貴方は私のお兄様?

須木 水夏

文字の大きさ
26 / 39

ディナー作り








「さて!本日はお兄様が帰宅されます!デザートはアイスですが、食事にハンバーグを作ろうと思います!」
「いつもにも増して元気ですね、お嬢様!」



 少女の勢いのある掛け声に、料理長とリオにふんわりと微笑まれてティファーニーナはむむっとなるも、ニヤけてしまいそうになる頬を引きしめるので精一杯だった。

 そりゃ元気にもなります。久しぶりに推しに会えるのだから。

 

「まず、玉ねぎをみじん切りにして飴色になるまで炒めましょう!」
「承知!」


 伯爵家の裏庭に干してある物を二玉切り取って持ってきた。ぶりんぶりの大きな玉葱をまな板の上に並べる。
 まず首部と茎を刃で落として皮をシューッと綺麗に剥き、それぞれをみじん切りにする。油大さじ一杯の油をひいたフライパンに、みじん切りにした玉葱を入れて強めの中火でゆっくりと混ぜながら炒めてゆく。軽く色づいてきたら、火を弱めてその後も焦げないように混ぜながら炒める。


「玉葱を綺麗に炒められると、自分の忍耐力の成長を感じるわ。」


 ご機嫌なティファーニーナは鼻歌を歌いながら玉葱を炒めてゆく。飴色になり甘味を増した玉葱をフライパンから皿に移し返し、少し広げて粗熱をとっておくのだ。熱いままだと混ぜる時に火傷してしまうから。


 玉葱の粗熱が取れたら、ボウルに玉葱、卵、ひき肉を合わせ入れ、そこにナツメグ、クミン、コリアンダーをひとつまみ、レッドペッパー、ブラックペッパーをパラパラと適量、おろしニンニク少々、砂糖と塩を小さじ半分ずつ、パン粉適量、牛乳を大さじ五~六杯を入れて、石鹸で洗って清潔にした手で、しっかりと力を込めながら捏ねてゆく。


「美味し~~くなりますように。」



 せっせせっせと、根気よく混ぜて全体的に均一に混ざって粘り気が出たところで、作る個数にボウルの中でざっくりと分ける。手のひらの上に分けたタネを乗せ、まず真ん中にチーズを乗せてそれを内側に包み込むようにして楕円形に丸めたら綺麗に形を整え、片手から片手へと投げるように交互に打ち付けて、空気を抜く。最後に、楕円形のハンバーグの中央部分を軽く押さえたら成形の完了だ。残りのタネも同じように成形してゆく。



「チーズ入りなんですね。」
「そう、食べる時に中からチーズが溢れ出して、美味しいのよ。」
 


 フライパンに薄く油をひいて中火にかけ、熱くなったらハンバーグを形が崩れないようにそっと並べ入れる。その途端にジュウッと肉の焼けるよい音がキッチンに響く。

まず、片面に焼き色をつけてゆく。火加減は弱火を少し強くしたくらいで、二~三分ほど火を入れたら、焼いていた面をフライ返しで持ち上げて確認。こんがり焦げ目がついていたらそのままフライ返しでそうっとひっくり返す。そして、全てを裏返したら弱火にしてそのまま蓋をし、蒸し焼きにしていく。


「十分くらい、このまま見ていていちょうだい。」
「承知です。」
「付け合せの人参グラッセはどうかしら?リオ?」
「はいお嬢様!今から煮詰めていくところです!」



 鍋に砂糖大さじ1、塩ひとつまみ、バター2かけを水に入れてそこに角を取られて少し丸みを帯びた人参を入れて、弱火で2二十分弱煮ていたそれは、見習いのリオがサラダ作りの合間にちょこちょこ見ていた。ティファーニーナが彼を見ると、木べらでゆっくりかき混ぜながら水気を飛ばしている最中だった。


「形が崩れないように気をつけてね。」
「はい!」


 煮詰めていくと、艷めく宝石のような人参のグラッセが出来上がる。茹でたブロッコリーと共にハンバーグの横に添えると、あらビックリ。彩りが途端に美しくなるので、ハンバーグ達お肉にとって彼らは最強の仲間だ。


「そろそろハンバーグの様子はどうかしら?」
「良い匂いですね!お嬢様!」
「うふふ、間違いなく美味しいはずよ。」

 
 フライパンの蓋を開けると、ジュワーという音が響く。用意した木の串をハンバーグの中程まで刺して表面を少しだけ押すと、中から透明な肉汁がブワッと溢れ出した。中でチーズも良い感じに溶けていそうである。


「よし、準備は完了ね!配膳の直前に少し温め直してちょうだい。」
「承知致しました。」


 これが、昼食後の時点の会話である。マーサに手伝ってもらいミモザの刺繍の入った柔らかな室内ドレスに着替えて、一階の応接間でレオンハルトの帰りをソワソワしながら待っていた。すると。



「お嬢様、レオンハルト様がご帰宅されました。」
「!!!」


 開けておいた扉から執事がぴょこりと顔を出し伝えてくれた。






 



 

あなたにおすすめの小説

公爵家の養女

透明
恋愛
リーナ・フォン・ヴァンディリア 彼女はヴァンディリア公爵家の養女である。 見目麗しいその姿を見て、人々は〝公爵家に咲く一輪の白薔薇〟と評した。 彼女は良くも悪くも常に社交界の中心にいた。 そんな彼女ももう時期、結婚をする。 数多の名家の若い男が彼女に思いを寄せている中、選ばれたのはとある伯爵家の息子だった。 美しき公爵家の白薔薇も、いよいよ人の者になる。 国中ではその話題で持ちきり、彼女に思いを寄せていた男たちは皆、胸を痛める中「リーナ・フォン・ヴァンディリア公女が、盗賊に襲われ逝去された」と伝令が響き渡る。 リーナの死は、貴族たちの関係を大いに揺るがし、一日にして国中を混乱と悲しみに包み込んだ。 そんな事も知らず何故か森で殺された彼女は、自身の寝室のベッドの上で目を覚ましたのだった。 愛に憎悪、帝国の闇 回帰した直後のリーナは、それらが自身の運命に絡んでくると言うことは、この時はまだ、夢にも思っていなかったのだった―― ※月曜にから毎週、月、水曜日の朝8:10、金曜日の夜22:00投稿です。 小説家になろう様でも掲載しております。

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

⚪︎
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

あなたの隣に私は必要ですか?

らんか
恋愛
政略結婚にて、3年前より婚約し、学園卒業と共に嫁ぐ予定であったアリーシア。 しかし、諸事情により結婚式は延期され、次の結婚式の日取りさえなかなか決められない状況であった。 そんなアリーシアの婚約者ルートヴィッヒは、護衛対象である第三王女ミーアの傍を片時も離れようとしない。 月1回の婚約者同士のお茶会もすぐに切り上げてしまい、夜会へのエスコートすらしてもらった事がない。 そんな状況で、アリーシアは思う。 私はあなたの隣に必要でしょうか? あなたが求めているのは別の人ではないのでしょうかと。

【完結】ハーレム構成員とその婚約者

里音
恋愛
わたくしには見目麗しい人気者の婚約者がいます。 彼は婚約者のわたくしに素っ気ない態度です。 そんな彼が途中編入の令嬢を生徒会としてお世話することになりました。 異例の事でその彼女のお世話をしている生徒会は彼女の美貌もあいまって見るからに彼女のハーレム構成員のようだと噂されています。 わたくしの婚約者様も彼女に惹かれているのかもしれません。最近お二人で行動する事も多いのですから。 婚約者が彼女のハーレム構成員だと言われたり、彼は彼女に夢中だと噂されたり、2人っきりなのを遠くから見て嫉妬はするし傷つきはします。でもわたくしは彼が大好きなのです。彼をこんな醜い感情で煩わせたくありません。 なのでわたくしはいつものように笑顔で「お会いできて嬉しいです。」と伝えています。 周りには憐れな、ハーレム構成員の婚約者だと思われていようとも。 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 話の一コマを切り取るような形にしたかったのですが、終わりがモヤモヤと…力不足です。 コメントは賛否両論受け付けますがメンタル弱いのでお返事はできないかもしれません。

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

彼は亡国の令嬢を愛せない

黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。 ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。 ※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。 ※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。

次こそあなたと幸せになると決めたのに…中々うまくいきません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のシャレルは、第二王子のジョーンによって無実の罪で投獄されてしまう。絶望の中彼女を救ってくれたのは、ずっと嫌われていると思っていた相手、婚約者で王太子のダーウィンだった。 逃亡生活を送る中、お互い思い合っていたのにすれ違っていた事に気が付く2人。すれ違った時間を取り戻すかのように、一気に距離を縮めていく。 全てを失い絶望の淵にいたシャレルだったが、ダーウィンとの逃避行の時間は、今まで感じた事のないほど、幸せな時間だった。 新天地マーラル王国で、ダーウィンとの幸せな未来を思い描きながら、逃避行は続く。 そしていよいよ、あと少しでマーラル国というところまで来たある日、彼らの前にジョーンが現れたのだ。 天国から地獄に叩き落されたシャレルは、絶望の中生涯の幕を下ろしたはずだったが… ひょんなことから、ダーウィンと婚約を結んだ8歳の時に、戻っていた。 2度目の人生は、絶対にダーウィンと幸せになってみせる、そう決意したシャレルだったが、そううまくはいかず、次第に追い詰められていくのだった。 ※シャレルとダーウィンが幸せを掴むかでのお話しです。 ご都合主義全開ですが、どうぞよろしくお願いします。 カクヨムでも同時投稿しています。

2度目の結婚は貴方と

朧霧
恋愛
 前世では冷たい夫と結婚してしまい子供を幸せにしたい一心で結婚生活を耐えていた私。気がついたときには異世界で「リオナ」という女性に生まれ変わっていた。6歳で記憶が蘇り悲惨な結婚生活を思い出すと今世では結婚願望すらなくなってしまうが騎士団長のレオナードに出会うことで運命が変わっていく。過去のトラウマを乗り越えて無事にリオナは前世から数えて2度目の結婚をすることになるのか? 魔法、魔術、妖精など全くありません。基本的に日常感溢れるほのぼの系作品になります。 重複投稿作品です。(小説家になろう)