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第二章 国家解体
第24話 王都脱出
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「みんな起きろ!」
いつになく真剣な声でテダが皆を起こして回る。
「いったいどうしたんだよ……」
寝起きの悪いマールは軍隊感覚も抜けていたのか、ピリッとしていない。以前なら布団を蹴り、飛び起きたのだが……
「帝国軍に我々の存在が露見したらしい」
だがそうなっていたのも束の間テダの言葉で我に返った。全員の顔に危機迫る物が浮かんだ。
「どうして」
「誰かがタレ込んだらしい」
「らしい?」
「俺にも情報を与えてくれる者がいるのさ」
現在の王都は仕事を求める者がしのぎを削り、生き残りに必死だった。現に餓死者まで出ている。
原因は魔導石の不足による輸送力の低下だ。王国は広い。故に大量輸送が可能な鉄道は無くてはならない。特に消費地となる王都や主要都市にとっては死活問題なのだ。
そんな中で帝国軍相手に商売する者が生まれる。物資も高価な取引材料になるが、取り分け情報に価値が置かれたのは必然だった。
今回も帝国軍に情報を売り込んだ人間がいたということになる。その情報も金がすべてと言うことになる。
しかし、買い取る人間には限りがある。今回のタレ込みも逆にテダに売り込む者もいたのだ。
「場所を移すぞ」
王都を始め王国内では魔法使用者狩りというものが始まっていた。帝国軍の中で調査研究の名のもとに次々と捕らえられているらしい。
だからこそ彼らに捕まるわけにはいかなかった。
「今日中にここを出るぞ。荷物は最小限にしておけ」
「分かった」
声を押し殺し、各々準備に取り掛かる。
「ユウ、少しいいか。ああ、リクも残れ」
「どうしたのよ」
リクは若干怒り気味に尋ねる。素早く王都を出ようと決めた矢先の事に彼女は余裕を失していた。
「お前たちにはヘレルへ向かってもらいたい」
「どういうことかしら?」
「お前たちはとても仲が良い」
「そうね。でも答えになっていないわ」
「うーん、俺たちはおそらく追われ続ける。俺の場合は顔が割れている」
「でもこの時まではバレなかったわ」
「だが情報として売られた」
今までの王国では考えられない様な動きが起こりつつある。情報の売買もその一つとなっている。今や、テダ達魔法使用者はこの国で生き残る者にとって美味しいごはんの素なのだ。
「それで、なんで俺たちだけで?」
「簡単だ。新婚夫婦なら向こうでも受け入れてもらえるからな」
「新婚夫婦⁉」
テダの言葉に俺は素っ頓狂な声を上げた。
「なんだ、ユウスケ。お前はリッカのことが好きじゃないのか?」
「えっ、いや好きとかじゃなくてだな……」
俺は答えるのが急に恥ずかしくなった。何しろ俺の心を見透かしたような言い方だったからだ。
「リッカはどうなんだ?」
「いきなりね、ティーダ。私は好きよ。ユウスケはまだ幼さが残っているけど」
マジかよ。俺そんなに幼いのか…… 前世と合わせれば五十路は過ぎているんだけど……
「なら話は早い。お前たちの身分も用意してある」
そう言うとティーダは懐から二通の証明書を手渡した。
「これは帝国政府が王国国民に所持を義務図ける証書だ。まだ数か月も先のことになるが、これを所持していないとこの国では生きていけない」
詳しく言えばこの後、買い物や就職に至るまですべてこの証書がなければ始まらないというのだ。
「統制経済か……」
「物資が減っているんだ。王国として生き残るには仕方がない」
領土を削られ豊富にあった自前資源の大半は帝国へ壌土された。残るとすれば魔導石で、城塞都市ヘレルは王国最後の希望なのだ。だからこそ、魔導石の生産を拡大させ、魔導機器関連の輸出を目論見んでいた。それでも生産する者からしたら反発したい気持ちがある。
「で、私たちだけってところが納得できないのよ」
「簡単だ。金が尽きた。俺はお前たちの分しか作れなかった」
聞けば何日も前から俺たちがヘレルに向かうことが決まっていた。すべてはそれありきでティーダは動き回り。多額の金を積めばどの様なことも成し遂げる人間との交渉も行っていた。二通の証書はその証だ。
「だからと言って、貴方たちはどうするのよ」
「出来る限り逃げるさ」
どこか楽観視しているような口調で答えるとリッカの瞳から大粒の涙が溢れ出していた。
「そんなの無理じゃない。相手は国家よ。逃げ切れないわ……」
「やってみなければわからん。それにこちらにも味方はいる」
ティーダはそう言うがリッカは納得していなかった。
「じゃあどうすればいい?」
「みんなで……」
「だからそれが限界なのだ。帝国軍は何故か魔法使用者を執拗に狙い始めている。何かがおかしい。罪もないのに魔法使用者と分かれば逮捕される」
先日も使用者と分かった瞬間、帝国兵士がやって来て逮捕されたという知らせがあったばかりだ。
「それで、私たちがヘレルに移動して。何をするの?」
「ユウスケは鉱山で働いてもらう。リッカはその奥さんだ」
「鉱山……」
最も肉体労働が過酷な現場じゃないか……
「そう。地下に潜れと言うことね」
「ああ、当面の間、お前たちには若夫婦が成功を求め鉱山で働くという設定にした」
何と言う設定だ。これは無理があるだろ。
「まあ悪くないかしらね」
「良いの⁉」
「良いんじゃないかしら」
俺はカルチャーショックを受けていた。なぜ穴がありそうな設定がいいのだろうか……
「さあ、涙を拭け。それで、さっさと荷物を纏めろ。今夜ヘレル行の列車が出る」
ティーダは二人分の切符も差し出した。
「お前たちには魔法中隊全員分の金が注ぎ込まれている。決して無駄にするな」
「⁉」
そうだ。あの日、俺たちを逃がす際に多くの金をティーダは受け取っている。これを無駄にすることは連れていかれたレイム少将含む隊員の思いを無下にしてしまうのだ。
「わかりました……」
「有難く頂くわ」
「ああ、受け取れ。だけど覚えて置け。これは貸しだ。必ず返して貰うからユウスケは必死になって金を作れ。なに、二・三年も我武者羅に働けば纏まった金は稼げるさ」
簡単に言ってくれるな。鉱山の仕事は初めてだが絶対に辛いに決まっている。これは間違いない。俺頑張れるかな……
いつになく真剣な声でテダが皆を起こして回る。
「いったいどうしたんだよ……」
寝起きの悪いマールは軍隊感覚も抜けていたのか、ピリッとしていない。以前なら布団を蹴り、飛び起きたのだが……
「帝国軍に我々の存在が露見したらしい」
だがそうなっていたのも束の間テダの言葉で我に返った。全員の顔に危機迫る物が浮かんだ。
「どうして」
「誰かがタレ込んだらしい」
「らしい?」
「俺にも情報を与えてくれる者がいるのさ」
現在の王都は仕事を求める者がしのぎを削り、生き残りに必死だった。現に餓死者まで出ている。
原因は魔導石の不足による輸送力の低下だ。王国は広い。故に大量輸送が可能な鉄道は無くてはならない。特に消費地となる王都や主要都市にとっては死活問題なのだ。
そんな中で帝国軍相手に商売する者が生まれる。物資も高価な取引材料になるが、取り分け情報に価値が置かれたのは必然だった。
今回も帝国軍に情報を売り込んだ人間がいたということになる。その情報も金がすべてと言うことになる。
しかし、買い取る人間には限りがある。今回のタレ込みも逆にテダに売り込む者もいたのだ。
「場所を移すぞ」
王都を始め王国内では魔法使用者狩りというものが始まっていた。帝国軍の中で調査研究の名のもとに次々と捕らえられているらしい。
だからこそ彼らに捕まるわけにはいかなかった。
「今日中にここを出るぞ。荷物は最小限にしておけ」
「分かった」
声を押し殺し、各々準備に取り掛かる。
「ユウ、少しいいか。ああ、リクも残れ」
「どうしたのよ」
リクは若干怒り気味に尋ねる。素早く王都を出ようと決めた矢先の事に彼女は余裕を失していた。
「お前たちにはヘレルへ向かってもらいたい」
「どういうことかしら?」
「お前たちはとても仲が良い」
「そうね。でも答えになっていないわ」
「うーん、俺たちはおそらく追われ続ける。俺の場合は顔が割れている」
「でもこの時まではバレなかったわ」
「だが情報として売られた」
今までの王国では考えられない様な動きが起こりつつある。情報の売買もその一つとなっている。今や、テダ達魔法使用者はこの国で生き残る者にとって美味しいごはんの素なのだ。
「それで、なんで俺たちだけで?」
「簡単だ。新婚夫婦なら向こうでも受け入れてもらえるからな」
「新婚夫婦⁉」
テダの言葉に俺は素っ頓狂な声を上げた。
「なんだ、ユウスケ。お前はリッカのことが好きじゃないのか?」
「えっ、いや好きとかじゃなくてだな……」
俺は答えるのが急に恥ずかしくなった。何しろ俺の心を見透かしたような言い方だったからだ。
「リッカはどうなんだ?」
「いきなりね、ティーダ。私は好きよ。ユウスケはまだ幼さが残っているけど」
マジかよ。俺そんなに幼いのか…… 前世と合わせれば五十路は過ぎているんだけど……
「なら話は早い。お前たちの身分も用意してある」
そう言うとティーダは懐から二通の証明書を手渡した。
「これは帝国政府が王国国民に所持を義務図ける証書だ。まだ数か月も先のことになるが、これを所持していないとこの国では生きていけない」
詳しく言えばこの後、買い物や就職に至るまですべてこの証書がなければ始まらないというのだ。
「統制経済か……」
「物資が減っているんだ。王国として生き残るには仕方がない」
領土を削られ豊富にあった自前資源の大半は帝国へ壌土された。残るとすれば魔導石で、城塞都市ヘレルは王国最後の希望なのだ。だからこそ、魔導石の生産を拡大させ、魔導機器関連の輸出を目論見んでいた。それでも生産する者からしたら反発したい気持ちがある。
「で、私たちだけってところが納得できないのよ」
「簡単だ。金が尽きた。俺はお前たちの分しか作れなかった」
聞けば何日も前から俺たちがヘレルに向かうことが決まっていた。すべてはそれありきでティーダは動き回り。多額の金を積めばどの様なことも成し遂げる人間との交渉も行っていた。二通の証書はその証だ。
「だからと言って、貴方たちはどうするのよ」
「出来る限り逃げるさ」
どこか楽観視しているような口調で答えるとリッカの瞳から大粒の涙が溢れ出していた。
「そんなの無理じゃない。相手は国家よ。逃げ切れないわ……」
「やってみなければわからん。それにこちらにも味方はいる」
ティーダはそう言うがリッカは納得していなかった。
「じゃあどうすればいい?」
「みんなで……」
「だからそれが限界なのだ。帝国軍は何故か魔法使用者を執拗に狙い始めている。何かがおかしい。罪もないのに魔法使用者と分かれば逮捕される」
先日も使用者と分かった瞬間、帝国兵士がやって来て逮捕されたという知らせがあったばかりだ。
「それで、私たちがヘレルに移動して。何をするの?」
「ユウスケは鉱山で働いてもらう。リッカはその奥さんだ」
「鉱山……」
最も肉体労働が過酷な現場じゃないか……
「そう。地下に潜れと言うことね」
「ああ、当面の間、お前たちには若夫婦が成功を求め鉱山で働くという設定にした」
何と言う設定だ。これは無理があるだろ。
「まあ悪くないかしらね」
「良いの⁉」
「良いんじゃないかしら」
俺はカルチャーショックを受けていた。なぜ穴がありそうな設定がいいのだろうか……
「さあ、涙を拭け。それで、さっさと荷物を纏めろ。今夜ヘレル行の列車が出る」
ティーダは二人分の切符も差し出した。
「お前たちには魔法中隊全員分の金が注ぎ込まれている。決して無駄にするな」
「⁉」
そうだ。あの日、俺たちを逃がす際に多くの金をティーダは受け取っている。これを無駄にすることは連れていかれたレイム少将含む隊員の思いを無下にしてしまうのだ。
「わかりました……」
「有難く頂くわ」
「ああ、受け取れ。だけど覚えて置け。これは貸しだ。必ず返して貰うからユウスケは必死になって金を作れ。なに、二・三年も我武者羅に働けば纏まった金は稼げるさ」
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