神様、幸運なのはこんなにも素晴らしい事だったのですねぇ!

ジョウ シマムラ

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第 三章 迫りくるお約束と立ち向かう元おっさん

第 40話 襲い掛かるお約束とかわす元おっさん。②

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    「そこまで言うなら私と戦いなさい。アンタが勝ったらお父様の言うようにします。私が勝ったら私の好きにさせていただきます。」

    (え~と、どうしてこうなった?)

    「あ~その勝負受けることに、俺に何の得があります?そもそもお嬢様。あなたの主張は父親である侯爵様を納得させるべき事であって、全くの他人である俺を巻き込むのは勘弁して欲しいですね。」
「ちょっと逃げる気!」
「逃げるも何も、俺には全く関係ない話しだからな。侯爵様を説得する自信が自分に無いからと言って、他人を巻き込んで利用しないでほしいですね。」

    これでこの話しは終わりと思ったが、ここで信じられない事が起こる。

    「済まないが、そう言わずに勝負してもらえないだろうか?」
「侯爵様?」
「確かにオオガミ君には直接関係の無い事だが、ここは私からの依頼と言うことで受けてもらえないだろうか?」
「はあ?ギルドを通さない依頼は受けるなとギルドから言われてるのですがね。」
「それはギルドマスターのゲオルグから聴いて知っているよ。それを承知で頼むよ。ギルドマスターには私から言っておくから、どうかお願いできないか?」

    暫く考えて、ここで断ったら領主の受けが悪くなり街に居ずらくなるかもしれないし、仕方ないやるか。

「解りました。依頼として受けましょう。ただ、依頼というなら依頼の達成目標と依頼の報酬を決めて下さい。」
「そうだね。依頼目標は娘と模擬戦闘をしてもらい勝つこと。報酬は、勝てば家の騎士団に騎士として仕官してもらう。そして、勝っても負けても謝礼金として金貨十枚をだそう。」
「申し訳ないが、有り難い話だが仕官の件はお断りします。冒険者になってまだ間がないし、今後冒険者を止める積もりもありませんので。」
「そうか、残念だ。では仕官の話しは無しで、勝っても負けても報酬金として金貨二十枚を払おう。この辺でどうだろうか?」
「了解しました。報酬はそれで依頼をお受けします。」
「やっと決まったようね。まあ、アンタが勝つなんて事は無いから、お金貰って帰りなさい。」

    騎士団の訓練場に案内してもらい、模擬戦のルールを聞く。

    「模擬戦なので、双方とも刃の無い模擬剣で戦うこと。魔法は自己強化のみで攻撃魔法は禁じる。
判定は明らかな勝ちか負けを認めるか。または審判が続行が無理と判断したらそこで中止だ。」 「双方剣を持って構えよ。」

俺は〈身体強化〉のみ掛けて対峙する。

    「では始め!」

ラルフさんの開始のコールで模擬戦は始まった。

「はっ!」

短い気合いから、お嬢様は片手剣を斜めに 降り下ろす。おや、まだまだ本気になっていないのかな?剣速がゆっくりだ。ぎりぎりで左に避ける。
    続いて斜めに降り下ろした剣をそこから横に払ってくる。後ろに引き剣先をよける。この程度なら〈身体強化〉だけで十分対応できる。

「なによ。さっきから避けてばかりで、その剣は飾りなの?」
「ふっ。」

挑発してペースを握ろうとしたようだが、俺に一笑にされて反対に顔を真っ赤にして激情するお嬢様。それじゃあどっちが挑発したか判らないぞ。
更にムキになって剣を振り回す。

    二十分もしたら、所詮女性の体力。いくら鍛えていてもそこは貴族の子女。体力の限界が早くも見える。
ゼェゼェと息を切らして俺を睨む。剣は重そうに下ろしている。俺は開始からただ相手の攻撃を避けるだけだ。息一つ切らしていない。

    「ちょっと、何で避けてばかりなのよ!」
「決まっている。君が自滅するのを待ってるんだよ。」
「自滅ってなによ!」
「今の自分の状態も判らないのかい?ただ力一杯剣を振り回しているだけで、なんら当てるための工夫も体力の配分も何も考えてないから。相手より先に疲れきって動けなくなるんだよ。
    あのオークたしか十五匹いたが、一人当たり五匹の攻撃を捌きながら倒せたかな?ラルフさんは出来ただろうが君のその腕では、例え五匹倒しても六匹目に倒されるよ。それが判らないから止められるのさ。
    傲慢な者に明日の保証はないんだよ。この世界ではね。さて、息も整ったようだし、そろそろ決着を着けますか。」

    途端に慌てて剣を構えるお嬢様。俺は初めて剣を構え、全身に『気』を充ちさせ、右から回り込むと見せてフェイントをかけ一気に左から回り込み背後を取り、首筋に剣をそっとあてる。

「審判?」
「それまで。勝者オオガミ殿。」
    
お嬢様は審判の声を聞いて、自分の首に剣が突きつけられていることにやっと気付いた。

「え、いつの間に後へ?」

驚きのあまりに剣を落としてしまう。

    剣を下ろし、侯爵の方へ近づいた。驚いて目を見開いて侯爵はいう。

「ラルフから強いとは聞いていたが、これ程とは。惜しい。家に仕官してくれたらと思ってしまうよ。残念だ。」
「では、依頼を完了したので報酬をお願いする。」
「うむ、判った約束通り報酬をだそう。セバス。」

侯爵様の呼び声に控えていたセバスがススッと寄ってきて、先ほどの巾着をさしだす。俺は有り難く受け取った。

「ちょっとアナタ、もう一回戦いなさいよ!」
「はぁ?お嬢様、君は今首を切られて死んだんだよ。死んだ人間が戦える訳無いだろう。悔しかったら死なない様になりな。ま、二度と相手はしないがな。では侯爵様、俺は帰ってもいいのかな?」
「ああ、ご苦労様。要らぬ手数をかけたな。済まなかった。」
「いえ、こちらも稼げたので良しとします。では失礼します。」


釈をしてセバスさんに連れられて屋敷から去った。

    そろそろ昼か、塩味クッキーと紅茶を口にしただけだから、お腹がグーグー鳴っている。屋台ではなく、ガッツリ食べたいな。今日はギルドの依頼は無しでいいな。
    ギルマスとも話したいし、以前のオークの買い取り代金も欲しいし。

    よし、飯屋に行こう。
















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