6 / 72
6 まおうさまとの出会い(2)
しおりを挟む
「阿月様には、この世界のこともお話したほうがよいですね」
「はい」
ライアが静かに語り出す。
「阿月様は魔王ジス様により、冥界に召喚されました。冥界とは黄泉の国。地上で亡くなった方々の憩いの場です。怖いことはありませんよ。この世界には、ここ冥界と、天上の国という2つの世界があります。この2つは、太陽と月のように混じり合うことはめったにありません」
「そうなんですね。そうなると、僕はなぜ魔王ジス様に召喚されたのでしょう?」
ライアはしばし考える素振りをする。
「そうですね。自分も詳しい理由は聞いていないので、今度直接ジス様に聞いてみたほうがよいかと思います」
「わかりました。詳しく説明してくれてありがとうございます!」
僕はぺこりとライアさんにお辞儀する。おばあちゃんから、「ありがとう」と「ごめんなさい」をしっかり言える子になって、と育ててもらったことを思い出したからだ。
「こちらこそ。阿月様がおいしそうにパンを食べてくださり、自分も嬉しく思います」
ライアの銀髪の上に天使の輪っかのような反射が見える。まるで狼のたてがみのようだと錯覚した。
「魔王様とはいつお話できますか?」
「ジス様もご多忙な方なので、今日の夜にはお話できるかもしれません。またお部屋にお迎えに行きますね。それまで、今日からはこちらのお部屋が阿月様のお部屋になりますので、ごゆっくりお過ごしください。では、失礼します」
パタン、とドアが閉まり部屋には元の静寂が訪れた。
夜に会うってことはあと6時間くらいもあるなあ。どうしよう。
阿月はドアの近くにかけられた姿見で自分の姿をまじまじと目視する。阿月は長袖のアイボリー色のチュニックのようなものを身にまとい、腰から下にはややタイトめのサラブレッドの色のようなチャコールグレーのスキニーを履いている。自分で着替えた記憶がないから、おそらく魔王様かライアが着替えさせてくれたんだと思うけど……。恥ずかしいな、まだ出会ってまもない人に身体を見られるというのは。
思い返してみれば、阿月はオメガとして23年生きてきたにも関わらず、運命の番と出会うどころかアルファとまともにデートしたこともない。オメガの中にも序列があり、顔が良く、家庭的で明るい性格のオメガがどんどんとアルファに迎えられていく。僕のような、地味で、暗めの陰キャオメガなんて迎えてくれるところはなかった。なるべく、メンズメイクとかもしてるし、黒髪マッシュのヘアセットだって頑張ってるのに……。
そんかことをもやもやと考えていると、いつのまにか部屋に夕陽が差し込む時間帯になっていた。
あと、少しで魔王様に会える……。
あの優しい声、もう1回聞きたい。
僕はベッドに横になり、部屋に飾られている青い花々を見つめる。勿忘草のように、淡いソーダ色。
「はい」
ライアが静かに語り出す。
「阿月様は魔王ジス様により、冥界に召喚されました。冥界とは黄泉の国。地上で亡くなった方々の憩いの場です。怖いことはありませんよ。この世界には、ここ冥界と、天上の国という2つの世界があります。この2つは、太陽と月のように混じり合うことはめったにありません」
「そうなんですね。そうなると、僕はなぜ魔王ジス様に召喚されたのでしょう?」
ライアはしばし考える素振りをする。
「そうですね。自分も詳しい理由は聞いていないので、今度直接ジス様に聞いてみたほうがよいかと思います」
「わかりました。詳しく説明してくれてありがとうございます!」
僕はぺこりとライアさんにお辞儀する。おばあちゃんから、「ありがとう」と「ごめんなさい」をしっかり言える子になって、と育ててもらったことを思い出したからだ。
「こちらこそ。阿月様がおいしそうにパンを食べてくださり、自分も嬉しく思います」
ライアの銀髪の上に天使の輪っかのような反射が見える。まるで狼のたてがみのようだと錯覚した。
「魔王様とはいつお話できますか?」
「ジス様もご多忙な方なので、今日の夜にはお話できるかもしれません。またお部屋にお迎えに行きますね。それまで、今日からはこちらのお部屋が阿月様のお部屋になりますので、ごゆっくりお過ごしください。では、失礼します」
パタン、とドアが閉まり部屋には元の静寂が訪れた。
夜に会うってことはあと6時間くらいもあるなあ。どうしよう。
阿月はドアの近くにかけられた姿見で自分の姿をまじまじと目視する。阿月は長袖のアイボリー色のチュニックのようなものを身にまとい、腰から下にはややタイトめのサラブレッドの色のようなチャコールグレーのスキニーを履いている。自分で着替えた記憶がないから、おそらく魔王様かライアが着替えさせてくれたんだと思うけど……。恥ずかしいな、まだ出会ってまもない人に身体を見られるというのは。
思い返してみれば、阿月はオメガとして23年生きてきたにも関わらず、運命の番と出会うどころかアルファとまともにデートしたこともない。オメガの中にも序列があり、顔が良く、家庭的で明るい性格のオメガがどんどんとアルファに迎えられていく。僕のような、地味で、暗めの陰キャオメガなんて迎えてくれるところはなかった。なるべく、メンズメイクとかもしてるし、黒髪マッシュのヘアセットだって頑張ってるのに……。
そんかことをもやもやと考えていると、いつのまにか部屋に夕陽が差し込む時間帯になっていた。
あと、少しで魔王様に会える……。
あの優しい声、もう1回聞きたい。
僕はベッドに横になり、部屋に飾られている青い花々を見つめる。勿忘草のように、淡いソーダ色。
38
あなたにおすすめの小説
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。
オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。
【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます
大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。
オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。
地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──
新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました
水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。
新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。
それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。
「お前は俺の運命の番だ」
彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。
不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる