地獄が大変なことになりました ~地獄を掘る科学者、穴が開く地獄~

海胆の人

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地獄、それは無間のエネルギー

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 地獄冷却システムと名付けられた冷却システムは瞬く間に日本中に広まった。これによりヒートアイランド現象に終止符を打つことができたのだ。一部霊感の強い人たちから反対運動が起こされたが、暑さには勝てないということですべての反対運動は無視されることとなった。

 そしてついに本命の八大地獄にドリルを打ち込む日が来た。地元の有名な強盗殺人を犯したとかの噂をもつ爺さんが死んだときに蜘蛛の糸を飛ばしてみれば、無事地獄まで到達したようである。

 ファイバースコープを入れて見ると大きな鉄の山の間で焼けた縄を打たれた者がたくさん転がり、さらに灼けた斧で切り裂かれる様が見られる。

「これは多分黒縄(こくじょう)地獄って奴じゃないでしょうか」

 山伏が八寒地獄に落ちてしまったので代わりに助手が解説する。大手商社の菱印商事は熱よりも大きな鉄山に興味を持ったようだが、残念ながら海底資源以上の採取の難しさだと説得され肩を落とす。

 地獄の鬼たちが驚愕の表情を見せているのを尻目に地獄の地面を削っていく。しばらくすると刀の生えた木々の生い茂る地獄に到達する。

「これは衆合(しゅうごう)地獄でしょうか~」

 強姦殺人などした者が落とされる地獄だという。なるほど美人の面をした鬼が居るのでそれを追いかけて罪人が切り刻まれるようだ。

「こわー。先生はこういう地獄に落ちないでくださいね」

「心配するな。俺は殺人に興味はない」

 この衆合地獄は鉄の地面のようで今のドリルヘッドでは削れなくなった。特殊合金製のヘッドに交換し作業を再開する。たまたま現れた鉄の象をもろとも穿ち、さらにドリルは進む。叫喚地獄、大叫喚地獄とすすみ、鬼たちが叫喚しているかはわからない。なぜなら地獄の時間感覚からは極一瞬でドリルが進んでいくので、鬼からすれば認識した頃にはすでに鉄の棒が貫いている状況だ。

 そうしてついに焔渦巻く地獄に到達する。

「これが焦熱地獄……か?温度は何度だ」

「え~と~……約1500Kです~」

 ついに到達した灼熱の地獄に。早速熱交換器を突っ込むが、さすがに蜘蛛の糸は耐えられないので1500Kまでの耐熱性のあるでこぼこ印刷開発の特殊ペイントで般若経を印字したパイプを突っ込んでいく。

 この先には大焦熱地獄と無間地獄が広がっていると推察されるが、これ以上の耐熱塗料がないので今後の技術開発に応じてと言うことになった。しかしこの地獄の熱により無限の熱を獲得し、同時に無限に冷却ができる環境が整ったと言うことになる。

 この功績により、科学者はイグノーベル賞を受賞し霊界科学なる新たな学問分野が開拓されていくこととなる。

 そして数年が経ち、日本中で火力発電所は終焉を迎える。地獄発電という名の地獄の熱と冷気を利用した温度差発電システムに切り替わった。再生可能エネルギーを超える究極のエネルギー源の誕生であった。

 またこの無限のエネルギーにより日本周辺の気候は完全にコントロール可能となり日本中どこでもおいしいお米が育つようになった。このため糖尿病がさらに深刻な問題になったそれは致し方のない代償であった。

 しかし不思議なことにこれは世界のエネルギー問題の解決にはならなかった。仏教圏とヒンドゥー教圏でしか実用化できなかったのである。この問題の解決を図るため科学者と研究員、そして助手たちはさらに研究を深めていくこととなる。


 一方その頃の地獄では、閻魔が叫喚地獄で叫喚していた。

「な、な、な、んなんじゃこりゃぁぁぁぁ!」

「そ、それが気がついたときにはこの鉄の杭が何本も立っておりまして……」

「この熱はおそらく焦熱地獄に到達しているのだろうが……現世の者は一体何をしておるんじゃ」

「こ、これでは暑さでどこもかしこも焦熱地獄になってしまいます」

「それは別に構わんのだが……はぁ、一度天部で相談してみるか」

「閻魔様は天部がお嫌いでしたね」

「ああ、意識高度が高すぎていけ好かない連中だが仕方がない。明日にでも聞きに行ってみるさ」

 しかしこの叫喚地獄における1日は地上における4000年なのでやはり人類にとって大きな問題になるのはまだまだ遠い未来の話であった。

~終~
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