魔法少女世界線 Re:START 〜勇者も魔法少女もやれってか!〜

お花畑ラブ子

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第2章魔法少女見習いと大海の怪物

フクロ教授の特別授業

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「っと、その前に授業料をいただこう」
「え?お金なん、てぇ?!」
 鋭く飛んできた掌底をかわす。
「いきなりなにを」
「これを避けるか、さすがだなぁ。かっかっか。魔法少女見習いの実力ためさせてくれ。ひっく。一撃でも当てたら君はテスト免除。5分当てられなかったら赤点だらぁ!」
「うわああ!」
 さっきの掌底は一撃目は魔力を込めず、二撃目は魔力を込めて、打ち出した。やはり魔力込の方が反応がいいな。勇者の直感ってやつか。真面目に修行をしてるようだ。学生にしてはよく動いている。まぁ、学生にしてはだが。
「ほんとに酔っ払いですか?」
「酔ってない。酔ってないのらああ」
 そんなふうに嘯きつつ、魔力を使って攻撃の回転数を上げていく。さぁどうする。
「早っ!迷ってられない……か。旧防御(シールド)」
 さくらこは杖を出しドーム状のシールドを張る。
「へぇ」
 面に対して高い防御をほこる新魔法のほうではなく、早く360度カバーできる旧魔法を選択したか。新魔法を推進するマジブロッサム内は旧魔法は嫌われてると思ったが。まぁ、早い分脆いんだがな。力を込め、シールドを割る。
「っ?!」
 その拳はさくらこには通らない。さくらこはニヤリと笑う。シールドの下にもう1枚シールド。勢いの死んだ拳は簡単に止まる。
「試験免除いただきますよ!魔法種(シード)・拘束紐(バインド)!」
 さくらこの杖から紐が現れ、フクロの腕にまきつこうとする。だが、フクロの腕には絡まらず、見えない何かに阻まれる。
「ጿ ኈ  」
 なんて言った?
「?!」
 何かによって弾かれる。フクロはそのまま、ひとっ飛びに迫ってくる。さくらこは杖を振るう。得体の知れない力。たぶん、さっきより強い。
「魔法種(シード)・盾(シールド)!!」
 前面に盾を張る。
「んな脆い盾張ってんじゃねーよ。」
 素手の拳にさくらこの盾は砕かれ、殴り飛ばされる。シールドの上で威力が減っているとしても、人間の身体が浮くほどのパワーってなんなのこの人。
「嘘ぉ?!っなら」
 さくらこは魔力を体内で練り上げ、走り出す。一撃当てるだけならこの速さで、押し切る。さくらこのスピードがあがる。そのままぐるぐるとフクロの周りを走り、タイミングを伺う。が、そんな様子をつまらなそうにフクロは見ていた。
「なんで、勇者魔法をつかわねーんだよ。春風。なめてんのか。ちっ、本気をだしてもらわねーと張り合いがねーよ。こちとら、この境地にくるまで相当かかってんだから」
「?」
「まさか、すっとぼけてんのか!春風、ጿ ኈ ቼ ዽ」
 まただ、聞き馴染みのない言葉。
「憂鬱だ」
 空気が重くなり、さくらこは悪寒を感じる。フクロの視線はとても冷ややかだった。
「こんなのが、今の世界線の勇者継承者(ブレイバー)か。憂鬱だ……この世界線も魔女に滅ぼされるのかよ」
「何勝手に盛り上がって、萎えちゃってんだ」
 さくらこは背後からフクロに襲いかかる。
「ጿ ኈ ቼ ዽいや、今風にいうと勇者魔法…憂鬱一撃(ブルーボム)」
 彼女は見当違いの方向にゆったりと拳を繰り出す。
「なにやっ…!!」
 突如さくらこは何かに体をがっしりと掴まれ、気づいたらフクロの前に浮かんでいた。彼女の緩いこぶしは、さくらこを地面に叩きつけそのまま地面を割るほどの威力をみせた。さくらこは地面に伏したままうごかない。
「……かは」
「手加減はした。意識はあんだろ。少しは修行したみたいだが。赤点は勘弁してやる。てめぇはお気楽に試験受けて、周りの無能どもに守られてろ。」
「みんなは、む、のう、じゃ、ない…」
「へー、他人のために怒れるタイプの人間か。理解できないがなぁ。お前が弱いと、関わってる人間の程度が知れるぜ。はー、辞表出しにいくか。ガリレオの野郎。何が新たな希望だよ。期待外れだ。」
 さくらこは激痛の中無力感に苛まれていた。今までやってきたことは無駄だったのか。そしてなにより、仲間や先輩たちが、自分のせいで低く見られることは不甲斐ない。
「待って、いや待て、よ。逃げん、なよ」
「……あ?」
 フラフラと立ち上がり、さくらこは空中から剣を取り出す。
「今のは、ハンデだ。はぁ、はぁ、あたしは剣士だ。ぶった切っても、問題ないですよね。」
「かまわねーよ。届きゃしないんだからな。そんなヘボ剣術」

「それが、勇者の剣、か」
 フクロ教授は剣を見つめ、一瞬何かを言いかけた。古い大剣。柄こそ古いが刀身は手入れがよくされており、美しかった。
「はあ。!」
「突きとみせかけての、上段からの一撃。」
 足を下げ身体を横にして躱す。身体の横をすぎる刀に見向きもせずにカウンターで顔面に拳を叩きつける。現会長の動きはこないだ見せてもらった。型さえ分かってしまえば、脅威ではない。あの剣技は魔法あってのものだ。春風さくらこの剣は、弱い。
「ぐぅ、……らぁ!」
 鼻血を流しつつも、食らいつくように横に振り抜く刀を飛んでかわす。ふわりと跳ぶ彼女を目で追う。
「はっ!まるで猛獣だな!早く勇者魔法を使えって」
 さくらこの頭を踏んづけて、彼女の背面にいく。
「そんな易易使えてたら、苦労は」
「聞いて呆れるな。チャンバラごっこならあの、クソ雑魚な生徒会長と遊んどけ」
「ばかに!!」
「そりゃあするさ。いまのお前は何のために剣を振ってる?」
 さくらこの剣が止まる。なんのために。わたしは仲間のために。
「仲間のためといいつつ、自分の不甲斐なさの八つ当たりしてるだけだろ。だから、程度が知れるんだよ」
「わたしは別に好きで、こんな」
「オクトにも、そんなこと言えるのか!」
 彼女はまっすぐさくらこを見た。怒っているのは私じゃない。彼女の方だ。涙を溜めた目でさくらこを見ていた。
「フクロ教授、あなたはいったい。」
 はっとした彼女は、天を仰いで息をはいた。
「ちっ、あーあーあー。興ざめだ。心が乱れちまった。ここまでだな」
 どうやらこれ以上戦う意思はないようだった。フクロは瓶を取り出し、中の紫色の液体をさくらこにぶっかけた。
「なん、臭っ!なにこれ、」
「龍の卵を発酵させて、薬草を練りこんでる。よく効くぞ」
 雑巾に卵を塗りたくって、真夏にベランダで干して腐らせたようなえぐい匂い。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛鼻がア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
 のたうち回ったさくらこを地面に転がし、煙草に火をつける。しばらくして、悲鳴が聞こえなくなり、さくらこはフクロに尋ねた。
「……先生は、勇者魔法を使えるんですか」
「真似事だけどな」
 はじめて、勇者魔法を知っている人を見つけた。
「教えてください!!!勇者って何なんですか?勇者魔法って!魔女は、勇者は、わたしは、」
「お、おい、落ち着けっての」
 さくらこは頭を下げた。
「正直、頭打ちで、次が見えてこないんです!!」
 頭をかきながらフクロ教授は聞いた。
「お前、まさか、勇者魔法を使えないのか。怪人をぶった斬ったって聞いたが」
「はい……あの時は、ただ必死で」
「自覚が無い、覚醒。有り得なくは無い、か。剣の記憶に呼応した形か?あー、そういうことか。はぁ、あのタコ。昔からの口下手は治ってなかったか。はは。剣の記憶か。誘って置いてなんだが、まずはテストをパスしてからだな。春風。」
「そんな」
「……焦んな。私もお前に伝えるために準備がしたい。」
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