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力でねじふせてゆくぅ!
しおりを挟むピィィィィイィィイッ!!!
高らかと鳴り響く戦闘開始の合図とともに、まずは赤毛の少女が、良く通る声で詠唱を始めた。
「火の精霊よ!我が内なる声にそなたの力を与えよ!
全てを焼き払え! 地獄の火炎鳥!」
足元に出現した炎の輪が少女の身体に沿ってゆっくりと上昇してゆき、彼女の掲げた右手の掌の上に集まる。一拍置いて、鼓膜が破れるほどの大きな音を立てて、そこから勢いよく神々しい炎の羽を広げた人間三人分の巨大な火の鳥が、空高くへと飛び出した。
「水の精霊よ、私の声に答えて!
撃ち落として! 鋭水の矢!」
対抗戦上にいた水色の髪の少女が自分の胸に手を当てると、少女の足元に水の竜巻が発生し、そこから五本の水柱が少女の上空へと螺旋を描きながら伸び、先端を鋭い矢のように尖らせ、風を切る音を立てて鳥へと向かって襲いかかる。
炎の鳥は咆哮を上げながら水の矢の隙間を抜い水の魔法を繰り出す少女へと高速で近づいてゆく。水の矢は1度ふわりと外側へと膨らみまるで蛇のように五本が一斉に鳥に絡みついた。しかし、火の温度によりシュウウウウと音を立て、蒸発し始める。
それを見て火の魔法を使う少女が八重歯を見せてニヤリと笑った。
「私の炎がそれしきの水で抑えられると思わないでよ!」
それに対し、水の魔法を使う少女も同じようににやりと笑った。
「『水』ならね!これでどう?!
凍っちゃえっ!!」
炎の鳥の周りを回転し螺旋を描きながら囲っていた水が、少女が氷魔法の詠唱をしたその瞬間にバキバキッと硬化する音が聞こえ一気に凍結した。その様子はさながら、大きな鳥籠のようで。閉じ込められた火炎鳥は嘴から炎を吐き、翼を羽ばたかせて灼熱の風を送るが氷は溶ける様子がない。動くことが出来ずに、鳥は観念した様にその場で大きく羽ばたいた。
「どうだ!」
「ええ!?ノンあんた、すご…!!」
水色の髪の少女に、赤髪の少女が賞賛を送ろうとした瞬間。
「全てを吹き飛ばして~。
春の一番風!」
「「?!」」
突如、彼女達の横から冷たい突風が吹いた。そのあまりの風圧に少女たちは思わず体勢を崩し、地面に手をついてしまう。
ドォンッ!
その衝撃で氷の柱が大きな音を立てて砕け、逃げ出した火の鳥も疾風に追われて煽られている内に消えてしまった。
「あら~。意外と効いたみたい~。」
のんびりした声に地面に座り込んだまま茫然としていた少女二人が振り返る。
「クリス…。」
「テルテル…。」
「ん~?」
まったりと返事をした少女は、白金髪を揺らして小首を傾げた。
「地獄に春で勝たないでよ!名前なんとかしてよ!」
「うわぁん!せっかく鳥籠作ったのにぃ!」
ピッピーーーーーーーーッ!
「はい、試合終了!」
先生の声に「また負けた…」と二人の少女が萎れる。
本日とても良いお天気だったので、本当は魔力放出の授業のみだったはずが、クラス全員対抗試合が始まったのだ。
その結果、他にも地面に転がっている少女達がいる中、立っているのはただ一人。
「強すぎるのよ、クリスは…。」
「ほんとにー!やっとネルネルの鳥さん捕まえたのに…。」
「ネイフィの鳥さんかわいかったね~。」
「地獄の鳥を可愛いとかやめてよ言わないでよ…。」
この三人が、この物語の主人公である。
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