現世ではヒモだった男が異世界で英雄へと成り上がる

今野常春

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第一章 国家消滅

第15話 降伏

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 王宮に乗り込んだ帝国軍襲撃部隊は苦戦している。
 緒戦こそ近衛兵は浮足立つが、時間の経過と共に混乱は終息し、立ち直り組織だった行動を見せる。
 数にして帝国軍400名、近衛兵2000名。王宮という限られた戦場では数の暴力には打って出られないが、ローテイションで戦うことが可能だった。
 それでも着実に帝国軍は進み続ける。その強みは武器の優劣だ。
「敵だ‼ ぐわっ⁉」
 近衛兵が敵襲の声を発すると同時に小気味良い連射音を発すると彼は亡骸となっていた。
「まったく、この新兵器がなければ我々はあっという間に敵地で戦死でしたね」
「そうだな。この武器のおかげで! こうして進めているのは感謝だ」
 会話しながら引き金を引くだけで何発も弾を撒ける武器を頼もしく感じていた。
この部隊は進みに進み、地下へと到達していた。
「しかし、随分と降りるな……」
「ですね。空気もどこか重いですよね」
 小声で話しながらも彼らの部隊は歩みを続ける。この頃になると戦闘もなくなっていた。
 だからこそ言い知れぬ緊張感が彼らを襲う。

 それは唐突だった。
「覚悟!」
 真正面から剣を持った男が部隊に向けて切り込んできた。
「なっ⁉」
 奇襲を受けた部隊は反撃することなく瞬く間に切り伏せられ、全滅してしまう。
「ふぅ……」
 男は血を拭き取ると剣を収めると大きく息を吐き出した。
「レア敵は死んだのか?」
「陛下、許可なくお出にならないで下さい」
 レアは跪いてはいるものの言うべきことは言う。
「すまぬ。だがな……」
「ご心配頂けること、臣として大変ありがたく存じます」
「うむ」
 レアは立ち上がると王を元居た場所へと帰し、死体から武器弾薬を回収する。

 帝国軍は確実に玉=王に近付いていた。
「全滅?」
「はっ! 地下へと侵入した部隊からの報告が途絶えました」
 シュルツはついに本命を発見したと考えた。
「つまり、玉は地下と言うことだな。全部隊を地下へと向かわせろ」
「はっ!」
 各部隊には優秀な連絡機が与えられている。少ない部隊もこれによって濃密な連携を見せることが出来ている。
 その彼らはシュルツの命令に従い地下へと殺到する。

「くそ、やはり知られたか……」
 レアは極僅かな人数で防御に徹していた。回収した武器を手に次々と迫りくる敵部隊を的確に倒してはいるが、圧倒的に追い込まれていた。
「攻めろ! 間違いなく玉はこの奥だ‼」
 帝国軍の言葉にレアは歯を食いしばる。
 この隠語は彼の敬愛する王への冒涜であった。
「ふざけやがって……」
 怒りを込めて弾を弾き出すがレアたちには限りがあった。
「隊長、弾切れです」
「こちらも! 歩兵銃に切り替えます!」
 次々と弾切れを報告してくる部下たちをしり目に、彼もついに残弾が尽きる。
「私も弾切れか……」
 それでもかなりの数を葬ったが多勢に無勢だとレアは感じ取った。
 味方は何をしているのか。彼の思いはそこであったが、この場所を知る者が少なかったことが仇となる。
 彼らが逃げ込んだ先は万万が一王宮に賊が侵入した場合、此処へと逃げ込むことが王族の決まりとなっていた。だからこそ近衛兵でもごく少数が知る程度の場所だった。

「陛下……」
「レア、厳しいのかね?」
「……申し訳ございません。陛下」
 心底残念そうに呟くレアは息も絶え絶えに王に答えた。
「よく戦った。余はレアを始め命がけで戦った者が臣であることを誇りに思う」
「陛下……」
「これ以上臣を苦しめる必要を見いだせない」
「それでは! 陛下なりません‼」
 いまだ跪くレアだが、後方では部下が倒れる声が聞こえてきていた。その声こそ王が決断した理由でもあった。
「降伏せよ。これはレイブル王国マクレイの命である」
「……はっ。承知いたしました」
 握り拳を造り王命を配したレアは迫り来る敵部隊に降伏を申し出た。
「降伏する‼」
 その瞬間、王都における戦闘は終結した。

「何っ! 玉が降伏?」
 まさかの報告にシュルツは驚愕するが、瞬時に考えを切り替える。そして王宮内に居る近衛兵士らに投降を告げる。
 この声に最初は欺瞞工作だと抵抗していた王国側だったが、それが真実と分かると順次武器を置いて投降した。
「よし、旗を掲げろ」
 これこそ帝国が勝利した瞬間だった。
 高々と掲げられる王家の旗が下ろされると帝国旗が掲げられた。
 この衝撃は王都内に駆け巡り、中央参謀部を始め国家機関に激しい動揺が走る。

「馬鹿な⁉ 近衛兵は何をしている!」
 参謀長ドムル中将は再度確認するよう部下に命じ、関係各所に連絡を取った。
 だが、この知らせは真実であり。国王マクレイが降伏したことが分かった。
「閣下……」
「仕方がない…… 全軍に通達せよ……」
 この時、王国が完全に降伏した瞬間だった。
 だが、投降せよと言われすぐに戦闘停止とならないのが戦場というものだ。
 特に現代のように通信設備が確りしている環境があれば話は別だが……
 特に、その知らせが各部隊に届けられている頃、王国軍は見事包囲網を構築し、帝国軍を次々と打ち破っていたのである。
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