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解放難易度:D グラドシュフトの森
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冒険者ギルドの裏で、あるスキルを発動した俺。
すぐさま姫に料理ができる者たちを集めてもらい、冒険者ギルドの裏へと連れてきた。
「なっ、なんですかこれは!!!」
「こんなにも……一体どうして!!」
「おい、この魔物たち、まだ新鮮だぞ!!」
「早く! 早く協力して解体するんだ!!」
俺が使ったのは「異空間収納」のスキル。そこから取り出したのは、この街で討伐した魔物の中でも特に肉がうまそうだった奴らだ。
街の修復を行うときに、倒した魔物たちを全てちゃっかり収納したのだが。
「異空間収納」については転生の神が説明してくれた通り、どの魔物もちゃんと時間経過なしで保存されていた。
鮮度を見抜いた料理人たちは、無駄口を叩くことなく解体を始めた。
討伐された魔物から、次々に脂ののった肉塊が取り出されていく。
魔物肉を見るのは初めてだったが、こりゃとんでもないご馳走になりそうだと、よだれが止まらなかった。
夜になると、中央広場の至るところに火が灯された。
料理人たちから、魔物肉を使った豪華な料理が惜しげもなく振舞われる。
ごろごろ肉が入った濃厚なスープ、油でからっとあげた魔物のから揚げ、肉汁したたるステーキ。
魔物肉以外の材料なんて何が入っているのか全く分からなかったが、口に入れたものは漏れなく絶品だった。
もうこの料理たちを食べられただけでも召喚された甲斐があったよ……と心の底から思った。
宴は朝になっても、さらに次の夜になっても続き、楽しむ市民たちで溢れた広場からはいっこうに人が減らなかった。
俺はご馳走をたっぷり堪能した後、「うちに泊まってください!! もちろんお代なんていただきませんから!!」と熱烈に歓迎された高級宿屋に五日ほど泊まらせてもらい、心も体も十分にリフレッシュした状態で、街を出発することになった。
そして出発の朝。
「見送りはいりませんから」と事前に伝えておいたのだが、壁の外まで全住民が俺についてきた。
そして神竜に姿を変えると、「おぉー!!!」と尋常じゃないどよめきが起こる。
ん? もしかして、この姿を最後に拝みたかっただけかな??と疑いつつ、俺は彼らに言う。
「それではまた」
俺が言葉を発すると、また人々の平伏ウェーブが始まったので早めに飛び去らないとなと感じた。
姫が前に出てきて、ぺこりと頭を下げる。
「では、乗らせていただきますね」
「ああ」
姫が背中に乗ったことを確かめて、俺は翼をはばたいた。
「皆さん、言ってまいります!! この街のこと、よろしく頼みましたよ!!」
姫が叫ぶと、住民たちは口々に出発の言葉を送った。
そして俺は、空に飛び上がった。
次なる目的地は……グラドシュフトの森だ。
神竜となって、悠々と空を飛んだ。
キング・オークの支配から解放した城塞都市ダミリアスを出発し、北に向かう。
次なる目的地は、グラドシュフトの森。
「気持ちいいですねー!」と背中で姫が、明るい声を上げている。
「ああ」
たしかに天気がよく、絶好の神竜日和だった。
なぜ街に姫を置いていかず、背中に乗せているのか。これにはもちろん理由がある。
キング・オークをぶった倒した後、俺は何気なく自分のステータスを見ていた。
街一つ分の魔物を倒しただけあって、能力値はぐんと上がっていたが、俺はそれ以外に気になる項目を見つけた。
『ん? なんだこれ』
ステータスの端に、小さな地図のマークがあることに気が付いた。
頭の中でそのマークに意識を向けると、俺自身の能力が数値化された情報は消え、代わりに地図のようなものを見ることができた。
『これは……この世界の地図か』
転生神から地図に関する説明を受けた記憶が、おぼろげながら思い出される。
この街に棲みついた魔物を蹴散らすことに集中し過ぎて、すっかり忘れていた。
地図のいたるところに、濁った緑色に覆われた部分があった。
『この色がたしか、魔王に支配されている地域を表しているんだったな』
地図を見る限り、都市の8割程度がどす黒い緑に塗りつぶされている。神や姫からの説明通り、どうやら魔王の侵攻はかなり進んでいるようだ。
俺は中央やや左にある、緑に覆われていない都市に視線を置く。
城塞都市、ダミリアス。
ついさっき、俺が奪還に成功したこの街だ。うんうん、ちゃんと地図本来の色に戻っている。
『ん?』
都市の名が書かれた下に、小さな宝箱のマークがついていた。
『なんだこれは』
と思い、意識を向けていると、その宝箱がパカッとひらく。
「クリアボーナス:宝くじで1000万円当たる。使用回数:1回」
『クリアボーナス……あっ、魔王を倒して向こうの世界に戻ったときにもらえるとかって、転生神が言ってたやつか。
……ん、1000万!?』
最初の街を解放して、1000万!
1000万……すごくリアルな額だ。これ向こうの世界に戻ったら、当たりの宝くじが好きなときに手に入るってことだよな。
なんか……めっちゃ助かるな。宝くじって、非課税なんだっけ。めっちゃ嬉しい……えっ、俄然向こうの世界に帰りたくなってきた。帰ったらすぐ宝くじ買う……宝くじ買って、仕事やめる……
いやいや、まずはこっちの世界で魔王倒さなくちゃ。
クリアボーナスもっともらいたいし……じゃなくて、こっちにいる人たちを救わないといけないからな。うん。
この調子で魔物の巣窟になっている拠点を回って、魔王の試みをぶっ潰してやろうじゃないか。
『さて、次はどこへ向かえばいいかな?』
突如現れたクリアボーナスという邪念にまみれつつ、俺は地図を見返す。
現在地である都市ダミリアスの北に、緑まみれの場所があった。
『グラドシュフトの森』と書かれていた。その下に、『解放難易度:D』と書かれている。
D。
たしか神の説明によれば、アルファベットの早い順に難度が上がるといっていた気がする。
だからAがもっとも難度が高い。
あぁ、そういえばAの上にはSがあるっていっていたな。S>A>B>C>Dって感じだったはず。
だとすると、Dの難度はそこそこ低そうだけど。EとかFとかもあるのかな。
地図の上で、他の支配された地区を確認してみる。ほとんどがC以上だった。
E、Fも探せばあったけれど、距離的に遠かった。
『この地図上で移動するのに、どれくらいの時間がかかるのかわかんないけど……E、Fの場所に移動するまでに、魔王の勢力が拡大する恐れがありそうだな。それに結局、向かう途中で高難度の地区を通っちゃう可能性もあるし……
ここは大人しく、近い距離のところからやっちゃうか』
そう決めて、俺は近くの森を次の目的地と定めた。
『グラドシュフトの森、ね……』
頭の中の地図を閉じて、高級宿屋のベッドでそのままぐっすりと眠り。
翌朝姫に、「グラドシュフトの森って、知ってます?」と尋ねると。
「知ってます! この都市の北にある大きな森ですよね。以前は薬草や魔法水など貴重な資源が良く取れる場所だったんですが、今はもう……魔王の手先である魔物に支配されてますね……」との答えが返ってきた。
それから姫ははっと顔をあげて、「もしかしてユウト様、次はグラドシュフトの森を、魔王の手から取り戻すおつもりですか!?」と一発で当てられて。
俺は思わず、「え、まぁ……」と答えてしまう。
「普通の冒険者たちならまず無理だとは思いますが、しかしユウト様ならあるいは……
でも、場所はご存じなのですか?」
そう聞かれ、俺ははっとした。
地図はあるけれど、ナビはない。しまった。神に「ナビスキル」もつけてもらえばよかったと後悔するが、もう遅い。
「この街の北の方、ですよね。だいたいの場所ならわかるんですが……」
「でしたら!!」
と提案されて、今、姫を背に乗せて。
青空の下、まったり神竜飛行しているというわけだった。
「ユウト様、見えてきました!」
姫が前を指差す。
おっ、たしかに。ここまで来れば俺にもわかるぞ。
上空からでも見える、はっきりと緑がかった瘴気。
『あれが、グラドシュフトの森か……』
気のせいかもしれないが……いや、気のせいじゃないな。
俺は確信し、森から少し離れた場所に着陸する。
グラドシュフトの森を覆う瘴気は、ダミリアスの街にかかっていたものより、さらに濃かった。
すぐさま姫に料理ができる者たちを集めてもらい、冒険者ギルドの裏へと連れてきた。
「なっ、なんですかこれは!!!」
「こんなにも……一体どうして!!」
「おい、この魔物たち、まだ新鮮だぞ!!」
「早く! 早く協力して解体するんだ!!」
俺が使ったのは「異空間収納」のスキル。そこから取り出したのは、この街で討伐した魔物の中でも特に肉がうまそうだった奴らだ。
街の修復を行うときに、倒した魔物たちを全てちゃっかり収納したのだが。
「異空間収納」については転生の神が説明してくれた通り、どの魔物もちゃんと時間経過なしで保存されていた。
鮮度を見抜いた料理人たちは、無駄口を叩くことなく解体を始めた。
討伐された魔物から、次々に脂ののった肉塊が取り出されていく。
魔物肉を見るのは初めてだったが、こりゃとんでもないご馳走になりそうだと、よだれが止まらなかった。
夜になると、中央広場の至るところに火が灯された。
料理人たちから、魔物肉を使った豪華な料理が惜しげもなく振舞われる。
ごろごろ肉が入った濃厚なスープ、油でからっとあげた魔物のから揚げ、肉汁したたるステーキ。
魔物肉以外の材料なんて何が入っているのか全く分からなかったが、口に入れたものは漏れなく絶品だった。
もうこの料理たちを食べられただけでも召喚された甲斐があったよ……と心の底から思った。
宴は朝になっても、さらに次の夜になっても続き、楽しむ市民たちで溢れた広場からはいっこうに人が減らなかった。
俺はご馳走をたっぷり堪能した後、「うちに泊まってください!! もちろんお代なんていただきませんから!!」と熱烈に歓迎された高級宿屋に五日ほど泊まらせてもらい、心も体も十分にリフレッシュした状態で、街を出発することになった。
そして出発の朝。
「見送りはいりませんから」と事前に伝えておいたのだが、壁の外まで全住民が俺についてきた。
そして神竜に姿を変えると、「おぉー!!!」と尋常じゃないどよめきが起こる。
ん? もしかして、この姿を最後に拝みたかっただけかな??と疑いつつ、俺は彼らに言う。
「それではまた」
俺が言葉を発すると、また人々の平伏ウェーブが始まったので早めに飛び去らないとなと感じた。
姫が前に出てきて、ぺこりと頭を下げる。
「では、乗らせていただきますね」
「ああ」
姫が背中に乗ったことを確かめて、俺は翼をはばたいた。
「皆さん、言ってまいります!! この街のこと、よろしく頼みましたよ!!」
姫が叫ぶと、住民たちは口々に出発の言葉を送った。
そして俺は、空に飛び上がった。
次なる目的地は……グラドシュフトの森だ。
神竜となって、悠々と空を飛んだ。
キング・オークの支配から解放した城塞都市ダミリアスを出発し、北に向かう。
次なる目的地は、グラドシュフトの森。
「気持ちいいですねー!」と背中で姫が、明るい声を上げている。
「ああ」
たしかに天気がよく、絶好の神竜日和だった。
なぜ街に姫を置いていかず、背中に乗せているのか。これにはもちろん理由がある。
キング・オークをぶった倒した後、俺は何気なく自分のステータスを見ていた。
街一つ分の魔物を倒しただけあって、能力値はぐんと上がっていたが、俺はそれ以外に気になる項目を見つけた。
『ん? なんだこれ』
ステータスの端に、小さな地図のマークがあることに気が付いた。
頭の中でそのマークに意識を向けると、俺自身の能力が数値化された情報は消え、代わりに地図のようなものを見ることができた。
『これは……この世界の地図か』
転生神から地図に関する説明を受けた記憶が、おぼろげながら思い出される。
この街に棲みついた魔物を蹴散らすことに集中し過ぎて、すっかり忘れていた。
地図のいたるところに、濁った緑色に覆われた部分があった。
『この色がたしか、魔王に支配されている地域を表しているんだったな』
地図を見る限り、都市の8割程度がどす黒い緑に塗りつぶされている。神や姫からの説明通り、どうやら魔王の侵攻はかなり進んでいるようだ。
俺は中央やや左にある、緑に覆われていない都市に視線を置く。
城塞都市、ダミリアス。
ついさっき、俺が奪還に成功したこの街だ。うんうん、ちゃんと地図本来の色に戻っている。
『ん?』
都市の名が書かれた下に、小さな宝箱のマークがついていた。
『なんだこれは』
と思い、意識を向けていると、その宝箱がパカッとひらく。
「クリアボーナス:宝くじで1000万円当たる。使用回数:1回」
『クリアボーナス……あっ、魔王を倒して向こうの世界に戻ったときにもらえるとかって、転生神が言ってたやつか。
……ん、1000万!?』
最初の街を解放して、1000万!
1000万……すごくリアルな額だ。これ向こうの世界に戻ったら、当たりの宝くじが好きなときに手に入るってことだよな。
なんか……めっちゃ助かるな。宝くじって、非課税なんだっけ。めっちゃ嬉しい……えっ、俄然向こうの世界に帰りたくなってきた。帰ったらすぐ宝くじ買う……宝くじ買って、仕事やめる……
いやいや、まずはこっちの世界で魔王倒さなくちゃ。
クリアボーナスもっともらいたいし……じゃなくて、こっちにいる人たちを救わないといけないからな。うん。
この調子で魔物の巣窟になっている拠点を回って、魔王の試みをぶっ潰してやろうじゃないか。
『さて、次はどこへ向かえばいいかな?』
突如現れたクリアボーナスという邪念にまみれつつ、俺は地図を見返す。
現在地である都市ダミリアスの北に、緑まみれの場所があった。
『グラドシュフトの森』と書かれていた。その下に、『解放難易度:D』と書かれている。
D。
たしか神の説明によれば、アルファベットの早い順に難度が上がるといっていた気がする。
だからAがもっとも難度が高い。
あぁ、そういえばAの上にはSがあるっていっていたな。S>A>B>C>Dって感じだったはず。
だとすると、Dの難度はそこそこ低そうだけど。EとかFとかもあるのかな。
地図の上で、他の支配された地区を確認してみる。ほとんどがC以上だった。
E、Fも探せばあったけれど、距離的に遠かった。
『この地図上で移動するのに、どれくらいの時間がかかるのかわかんないけど……E、Fの場所に移動するまでに、魔王の勢力が拡大する恐れがありそうだな。それに結局、向かう途中で高難度の地区を通っちゃう可能性もあるし……
ここは大人しく、近い距離のところからやっちゃうか』
そう決めて、俺は近くの森を次の目的地と定めた。
『グラドシュフトの森、ね……』
頭の中の地図を閉じて、高級宿屋のベッドでそのままぐっすりと眠り。
翌朝姫に、「グラドシュフトの森って、知ってます?」と尋ねると。
「知ってます! この都市の北にある大きな森ですよね。以前は薬草や魔法水など貴重な資源が良く取れる場所だったんですが、今はもう……魔王の手先である魔物に支配されてますね……」との答えが返ってきた。
それから姫ははっと顔をあげて、「もしかしてユウト様、次はグラドシュフトの森を、魔王の手から取り戻すおつもりですか!?」と一発で当てられて。
俺は思わず、「え、まぁ……」と答えてしまう。
「普通の冒険者たちならまず無理だとは思いますが、しかしユウト様ならあるいは……
でも、場所はご存じなのですか?」
そう聞かれ、俺ははっとした。
地図はあるけれど、ナビはない。しまった。神に「ナビスキル」もつけてもらえばよかったと後悔するが、もう遅い。
「この街の北の方、ですよね。だいたいの場所ならわかるんですが……」
「でしたら!!」
と提案されて、今、姫を背に乗せて。
青空の下、まったり神竜飛行しているというわけだった。
「ユウト様、見えてきました!」
姫が前を指差す。
おっ、たしかに。ここまで来れば俺にもわかるぞ。
上空からでも見える、はっきりと緑がかった瘴気。
『あれが、グラドシュフトの森か……』
気のせいかもしれないが……いや、気のせいじゃないな。
俺は確信し、森から少し離れた場所に着陸する。
グラドシュフトの森を覆う瘴気は、ダミリアスの街にかかっていたものより、さらに濃かった。
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