緋色の魔王(α)と暴君王子(α)の寵愛は愛に飢えた僕(Ω)を離してくれない

子犬一 はぁて

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熱を帯びる(シュカ王子side)

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「すまないが、今日の公務はここまでとする」

 きなこは王子の様子が普段と違うことに気づき、席を立つ王子に駆け寄る。ちょうど、今日の会議の前半の部が終わったところだ。

「シュカ王子。どうちましたか? ご体調でも悪いんでちか?」

 王子はこめかみに手をやりつつ、静かに頷く。

「ああ。獅子狩りの疲れが出ているのだろう……熱に効く薬草など部屋に持ってきてくれ」

「わかりまちた。王子は部屋でお待ちくださいでち」

 たっ、たっ、たっときなこが長い廊下を駆けていく。

 自室の近くまで来て、足元がおぼつかなくなってきた。壁に寄りかかり、ズルズルとその場に座り込んでしまう。

「シュカ王子!」

 ぼやけた視界の隅から、走ってくる男の姿を捉えた。

 阿月が血相を変えて俺を見下ろす。俺の身体を持ち上げて、俺の部屋に入った。

 俺をベッドに寝かせ、すぐにタオルと水を入れた水桶を用意する。タオルを水に浸し、俺の額に乗せた。

「王子。熱があるので、僕はきなこくんを待ちます」

「ああ。きなこには熱に効く薬草を用意するように伝えてある……」

 阿月はベッドサイドに腰掛け、何も言わなくなる。

「もういいぞ。部屋へ戻れ」

「……嫌です」

「……な……っ」

 キッと俺を睨みつけるようにして、阿月が呟く。

「王子はここ最近忙しくて顔も見せないし、おはようの挨拶もできていません。それなのに、こんなに身体に無茶させて熱を出すなんて……」

 心配してくれている? のか。

 しげしげと阿月を見ると、目に薄らと涙を浮かべている。

「すまない……心配させたな」

 くそ。素直に「心配してくれてありがとう」と伝えればいいものを、俺は……。素直ではないから、感謝の言葉1つ言えない。

「王子!」

 きなこが足早に水と薬草を砕いた粉を手に近づいてくる。

「これを飲めば一晩で熱が引くでち」

 緑色の薬草の粉を水で飲み干す。あまりにも苦すぎて、げほげほと咳き込んでしまう。

「……もう、行っていいぞ。近くにいたら、きなことお前に熱を移してしまうやもしれないし」

「いいえ。王子が眠るまで傍で見張ります」

 阿月が意地を張るように俺を見る。きなこは俺のためにいつでも食べれるように粥を作ってくれるらしく、すぐに部屋から出ていった。

「……そんなに見つめられると眠れやしない」

「目を閉じて、息を吸って吐くだけを繰り返してください。頭は何も考えず真っ白に」

 阿月の指示通り、目を閉じて呼吸に集中する。すると、段々と身体の力が抜けていくような気がした。

「おやすみなさい。王子」

 指先に、微かに触れる温もり。阿月が俺の指を軽く握ったのだ。

 いい夢を見れるといいんだがーー。

 俺は気を失うようにして意識を手放した。

 微かに残る手の温もりを残して。
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