい頃なのに。
何がと聞けばまたため息をつかれ、一冊の本を渡された。というか、頭に乗せられた。
「誰かに愛を伝えたいなら、まず恋愛小説を読みなさい。私は応える気ありませんが少しは世界が広がるでしょう」
そう言われると同時に、予鈴が鳴り響く。
「せん、せ?」
「恋を進めたければ学びなさい。どうすれば相手の心を掴めるのか。……あなたの全力な姿勢は悪くないわ」
気付けば職員室についていたみたいで、優しい笑みを浮かべて先生はそのまま職員室へと入っていった。
「~~~~!!」
あまりの衝撃にうまく声が出ない。
急いで教室へと戻りながら、先生に渡された本を抱きしめる。
なにあれ、可愛すぎるし美しすぎるでしょ。あれで諦めろって方が無理でしょ。
息を吸う。走りながら、思い切り。
「好き~~~~!!!!」
たまらない。
また好きになってしまった。たぶん、これからもっと好きになる。
「もっと勉強して、先生をドキドキさせてみせるよ」
だから先生、覚悟して?
そんなことを思いながら、全速力で教室へと戻った私は廊下を走った罰として校庭の草むしりを任された。
今の私ならなんだってできる気がする。
校庭の草を抜きながら、私は先生のことばかり考えていた。
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