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第 五章 王都と陰謀と武闘大会

第 81話 リーラ平原の会戦(終幕)。

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    「な、何が起こった!誰か説明しろ!」

    自分の参謀に問い質した。誰も答える事が出来ない中で、参謀の一人宮廷魔術師のギランが恐る恐る答え出す。

    「恐れながら将軍閣下、申し上げます。恐らく敵は魔法を使ったと思われます。しかし、我々の知る中であのような広い範囲で地揺れを起こす魔法を知りません。ただ魔力感知から間違いなく魔法を使ったと思われますが、どういった魔法を使ったのかは不明であります。」
「何、お前達の知らない魔法を相手は使ったと言うのか?」
「はっ、残念ながらその通りであります。」
「敵にはそれ程の魔法使いがいるというのか。だが、事前の調査では近衛騎士団長のバラン以外に目立った武力や、あのような魔法を使える魔法使いがいるとの報告は聞いてないぞ。諜報部の奴ら何を調べていたんだ?。今後の為に至急敵の内情を改めて調べさせろ。」
「はっ!畏まりました。」

幕僚の一人が、帝都に伝令を走らせる。

「しかし、このままでは我が騎馬隊が全滅してしまう。ここは弓兵を残して他は全軍で騎馬隊の救出にむかう。俺も前にでるから後は任せた。」
「お待ち下さい。将軍はここで全体の指揮をお取り下さい。あの様では騎馬兵はもう助かりませぬ。」
「だまれ、今我が軍は窮地である。士気を上げる為にも、ここは前線に出て皆を鼓舞しないと、軍が崩壊するわ。お前たちは、弓兵と共にここから援護をしろ。槍兵歩兵は、倒れている騎馬隊を助けるぞ。前進!」

    クロイセン帝国軍の槍兵と歩兵一万五千が自軍を助けるために前進を始めた。

    クロイセン帝国軍の動きはリアルタイムでマップに標示されている。弓兵と本陣を残して全軍で騎馬隊を救いに前進してきたのが丸分かりだ。

    「侯爵、敵が動きました。敵の槍兵と歩兵が前進してきます。」
「我々はどうしたら良い。オオガミ君?」
「はい、まず前進してくる敵の槍兵と歩兵に対しては俺が魔法を使って、足止めします。味方の弓兵でまず攻撃して牽制をして下さい。その間に味方の弓兵と騎兵以外は全軍で彼らを迎え撃ちます。」
「どうして騎兵は使わないのかな?」
「騎兵には、別にやって貰うことがあります。弓兵が相手に矢を射始めたら、我が軍の右側から戦場を迂回して、敵後方の弓兵に敵の左斜め後ろから突撃してもらいます。そのまま駆け抜けて、一旦反転して来た道を戻りながら敵を攻撃して下さい。それを何回か繰り返せば、敵は崩れるので、そこで弓兵を殲滅して下さい。」
「殲滅かい?どうしてもかい?」
「はい、ここでクロイセン帝国に徹底的に勝つことで、次の戦いを遅らせる事が出来ます。侯爵、ご判断を。」
「君がそこまでいうならね。伝令!」

侯爵から作戦内容を伝えられ伝令達はそれぞれ散っていった。

    「本当なら、ここで騎馬隊はラルフさんには悪いけど、レナードさんに指揮してもらいたかったけど、私達には指揮権がないからね。無理はいえないな。」
「オオガミ様、何故俺が騎馬隊を指揮したら良いのですか?」
「ふふふ、いいですよ。敬語なんて使わなくても。俺達は冒険者パーティーですから。それで指揮した方が良い理由ですね。人が就く職業、クラスというものにはそれぞれ特性というものがあります。解りやすい所では、僧侶系のクラスはアンデッドに対しては強いとかね。で、貴方のクラス〈ホワイトナイト〉ですが、ナイトの能力に加え特に騎馬隊の指揮能力が高くなる能力があるのですよ。他に魔法耐性が高かったり色々特性があるんですがね。(オンラインゲームではだけど。)」
「なんと、オオガミ君は他の人の能力が解るのかい?」
「ええ、粗方はね。おっと、話し込んでいたら敵がもうすぐそこに来ている。続きはまたいつかに。〈マルチロック〉敵赤色〈スタン〉、〈マルチロック〉敵赤色〈パラライズ〉。」

    目のの戦場では、正に敵とぶつかり合う寸前で眼前の相手に向かって走り出した時に魔法が発動したため、敵部隊は一斉に前のめりに倒れ動ける兵士は僅かしかいなかった。
その様を見ていた侯爵や国軍の幕僚達や兄妹は再び息を飲み、顔を青くして、戦場の様子をみていた。
    幕僚の一人が、俺に遠慮がちに申し出てきた。

「オオガミ殿、既に我らの勝ちは決まった物。殲滅せずとも降伏させてはいかがかな。」
「ほう、まだ我々は勝っていませんよ?誰か降伏したんですか?戦う気がある相手に何故情をかけないといけないのですか?また普通の戦いならそれでも良いのですけどね、今回は駄目です。帝国は事前に王国に対して内乱になるよう工作してきました。侯爵一家暗殺やリヒトの街を壊滅させようと魔物を襲撃させたり、陛下一家の暗殺を計画したりね。リヒトの街の件一つとっても成功していたら平民が何人死んでいたか想像もしたくない。
    いいですか?戦場戦で戦ってよいのですは討たれても良い覚悟がある者だけ。彼らは兵士として我々と戦いに来たのです。そして、未だに戦う気です。しかも謀略を事前に使ってまでね。ならば逆にここで殲滅されても彼等に文句はないはずです。また帝国に当たり前ですよ。」

幕僚は、なにも言えず下がった。兄妹も硬い顔をして聞いていた。

戦場では、動けなくなった帝国軍を殲滅していた。
中には初めは躊躇う者もいたが、攻め割りてきたのは元々帝国軍ということできり功績稼ぎと止めを刺していた。

    暫くして、前線に叫び声が響いた。

「我こそは、帝国軍将軍ザラ・メイル。王国軍将軍に対して正々堂々の一騎討ちを申し込む。前に出られらるがよい。」
「オオガミ君、どうしよう?あんな事に言っているが?」
「ククク、ここで一騎討ちとは、とことん笑わせてくれますねぇ。・・・そうですね。ここまで戦況か確定している以上、本来は一騎討ちなど受ける必要はありませんが、敵の将軍からともなれば倒すまでこちらの被害も大きくなりますので、ここは敢えて受けましょうか。但し、相手は侯爵ではなく俺が出ます。」
「え、オオガミ君がかい?大丈夫なのかい?」
「まあ、何とかなると思いますよ。あの位の相手なら。」
「オオガミ君、俺が行こう。」
「いや、レナードさん。失礼だが貴方だと相手と五分五分なので、悪いけど今回は我慢してください。相手も伊達に将軍を名乗ってませんよ。今回は俺に譲ってください。」
「大丈夫なのかい?」
「ええ、大丈夫ですよ。じゃあ、ちょっと行ってきますね。」

本陣を離れて前線に向かう。目の前には、叫び声を上げている大柄のゴツイ顔の中年男がいた。

    「王国軍には、一騎討ちを受ける度胸もないのか。悔しければ、俺の前に立って名乗ってみろ。」
「煩いですねぇ。貴方は既に負けたのですよ。敗軍の将は静かに尻尾を巻いて、とっとと帰りなさい。まあ、ここから帰れたらですけどねぇ。」
「・・・よく言った小僧。度胸は誉めてやる。ならお前から剣の錆びにしてくれるわ。抜け!」
「では、お相手しますかね。」

    抜刀術の構えをとる。全身に『気』を巡らせる。今回は魔法は使わない『気』の強化のみだ。
    ザラ将軍は、剣を抜き払い盾を構えた。

「いくぞ、小僧!」

一声吠えると、走り出した。
俺は全身に『気』が回った所で足を踏み出した。
〈舜歩〉を使い、一気に接近しつつ剣の刃を走らせる。
俺の予想外の速さに驚き相手は盾で防ごうとしたが、『気』を纏った俺のバスタードソードは、バターで熱した刃物で切るが如く盾を何の抵抗もなく断ち切り、そのまま驚く顔のザラの首を切り飛ばす。
    信じられないといった驚きの表情を浮かべたまま、ザラ将軍の首が地面に転がると、味方の兵は静寂の後歓声を上げ、敵は力なく膝を地についでに戦意をなくした。

    「戦う気の無い者は、武器を捨て両膝を地に着けて両腕を頭の後ろに組め!死にたくなければ、さっさとやれ!王国兵は順次武装解除をして本陣後ろに連れていけ。ケガして動けない者には止めをさせ。全軍動け!」

    声に『気』を纏わせ戦場に響かせた。途端に王国兵はきびきびと動き出す。

    (よし、情勢は決したな。あとは、騎馬隊の出来だがどうなったかだが。)















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