「離婚しよう」と言われた拒否柴が、全肯定夫に甘やかされてレスを解消するまで

子犬一 はぁて

文字の大きさ
1 / 1

原因はセックスレス?

しおりを挟む


「離婚しよう」



 夫が零した一言が俺には爆弾みたいに脳内で弾けた。


 なんで。結婚して1年半しか経ってない。

 俺、なんかした? 

 周りの友達からは珍しいカップルだねって言われること多いけどさ。

 夫は31歳。俺は23歳。年の差婚ってやつ。

 焦って言葉が出てこないけど、夫は至極真面目そうな顔をして、神妙に頷く。



「な、なんで離婚すんの?」



 俺の言葉を真顔で受け止めた夫は


「最近レスでしょ」


 と俺の痛いところを突いてくる。

 セックスレスという言葉がいざ自分の身に降りかかるなんて思いもよらなかった。

 いや、俺からは恥ずかしくて誘えないけど、誘われたらするし……。

 まさか。俺が誘わないから嫉妬してる?

だとしたらかわいいな……。

 夫は俺の顔をじーっと見つめてから、人差し指で俺の額をつんつんと押してきた。


「そんなに俺性欲強すぎ?」

「なっ……!」



 いや、いや、違わないけど! 

 確かに夫は1日3回くらいできるくらい強いけど、それについていけない俺ではないはずだ。


 悩みに悩んだ末に思い当たる節がひとつ。

 やっぱりこの間、家でプロジェクターで映画見てたらなんとなくそういう雰囲気になって服の下に手が入ってきたから阻止したら、今思えば確かに夫はしゅん、と迷子の子犬みたいに眉を下げていた気がしないでもない。


 これは俺が100パー悪い件な気がする。


「え、っと。映画の日のこと?」


夫はジト目でうん、と頷いた。


「お前拒否柴かってくらい動かないし」

「拒否柴……」


 夫はさらに俺と距離を詰めてくる。後ろに後ずさりしたが壁が背中にあたる。

 この壁が憎い。


「ねえ。どうなの? 俺と離婚したくないよね?」


 つつー、と項を指先でなぞられて腹の奥に力が入る。

 なんか誘導尋問みたいな……。



「離婚、したくありません……!」

「よく言えました」



 ぽすぽす、と夫が頭を撫でてくる。よしよしされたって屈しないぞ。


「じゃあ今日からはお前が誘ってね」


 勝手に話が進んでいるような気が……。


「俺は拒否柴にはならないから。いつも通り全肯定お兄さんになるよ」


 自信満々な笑顔でそんなこと言われたら萌えてしまう。

 夫だいすき。一生一緒にいて。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?

綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。 湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。 そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。 その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

偽物勇者は愛を乞う

きっせつ
BL
ある日。異世界から本物の勇者が召喚された。 六年間、左目を失いながらも勇者として戦い続けたニルは偽物の烙印を押され、勇者パーティから追い出されてしまう。 偽物勇者として逃げるように人里離れた森の奥の小屋で隠遁生活をし始めたニル。悲嘆に暮れる…事はなく、勇者の重圧から解放された彼は没落人生を楽しもうとして居た矢先、何故か勇者パーティとして今も戦っている筈の騎士が彼の前に現れて……。

伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き

メグエム
BL
 伯爵家次男のユリウス・ツェプラリトは、ずっと恋焦がれている人がいる。その相手は、幼なじみであり、王位継承権第三位の王子のレオン・ヴィルバードである。貴族と王族であるため、家や国が決めた相手と結婚しなければならない。しかも、レオンは女関係での噂が絶えず、女好きで有名だ。男の自分の想いなんて、叶うわけがない。この想いは、心の奥底にしまって、諦めるしかない。そう思っていた。

処理中です...