神様、幸運なのはこんなにも素晴らしい事だったのですねぇ!

ジョウ シマムラ

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第十一章 慌ただしき日々。そして、続かぬ平穏。

第171話 クチコミって、噂話よりも速いのね。③

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    「おはようございます。旦那様、お時間にございます。お起き下さい。」

何時もの如く、サウルがお越しに来てくれた。
その声で目覚めた私は、布団の上の子虎と布団 の抱き着きエルフに飯だと起す。それを合図に二人とも起きると何故かある、着替えに着替える。何故ここにあるとまだ思えている私自身に安堵したよ。

    三人に〈クリーン〉をかけて、食堂に向かった。

「お早うございます、旦那様。」
「お早う、カイン。皆もおはよう。」

給仕の用意をしていたメイド達にも声をかける。

「始めてくれ。」

    それを合図にメイド達が給仕を始める。

「今日は、食事のあとに、セイラとソニアを迎えに行くから、カイン馬車の用意を頼むよ。その後に冒険者ギルドと商業ギルドに寄ってから屋敷に戻り、ツールに帰るからその予定で頼むよ。」
「承知致しました。」

カインがそう返事を返すと食事の用意が整った。

「「頂きます(にゃ)。」」

    朝はハムエッグだ。厚切りで炒められているハムが旨い。ここにコーヒーが有れば完璧なんだがな。前に聞いた話では、コーヒーは高級品らしく高いと言われた。今日行った時に商業ギルドで聞いてみよう。ハムを噛み締めながらそんな考え事をしていた。
    まだ、ここの料理長にはクッキーやクロワッサンのレシピは教えていない。王都で販売が始まるまでは、レシピが漏れる可能性がある以上仕方がないね。

    「うん、旨かったよ。いただきました。」
「いただきましたにゃ。」 
「では、出かける準備を頼む。サウルは残ってアイリスとアルメイダの世話を頼む。冒険者ギルドと商業ギルドにも寄るから夕方前には戻る積もりだ。」

そう言って席を立つ。

    冒険者スタイルに着替えて外出の支度をしてから執務室にいると、カインが馬車の用意が整ったと伝えに来たので乗り込み公爵邸に向かう。

    守衛に要件を伝えると、屋敷の馬車留まりまで馬車を進めた。下りて迎えに出ていたセバスさんに挨拶をする。

「セバスさん、おはようございます。セイラを迎えに来ました。」
「おはようございます、オオガミ様。旦那様が何かお話があるそうで、お待ちです。」
「何のお話しでしょう?」
「さて、わたくしは伺っておりませんので、先ずは中にどうぞ。」

    何時もの応接室に通されて行くと、公爵が先に座って待っていた。

「お早うございます、公爵。」
「ああ、お早うオオガミ君。昨晩は配慮有り難う。娘と久々に話せて、シュザンナもとても喜んでいたよ。悪いが、また時々で良いので、連れてきて貰えるかな?」
「はい、分かりました。また、時を見て連れてきますね。」
「うん、有り難う。それともう一つ、昨日話に出た王都に支店を出す話で、この後王宮に行くと思うが、陛下からその事の話があるそうだ。詳しくは私も聞いてないけど悪い話ではないと思うよ。その積もりでいてくれ。」
「成る程、分かりました。」
「私からは以上かな。次来る時にも、クッキーを宜しくね。」

笑いながら公爵はそう言って立ち上がり、玄関ロビーに向かった。

    そこには、公爵夫人とセイラが待っていた。

「オオガミさん、昨日は有り難う。久々に娘と話せてとても楽しかったわ。悪いけど、また連れて来て貰えるかしら?」
「はい、公爵からも頼まれましたが、また日を見てお連れしますね。」
「ええ、お願いしますわ。セイラ元気にね。また面白いお話を聞かせに来てね。」
「はい、お母様。また伺いに来ますわ。」
「では、ソニア王女を迎えに行かないといけませんので、これで失礼をします。」
「ああ、また来てくれ。」

    挨拶をして、馬車に乗り込み出発する。
公爵邸から城までは近いため十分とかからずに城門にたどり着く。守衛に要件を伝えると既に話が通っていたらしく、門を通してくれた。そのまま馬車留まりまで行き、何時もの応接室に案内された。

    陛下が公務のため、暫く時間がかかるとのことで、メイドが紅茶とクッキーを用意してくれた。
ここのクッキーは、いつもの塩味のビスケットだ。
齧りながらお茶を飲んで周りを見回していると、以前に見たことのある始祖王の肖像画だ。よくよく見ると顔つきはどう見ても日本人だ。
転生者は確か神様は私が最初とか言っていたから、転移者だと思われる。ただ、私と同じ世界の日本なのかは分からないが。
そんな事を考えていると、陛下が部屋に入って来た。

「待たせて済まなかった。掛けてくれ。」

座っていた場所に戻ると、陛下が話始めた。

「済まんな、これを渡したくて先程まで手続きをしていたのだ。」

そう言って、書類を一枚差し出して来た。

「拝見します。」

書類を手に取り読むと、それは不動産の権利書だった。場所は王都のメインストリートだ。敷地も広く工房も広いし、従業員用の宿泊施設もあり資料の内容としては一級品だ。

「どうだ。オオガミそこは。」
「はあ、場所としても、設備としても一級品ですね。」
「うむ、そうだろう。そこはな、例の闇ギルドと関係のあった商会があった所でな、商会は取り潰しで、財産没収で王宮の管理財産になっていた物だ。」
「はあ。」
「これをオオガミに譲渡する。」
「えっ、国の財産を何するんですか?」
「安心しろ。理由はある。ツールの代官の不正を正した件だ。すでにあの代官の罪状は調べ終わり、刑も執行された。よってお主にはその件の褒美を渡さねばならん。それでこれをお主に下げ渡す。受け取るが良い。」
「はっ、有り難うございます。」
「それでな、その店では例のクッキーやらクロワッサンを売り出すのだろう? 」
「はい、予定道りならその積もりです。」
「では、毎週一定数のクッキーを王宮に販売せよ。もちろん代金は支払うぞ。良いかな?」
「はっ、有り難うございます。納めさせて頂きます。」
「うむ、頼むな。具体的な話は、店が出来てからさせてもらう。その為にも、早くに開店出来るようにな。」
「早速、商会の担当者と話を詰めます。」

話が一段落着いた所で、王妃様とソニアが連れだって部屋に入って来た。

「お話は済みまして?」
「うむ、開店の準備に入る様に申し付けたところだ。」
「それは、ようございます。これであのクッキーが食べられますね。ツール伯爵良しなに頼みますよ。」
「可能な限り早くに開店出来るように努めます。」

(王妃様のプッシュが凄かったんだろうな。甘味恐るべし。)

    こうして、王都に早くも『エチゴヤ』の支店が出来る事となった。


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