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探さないと決めた
転生4度目
しおりを挟む五度目の僕は、月の宇宙基地で生まれた。
「ほら見てハリー。貴方の瞳の色よ」
幼い僕を抱きあげ、地球を見ながら母は微笑んでそう言った。吸い込まれそうな程に暗くどこまでも永遠に続く広い宇宙に、ぽっかりと浮かぶ美しい青い星。
ハリオットと名付けられた僕は、宇宙飛行士兼地質博士をしている両親より産まれた新世代だった。
毎日、目が覚めると目の前に地球が見える。青い、自分の生きる月よりも遥かに大きな星。夜になると、地上がチカチカと光って見えた。それでも百年前よりはその光の数は幾分少ないらしい。何故なら、地上に住む人が減ってきているからだ。
「行ってみたいな、地球に。」
「…そうね。いつか一緒に行きましょう。」
母はそう言ってくれたけれど。
どうやら、地球から離れて産まれた僕達新世代は、彼の星の重力に耐え切れる人体構造をしていない為、そこを訪れるには内蔵が押し潰されないように重力を調整する器具をつけ、強化スーツを着用しなければならなかった。
父と母が地球出身者であれば、1/2の確率で体構造は地球に適していたいうデータもあったけれど、僕の場合は両親共に月で生まれていたから、仕方の無いことだったのかも知れない。
「…逢いたいな。」
「ん?誰に?」
学園の外壁の縁で隣に座り、同じように地球を見上げていたトーマスに聞かれて、僕は目を瞬かせ。そして、小首を傾げた。
「…分からない。」
「なんじゃそりゃ。」
「…そう言うのってない?逢いたいなあって思うこと。」
「誰かも分からない人物に?ないね。」
「…。小説があるんだよ、そう言う。」
ストン、と塀から飛び降りて、中庭へと歩き出しながら僕は呟くように言った。
「地球人の作品なんだけどさ。微かな記憶しかないけれど、ずっと逢いたい人がいるんだって。覚えてないけど、大切な人がいるんだって。」
「…知らないぞ、そんな話。」
「本を読めよ、トム。」
「めんどくせえよ、ゲームしてる方が楽しいし。…ちなみにそれ、何年前の作品?」
「陽光暦2456年。」
「は?やば、500年くらい前じゃん。そんなん知るわけねー。」
そう言いながらもトーマスは自分の耳元に着いている記憶媒体に指を当てていた。僕らの記憶は、全てそこにインプットされている。知っているものも知らないものも全て。
「なになに?…ステファニー・マルゴット・ナイト。地球人の登山家兼、旅行ライター。そして小説家。『記憶の航海』の著者。」
「そう、その本。」
「こんなの、よく探して読むよなあお前。」
「面白いじゃん、地球の話。」
「…まあ、言えてる。」
ポンポンと地面を蹴りながら、二人は街灯の並ぶ庭園を通り過ぎ、学校の校門前まで進む。月面は地球と同じように灯りで照らされているけど、大気のないその空は深い闇でしかない。地球の内側から見たら、美しい青い空が見えるのだと言う。風があり、その風が運んでくる匂いも植物や生き物の形も色も、全てが月とは異なっているのだと。
「行ってみたいよな。」
「研究が進めば、だよな。」
小さい頃に母に「地球に行きたい」と話した時に、少し悲しそうな困った顔をされた理由を僕はもう知っている。納得はしていたけれど、それと誰かに逢いたいと思う気持ちはまた別だと感じていた。
ここではない、他の惑星でもない。きっと、あの青い星の空の下に、その人はいる。ハリオットはいつもそう思っていた。確信めいたことは何もないというのに、不思議な話だ。
月には存在しないが、地球で言う季節が流れ僕は大人になった。
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