青い獣の檻でSSSランクハイスペ退役軍人に拾われた駄犬の俺は愛に縋る

子犬一 はぁて

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第一部

7 ボロ部屋

「三週間お疲れ様でした」

「……」

 措置入院を無事に終え秀治は病院を後にする。入院中は排泄もシャワーもずっと監視付きで生きた心地がしなかった。でも仕方ない。自分が死ねなかったせいだ。

 久しぶりに足を踏み入れた自宅のボロアパートは埃っぽくてくしゃみが出るほどだった。

 築四十年の四畳の和室。トイレももちろん和式だ。風呂はなく、秀治は歩いて五分の銭湯で体を清めていた。アルバイトをしていた頃の貯金でなんとか退去は免れているが、あと半年も住むことはできないだろう。

 大家の老夫婦は生活感がないほど静かに暮らしていて、少し不気味だった。ここは普通の人間が住むようなアパートではない。若い人間が住むのが珍しいのか、入居したての頃は根掘り葉掘り質問攻めにされたものだ。それも今思えば懐かしいというもの。最近は顔を合わせることもない。
 
 床に着く前に蛍光灯が光る天井をじっと見つめて物思いに耽る。いつもの習慣だった。

 いつ死のうか。もう少し他の場所を探すべきだろうか。最後にステーキでも食べてみようか。どうせ死ぬなら、海にでも行って初めてのかき氷でも味わってみようか。

 様々なことが頭をよぎる。でも秀治の頭の中には最後に死が待っていた。

 普通ならば、死ぬ前にセックスしてみたいだとか、美味いものを腹一杯食べたいだとか。考えるだけで顔がにやけるのかもしれないが秀治は違った。常に無表情で、虚な瞳で考えていた。

 そうだ。来週の月曜にまたあのビルに行こう。そこで、ほんとうに最後にしよう。目を閉じて眠りにつく前に、なぜかあの大きな手のひらを思い出してぎゅっと自分の拳を握った。
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