41 / 84
初めての遠征
「いよいよでちな。阿月様」
星のついたステッキを僕の肩に、トントンと2回叩きながらきなこくんが神妙な顔をして呟く。
「そうだね。初めての遠征で緊張するけど、きなこくんに教わった防御術や思考力を活かして頑張るよ。いつも優しく勉強を教えてくれてありがとうね」
僕は王子の隣の部屋に越してきてから2ヶ月目にして、初の国外遠征に行くことになった。王子の従者の1人として。この日のために、きなこくんは丁寧にフォリーヌ王国や、隣国の情勢について教えてくれた。
「ちょっと寂しくなるでち。だから……」
ぽん、という音を鳴らしてきなこくんが人型からアザラシの姿に戻る。
「存分にふみふみしてよいでちよ」
両手のおててをぱーっと広げてハグを待ってくれている。僕は遠慮なくその小柄な身体を抱っこして、ほわほわの毛を堪能する。
すると、ガチャリと部屋のドアノブが回された。
「そろそろ行くぞ。……なんだまたお前ときなこは俺をさし置いてイチャコラしてるのか」
少し不服そうに眉を引き攣る王子を見て、僕は渋々ときなこくんをベッドの上に下ろす。きなこくんの瞳はきゅるんと僕を見つめてくる。
ダメだ……かわいすぎる。
「じゃあね。きなこくん行ってきます」
「いってらっしゃいでち」
ふりふり、と片方のおててを振って僕のことを見送ってくれた。
王子の後ろについていくと、王宮の外門の前に黄金色の馬車が見えた。真っ白な白馬が繋げられている。
「乗れ」
「うん」
王子の声に導かれるようにして、馬車の中に入る。中は思ったよりも広くて、これなら初めての遠征も大丈夫かもしれない、と思ったときだった。
「油断はするなよ。今回は隣国の同盟国での王との謁見が目的だが、道中何が起こるかは予測できない。自分の身は自分で守るように。それと、俺の傍から絶対に離れるな」
「うん。気をつける」
僕たちを運ぶ馬車は2日かけて同盟国のチュロッキー王国へ辿り着いた。幸い、道中では山賊に襲われることもなく、無傷のまま3000人の兵がチュロッキー王国の国門を通ることができた。
「わぁ。みんな耳としっぽが生えてるんだ」
「チュロッキー王国はうさぎの獣人の国だからな。たまに移民の犬や猫の獣人も見かける」
王子がチュロッキー王国の王と謁見する間、僕は用意された部屋に泊まることになった。
「すごい…真っ白でもっふもふだあ」
用意された部屋は、うさぎの白い毛のようなふわふわとしたもので満ちていた。大理石のソファも、猫足のローテーブルも、ふわふわともこもこがいっぱいくっついている。僕はそれを撫でながら、不意にメビウスのことを思い出す。
冥界の皆は元気にしているだろうか……。
そんな不安が過ぎったとき、僕の心臓がばくんと大きく跳ねた。
「う、嘘……まさか……」
発情期を迎えてしまったのだ。
まずい、隣国で発情期を迎えるのは初めてだ。
「鍵、かけなきゃっ」
言うことをきかない気だるい身体を動かして、部屋の鍵をかけようとしたその時。
星のついたステッキを僕の肩に、トントンと2回叩きながらきなこくんが神妙な顔をして呟く。
「そうだね。初めての遠征で緊張するけど、きなこくんに教わった防御術や思考力を活かして頑張るよ。いつも優しく勉強を教えてくれてありがとうね」
僕は王子の隣の部屋に越してきてから2ヶ月目にして、初の国外遠征に行くことになった。王子の従者の1人として。この日のために、きなこくんは丁寧にフォリーヌ王国や、隣国の情勢について教えてくれた。
「ちょっと寂しくなるでち。だから……」
ぽん、という音を鳴らしてきなこくんが人型からアザラシの姿に戻る。
「存分にふみふみしてよいでちよ」
両手のおててをぱーっと広げてハグを待ってくれている。僕は遠慮なくその小柄な身体を抱っこして、ほわほわの毛を堪能する。
すると、ガチャリと部屋のドアノブが回された。
「そろそろ行くぞ。……なんだまたお前ときなこは俺をさし置いてイチャコラしてるのか」
少し不服そうに眉を引き攣る王子を見て、僕は渋々ときなこくんをベッドの上に下ろす。きなこくんの瞳はきゅるんと僕を見つめてくる。
ダメだ……かわいすぎる。
「じゃあね。きなこくん行ってきます」
「いってらっしゃいでち」
ふりふり、と片方のおててを振って僕のことを見送ってくれた。
王子の後ろについていくと、王宮の外門の前に黄金色の馬車が見えた。真っ白な白馬が繋げられている。
「乗れ」
「うん」
王子の声に導かれるようにして、馬車の中に入る。中は思ったよりも広くて、これなら初めての遠征も大丈夫かもしれない、と思ったときだった。
「油断はするなよ。今回は隣国の同盟国での王との謁見が目的だが、道中何が起こるかは予測できない。自分の身は自分で守るように。それと、俺の傍から絶対に離れるな」
「うん。気をつける」
僕たちを運ぶ馬車は2日かけて同盟国のチュロッキー王国へ辿り着いた。幸い、道中では山賊に襲われることもなく、無傷のまま3000人の兵がチュロッキー王国の国門を通ることができた。
「わぁ。みんな耳としっぽが生えてるんだ」
「チュロッキー王国はうさぎの獣人の国だからな。たまに移民の犬や猫の獣人も見かける」
王子がチュロッキー王国の王と謁見する間、僕は用意された部屋に泊まることになった。
「すごい…真っ白でもっふもふだあ」
用意された部屋は、うさぎの白い毛のようなふわふわとしたもので満ちていた。大理石のソファも、猫足のローテーブルも、ふわふわともこもこがいっぱいくっついている。僕はそれを撫でながら、不意にメビウスのことを思い出す。
冥界の皆は元気にしているだろうか……。
そんな不安が過ぎったとき、僕の心臓がばくんと大きく跳ねた。
「う、嘘……まさか……」
発情期を迎えてしまったのだ。
まずい、隣国で発情期を迎えるのは初めてだ。
「鍵、かけなきゃっ」
言うことをきかない気だるい身体を動かして、部屋の鍵をかけようとしたその時。
あなたにおすすめの小説
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
【完結】名前のない皇后 −記憶を失ったSubオメガはもう一度愛を知る−
社菘
BL
息子を産んで3年。
瀕死の状態で見つかったエリアスは、それ以前の記憶をすっかり失っていた。
自分の名前も覚えていなかったが唯一所持品のハンカチに刺繍されていた名前を名乗り、森の中にひっそりと存在する地図上から消された村で医師として働く人間と竜の混血種。
ある日、診療所に運ばれてきた重病人との出会いがエリアスの止まっていた時を動かすことになる。
「――お前が俺の元から逃げたからだ、エリアス!」
「本当に、本当になにも覚えていないんだっ!」
「ととさま、かかさまをいじめちゃメッ!」
破滅を歩む純白竜の皇帝《Domアルファ》× 記憶がない混血竜《Subオメガ》
「俺の皇后……」
――前の俺?それとも、今の俺?
俺は一体、何者なのだろうか?
※オメガバース、ドムサブユニバース特殊設定あり(かなり好き勝手に詳細設定をしています)
※本作では第二性→オメガバース、第三性(稀)→ドムサブユニバース、二つをまとめてSubオメガ、などの総称にしています
※作中のセリフで「〈〉」この中のセリフはコマンドになります。読みやすいよう、コマンドは英語表記ではなく、本作では言葉として表記しています
※性的な描写がある話数に*をつけています
✧毎日7時40分+17時40分に更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。番外編をちょこちょこ追加しています。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜
せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。
しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……?
「お前が産んだ、俺の子供だ」
いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!?
クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに?
一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士
※一応オメガバース設定をお借りしています
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
白い結婚だと思っていたら、(溺愛)夫にガブガブされて、番になっていたようです
まんまる
BL
フレア王国の第3王子シルティ(18歳.Ω)は、王宮騎士団の団長を務める、キーファ侯爵家現当主のアリウス(29歳.α)に、ずっと片想いをしている。
そんなシルティは、Ωの成人王族の務めとして、自分は隣国のαの王族に輿入れするのだろうと、人生を半ば諦めていた。
だが、ある日突然、父である国王から、アリウスとの婚姻を勧められる。
二つ返事でアリウスとの婚姻を受けたシルティだったが、何もできない自分の事を、アリウスは迷惑に思っていないだろうかと心配になる。
─が、そんなシルティの心配をよそに、アリウスは天にも登る気持ち(無表情)で、いそいそと婚姻の準備を進めていた。
受けを好きすぎて、発情期にしか触れる事ができない攻めと、発情期の記憶が一切ない受けのお話です。
拗らせ両片想いの大人の恋(?)
オメガバースの設定をお借りしています。ぼんやり設定です。
Rシーンは※つけます。
1話1,000~2,000字程度です。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
(Xアカウント@cerezalicor)
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。