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お手並み拝見
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頑丈そうな壁に囲まれた、円形の城壁都市。壁の高さは「ヒト三人分」もあるらしい。
「人間はもちろん、魔物だって簡単には入ってこられません!」と姫は胸を張っていたが。
魔物に占領されているところを現在進行形で見せられている身としては、どんな顔をしてその自慢を聞いたらいいのかよく分からない。
下手にツッコむとまた「しゅん……」としそうだったから、とりあえず「なるほど……」と神妙に同意しておいた。
その高い壁をひょいと飛び越えて、内部に着陸し姫を下ろす。
そして人間の姿に戻る。
「酷い有様ですね」
まだ入っただけの段階だが、門の内側の時点ですでに街はぼろぼろだった。
目に入る建物は全てどこかしらが壊されており、街全体が、この感じで魔物に荒らされまくっているのだろうと想像が浮かぶ。
そして瘴気。魔物に力を与え、人間を害する空気が満ち満ちている。
ステータスを確認すると、微量ながら体力が削れていることがわかった。
まぁ、桁を数えることすら億劫な数値からゆっくり1ずつ減っていくだけだから、痛くもかゆくもない。
そんなことを確かめていると、姫が妙に張り切った様子で声をかけてきた。
「ユウト様、ちょっとよろしいですか?」
「はい。なんですか?」
すると姫はぶつぶつ何かを唱え、上に向かって手を伸ばした。頭上から光の粒が現れて、二人に降りかかった後、消えた。
「これは?」
「はい、瘴気に対しての加護です。微力ながらユウト様の助けになればと思いまして」
姫は生き生きとした顔で言った。
ステータスを確認する。確かに体力低下はなくなり、状態異常の欄から「瘴気(毒)」の文字も消えた。
俺はついでに、姫のステータスを確認する。
「!」
こちらは瘴気毒で、それなりのダメージを受けていた。
おいおい、どう考えてもこの人の方がやばいじゃないか。
俺は姫を真似して、軽く手を挙げる。
すると、同じように光の粒が降り注いだ。
「ええ!? もしかして、回復魔法ですか!?」
あっ、分かるんだ。
「まぁ、そんな感じです……」
神様から、「回復系の魔法は希少なので、あまり周囲に見せないように」と言われていたけれど、まぁこの姫なら大丈夫でしょう。
俺を悪いことに利用しようなんて、考えてなさそうだし。
「すごい……ありがとうございます!!」
「いえいえ。じゃあ、行きましょうか」
「はい!」
いきなり町の中心部に降り立ってもよかったのだけど、それをしなかったのには理由がある。
この天然さん……じゃなくて純粋な姫様がどれくらいの力を持っているのか、知りたかったからだ。
神様は、「召喚された異世界者に与えることができる力は、その世界にいる人と比べると別格」とは言っていたけれど。
この姫も、ある程度の魔法は使えるようだし。
この街に寄生する魔物らと対峙したとき、一体どれくらいの力差が生まれるのか。
あまりにも大きな力差であれば、姫様には申し訳ないがちょっと大人しくしといてもらわないといけない。
結局のところメインで魔物と戦うのは俺だから、姫様にそれほど強い力は求めてはいないのだが。
守り切れないほどの戦力差があるのならば、こちらもあまり無茶はできなくなる。
だから事前にその点だけでも確認しておきたかったのだ。
「おっ」
ちょうどいいところに。
二階建ての建物の間から、魔物が複数体出てきた。
「ゴブリンですね。小さいですけど、ずる賢くて厄介な連中です」
姫様が耳打ちしてくれる。
なるほど。あれがゴブリンか。
ステータスを確認してみると、見た目通りの雑魚であることがわかった。
近くで見ると、随分と小さな体だ。俺の腰までもなさそうに見える。
そしてとんでもなく醜い顔だ。
何というか、全体的にぎゅっとしていて、目だけがぎょろっと飛び出ている。
ゴキ●リみたいに、見た瞬間に嫌悪感がわいてくるやつ。
ゴブリンにもゴキ●リにも申し訳ないけど、「生理的に無理」ってやつだな。
「アマシア姫、ちょっと戦ってみてくれませんか」
「え、わ、私ですか?」
「ええ。あの相手だと、どうでしょう。倒せそうですか?」
姫様はゴブリンをじっと見る。二匹いるが、一人でどうにかできる相手なのだろうか。
「もちろんです、やらせてください!」
よし。気合の入ったいい表情だ。
さぁ、お手並み拝見といこう。
「人間はもちろん、魔物だって簡単には入ってこられません!」と姫は胸を張っていたが。
魔物に占領されているところを現在進行形で見せられている身としては、どんな顔をしてその自慢を聞いたらいいのかよく分からない。
下手にツッコむとまた「しゅん……」としそうだったから、とりあえず「なるほど……」と神妙に同意しておいた。
その高い壁をひょいと飛び越えて、内部に着陸し姫を下ろす。
そして人間の姿に戻る。
「酷い有様ですね」
まだ入っただけの段階だが、門の内側の時点ですでに街はぼろぼろだった。
目に入る建物は全てどこかしらが壊されており、街全体が、この感じで魔物に荒らされまくっているのだろうと想像が浮かぶ。
そして瘴気。魔物に力を与え、人間を害する空気が満ち満ちている。
ステータスを確認すると、微量ながら体力が削れていることがわかった。
まぁ、桁を数えることすら億劫な数値からゆっくり1ずつ減っていくだけだから、痛くもかゆくもない。
そんなことを確かめていると、姫が妙に張り切った様子で声をかけてきた。
「ユウト様、ちょっとよろしいですか?」
「はい。なんですか?」
すると姫はぶつぶつ何かを唱え、上に向かって手を伸ばした。頭上から光の粒が現れて、二人に降りかかった後、消えた。
「これは?」
「はい、瘴気に対しての加護です。微力ながらユウト様の助けになればと思いまして」
姫は生き生きとした顔で言った。
ステータスを確認する。確かに体力低下はなくなり、状態異常の欄から「瘴気(毒)」の文字も消えた。
俺はついでに、姫のステータスを確認する。
「!」
こちらは瘴気毒で、それなりのダメージを受けていた。
おいおい、どう考えてもこの人の方がやばいじゃないか。
俺は姫を真似して、軽く手を挙げる。
すると、同じように光の粒が降り注いだ。
「ええ!? もしかして、回復魔法ですか!?」
あっ、分かるんだ。
「まぁ、そんな感じです……」
神様から、「回復系の魔法は希少なので、あまり周囲に見せないように」と言われていたけれど、まぁこの姫なら大丈夫でしょう。
俺を悪いことに利用しようなんて、考えてなさそうだし。
「すごい……ありがとうございます!!」
「いえいえ。じゃあ、行きましょうか」
「はい!」
いきなり町の中心部に降り立ってもよかったのだけど、それをしなかったのには理由がある。
この天然さん……じゃなくて純粋な姫様がどれくらいの力を持っているのか、知りたかったからだ。
神様は、「召喚された異世界者に与えることができる力は、その世界にいる人と比べると別格」とは言っていたけれど。
この姫も、ある程度の魔法は使えるようだし。
この街に寄生する魔物らと対峙したとき、一体どれくらいの力差が生まれるのか。
あまりにも大きな力差であれば、姫様には申し訳ないがちょっと大人しくしといてもらわないといけない。
結局のところメインで魔物と戦うのは俺だから、姫様にそれほど強い力は求めてはいないのだが。
守り切れないほどの戦力差があるのならば、こちらもあまり無茶はできなくなる。
だから事前にその点だけでも確認しておきたかったのだ。
「おっ」
ちょうどいいところに。
二階建ての建物の間から、魔物が複数体出てきた。
「ゴブリンですね。小さいですけど、ずる賢くて厄介な連中です」
姫様が耳打ちしてくれる。
なるほど。あれがゴブリンか。
ステータスを確認してみると、見た目通りの雑魚であることがわかった。
近くで見ると、随分と小さな体だ。俺の腰までもなさそうに見える。
そしてとんでもなく醜い顔だ。
何というか、全体的にぎゅっとしていて、目だけがぎょろっと飛び出ている。
ゴキ●リみたいに、見た瞬間に嫌悪感がわいてくるやつ。
ゴブリンにもゴキ●リにも申し訳ないけど、「生理的に無理」ってやつだな。
「アマシア姫、ちょっと戦ってみてくれませんか」
「え、わ、私ですか?」
「ええ。あの相手だと、どうでしょう。倒せそうですか?」
姫様はゴブリンをじっと見る。二匹いるが、一人でどうにかできる相手なのだろうか。
「もちろんです、やらせてください!」
よし。気合の入ったいい表情だ。
さぁ、お手並み拝見といこう。
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