緋色の魔王(α)と暴君王子(α)の寵愛は愛に飢えた僕(Ω)を離してくれない

子犬一 はぁて

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初めての遠征

「いよいよでちな。阿月様」

 星のついたステッキを僕の肩に、トントンと2回叩きながらきなこくんが神妙な顔をして呟く。

「そうだね。初めての遠征で緊張するけど、きなこくんに教わった防御術や思考力を活かして頑張るよ。いつも優しく勉強を教えてくれてありがとうね」

 僕は王子の隣の部屋に越してきてから2ヶ月目にして、初の国外遠征に行くことになった。王子の従者の1人として。この日のために、きなこくんは丁寧にフォリーヌ王国や、隣国の情勢について教えてくれた。

「ちょっと寂しくなるでち。だから……」

 ぽん、という音を鳴らしてきなこくんが人型からアザラシの姿に戻る。

「存分にふみふみしてよいでちよ」

 両手のおててをぱーっと広げてハグを待ってくれている。僕は遠慮なくその小柄な身体を抱っこして、ほわほわの毛を堪能する。

 すると、ガチャリと部屋のドアノブが回された。

「そろそろ行くぞ。……なんだまたお前ときなこは俺をさし置いてイチャコラしてるのか」

 少し不服そうに眉を引き攣る王子を見て、僕は渋々ときなこくんをベッドの上に下ろす。きなこくんの瞳はきゅるんと僕を見つめてくる。

 ダメだ……かわいすぎる。

「じゃあね。きなこくん行ってきます」

「いってらっしゃいでち」

 ふりふり、と片方のおててを振って僕のことを見送ってくれた。

 王子の後ろについていくと、王宮の外門の前に黄金色の馬車が見えた。真っ白な白馬が繋げられている。

「乗れ」

「うん」

 王子の声に導かれるようにして、馬車の中に入る。中は思ったよりも広くて、これなら初めての遠征も大丈夫かもしれない、と思ったときだった。

「油断はするなよ。今回は隣国の同盟国での王との謁見が目的だが、道中何が起こるかは予測できない。自分の身は自分で守るように。それと、俺の傍から絶対に離れるな」

「うん。気をつける」

 僕たちを運ぶ馬車は2日かけて同盟国のチュロッキー王国へ辿り着いた。幸い、道中では山賊に襲われることもなく、無傷のまま3000人の兵がチュロッキー王国の国門を通ることができた。

「わぁ。みんな耳としっぽが生えてるんだ」

「チュロッキー王国はうさぎの獣人の国だからな。たまに移民の犬や猫の獣人も見かける」

 王子がチュロッキー王国の王と謁見する間、僕は用意された部屋に泊まることになった。




「すごい…真っ白でもっふもふだあ」

 用意された部屋は、うさぎの白い毛のようなふわふわとしたもので満ちていた。大理石のソファも、猫足のローテーブルも、ふわふわともこもこがいっぱいくっついている。僕はそれを撫でながら、不意にメビウスのことを思い出す。

 冥界の皆は元気にしているだろうか……。

 そんな不安が過ぎったとき、僕の心臓がばくんと大きく跳ねた。

「う、嘘……まさか……」

 発情期を迎えてしまったのだ。

 まずい、隣国で発情期を迎えるのは初めてだ。

「鍵、かけなきゃっ」

 言うことをきかない気だるい身体を動かして、部屋の鍵をかけようとしたその時。
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