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ノエリア
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先に主人公たちのことを少しだけお話します。よろしくお願い致しますm(_ _)m
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ノエリア・エルデバードは、アストリス国の侯爵家の一人娘として産まれた。
水色の髪、そしてその髪よりもさらに薄水色の瞳は、明らかに強い水属性の魔力の持ち主で。
ノエリアは産まれた直後、泣き出した瞬間に魔力が暴発し、部屋の中を一瞬で水で満たしてしまった。ぷかぷかと浮かぶ室内の置物や人間達。
幸いにも咄嗟に機転を効かせた産婆やメイドが風魔法を使い、小さな竜巻を起こして部屋中の窓から水を排出させた為大事には至らなかった。びしょびしょに濡れた室内と人々が残っただけ。けれどその魔力暴発で、ノエリアは国仕えになることが決まった。
今でこそ元気いっぱいなノエリアだが、彼女は幼い頃より常にぼんやりとした少女だった。
(ねむい…。どうしていつもこんなにねむいんだろ…。)
いつも水の膜の貼った内側にいるような世界の中に生きていて、そこは音も景色も匂いも味もぼやけていてはっきりとは分からず、ノエリアには遠い世界や夢の出来事のように感じられていた。
後で魔法を習い始めて分かった事だが、身体に見合わない膨大な魔力を持って産まれると、その器である身体が成長をして魔力を操れるようになるまでは常に身体から魔力がこぼれ落ちている状態であり、体力を削られてずっと疲れている状態になってしまうのだった。
彼女の意識が初めてはっきりしたのは、14歳の時。大きな魔力を持つ子供たちが魔法を学ぶ為の学園に入学し、そしてそこでネイフィアに出会った時だ。
入学式が終わったばかりの学園の中庭で、迎えを待ってたノエリアはその日も半ばぼんやりとしていた。
胸の前で手のひらを上に向けてそこに水の球を創り、ふよふよと浮かばせながら。陽が水の表面に反射して、水晶玉のように柔らかい光を湛えている。
すると目の前に影がさし、気になったノエリアがゆっくりと顔を上げると。
滲んで見える水の膜の向こう側、深紅の髪の同い年くらいの少女が、キラキラと煌めく宝石のような緑色の瞳でノエリアを覗き込んでいた。
「貴女の水魔法、綺麗ね…!見て!私は炎なの。」
ネイフィアは自分の手の上に小さな火の球を創り出した。それはやがてぱちぱちと小さな音が聞こえかと思うと、パッと花の形をした火花を散らして弾けて消えた。
「わあ…。すごい。」
「貴女の水でも出来るんじゃない?」
「わたしの水、も…?」
(やってみようと思ったことがなかった…。)
ノエリアは手のひらを暫くグーパーと握ったり開いたりした後。手のひらの上に浮かぶ水の球をじっと見つめ、そっと魔力を動かした。
すると、その球体は徐々に形を変え、美しい蝶の形へと変化した。ふわり、とその水の蝶は空気を掴むように羽ばたくと、ノエリアの目の前で少し浮かんで、そして空気に解けて消えた。
(あ。)
その瞬間。
自分を覆っていた水の薄い膜が頭の上から割れ、そのままノエリアの体を滑り落ち、パシャン、と音を立てて足元に全て落下した。
途端に、ノエリアの薄らぼやけた世界は色が鮮やかになり、そして音や匂いもはっきりと感じられるようになった。身体の中で渦巻いていた水の魔力が、外側に漏れることなくノエリアの身体の内側で隅々まで行き渡ったのが分かった。
頭をずっと覆っていた霧が晴れ、はっきりとした思考になった少女は魔法を操るということをその時知った。
鮮やかな赤い髪の少女は先程よりも目を輝かせ、蝶が溶けて行った空間を見ていたが、パッとノエリアの方を振り返った。はっきりと表情が見えて、ノエリアは目の前にいるのが相当な美人だと気がついた。
綺麗な人だ!とよく見えるようになった瞳でノエリアはじっと彼女を見つめた。初めて、ちゃんと見ることのできた人だったから。
「すごい…!あなた魔法上手ね!名前はなんというの?」
「わたしは、ノエリア。」
「私はネイフィアよ。よろしくね!」
「ネイフィア…ネイ…フィ…ネルネル?」
「…ネルネル?」
「ネルネル!」
「ネ、ネルネル?!な、なにそれ?!」
ノエリアの壊滅的なセンスのあだ名の付け方を、その時になってネイフィアは初めて知ったのだった。
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